45 / 135
エピソード・オブ・少年
20
しおりを挟む
俺の言葉に対し二人は驚きの表情を浮かべると思ったのだがそんな予想は見事に外れたようで、何をバカな事を言っているのだと言わんばかりに呆れた表情でいた。
さすがだぜこの二人。自分達の事を信じてやまない。
「しかし、タケルよ。私は確かに『仲間にどうですか』と、売り込まれたのだぞ? シドもそれを聞いているはずだ」
「ええ、確かに。私も聞きました」
「うん。それ……俺も言われた。それってつまりはさ、元気そうな君達二人じゃなくって別行動している、はたまた今後仲間になる人達への備えにどうですかって意味だと思うんだよね」
私を仲間にどうですか? ではなく。
薬草をお仲間の為にどうですか? なのだ。
そんなの当たり前だ。
「じゃあ、無くなった私達の財布についてはどう説明をするつもりなのじゃ?」
「普通に考えて、流れの中で落としたんじゃないの?」
「そっ……そんな! そんなバカな事がっ! 確かに私は財布の管理を任されてはいるが、大の大人である私が財布を落としてしまうなどあり得るものかっ! デューク様! 騙されてはなりませぬぞ! 財布を落としたのは紛れもなくこやつ、タケルに違いありませんっ!」
あ……こいつが財布落としたんだな。
しかもそれを俺のせいにするだなんて、さすがにそれは無理があるんじゃなかろうか?
お前達の財布を俺が落とすっていったいどんな状況なんだよ。
取り乱し騒ぎ立てるシドにデュークは、
「落ち着けシド! 見苦しいぞ!」
「デュ……申し訳ありません」
「タケルにも何か事情があったに違いない。訳も聞かずにそう責め立てるな。タケルが可哀想だ」
あれー。何で俺が犯人みたいな感じになってるのかなー。話しを理解できないのかなーこの二人は。あれなのかなー、この二人ってやっぱりあれなのかなー。もうご飯おごるのやめようかなー。この二人ここに置いていっちゃおうかなー。
シドは胸に手を当てて、文字通りホッと胸を撫で下ろしている。
はぁ……この二人は仕方ないのか。前回の転生の時でいうところのサージとパージのドタバタコンビと同じ枠に入る二人なのだろう。
定期的に現れて時にイラつかせ、時に笑わせてくれるユニークキャラ。今回はこの二人がそんなコミックリリーフを担当してくれるようだ。
と、すると長い付き合いになるのか。最終的にはエンディングにまで現れて場を盛り上げてくれるのだ。勝手に犯人にするなっ! と、今すぐ怒鳴り散らしたい限りではあるけれど、ここはグッと我慢してまだまだずっと先のエンディングを最高に盛り上げてもらえるように今のうちから恩を売っておいて損はあるまい。
「何で俺が君達の財布を落とすんだよー! このこのぉ!」
「…………」
「…………」
本当に俺が犯人みたいな雰囲気じゃねえか。
なぜか状況的にやや不利になって来たところで、運良く料理が運ばれて来て二人の意識が料理へと向いた。
「「「頂きます」」」
三人で手を合わせ、香りと湯気が立ち上る料理を食す。
調理場から時折、聞こえていた不安を煽る言葉達がかなり心配だったがテーブルへと運ばれてきた料理を見る限り心配は無用だったようだ。
しっかりと美味しそうなお肉が乗った焼肉丼に、名前が判らないお魚の煮付けに、透明度の高いスープに白く細い麺が浸っている。
デュークとシドは無言で料理を食べ進め、俺も無言でそれに続いた。
俺とデュークはほぼ同じタイミングで食べ終え、少し遅れて器を持ち上げたシドがスープの最後の一滴を飲み終えた。
「「「ご馳走さまでした」」」
俺達は各々の料理を食べ終え、まったりと過ごす。
「あのさ……デューク?」
「どうしたタケル? 仲間ーーーー」
「にはならないから大丈夫。あのさ、知り合いの事なんだけどさ……昔、とっても辛い事があってそれがトラウマになっちゃって、今も自信を取り戻せないでいる人がいるんだけど……どうしたらいいと思う?」
俺はダメ元でパティの事を相談してみる。
「どうした急に? 何かあったのか?」
「うん……。ちょっとね。どうにか助けになれないかなって、思ってさ……」
「ふむ……」
デュークは腕組みして俺の問いに対する答えを考える。やがて、
「それは何もできないな」
「え……」
「というよりも、正確には何もするべきではない」
デュークは目を閉じて自分の発言を何度も確かめるようにして語る。
「何らかの問題があって辛い過去が出来てしまった。今はそれに怯えて生きている。しかし、たとえタケル。お前がその問題を解決してやったとしても次なる問題が目の前に現れた時、問題を抱える者はまた立ち止まり歩く事を止める。その度にお前が解決してやっても、いくらでも問題は次、また次とその者の前に無情にも立ちはだかる。問題を抱える本人が、その者が必死に立ち向かい壁を乗り越えねば何の意味もない」
と、いつになく真剣な表情でデュークは語る。
「それでもどうしてもと言うのならば……まあ、背中のひと押しくらいならば出来るんじゃないのか? 戦いの場へ送り出すくらいの事ならな」
「背中のひと押し……」
そうだ。これはパティの抱える問題なのだからパティ自身が解決しなくてはダメなのだ。
図々しく、他人がしゃしゃり出る場面ではない。
それでは何の問題の解決にはなり得ない。
俺がパティのために出来る事があるとするならば、パティの事を信じて精一杯背中を押してやる事くらいか。
デュークは真剣な表情のまま小首を傾げて、
「どうだ? 答えになっていたか?」
「ああ! 充分だよ。ありがとうデューク!」
「そうか」
かなり失礼な話ではあるが、まさかデュークから真面目な解答を貰えるとは夢にも思っていなかったので、この結果自体は僥倖といえた。
デュークの事を少しだけ見直した俺であった。
さすがだぜこの二人。自分達の事を信じてやまない。
「しかし、タケルよ。私は確かに『仲間にどうですか』と、売り込まれたのだぞ? シドもそれを聞いているはずだ」
「ええ、確かに。私も聞きました」
「うん。それ……俺も言われた。それってつまりはさ、元気そうな君達二人じゃなくって別行動している、はたまた今後仲間になる人達への備えにどうですかって意味だと思うんだよね」
私を仲間にどうですか? ではなく。
薬草をお仲間の為にどうですか? なのだ。
そんなの当たり前だ。
「じゃあ、無くなった私達の財布についてはどう説明をするつもりなのじゃ?」
「普通に考えて、流れの中で落としたんじゃないの?」
「そっ……そんな! そんなバカな事がっ! 確かに私は財布の管理を任されてはいるが、大の大人である私が財布を落としてしまうなどあり得るものかっ! デューク様! 騙されてはなりませぬぞ! 財布を落としたのは紛れもなくこやつ、タケルに違いありませんっ!」
あ……こいつが財布落としたんだな。
しかもそれを俺のせいにするだなんて、さすがにそれは無理があるんじゃなかろうか?
お前達の財布を俺が落とすっていったいどんな状況なんだよ。
取り乱し騒ぎ立てるシドにデュークは、
「落ち着けシド! 見苦しいぞ!」
「デュ……申し訳ありません」
「タケルにも何か事情があったに違いない。訳も聞かずにそう責め立てるな。タケルが可哀想だ」
あれー。何で俺が犯人みたいな感じになってるのかなー。話しを理解できないのかなーこの二人は。あれなのかなー、この二人ってやっぱりあれなのかなー。もうご飯おごるのやめようかなー。この二人ここに置いていっちゃおうかなー。
シドは胸に手を当てて、文字通りホッと胸を撫で下ろしている。
はぁ……この二人は仕方ないのか。前回の転生の時でいうところのサージとパージのドタバタコンビと同じ枠に入る二人なのだろう。
定期的に現れて時にイラつかせ、時に笑わせてくれるユニークキャラ。今回はこの二人がそんなコミックリリーフを担当してくれるようだ。
と、すると長い付き合いになるのか。最終的にはエンディングにまで現れて場を盛り上げてくれるのだ。勝手に犯人にするなっ! と、今すぐ怒鳴り散らしたい限りではあるけれど、ここはグッと我慢してまだまだずっと先のエンディングを最高に盛り上げてもらえるように今のうちから恩を売っておいて損はあるまい。
「何で俺が君達の財布を落とすんだよー! このこのぉ!」
「…………」
「…………」
本当に俺が犯人みたいな雰囲気じゃねえか。
なぜか状況的にやや不利になって来たところで、運良く料理が運ばれて来て二人の意識が料理へと向いた。
「「「頂きます」」」
三人で手を合わせ、香りと湯気が立ち上る料理を食す。
調理場から時折、聞こえていた不安を煽る言葉達がかなり心配だったがテーブルへと運ばれてきた料理を見る限り心配は無用だったようだ。
しっかりと美味しそうなお肉が乗った焼肉丼に、名前が判らないお魚の煮付けに、透明度の高いスープに白く細い麺が浸っている。
デュークとシドは無言で料理を食べ進め、俺も無言でそれに続いた。
俺とデュークはほぼ同じタイミングで食べ終え、少し遅れて器を持ち上げたシドがスープの最後の一滴を飲み終えた。
「「「ご馳走さまでした」」」
俺達は各々の料理を食べ終え、まったりと過ごす。
「あのさ……デューク?」
「どうしたタケル? 仲間ーーーー」
「にはならないから大丈夫。あのさ、知り合いの事なんだけどさ……昔、とっても辛い事があってそれがトラウマになっちゃって、今も自信を取り戻せないでいる人がいるんだけど……どうしたらいいと思う?」
俺はダメ元でパティの事を相談してみる。
「どうした急に? 何かあったのか?」
「うん……。ちょっとね。どうにか助けになれないかなって、思ってさ……」
「ふむ……」
デュークは腕組みして俺の問いに対する答えを考える。やがて、
「それは何もできないな」
「え……」
「というよりも、正確には何もするべきではない」
デュークは目を閉じて自分の発言を何度も確かめるようにして語る。
「何らかの問題があって辛い過去が出来てしまった。今はそれに怯えて生きている。しかし、たとえタケル。お前がその問題を解決してやったとしても次なる問題が目の前に現れた時、問題を抱える者はまた立ち止まり歩く事を止める。その度にお前が解決してやっても、いくらでも問題は次、また次とその者の前に無情にも立ちはだかる。問題を抱える本人が、その者が必死に立ち向かい壁を乗り越えねば何の意味もない」
と、いつになく真剣な表情でデュークは語る。
「それでもどうしてもと言うのならば……まあ、背中のひと押しくらいならば出来るんじゃないのか? 戦いの場へ送り出すくらいの事ならな」
「背中のひと押し……」
そうだ。これはパティの抱える問題なのだからパティ自身が解決しなくてはダメなのだ。
図々しく、他人がしゃしゃり出る場面ではない。
それでは何の問題の解決にはなり得ない。
俺がパティのために出来る事があるとするならば、パティの事を信じて精一杯背中を押してやる事くらいか。
デュークは真剣な表情のまま小首を傾げて、
「どうだ? 答えになっていたか?」
「ああ! 充分だよ。ありがとうデューク!」
「そうか」
かなり失礼な話ではあるが、まさかデュークから真面目な解答を貰えるとは夢にも思っていなかったので、この結果自体は僥倖といえた。
デュークの事を少しだけ見直した俺であった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる