ポーンドット男爵のダイエット奮闘記〜娘の視線が気になりまして

清水花

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2章 第二の試練 食事制限と無限地獄

8 ただいま

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「ふふふっ……ただいま」

 この日、ジェラールは体重計の上にだらりとした姿勢で立ち、力のない視線でその針が指し示す87kgという数字をぼんやりと眺めていた。

 あれから一向に減らない体重に悪戦苦闘し、悩みに悩んで遂には若干のノイローゼ気味になってしまったジェラールは、およそ正気とは思えない考えのまま行動を起こしてしまった。

 答えの出ない問いに対し、ジェラールは食欲という純粋な欲望ひとつで無謀にも立ち向かったのだ。

 減らないのなら、増えてみろ。

 減りたくないのなら、増やしてやる。

 増えたいなら、好きなだけ増えてみろ。


 全部ーーどうにでもなれ。


 そんな考えから数日間好き放題飲食し、今に至るのである。

 あの日ーー痩せようと固く心に誓ったあの日。

 あれから早三ヶ月。運動に食事に死ぬ気で頑張ってきた。

 痩せようと必死に努力してきた。

 なのに、

 その成果がたった数日間の飲食で全て水の泡となってしまった。

 自分はこの数日間の食事のためにあれほど頑張っていたのか?

 嫌になるほど野菜を食し、慣れない運動に取り組んでいたのか?

 たった数日間のために……。

 あれほどの努力を……。

 これではあんまりだ……。

 ジェラールは悲しみと後悔の奥底に沈んでいた。

 大体、私の身体はどうなっているんだ?

 なぜ、体重が減らないのだ?

 なぜ、体重がある地点で止まるのだ?

 噂の低燃費ボディーなのか?

 無駄なエネルギーを抑え、少ないエネルギーで生きていけるのか?

 単純に生きるのには優秀な能力なのかもしれないが、自分としてはそんな能力欲しくは無かった……。

 それなら超高燃費ボディーが欲しかった。

 超高燃費ボディーなら、好き放題食べる事が出来るのに……。

 どれほど食べても体内で爆発的に燃焼されて、全て無かったことにしてしまえるのに……。

 そういえば確か、私の周りにもそんな人物がいたような気がする。

 驚くほどよく食べるのに、身体はなぜかほっそりとしている人物。

 記憶の片隅でチラつくその人影はいったい誰だ? ノルマンディー侯爵閣下だったか? それとも、別の誰かとか? 

 分からない。

 分からないが羨ましい。

 純粋にそう思う。

 私にもそんな神秘的な力があれば、

 私は今ごろーー

 
 
 







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