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2章 城下町を散策
9 サンドイッチ
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俺はさっき初めて出会ったばかりの女の子に手を引かれ、薄暗い路地をぐんぐん進んでいく。
かなりの空腹と疲労感なので足が思うように動かず、何度か足がもつれて転倒しそうになった。
が、腹の虫の怒鳴り声を聞かれて、更には転倒するなどという失態を晒すのは絶対に避けたいところだったので懸命に足を動かし、彼女についていく。
手を引かれそのまま角をいくつか折れた先、そこには二階建てのレンガ造りの建物がいくつも建ち並ぶ中に奇跡的なようにポツンと存在する小さな広場があった。
地面にはちらほらと雑草が生えていて、定期的に誰かが手入れをしているのか荒れた土地のような印象はなく、すっきりとした様子だった。また、広場にはベンチが2つ置いてありいくつかの樹木も植えられていた。建ち並ぶレンガ造りの建物の隙間から差し込む日の光がスポットライトのように広場全体を照らしており、柔らかい空気感に包まれていた。
俺と彼女はさっそく広場の中へと入りベンチに腰掛けた。
「空いててよかった。ここってあんまり人が来ないんだけど、それでもたまに誰かが私みたいにお昼ご飯食べたりしているんですよね」
「へぇ……」
俺はベンチに腰掛けて植えられた木々を眺めながら言う。
「なんか……気持ちのいい場所だね。ここだけ別空間みたい。活気のある町の中にポツンと存在する、なんていうか……パワースポット的な」
俺の感想に満足したのか彼女は得意げに、
「でしょ⁈ 私が見つけた秘密の場所なんですよ。私は仕事の日は毎日ここでお昼ご飯を食べているんです。ここに座って、足元に生えている雑草とか、小鳥とか眺めてまったりしていると癒されるんですよねぇ。仕事の疲れが飛んでっちゃいます!」
この子、俺と同い年ぐらいなのにもう働いてるんだ。立派だな。
「さっ! 食べましょう!」
言って、バスケットの中から三角形のサンドイッチを取り出して手渡してくれた。
「いや……でもこれは君のお昼ご飯でしょう?」
「間違いなくそうですね。でも、実を言うと今朝何を思ったのか作りすぎてしまったのです。それで、どうしようか考えていた所にお腹を減らしたあなたが現れた。奇跡ですね。ふふん」
またも得意げに笑ってみせる。
俺としても彼女の申し出は願っても無い事で、今すぐにでもサンドイッチを口の中に放り込んで腹の虫を黙らせたい限りだったが、やはり初対面でご馳走になるのも厚かましいと思ってしまいつい、
「いただきます……」
断ろうとしたのに、つい本音が出た。
「どうぞどうぞ!」
彼女お手製のサンドイッチを受け取り、彼女に一礼してから一口食べてみた。
俺の前歯がハード系のパンの硬い表面をなんなく貫通し小麦のいい香りが鼻に抜けた、パンに潰されたレタスがパキリと弾けて口内に水滴を飛ばし、濃厚なチーズが口の中でとろけて芳醇な香りが鼻腔をゆっくりと抜けて、しっとりとした肉厚のハムの脂が口いっぱいに流れだして、アクセントのブラックペッパーの香りが鼻腔を香り豊かに包んでそして、ピリリとした辛味が全体の味を絞めた。
夢中で噛んで、夢中で飲み込んだ。
サンドイッチが喉を通ってゆっくりゆっくり胃の中へと落ちていく。
胃に到着したサンドイッチはしっかりとした重量で、身体の中から無事到着の意を伝えている。
気付くと俺は訳も分からず泣いており、彼女はあっけにとられていた。
「お……美味し……くなかった? もしかして。あれ? なんか変な物入れたかなぁ?」
俺はぶんぶんと首を横に振って、ブラックペッパーが残していった刺激的な香りが完全に鼻から抜けてから、
「死ぬほど美味しいです……」
彼女はにこりと微笑んで、
「良かった」
とある、異世界の昼下がりだった。
かなりの空腹と疲労感なので足が思うように動かず、何度か足がもつれて転倒しそうになった。
が、腹の虫の怒鳴り声を聞かれて、更には転倒するなどという失態を晒すのは絶対に避けたいところだったので懸命に足を動かし、彼女についていく。
手を引かれそのまま角をいくつか折れた先、そこには二階建てのレンガ造りの建物がいくつも建ち並ぶ中に奇跡的なようにポツンと存在する小さな広場があった。
地面にはちらほらと雑草が生えていて、定期的に誰かが手入れをしているのか荒れた土地のような印象はなく、すっきりとした様子だった。また、広場にはベンチが2つ置いてありいくつかの樹木も植えられていた。建ち並ぶレンガ造りの建物の隙間から差し込む日の光がスポットライトのように広場全体を照らしており、柔らかい空気感に包まれていた。
俺と彼女はさっそく広場の中へと入りベンチに腰掛けた。
「空いててよかった。ここってあんまり人が来ないんだけど、それでもたまに誰かが私みたいにお昼ご飯食べたりしているんですよね」
「へぇ……」
俺はベンチに腰掛けて植えられた木々を眺めながら言う。
「なんか……気持ちのいい場所だね。ここだけ別空間みたい。活気のある町の中にポツンと存在する、なんていうか……パワースポット的な」
俺の感想に満足したのか彼女は得意げに、
「でしょ⁈ 私が見つけた秘密の場所なんですよ。私は仕事の日は毎日ここでお昼ご飯を食べているんです。ここに座って、足元に生えている雑草とか、小鳥とか眺めてまったりしていると癒されるんですよねぇ。仕事の疲れが飛んでっちゃいます!」
この子、俺と同い年ぐらいなのにもう働いてるんだ。立派だな。
「さっ! 食べましょう!」
言って、バスケットの中から三角形のサンドイッチを取り出して手渡してくれた。
「いや……でもこれは君のお昼ご飯でしょう?」
「間違いなくそうですね。でも、実を言うと今朝何を思ったのか作りすぎてしまったのです。それで、どうしようか考えていた所にお腹を減らしたあなたが現れた。奇跡ですね。ふふん」
またも得意げに笑ってみせる。
俺としても彼女の申し出は願っても無い事で、今すぐにでもサンドイッチを口の中に放り込んで腹の虫を黙らせたい限りだったが、やはり初対面でご馳走になるのも厚かましいと思ってしまいつい、
「いただきます……」
断ろうとしたのに、つい本音が出た。
「どうぞどうぞ!」
彼女お手製のサンドイッチを受け取り、彼女に一礼してから一口食べてみた。
俺の前歯がハード系のパンの硬い表面をなんなく貫通し小麦のいい香りが鼻に抜けた、パンに潰されたレタスがパキリと弾けて口内に水滴を飛ばし、濃厚なチーズが口の中でとろけて芳醇な香りが鼻腔をゆっくりと抜けて、しっとりとした肉厚のハムの脂が口いっぱいに流れだして、アクセントのブラックペッパーの香りが鼻腔を香り豊かに包んでそして、ピリリとした辛味が全体の味を絞めた。
夢中で噛んで、夢中で飲み込んだ。
サンドイッチが喉を通ってゆっくりゆっくり胃の中へと落ちていく。
胃に到着したサンドイッチはしっかりとした重量で、身体の中から無事到着の意を伝えている。
気付くと俺は訳も分からず泣いており、彼女はあっけにとられていた。
「お……美味し……くなかった? もしかして。あれ? なんか変な物入れたかなぁ?」
俺はぶんぶんと首を横に振って、ブラックペッパーが残していった刺激的な香りが完全に鼻から抜けてから、
「死ぬほど美味しいです……」
彼女はにこりと微笑んで、
「良かった」
とある、異世界の昼下がりだった。
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