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2章 城下町を散策
15 戦闘スタイル
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「何をお探しだい? あんちゃん」
小さなヒゲのおじさんはガラスケースに肘をついて俺に問いかける。
「あ……えっと。装備一式を揃えたくて……でも、何を選んだら良いのか分からなくて。予算もそんなに多くはなくて……えっと、その……」
装備屋のおじさんは俺の様子を見て、はいはい分かった分かったといった感じで右手をヒラヒラさせる。
そして、ガラスケースの奥から出て来て俺の横をすっと通り過ぎてから手招きする。
おじさんに手招きされた先には俺の身長よりも大きな大剣が置いてあって、おじさんはその大剣のグリップ部分を右手でパシパシと叩いて『持って見ろ』と言う。
いや~……無理だろう。
そりゃあ【力】の値を調整すれば簡単に持ち上がるんだろうけれどな。
今は確か50くらいだったからたぶん無理だ。
でも一応チャレンジしてみる。
「ーーーーふんっ!」
だが、予想通り剣を持ち上げる事は出来なかった。
「だっははは! まあ、あんちゃんじゃ無理だわなぁ! レベルの高い強者にでもなりゃ片手で振り回す事も簡単なんだがなぁ……」
言って、おじさんは大剣を片手で軽々と持ち上げ空中でピタリと止めてみせた。
「うぉっ……すげえ」
「まあ、ドワーフ族の俺っちからしたら、こんくらいのサイズはどうってこたぁねえさ。だっははははは!」
ぬっ? ドワーフ族?
「おじさん……ドワーフ族なんですか?」
「あん? どっからどう見ても俺っちはドワーフ族のそれだろう? それとも、あんちゃんみたいなヒューマン族に見えるかい? だとしたら今すぐに病院に行った方がいいなぁ! だっはははははは!」
おじさんは豪快に笑う。
「ははははーーーー。と、大剣は冗談だよ。あんちゃんはまだ冒険初心者ってところだろう? 見りゃ分かるさ。さっきはからかってすまんすまん、最近客がめっきり来ないから嬉しくてつい、な」
いきなり客をからかうとは何というおじさんだ。
「あぁっと。で、あんちゃんどんな装備がいいんだい?」
「あ、えっと。さっきも言ったんですが予算はあまり無くて、なるべく格好良い物を……」
「ふぅむ。あんちゃん剣の心得は?」
「全くありません」
きっぱりと言う。
「だっははははははははははははは! そんなんでよくウチに買い物に来てくれたな! ありがたい、ありがたい! だっはははははははははははははは!」
くそう。なんだか笑われっぱなしだ。
「で、あんちゃん。武器を買っていったいどうするっての? 心得もないあんちゃんが不慣れなものを振り回して何するっての?」
「えっと……あの、魔王を……やっつけよう……かなって……」
「だっはははははははははははははははははははははははははははははは! その心意気は立派だが、命は大切にしないとなぁ。あんちゃん!」
「…………」
返す言葉が見つからない……。
「だがまあ、せっかくウチの店に買いに来てくれたんだ! 俺っちが見立ててやるから安心しな! だっははははは!」
そう言ってくれたおじさんの言葉には正直、不安しか感じなかった。
おじさんは俺の肩、腕、腰の辺りをポンポンと恐らく軽く叩きながら何やら確認していく。
恐らく、というのは状況から察するに軽く叩いて検証しているんだろうなって事が分かるからで、実際はものすごく痛い。だってあのバカでかい大剣を軽々と持ち上げるドワーフ族のあの腕力だ、俺の細い身体では耐えられないくらいの衝撃だ。
そんな俺の苦しみなど気にもとめずにおじさんは説明を続ける。
「まず第一に。あんちゃんはまだ身体が出来てねぇ。だから剣を振ろうにも身体が持ってかれちまって、まともに振れやしねぇ。戦いどころじゃねえわな。そうなると自然とあんちゃんが装備すべき物は見えてくる」
おじさんは山形の棚の端まで歩いて俺に手招きする。
「ほれっ! こいつなんかいいだろう。一般的なダガーだな」
俺は小走りでおじさんの元へと駆けつけ、おじさんが手渡してきた武器を慎重に手に取る。
「ダガー……」
高級品ではない、どちらかと言うとリーズナブルなお値段のダガーなのだけど湾曲した刀身と、刀身を染める青色、それにグリップ部分の金色の装飾がとてつもなくカッコイイ。
ピカピカ光っている訳ではなく、淡く鈍く光っていて、アンティーク風な雰囲気を全体に纏っていて、これを家の玄関先などに置いておけば立派なオーナメントとなるだろう。
「まあ、デカめのナイフと思ってくれりゃいいわな。片手で順手、逆手と好きなように持って使う。戦闘時は当然、近距離戦になるが武器が軽い分スピードを生かした撹乱戦法などのスピーディーな戦い方が主になるだろうな」
「ふむふむ……」
おじさんに言われた戦闘スタイルを頭の中でイメージする。
片手、もしくは両手にダガーを持って戦場を駆け回り、気付かれる前に敵を仕留める。
暗殺者とか、盗賊のイメージが強いなぁ。
頭の中ではそれこそ日本で言うところの忍者のように神出鬼没、電光石火で敵に死んだ事すら気付かせない、神速の格好良いキャラクター像が順調に出来上がりつつあるが、実際は戦場を駆け回って攻撃を加える前に、息がきれてしまい横腹を抑えながらうずくまってしまうんだろうけれど。
……だめだめじゃん。
「どうだ、気に入ったか? あんちゃん?」
おじさんは両手を腰に当てて、どうだ俺の扱う商品は! と、いった感じで俺を見る。
小さなヒゲのおじさんはガラスケースに肘をついて俺に問いかける。
「あ……えっと。装備一式を揃えたくて……でも、何を選んだら良いのか分からなくて。予算もそんなに多くはなくて……えっと、その……」
装備屋のおじさんは俺の様子を見て、はいはい分かった分かったといった感じで右手をヒラヒラさせる。
そして、ガラスケースの奥から出て来て俺の横をすっと通り過ぎてから手招きする。
おじさんに手招きされた先には俺の身長よりも大きな大剣が置いてあって、おじさんはその大剣のグリップ部分を右手でパシパシと叩いて『持って見ろ』と言う。
いや~……無理だろう。
そりゃあ【力】の値を調整すれば簡単に持ち上がるんだろうけれどな。
今は確か50くらいだったからたぶん無理だ。
でも一応チャレンジしてみる。
「ーーーーふんっ!」
だが、予想通り剣を持ち上げる事は出来なかった。
「だっははは! まあ、あんちゃんじゃ無理だわなぁ! レベルの高い強者にでもなりゃ片手で振り回す事も簡単なんだがなぁ……」
言って、おじさんは大剣を片手で軽々と持ち上げ空中でピタリと止めてみせた。
「うぉっ……すげえ」
「まあ、ドワーフ族の俺っちからしたら、こんくらいのサイズはどうってこたぁねえさ。だっははははは!」
ぬっ? ドワーフ族?
「おじさん……ドワーフ族なんですか?」
「あん? どっからどう見ても俺っちはドワーフ族のそれだろう? それとも、あんちゃんみたいなヒューマン族に見えるかい? だとしたら今すぐに病院に行った方がいいなぁ! だっはははははは!」
おじさんは豪快に笑う。
「ははははーーーー。と、大剣は冗談だよ。あんちゃんはまだ冒険初心者ってところだろう? 見りゃ分かるさ。さっきはからかってすまんすまん、最近客がめっきり来ないから嬉しくてつい、な」
いきなり客をからかうとは何というおじさんだ。
「あぁっと。で、あんちゃんどんな装備がいいんだい?」
「あ、えっと。さっきも言ったんですが予算はあまり無くて、なるべく格好良い物を……」
「ふぅむ。あんちゃん剣の心得は?」
「全くありません」
きっぱりと言う。
「だっははははははははははははは! そんなんでよくウチに買い物に来てくれたな! ありがたい、ありがたい! だっはははははははははははははは!」
くそう。なんだか笑われっぱなしだ。
「で、あんちゃん。武器を買っていったいどうするっての? 心得もないあんちゃんが不慣れなものを振り回して何するっての?」
「えっと……あの、魔王を……やっつけよう……かなって……」
「だっはははははははははははははははははははははははははははははは! その心意気は立派だが、命は大切にしないとなぁ。あんちゃん!」
「…………」
返す言葉が見つからない……。
「だがまあ、せっかくウチの店に買いに来てくれたんだ! 俺っちが見立ててやるから安心しな! だっははははは!」
そう言ってくれたおじさんの言葉には正直、不安しか感じなかった。
おじさんは俺の肩、腕、腰の辺りをポンポンと恐らく軽く叩きながら何やら確認していく。
恐らく、というのは状況から察するに軽く叩いて検証しているんだろうなって事が分かるからで、実際はものすごく痛い。だってあのバカでかい大剣を軽々と持ち上げるドワーフ族のあの腕力だ、俺の細い身体では耐えられないくらいの衝撃だ。
そんな俺の苦しみなど気にもとめずにおじさんは説明を続ける。
「まず第一に。あんちゃんはまだ身体が出来てねぇ。だから剣を振ろうにも身体が持ってかれちまって、まともに振れやしねぇ。戦いどころじゃねえわな。そうなると自然とあんちゃんが装備すべき物は見えてくる」
おじさんは山形の棚の端まで歩いて俺に手招きする。
「ほれっ! こいつなんかいいだろう。一般的なダガーだな」
俺は小走りでおじさんの元へと駆けつけ、おじさんが手渡してきた武器を慎重に手に取る。
「ダガー……」
高級品ではない、どちらかと言うとリーズナブルなお値段のダガーなのだけど湾曲した刀身と、刀身を染める青色、それにグリップ部分の金色の装飾がとてつもなくカッコイイ。
ピカピカ光っている訳ではなく、淡く鈍く光っていて、アンティーク風な雰囲気を全体に纏っていて、これを家の玄関先などに置いておけば立派なオーナメントとなるだろう。
「まあ、デカめのナイフと思ってくれりゃいいわな。片手で順手、逆手と好きなように持って使う。戦闘時は当然、近距離戦になるが武器が軽い分スピードを生かした撹乱戦法などのスピーディーな戦い方が主になるだろうな」
「ふむふむ……」
おじさんに言われた戦闘スタイルを頭の中でイメージする。
片手、もしくは両手にダガーを持って戦場を駆け回り、気付かれる前に敵を仕留める。
暗殺者とか、盗賊のイメージが強いなぁ。
頭の中ではそれこそ日本で言うところの忍者のように神出鬼没、電光石火で敵に死んだ事すら気付かせない、神速の格好良いキャラクター像が順調に出来上がりつつあるが、実際は戦場を駆け回って攻撃を加える前に、息がきれてしまい横腹を抑えながらうずくまってしまうんだろうけれど。
……だめだめじゃん。
「どうだ、気に入ったか? あんちゃん?」
おじさんは両手を腰に当てて、どうだ俺の扱う商品は! と、いった感じで俺を見る。
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