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3章 同性愛と崩壊する心
26 美人さん
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私の事を心配してくださるお優しいジェシカ様の言葉に私はあの日あった事を全部お話しようかとも思ったのですが、事実が異なるためすんでの所で思いとどまりました。
そうーー。ベアトリック様によってすでに事実は作り変えられているんです。
ルークレツィア様とアレンビー様が仲違いを始め、私がそこに仲裁に入った結果、お母様のドレスがボロボロになってしまった。
私の記憶の中に色濃く残った恐怖の映像は、誰も知らないただの偽りの真実でしかないんです。
ですから、
「いえ……御三方の迫力にすっかり気圧されてしまいましたが、特にこれといったいじわるをされたという事は……」
「本当? 良かったー! お父様の急な呼び出しで帰ったんだけど内容自体は全然、大した事なくってやきもきしていたの。お父様のお客様なのに私は隣に座らされて延々と一時間くらいくだらない話聞かされて、まいっちゃった。でも、何ともなくて本当に良かった友達が辛い目に遭ってるのって自分の事以上に辛いものね」
言って、ジェシカ様は愛らしく可憐に笑います。
そんな元気いっぱいに笑うジェシカ様を見ていると、こちらまでつられて笑顔になってしまいます。
「ーーふふふっ」
「ほぇ? どうしたの? ローレライ。何が可笑しいの?」
急に笑い出した私を見てジェシカ様は愛らしく小首を傾げます。
「ごめんなさい。今日は珍しくたくさんのお客様がお見えになってびっくりしていて、心配してくれるジェシカ様のお気持ちがとっても嬉しくて、それに元気に笑うジェシカ様を見ていたら私も元気になった気がして、そしたら何だか急に可笑しくなってしまってーーふふふっ」
「もうっ、何それー! 本気で心配してたのにー!」
両手を腰に当ててジェシカ様は頬を膨らませます。
「ごめんなさい、ごめんなさい。ーーあ、それとジェシカ様とベオウルフ様は親しい間柄なのですか? 十年前とか何とかおっしゃっていましたが……」
「あ、うん。幼馴染なの。親同士が仲良しで、それでね」
「もしかして、ベオウルフ様はジェシカ様の事が好きなんじゃないのですか?」
「まさか! あ、でもそうね。幼い頃に好きだって言われた事はあるわ」
「やっぱり!」
「でもそれは五、六歳の頃の事よ? それにあれは……ベオウルフが苛められてた時に私が苛めっ子達を追い払ったの。そしたら、ベオウルフが私の手を握って好きだって言ってきただけだから……だからお礼みたいなものよね」
「そんな事があったんですね。少し以外です」
「もともと気が小さくって、周りを気にしてはビクビクしてるようなタイプだからね。それが今や、王国一の美男子だなんだと持て囃されて調子に乗ってるのよ」
「…………」
「ローレライも気をつけないとダメだよ? 確かにベオウルフは綺麗な顔立ちをしているけれど、顔が良いからって良い男だとは限らないんだから。それに顔立ちで言うならローレライの方が断然綺麗だし!」
「ーーーーふぇっ⁉︎」
「なっ⁉︎ 急になんて声を出すのよ、びっくりした」
「ごめんなさい、つい……。じゃなくて、綺麗だなんてそんな冗談言ってからかわないで下さい」
「ほぇ? 冗談じゃないよ?」
「え……」
「ローレライは美人さんだよ? 女の私から見ても、とても綺麗な造形美だと思う。それに、ローレライは綺麗だって言ってる人、男女問わず結構いっぱいいるよ? 言われない? 綺麗だって」
「ーーーーそんなっ! 私なん……か……全然……」
そう口にしながら、私の脳裏にはアレク様とベオウルフ様のお顔が浮かびます。
お二人に掛けて頂いた言葉が何度も何度も心の中で繰り返され、ジェシカ様の言葉が冗談や嘘といったものではない事を証明しているようです。
「…………」
とても、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。
そうーー。ベアトリック様によってすでに事実は作り変えられているんです。
ルークレツィア様とアレンビー様が仲違いを始め、私がそこに仲裁に入った結果、お母様のドレスがボロボロになってしまった。
私の記憶の中に色濃く残った恐怖の映像は、誰も知らないただの偽りの真実でしかないんです。
ですから、
「いえ……御三方の迫力にすっかり気圧されてしまいましたが、特にこれといったいじわるをされたという事は……」
「本当? 良かったー! お父様の急な呼び出しで帰ったんだけど内容自体は全然、大した事なくってやきもきしていたの。お父様のお客様なのに私は隣に座らされて延々と一時間くらいくだらない話聞かされて、まいっちゃった。でも、何ともなくて本当に良かった友達が辛い目に遭ってるのって自分の事以上に辛いものね」
言って、ジェシカ様は愛らしく可憐に笑います。
そんな元気いっぱいに笑うジェシカ様を見ていると、こちらまでつられて笑顔になってしまいます。
「ーーふふふっ」
「ほぇ? どうしたの? ローレライ。何が可笑しいの?」
急に笑い出した私を見てジェシカ様は愛らしく小首を傾げます。
「ごめんなさい。今日は珍しくたくさんのお客様がお見えになってびっくりしていて、心配してくれるジェシカ様のお気持ちがとっても嬉しくて、それに元気に笑うジェシカ様を見ていたら私も元気になった気がして、そしたら何だか急に可笑しくなってしまってーーふふふっ」
「もうっ、何それー! 本気で心配してたのにー!」
両手を腰に当ててジェシカ様は頬を膨らませます。
「ごめんなさい、ごめんなさい。ーーあ、それとジェシカ様とベオウルフ様は親しい間柄なのですか? 十年前とか何とかおっしゃっていましたが……」
「あ、うん。幼馴染なの。親同士が仲良しで、それでね」
「もしかして、ベオウルフ様はジェシカ様の事が好きなんじゃないのですか?」
「まさか! あ、でもそうね。幼い頃に好きだって言われた事はあるわ」
「やっぱり!」
「でもそれは五、六歳の頃の事よ? それにあれは……ベオウルフが苛められてた時に私が苛めっ子達を追い払ったの。そしたら、ベオウルフが私の手を握って好きだって言ってきただけだから……だからお礼みたいなものよね」
「そんな事があったんですね。少し以外です」
「もともと気が小さくって、周りを気にしてはビクビクしてるようなタイプだからね。それが今や、王国一の美男子だなんだと持て囃されて調子に乗ってるのよ」
「…………」
「ローレライも気をつけないとダメだよ? 確かにベオウルフは綺麗な顔立ちをしているけれど、顔が良いからって良い男だとは限らないんだから。それに顔立ちで言うならローレライの方が断然綺麗だし!」
「ーーーーふぇっ⁉︎」
「なっ⁉︎ 急になんて声を出すのよ、びっくりした」
「ごめんなさい、つい……。じゃなくて、綺麗だなんてそんな冗談言ってからかわないで下さい」
「ほぇ? 冗談じゃないよ?」
「え……」
「ローレライは美人さんだよ? 女の私から見ても、とても綺麗な造形美だと思う。それに、ローレライは綺麗だって言ってる人、男女問わず結構いっぱいいるよ? 言われない? 綺麗だって」
「ーーーーそんなっ! 私なん……か……全然……」
そう口にしながら、私の脳裏にはアレク様とベオウルフ様のお顔が浮かびます。
お二人に掛けて頂いた言葉が何度も何度も心の中で繰り返され、ジェシカ様の言葉が冗談や嘘といったものではない事を証明しているようです。
「…………」
とても、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。
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