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ワンステップ
お茶会を終えて
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その後は特に変わった事もなくお茶会は無事に終わりを迎えた。
結局のところガイアン嬢、オルテン嬢、マシュー嬢はずっと不機嫌ではあったけれど、別れ際には三人とも私に手を振ってくれていたし、少しは仲良くなれたんじゃないかと思う。
表情は相変わらず不機嫌そうなままだったけれど。
そうして私はひとり馬車へと乗り込み、自身の邸宅へと帰った。
自室に戻った私は本棚から一冊の本を抜き取り、窓際に置かれた椅子に腰掛けた。
ぼんやりと本の表紙を眺め指先でそっと触れながら読むべきかどうか思考を巡らせた。
窓からふわりと風が舞い込み私の髪を撫でる。
それから私は静かに本をテーブルの上へと置いた。
今は読書ではなく今日の出来事を思い返すことにした。
ふむ。今日という日を一言で表すのなら、謎、という一言に尽きるだろう。
最初から最後まで謎だらけ。本当によく分からないことだらけであった。
いつもとは明らかに様子が違うオリバー。
黒い三令嬢と噂されている? ガイアン嬢、オルテン嬢、マシュー嬢。
そもそもなぜ黒い三令嬢なのだろう? その呼び方だと単純に黒色を好む三人の御令嬢という意味合い聞こえるが、今日の三人はそれぞれ違う色のドレスを身に付けていた。
では、やはり噂の三令嬢とは別人物なのだろうか?
名前は確か一致していると思うのだが、それ自体も実際のところは曖昧なのだ。
確かそんな名前だった、というだけのこと。
それに終始不機嫌だったのも結局は謎のままだ。
分からない。分からない。分からない。
どう考えてみても答えは分からなかった。
私は窓の外の景色を眺めながら考える事を放棄した。
その時、ふと私の意識上にとある考えがよぎった。
違和感、といった方が正確なのかもしれない。
オリバーと御令嬢達はお茶友なのだ。
その事は十分よく理解している。
そしてお茶友という関係性は、一緒にお茶を飲んで楽しいひとときを過ごすものなのだろう。
普通に考えればそういうものの筈だ。
では、オリバーに親しげに接するのはーーーー何というか、お茶友なのだから親しげなのは当たり前なのだろうけれど、何か、あまりにも、その、仲が良くて……違う。仲が良いのは当たり前で、だけど婚約者の私よりも近くにいるというか、私よりも婚約者らしいというか、そんな気がして……ああいうものなのだろうか? お茶友とは。
私はそんな漠然とした違和感のようなものを持て余していた。
さんざん考えた結果、最終的に私もスキンシップをとって御令嬢達と同じくオリバーの近くに行けたのだから良しとすることにした。
何だかもやもやとしたモノが胸のうちにある気がするが、きっと気のせいなのだろう。
当時の私はそんな風に思った。
ふむ。
オリバーの、あの男のことを考えるのは間違いなく業腹なのだけれど、何というか、怒り狂うほどの激情には駆られなかった。
ただオリバーのことを思い返して嫌な気分になった、というだけのこと。
私が抱いた感情とは明らかに別物である。
私をこれほどまでに怒り狂わせた原因とは違うようだ。
申し訳ないがもう少し先の、別の記憶を覗いてみようと思う。
結局のところガイアン嬢、オルテン嬢、マシュー嬢はずっと不機嫌ではあったけれど、別れ際には三人とも私に手を振ってくれていたし、少しは仲良くなれたんじゃないかと思う。
表情は相変わらず不機嫌そうなままだったけれど。
そうして私はひとり馬車へと乗り込み、自身の邸宅へと帰った。
自室に戻った私は本棚から一冊の本を抜き取り、窓際に置かれた椅子に腰掛けた。
ぼんやりと本の表紙を眺め指先でそっと触れながら読むべきかどうか思考を巡らせた。
窓からふわりと風が舞い込み私の髪を撫でる。
それから私は静かに本をテーブルの上へと置いた。
今は読書ではなく今日の出来事を思い返すことにした。
ふむ。今日という日を一言で表すのなら、謎、という一言に尽きるだろう。
最初から最後まで謎だらけ。本当によく分からないことだらけであった。
いつもとは明らかに様子が違うオリバー。
黒い三令嬢と噂されている? ガイアン嬢、オルテン嬢、マシュー嬢。
そもそもなぜ黒い三令嬢なのだろう? その呼び方だと単純に黒色を好む三人の御令嬢という意味合い聞こえるが、今日の三人はそれぞれ違う色のドレスを身に付けていた。
では、やはり噂の三令嬢とは別人物なのだろうか?
名前は確か一致していると思うのだが、それ自体も実際のところは曖昧なのだ。
確かそんな名前だった、というだけのこと。
それに終始不機嫌だったのも結局は謎のままだ。
分からない。分からない。分からない。
どう考えてみても答えは分からなかった。
私は窓の外の景色を眺めながら考える事を放棄した。
その時、ふと私の意識上にとある考えがよぎった。
違和感、といった方が正確なのかもしれない。
オリバーと御令嬢達はお茶友なのだ。
その事は十分よく理解している。
そしてお茶友という関係性は、一緒にお茶を飲んで楽しいひとときを過ごすものなのだろう。
普通に考えればそういうものの筈だ。
では、オリバーに親しげに接するのはーーーー何というか、お茶友なのだから親しげなのは当たり前なのだろうけれど、何か、あまりにも、その、仲が良くて……違う。仲が良いのは当たり前で、だけど婚約者の私よりも近くにいるというか、私よりも婚約者らしいというか、そんな気がして……ああいうものなのだろうか? お茶友とは。
私はそんな漠然とした違和感のようなものを持て余していた。
さんざん考えた結果、最終的に私もスキンシップをとって御令嬢達と同じくオリバーの近くに行けたのだから良しとすることにした。
何だかもやもやとしたモノが胸のうちにある気がするが、きっと気のせいなのだろう。
当時の私はそんな風に思った。
ふむ。
オリバーの、あの男のことを考えるのは間違いなく業腹なのだけれど、何というか、怒り狂うほどの激情には駆られなかった。
ただオリバーのことを思い返して嫌な気分になった、というだけのこと。
私が抱いた感情とは明らかに別物である。
私をこれほどまでに怒り狂わせた原因とは違うようだ。
申し訳ないがもう少し先の、別の記憶を覗いてみようと思う。
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