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第3話 街
「ふんふんふ~ん」
青空の下、見知らぬ土地で、見知らぬ年下男子と、手を繋いで散歩。
こうしていると何だか念願の恋人が出来たみたいで心が躍るようだ。
「ーーーーねえ、ガウ? あなたの事、教えてよ」
隣を歩くガウに視線を送り、私は言う。
「…………」
「あなた、本当に喋れないの?」
隣を歩くガウは私の言っている事が本当に分からないらしく、子供のようなあどけない表情で少しの間私を見つめると、やがて大空へと視線を移した。
ふむ……。
やっぱり言葉は分からないみたいね。
手を繋ぐ事は出来るし、二足歩行も出来る。身長は私より高いし、見た目も日焼けした今風な若者に見える。
「う~ん……」
どこからどう見たって普通の若い男性に見えるんだけど……なぜだか言葉が喋れないときた。
あ……あと例の垂れ耳と尻尾か。あれが一番の謎だわね。
私は色々と知りたい事があるのだが、頼みのガウがこの調子なのでもはやお手上げ状態である。
「がう」
たまにそうポツリと呟くガウである。
この『がう』という言葉がいったい何を意味しているのかは残念ながら私には分からない。
もしかするとガウはきちんと会話をしようとしているのだが、私の方がそれを理解できていないとか……?
ようはフランス語が喋れない私がフランスの地に降り立ち、勝手に困り果てているような状況。
ふむ。その線も十分に考えられるわね。
それから、私でも知っている簡単な英語やフランス語でガウに話かけてみたのだが、私の声に反応してわずかに小首を傾げる仕草はするものの会話が成立することはなかった。
ガウは上空高く飛ぶ鳥の群れに熱い視線を送る。
結局何も分からないまま歩き続け、私達は街へと辿り着いた。
私達が出会った場所から二○分ほど歩いたところにあったのは、多くの露店が立ち並び多くの人々が行き交う、どこかの市場の光景を思い出させるようなそんな活気ある街だった。
「うわぁ……」
初めて見る街並みに胸が高鳴る。まるで幼い頃に戻ったような感覚だ。
「ーーねぇ、ガウ! 行ってみよう!」
街並みを眺めながらクンクンと匂いを嗅いでいたガウの手を引いて私は歩き出す。
辺りに漂う甘い香りを辿って視線を向けると、そこにはいくつものフルーツのようなものが高く積み上げられたお店があった。店先に立つ耳の尖った若い女性が店主らしき人物と笑顔で会話している。
甘い香りに誘われ店先まで近づくと、店主のおじさんが小さくカットしたフルーツを手渡してくれた。
私達はそれを受け取りそれぞれ口に運ぶ。
「ーー美味っ!」
口に入れた途端に溶けてしまった。甘く濃厚な果汁だけを残して。
まるで熟しきったなめらかなマンゴーと爽やかで濃密な桃を掛け合わせたようなそんな味わいだ。
「美味しいね! ガウ!」
視線の先のガウは店主のおじさんをまんまるな瞳で見つめ小さく震えている。宙で踊っていた尻尾も今は伸びきっていて、その様子から察するにどうやらガウは驚いているようだ。
何という美味しいものをくれるおじさんなのだろう、とでも思っているのだろうか?
なんとも可愛らしいリアクションのガウに私の心はどんどん惹かれていく。
それから私達は色んなお店を覗いては驚かされる事の連続だった。お守りらしき物を売っているお店では、売れ残りのお揃いのネックレスを貰ったりもした。
全てが新鮮で、全てが一緒だった。
すっかり陽が落ち始めた道を歩いて、これからガウと私の思い出をどんどん増やして行こうって思った。
ガウと一緒なら、ここがどこだろうと全然構わないって思った。
ずっと一緒だって、そう思い込んでいた。
でも、
「ーーーーあ、やっと見つけた!」
「まったく……帰るよ、テリー!」
現実はそう甘くはなかった。
青空の下、見知らぬ土地で、見知らぬ年下男子と、手を繋いで散歩。
こうしていると何だか念願の恋人が出来たみたいで心が躍るようだ。
「ーーーーねえ、ガウ? あなたの事、教えてよ」
隣を歩くガウに視線を送り、私は言う。
「…………」
「あなた、本当に喋れないの?」
隣を歩くガウは私の言っている事が本当に分からないらしく、子供のようなあどけない表情で少しの間私を見つめると、やがて大空へと視線を移した。
ふむ……。
やっぱり言葉は分からないみたいね。
手を繋ぐ事は出来るし、二足歩行も出来る。身長は私より高いし、見た目も日焼けした今風な若者に見える。
「う~ん……」
どこからどう見たって普通の若い男性に見えるんだけど……なぜだか言葉が喋れないときた。
あ……あと例の垂れ耳と尻尾か。あれが一番の謎だわね。
私は色々と知りたい事があるのだが、頼みのガウがこの調子なのでもはやお手上げ状態である。
「がう」
たまにそうポツリと呟くガウである。
この『がう』という言葉がいったい何を意味しているのかは残念ながら私には分からない。
もしかするとガウはきちんと会話をしようとしているのだが、私の方がそれを理解できていないとか……?
ようはフランス語が喋れない私がフランスの地に降り立ち、勝手に困り果てているような状況。
ふむ。その線も十分に考えられるわね。
それから、私でも知っている簡単な英語やフランス語でガウに話かけてみたのだが、私の声に反応してわずかに小首を傾げる仕草はするものの会話が成立することはなかった。
ガウは上空高く飛ぶ鳥の群れに熱い視線を送る。
結局何も分からないまま歩き続け、私達は街へと辿り着いた。
私達が出会った場所から二○分ほど歩いたところにあったのは、多くの露店が立ち並び多くの人々が行き交う、どこかの市場の光景を思い出させるようなそんな活気ある街だった。
「うわぁ……」
初めて見る街並みに胸が高鳴る。まるで幼い頃に戻ったような感覚だ。
「ーーねぇ、ガウ! 行ってみよう!」
街並みを眺めながらクンクンと匂いを嗅いでいたガウの手を引いて私は歩き出す。
辺りに漂う甘い香りを辿って視線を向けると、そこにはいくつものフルーツのようなものが高く積み上げられたお店があった。店先に立つ耳の尖った若い女性が店主らしき人物と笑顔で会話している。
甘い香りに誘われ店先まで近づくと、店主のおじさんが小さくカットしたフルーツを手渡してくれた。
私達はそれを受け取りそれぞれ口に運ぶ。
「ーー美味っ!」
口に入れた途端に溶けてしまった。甘く濃厚な果汁だけを残して。
まるで熟しきったなめらかなマンゴーと爽やかで濃密な桃を掛け合わせたようなそんな味わいだ。
「美味しいね! ガウ!」
視線の先のガウは店主のおじさんをまんまるな瞳で見つめ小さく震えている。宙で踊っていた尻尾も今は伸びきっていて、その様子から察するにどうやらガウは驚いているようだ。
何という美味しいものをくれるおじさんなのだろう、とでも思っているのだろうか?
なんとも可愛らしいリアクションのガウに私の心はどんどん惹かれていく。
それから私達は色んなお店を覗いては驚かされる事の連続だった。お守りらしき物を売っているお店では、売れ残りのお揃いのネックレスを貰ったりもした。
全てが新鮮で、全てが一緒だった。
すっかり陽が落ち始めた道を歩いて、これからガウと私の思い出をどんどん増やして行こうって思った。
ガウと一緒なら、ここがどこだろうと全然構わないって思った。
ずっと一緒だって、そう思い込んでいた。
でも、
「ーーーーあ、やっと見つけた!」
「まったく……帰るよ、テリー!」
現実はそう甘くはなかった。
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