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第4話 テリー
「帰るよ、テリー!」
突然、背後からそう声を掛けられ何かが崩れていくような、そんな嫌な気がした。
戸惑いながらちらり視線を送ると、ガウは垂れ耳をピンっと立たせて背後を見つめている。
ガウの手が私の手から離れていく。
「ーーだめっ、行っちゃだめ、ガウ!」
私は離れようとするガウの手を必死に両手で掴む。今離せば、もう二度と手を繋げなくなるような、そんな気がしたから。
ガウが驚いたような表情で私を見つめる。
やめてよ。
そんな目で見ないでよ。
私と離れたくないって、そう言ってよ。
私の手を離さないで。
ずっと、
ずっとそばにいてよ……。
ガウ……。
「ーーん? あんたは?」
気が付けば、声を掛けてきた人物はすぐ側までやって来ていて、ガウの頭を撫でながら私を見つめていた。
その女性は暗い灰色の髪からふさふさの垂れ耳が覗いている。若干鋭い目元、スッと伸びた鼻すじ、鮮やかな赤で民族的に飾りつけられた目元と頬。ガウにそっくりな非常に端正な顔立ち。
誰がどう見たって分かる。この女性は、ガウの母親だ。
「私は……その……」
ガウは母親に頭を撫でられ、気持ちよさそうに目を閉じている。
「あんた……人間かい?」
「は……はい……」
「人間が何でこんなところにいる? 何をしに来た?」
「それは……」
それは私が聞きたいくらいである。気が付けばいつの間にか見知らぬ土地にいて、今に至るのだから。
「答えられないのかい?」
「…………」
「まあ、言いたくなきゃ言わなくても別に構わないんだけど……」
「…………」
「母さん、テリーも見つかったんだし早く帰ろうよ。私、お腹すいちゃったよ……」
更に後方から別の声が聞こえる。夕日を背にしているので、すらりとしたシルエットしか確認できないがどうやら若い女性のようだ。
私の目の前の女性を『母さん』と呼んだので、恐らくガウのお姉さんなのだろう。
「ーーああ、そうだね。行くよ、テリー」
「がう」
そう言って、ガウは私の手から離れていく。さっきまで、あんなにしっかりと握ってくれていたのに。
「何の用だか知らないが、あんたも早く家に帰りなよ。じゃあね」
ガウとお母さんは私に背をむけ歩いていく。
燃えるような夕日に向かって二人の輪郭が霞んでいく。
そうだ。ガウは家に帰るんだ。家族が待っている家に。
私とは違う。帰りを待ってくれている家族がガウにはいるのだから。
ガウと私は、違うんだから。
ガウのお母さんと接してみて、私がどれほど自分に都合の良い勘違いをしていたのか実感してしまった。
自分を守るために勝手にそう思い込んでいたと言った方が正しいだろうか。
けれど、おかげで目が覚めた。
良かったね、ガウ。お母さんが迎えに来てくれて。
ありがとう、ガウ。ほんの少しの間だったけど、楽しかったよ。
「ばいばい……」
私はガウとお揃いのお守りを握りしめ、二人の背中に小さく手を振った。
突然、背後からそう声を掛けられ何かが崩れていくような、そんな嫌な気がした。
戸惑いながらちらり視線を送ると、ガウは垂れ耳をピンっと立たせて背後を見つめている。
ガウの手が私の手から離れていく。
「ーーだめっ、行っちゃだめ、ガウ!」
私は離れようとするガウの手を必死に両手で掴む。今離せば、もう二度と手を繋げなくなるような、そんな気がしたから。
ガウが驚いたような表情で私を見つめる。
やめてよ。
そんな目で見ないでよ。
私と離れたくないって、そう言ってよ。
私の手を離さないで。
ずっと、
ずっとそばにいてよ……。
ガウ……。
「ーーん? あんたは?」
気が付けば、声を掛けてきた人物はすぐ側までやって来ていて、ガウの頭を撫でながら私を見つめていた。
その女性は暗い灰色の髪からふさふさの垂れ耳が覗いている。若干鋭い目元、スッと伸びた鼻すじ、鮮やかな赤で民族的に飾りつけられた目元と頬。ガウにそっくりな非常に端正な顔立ち。
誰がどう見たって分かる。この女性は、ガウの母親だ。
「私は……その……」
ガウは母親に頭を撫でられ、気持ちよさそうに目を閉じている。
「あんた……人間かい?」
「は……はい……」
「人間が何でこんなところにいる? 何をしに来た?」
「それは……」
それは私が聞きたいくらいである。気が付けばいつの間にか見知らぬ土地にいて、今に至るのだから。
「答えられないのかい?」
「…………」
「まあ、言いたくなきゃ言わなくても別に構わないんだけど……」
「…………」
「母さん、テリーも見つかったんだし早く帰ろうよ。私、お腹すいちゃったよ……」
更に後方から別の声が聞こえる。夕日を背にしているので、すらりとしたシルエットしか確認できないがどうやら若い女性のようだ。
私の目の前の女性を『母さん』と呼んだので、恐らくガウのお姉さんなのだろう。
「ーーああ、そうだね。行くよ、テリー」
「がう」
そう言って、ガウは私の手から離れていく。さっきまで、あんなにしっかりと握ってくれていたのに。
「何の用だか知らないが、あんたも早く家に帰りなよ。じゃあね」
ガウとお母さんは私に背をむけ歩いていく。
燃えるような夕日に向かって二人の輪郭が霞んでいく。
そうだ。ガウは家に帰るんだ。家族が待っている家に。
私とは違う。帰りを待ってくれている家族がガウにはいるのだから。
ガウと私は、違うんだから。
ガウのお母さんと接してみて、私がどれほど自分に都合の良い勘違いをしていたのか実感してしまった。
自分を守るために勝手にそう思い込んでいたと言った方が正しいだろうか。
けれど、おかげで目が覚めた。
良かったね、ガウ。お母さんが迎えに来てくれて。
ありがとう、ガウ。ほんの少しの間だったけど、楽しかったよ。
「ばいばい……」
私はガウとお揃いのお守りを握りしめ、二人の背中に小さく手を振った。
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