6 / 18
縛
縛話 4
しおりを挟む
海多遊園地は公園から徒歩で二十分ほどの距離にある。
海が見えるその遊園地は、あくまで小さな子供向けに作られたもので、日曜日ともなると地元の小さな子供達でごった返す。
アトラクションにも、小さな噴水広場にも、傍らの植え込みにいたるまで抜かりなく子供達が配置され、思い思いの遊びに夢中になっている。
それら子供達のたくましい姿を一通り眺めてカナは唖然としていた。
普段自分を取り囲むのは恐い顔をした大人達ばかりだが、ここはどうだ。小さな子供達ばかりで、みんな笑顔である。
全てが逆で、全てが新鮮だ。
ーーーー本当に夢の世界に来たんだ。
とうの昔に忘れていた、なんだかムズムズする感覚が心の奥底でぼんやりとした形を形成し始めていることに、カナは少しだけ戸惑っていた。
「さあ! まずはこれに乗ろう!」
ナオが指差した方向をカナは素早く確認した。その先にあったのは、とてつもなく巨大なカップだった。
カナは思う。こんな巨大なカップ誰が使うんだろう、とても大きな人しか使えないと思うけど……。
カナが不思議に思っていると少し前にいたナオに手招きされて、慌てて巨大なカップへと歩みよった。
ナオに促されるまま、カップの中に座り辺りを見渡した。
「はじまるよ!」
ナオの声と同時にブザー音が鳴り響きーーーー世界が回った。
ナオが大声で笑い、景色が流れ、子供達が流れ、時間が流れた。
楽しかった。
回転するのは普段から慣れていたが、いつもの回転とは違いカップのこれは楽しい回転だった。
楽しい回転に夢中になっていると、あっと言う間に回転は止まり子供達も景色もいつものそれに戻った。
もう終わりかと、少しがっかりした様子のカナとは対照的にナオは『次、次!』と大はしゃぎである。
「これこれ! 早く早く!」
「…………」
辺りを駆け回る小さな子供達と同様にナオは大興奮で次のアトラクションへ向けて小走りし、カナもそれに続いた。
その時、珍しくカナの感情が表に出ようとしたが、表情筋がその想いに上手く応える事は出来なかった。
笑顔というより、引きつった苦笑いになっていたかもしれない。
そんな顔を他人に見られないように、カナは俯いたままナオの後を追う。
海が見えるその遊園地は、あくまで小さな子供向けに作られたもので、日曜日ともなると地元の小さな子供達でごった返す。
アトラクションにも、小さな噴水広場にも、傍らの植え込みにいたるまで抜かりなく子供達が配置され、思い思いの遊びに夢中になっている。
それら子供達のたくましい姿を一通り眺めてカナは唖然としていた。
普段自分を取り囲むのは恐い顔をした大人達ばかりだが、ここはどうだ。小さな子供達ばかりで、みんな笑顔である。
全てが逆で、全てが新鮮だ。
ーーーー本当に夢の世界に来たんだ。
とうの昔に忘れていた、なんだかムズムズする感覚が心の奥底でぼんやりとした形を形成し始めていることに、カナは少しだけ戸惑っていた。
「さあ! まずはこれに乗ろう!」
ナオが指差した方向をカナは素早く確認した。その先にあったのは、とてつもなく巨大なカップだった。
カナは思う。こんな巨大なカップ誰が使うんだろう、とても大きな人しか使えないと思うけど……。
カナが不思議に思っていると少し前にいたナオに手招きされて、慌てて巨大なカップへと歩みよった。
ナオに促されるまま、カップの中に座り辺りを見渡した。
「はじまるよ!」
ナオの声と同時にブザー音が鳴り響きーーーー世界が回った。
ナオが大声で笑い、景色が流れ、子供達が流れ、時間が流れた。
楽しかった。
回転するのは普段から慣れていたが、いつもの回転とは違いカップのこれは楽しい回転だった。
楽しい回転に夢中になっていると、あっと言う間に回転は止まり子供達も景色もいつものそれに戻った。
もう終わりかと、少しがっかりした様子のカナとは対照的にナオは『次、次!』と大はしゃぎである。
「これこれ! 早く早く!」
「…………」
辺りを駆け回る小さな子供達と同様にナオは大興奮で次のアトラクションへ向けて小走りし、カナもそれに続いた。
その時、珍しくカナの感情が表に出ようとしたが、表情筋がその想いに上手く応える事は出来なかった。
笑顔というより、引きつった苦笑いになっていたかもしれない。
そんな顔を他人に見られないように、カナは俯いたままナオの後を追う。
0
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
幼馴染の許嫁は、男勝りな彼女にご執心らしい
和泉鷹央
恋愛
王国でも指折りの名家の跡取り息子にして、高名な剣士がコンスタンスの幼馴染であり許嫁。
そんな彼は数代前に没落した実家にはなかなか戻らず、地元では遊び人として名高くてコンスタンスを困らせていた。
「クレイ様はまたお戻りにならないのですか……」
「ごめんなさいね、コンスタンス。クレイが結婚の時期を遅くさせてしまって」
「いいえおば様。でも、クレイ様……他に好きな方がおられるようですが?」
「えっ……!?」
「どうやら、色町で有名な踊り子と恋をしているようなんです」
しかし、彼はそんな噂はあり得ないと叫び、相手の男勝りな踊り子も否定する。
でも、コンスタンスは見てしまった。
朝方、二人が仲睦まじくホテルから出てくる姿を……
他の投稿サイトにも掲載しています。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる