繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・少年

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 気が付くと見慣れた天井があった。

 雨漏れで出来たのか何なのか、天井にはどデカイ、シミが出来ている。あのシミがあるという事は、ここはあそこだ。

 あのシミはここで目を覚ました者にここがどこであるかを教えるためについているのだと思う。

 さしずめ、天井に取り付けられた表札のようなもの。

 くらくらする頭に手の甲をあてて考える。

「…………」

 ここに来るのは確か今回で96回目である。

 ベッドから起き上がり両手を広げて身体の隅々まで見てみる。

 全身がホコリや砂で汚れていて、肌が露出している腕や手のひらには小さな擦り傷が無数にあった。血も若干滲んでいる。

「ああ、気が付ついたね。気分はどうだい? まだ寝てていいんだよ」

 ここの責任者である女性が言う。

「あ……いえ。平気です。僕、どうなってました?」

 女性はやれやれといった具合で肩をすくめて、

「まあ、一般的な形だね。うつ伏せで地面に削られながら、流れから蹴り出されたってところだろうね」

「そうですか……」

 うっすらと残る記憶をどうにか辿る。

 一撃目、二撃目までは流れの中でよくある事なのだが三撃目のビンタと4撃目? と言えるのかかなり微妙なところだけど背中にチクチクする何かを入れられた事に関してはもはや、ただの嫌がらせとしか思えない。

 歩く、という行為に全く関係ないからね。

 ただの強い悪意とか、悪ふざけとしか思えないのだが……。

 今まではあんな事は無かったんだが、やはり今回の転生では何かが少しずつ変化している?

 小さな事柄がどんどん変化していって、連鎖が連鎖を呼んで、やがて大きな変化に繋がっていく的な奴なのだろうか。

 このまま行くと俺、死んじゃったりして……。

 俺はぶんぶんと頭を振って嫌な記憶を消し飛ばし、辺りを見渡す。

 部屋一面には相変わらず白いベッドがずらりと並べられている。

 その一角にまるで白いベッドに対抗するかのように真っ黒な存在を見つけた。

 目を閉じて純白のベッドに横たわる黒髪の青年。

「ーーーーデューク⁉︎」

 更に辺りをよく見渡すとデュークの眠るベッドの隣にはちゃんとシドの奴もいやがった。

 トレードマークのウィザードハットは胸の上に置かれていて、なんだか小型のテントを身体の上に設営されているように見えて少し愉快だった。

「……ん?」

 気付く。

 デューク達がここにいると言う事はーーーーつまり。

 デューク達も流れに乗れずに、流れに揉まれ、飲み込まれたという事ではないか?

 シドはともかく、いつもクールで高貴な雰囲気が漂うほどに澄ました表情でいるデュークが流れに飲み込まれて誰かから叩かれ蹴られ踏み付けられているところを想像するとかなり面白いと思う反面、なんだかとても切なくなるような複雑な心境になった。

 デュークのイメージにそぐわないからな……。

 逆に俺の場合は普通に爆笑されてしまうんだろうけど。

 眠るデュークの顔を見ながらそんな事を考えていると、デュークが寝返りをうって俺の方を向く形となった。

 そして、

「…………タケルか…………仲間にしてやろうか?」

 ーーーーっ⁉︎

 デュークはそう呟くと口をむにゅむにゅして、また寝息をたて始めた。

「……寝言?」

 夢の中でまで仲間に誘って貰えるのは正直嬉しいかぎりだった。

 しかし、そんなに熱心に求められる魅力があるのかどうかは自分では分からないのだが……。

 デュークによる熱心なヘッドハンティングに心を和ませていると、いつの間にかデュークは目を覚ましていて俺と見つめ合う形となった。



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