猫の生命火

清水花

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2章 茶々丸の成長と、

尻に敷かれている

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 茶々丸が家族になって早くも1年が過ぎた。

 仔猫時代の寝床として使っていた竹籠はもうとっくに卒業し、僕の部屋から裏口へと引っ越した茶々丸はずいぶん前に父さんに買ってもらったケージで今は寝起きをしている。

 昔はその存在さえ知らなかったであろう、3階部分のハンモックも今となっては見事に使いこなしているほどだ。

 それほどに茶々丸は大きく成長した。

 猫の1歳は人間でいうと18歳くらいらしく、ついこの前まで仔猫だったのに、もう僕とほとんど変わらない年齢になった。

 見た目的にはもうほとんど大人と言っても差し支え無く、あの小さく弱々しかった印象はもうどこにも残ってはいない。

 昔はよじ登れなかった飲料水のダンボール箱も、今やジャンプすることなく軽々と上に登っては、その上から柴丸のことをじっと見つめていたりしている。

 それにダンボール箱の上面や側面で爪を研ぐので、ダンボール箱はいつもズタボロの状態である。

 もちろん爪研ぎ用のダンボールも買ってはいるのだが、そちらには目もくれず決まって飲料水の入ったダンボールで爪を研ぐ。

 茶々丸にとっては何かしらの強い拘りがあるのかもしれない。

 昔は歯が立たなかったカーテンも、今や立派な爪を手に入れた茶々丸の相手ではない。

 前足から伸びた爪だけでカーテンにぶら下がるのは何かしらのストレッチなのか、定期的に行っているようである。

 その為、カーテンは大きく引き裂かれてしまっている。

 これは交換したところですぐにまた同じことになるだろうから、あえてそのままにしている。

 あと、茶々丸の内面、性格的な面の成長も目を見張るものがある。

 何と言えば良いのだろうか。性格が、強いのだ。

 どう強いのかと言うと、いつものクッションの上でくつろぐ柴丸の上に覆い被さり、茶々丸はくつろぐのだ。

 昔とは違いそこそこの重量になっている茶々丸なので、その下敷きになっている柴丸は少し息苦しさを感じている様子である。

 その状態ではあまりに柴丸が不憫なので、僕が茶々丸を抱えて柴丸のすぐ横に移動させたとしても、不満そうな顔で僕を見上げまた柴丸の上でくつろごうとする。

 耐えかねた柴丸が少し身体の位置を変えようとすると、強烈な猫パンチを浴びせる始末である。

 茶々丸なりの愛情表現なのかもしれないが、遠い目をした柴丸がその気持ちをどう受け止めているのかは僕には分からない。

 そんな二匹の様子を見ていると兄妹というよりも、妻が夫を尻に敷いた夫婦生活のように見えてしまうのは僕だけだろうか?

 かく言う僕も茶々丸にはさんざん手を焼いている。

 爪と牙を手に入れた茶々丸とただ遊んでいるだけでも相当な危険が伴うのだ。
 
 柴丸の上でくつろぐ茶々丸のお腹をさすってあげると、瞬時に四本の足が僕の腕を襲う。

 完全に出してはいないが足先からわずかに伸びた爪に僕の腕は無惨にも引っ掻かれるのだ。

 もちろん僕の腕は傷だらけだし、たまに出血もする。

 そして、爪と同じくらい危険なのが牙である。

 茶々丸はあくまでも遊んでいるので当然甘噛みなのだが、僕からしたらそんなに甘い話ではない。

 本当に痛いのだ。

 あと、明らかにリラックスして喉をゴロゴロ鳴らしている時、突然思い出したかのように僕の手を噛んでくるのは本当に意味が分からない。

 どんな感情が茶々丸をそうさせるのだろう。

 そう考えるとそれら全てを黙って耐えている柴丸は偉大である。

 すごいぞ、柴丸おじいちゃん!

 そんなふうに茶々丸は自由奔放に、猫らしく、毎日元気に暮らしているのである。



 




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