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エピソード・オブ・少年
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俺には一つどうしても気掛かりな事があったが、それについてはどうにも時間がかかりそうだったので武器を作って貰っている間に、先に村長の装備品を買いに行こうと決めた。
だがここまでの道のり、路地を何度も右に左に曲がったので来た道が分からなくなってしまい、大通りさえ見つけられずにいた。
何度来てみても道を覚えられない。意外と俺は方向音痴な一面があったりする。
「あっれ~……」
路地を適当にいくつか折れていい感じに迷子になり、すっかり涙目になった所で少し開けた場所に行き当たる。そこは居住区域の小さな公園のようで、広場の真ん中には陽の光を独占するように小振りの木が一本立っていて隅の方に小さなベンチが置かれているだけの簡素な広場だった。
そこに少年が一人、佇んでいた。
年齢は10代前半くらいで、綺麗に切り揃えられた黒髪で、未だ成長過程の幼さ溢れる小さな痩躯で、活発的な印象と悲壮感が相まっていて、不思議な雰囲気を持つ少年だった。
おそらくここら辺に住む子供なのだろうが、一人で何をしているのだろう?
とりあえず、近付いて話しかけてみる。
「あの……君……?」
「……遅いよ」
「ーーーーえっ⁉︎」
「来るの……遅いよ。もう9話目だよ、遅すぎだよ」
「……あぁ。そういう事……ごめん。でも一応、俺達……初対面って設定なんだから……さ?」
「設定とか知らないよ! いつからここに立ってると思ってるの⁉︎」
少年はかなりご立腹のご様子である。
「いや……本当ごめんなさい。章のところに《エピソード・オブ・少年》って書いてあるからどの少年なのかなってずっと気にして周りを見てたんだけど、見つからないからもしかして見逃しちゃったのかなって内心気が気じゃなかったんだ。で、まさかあの流れの中に少年がいるんなら三番街、二番街、一番街のどの流れだ⁉︎ って思って、そう考えると最終的にはタイクーン場内まで探さなくちゃダメなのか⁉︎ って思って、だから発見には最低でも一週間は掛かるだろうなって覚悟をしてたところだよ」
「ふぅん……」
少年は恨めしそうに横目でじろりと俺を睨む。
「あの、あれ。闇の宿屋! あそこに運び込まれて余計に時間かかっちゃって……それに部屋にいた目つきが悪くて、頭がちょっと可哀想な人達のせいでまた余計に時間がかかっちゃって……だからごめん!」
「……分かったよ、もういいよ」
言って、少年は尖った口のまま俺に背を見せて、
「ほらっ、テイク2行くよ!」
テ、テイク2とは……?
「何? また待たせる気?」
「あ……いや……あははは。じゃあ、行きましょうか? その……テイク2とやらに」
「…………」
どうやらテイク2が始まるらしかった。
だがここまでの道のり、路地を何度も右に左に曲がったので来た道が分からなくなってしまい、大通りさえ見つけられずにいた。
何度来てみても道を覚えられない。意外と俺は方向音痴な一面があったりする。
「あっれ~……」
路地を適当にいくつか折れていい感じに迷子になり、すっかり涙目になった所で少し開けた場所に行き当たる。そこは居住区域の小さな公園のようで、広場の真ん中には陽の光を独占するように小振りの木が一本立っていて隅の方に小さなベンチが置かれているだけの簡素な広場だった。
そこに少年が一人、佇んでいた。
年齢は10代前半くらいで、綺麗に切り揃えられた黒髪で、未だ成長過程の幼さ溢れる小さな痩躯で、活発的な印象と悲壮感が相まっていて、不思議な雰囲気を持つ少年だった。
おそらくここら辺に住む子供なのだろうが、一人で何をしているのだろう?
とりあえず、近付いて話しかけてみる。
「あの……君……?」
「……遅いよ」
「ーーーーえっ⁉︎」
「来るの……遅いよ。もう9話目だよ、遅すぎだよ」
「……あぁ。そういう事……ごめん。でも一応、俺達……初対面って設定なんだから……さ?」
「設定とか知らないよ! いつからここに立ってると思ってるの⁉︎」
少年はかなりご立腹のご様子である。
「いや……本当ごめんなさい。章のところに《エピソード・オブ・少年》って書いてあるからどの少年なのかなってずっと気にして周りを見てたんだけど、見つからないからもしかして見逃しちゃったのかなって内心気が気じゃなかったんだ。で、まさかあの流れの中に少年がいるんなら三番街、二番街、一番街のどの流れだ⁉︎ って思って、そう考えると最終的にはタイクーン場内まで探さなくちゃダメなのか⁉︎ って思って、だから発見には最低でも一週間は掛かるだろうなって覚悟をしてたところだよ」
「ふぅん……」
少年は恨めしそうに横目でじろりと俺を睨む。
「あの、あれ。闇の宿屋! あそこに運び込まれて余計に時間かかっちゃって……それに部屋にいた目つきが悪くて、頭がちょっと可哀想な人達のせいでまた余計に時間がかかっちゃって……だからごめん!」
「……分かったよ、もういいよ」
言って、少年は尖った口のまま俺に背を見せて、
「ほらっ、テイク2行くよ!」
テ、テイク2とは……?
「何? また待たせる気?」
「あ……いや……あははは。じゃあ、行きましょうか? その……テイク2とやらに」
「…………」
どうやらテイク2が始まるらしかった。
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