猫の生命火

清水花

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2章 茶々丸の成長と、

柴丸と茶々丸

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 茶々丸を家族に迎えてから1週間が過ぎた。

 茶々丸はさらに毛が生え揃い、ピンク色の肌は全く見えなくなった。

 ふわふわの毛に覆われた今の姿はまさに愛くるしい猫そのものである。

 そして見た目もさることながら行動面の変化も目まぐるしい。

 まだまだ弱々しい足取りではあるものの、表情豊かにとにかくよく走り回るのである。

 走っては転び、走っては転びを繰り返すのだ。

 鳴き声もだんだんと強さを増して来ており、日々の成長ぶりが本当に嬉しいかぎりだ。

 最近は柴丸のいる裏口に遊びに行くことが多く、土日ともなるとほぼ半日を超える時間をそこで過ごす。

 そのため、柴丸との親交もかなり深まり本当の兄妹のように仲良しになった。

 まずは茶々丸が裏口を所狭しと駆け回り、柴丸はいつものクッションに鎮座したままその姿を目線だけで追っている。

 やがて時間が経ち茶々丸が走り疲れたらてくてくと柴丸のもとに歩み寄り、並んで寝そべる休憩が始まる。

 休憩中は基本、柴丸が鼻先で茶々丸を突っつきじゃれ合う。

 茶々丸は仰向けになって四本の足をぶんぶんと振り回してそれに応じる。

 やがて体力を取り戻し同時にテンションが上がってしまった茶々丸は、柴丸の身体によじ登り遊び始める。これが第2ラウンドの始まりである。

 寝そべる柴丸の身体の上を走り回り、耳を噛み、時に連続パンチをお見舞いする。

 柴丸はアクティブな遊びは好まないため基本されるがままである。

 ぼんやりと遠くを見つめている柴丸が何を思っているのかは僕には分からない。

 唸ったりはしていないので怒っている訳ではなさそうだ。

 柴丸を堪能し終えた茶々丸はまた周辺を駆け回り、裏口に置かれた様々な物で遊び出す。

 裏口は柴丸の部屋兼物置きとして使っているので、様々な物が置かれているのだ。

 特に飲料水の入ったダンボール箱は茶々丸のお気に入りで、よじ登ろうとするのだがつるつる滑ってしまい結果その場に倒れ込んでしまう。

 もう少し大きくなって爪が伸びてくれば簡単によじ登れるんだろうけれど、今はまだ無理なようである。

 それでも茶々丸は懸命にトライする。辺りにダンボールを擦る音だけが響き渡る。

 どうしても諦められない何かがあるのだろうか?

 それと、茶々丸が好きな物と言えばそれはやはり猫じゃらしだろう。

 猫としてはやはり、素早く動く何かに反応せざるを得ないらしい。猫じゃらしを振った瞬間のあの反応はまさに獲物を狩るハンターそのものである。

 そんな茶々丸の一面に父さんは深く感心していた。

 年老いた柴丸が見せない俊敏な動きが珍しいのだろう。

 当初心配されていた父さんの猫アレルギーも茶々丸との相性が良いらしく、鼻風邪をひいた程度の軽い鼻水が出るくらいで済んでいる。

 なので父さんは茶々丸と遊ぶ時には一応マスクを着用し、アレルギーに備えているようだ。

 アレルギーが軽い症状で済んで本当に良かったと僕は思う。

 また、茶々丸の好奇心は尽きる事を知らない。何にでも首を突っ込む。

 特に動くものに対しては全力で向かっていく。

 風で揺れるカーテンは特に興味深いようで飛んで跳ねて転がり噛みつきパンチをする。

 しかしその全てがカーテンに対してろくな効果がないと判断するや、いじけた様子でカーテンに背を向けその場を後にする。

 その後は決まって柴丸と遊ぶ事が多いと思う。

 いつものクッションの上で寝そべる柴丸に飛びかかり、普段よりもかなり多めのパンチの雨を浴びせる。

 カーテンの腹いせをしているように見えるのは僕だけかもしれない。

 されるがままの柴丸は遠い目をして外の景色を眺めているので、それについてどう思っているのかは僕には分からない。

 そんな元気いっぱい暴れん坊の茶々丸が大人しくなるのは、やはり寝ている時だろう。

 たくさん遊んで、ミルクを飲んだ後は眠気に襲われる。

 ちょこちょこと柴丸の横に移動すると香箱座りをし、頭を前のめりにクッションに埋めて寝てしまう。

 呼吸できているのか心配になるが、すぐ隣で柴丸が見守っているのでたぶん大丈夫だろう。

 そんな様子を間近で見ている柴丸もしばらく経つと眠気に襲われ寝てしまう。

 二匹並んで寝ている姿はとても和やかで、その様子を見ている僕も眠くなってしまうほどだ。

 そんな穏やかで平和な毎日がいつまでも続けばいいなと僕は思った。
 

 



 
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