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エピソード・オブ・少年
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修行は順調に進んでいた。
しかし、修行と言ってもやる内容は以前のものと特に変わらず実践を想定したただの打ち合いだ。
単に俺が稽古という言葉の響きよりも、修行という言葉の方が好きだというだけである。
少年パティの繰り出す剣筋をひたすらに叩き、躱し、いなしていく。
途中、暇になったらこちらからも手を出してみる。が、どうにも上手く避けられるので、次第にムキになってきてパティではまだ避けられないような攻撃を繰り出してはパティを半泣き状態にしてしまっていた。
「ーーーー痛っ! ちょっと今、本気出したでしょ⁉︎」
「本気じゃねえ。三割くらいだ」
「痛いの嫌いなんだってば!」
「だったらきちんと避けなさい」
「避けてるじゃん! 必死に避けてたらアニキがちょいちょい本気出してくるんじゃん!」
「君が避けるからだ!」
「避けるからだ! って、避けて、本気出されて、それでも避けて、本気出されて、ちゃんと避けろって、避けて、避け避け避け避け……もう訳わかんないよっ!」
「避けられて、避けられて、ムキになって、それでもまた避けられたら誰だって更にムキになるだろう? 当てられたくなかったら、俺よりムキになって避ければいい。そしたら俺はまたーーーー」
「結局、最終的に当てられるんじゃん!」
この会話はもう何度目だろう。何回やっても気持ちがいい。
ともあれベネツィ武道大会は明日、開催される。
パティの方も過酷な修行を終え最終調整段階である。
「あ……そうだ。パティ君、ステータスを確認してみようか?」
「すてーたすって何?」
「ステータスとは自身の能力の事だよ。君の強さみたいな事だね」
「僕の強さ……」
「試しにステータス! って言ってみて」
「試しにステータス!」
「あっ……違……」
またやってしまった。言い回しが難しい。
村長元気でやってるかなぁ……。
パティの目の前にステータス画面が表示される。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
パティ
Lv 8
HP 60/60
MP 3/3
力 15
守り 9
早さ 136
魔力 1
職業 街の少年
装備 朽ちた枝
旅人の服
旅人の靴
お金 0G
状態 厨二病
召喚獣 じろう
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うわぁ……何これ……」
ややリアクションに困ったようにパティが言う。
「それが君の強さを数値化したものだね。ふむふむ。やはり武道を歩むものだけって、子供にしては能力値が高いね」
「そうなの⁉︎ 僕って凄いの⁉︎」
「特に早さが異常に高い。すばしっこいからねぇ……君は。あのすばしっこさを思うとその能力値は納得できる」
「ふぅん。ん? この……状態のところの厨二病って何? 僕まさか病気なのっ⁉︎」
「ああ……いや、それはアレだね。君が元気で正しく成長してるって事だね」
「そうなの? 良かった」
パティは安堵の表情を浮かべる。
「じゃあ、この召喚獣って?」
「そっ……それは……何だろうね。俺も初めて見たからよく分かんない」
どういう事なのだろう……少年パティは召喚士なのだろうか? しかし、職業は街の少年となっているし。じゃあ将来は騎士ではなく、召喚士に? あるいは召喚騎士とか? やべぇじゃん。勇者よりよっぽど格好いいよ。普通に羨ましいよ。
「ふぅん。このステータス画面ってみんな出るものなの? お母さんも出るの?」
「うーん。気が向いたら出るんじゃない? きっと。俺もよく分かんないよ」
それに、そこは曖昧にしておこうよ。
そんな楽しい時間はあっという間に経つもので、
「パティ。そろそろじゃないか? 道場」
「あっ! そうだね。じゃあ行って来ます!」
走り、広場を後にするパティの背中を見送って俺は思う。
パティはもう大丈夫だ。もう一人でやっていける。明日の大会も絶対に優勝できる。
俺の役目は終わったのだ。
太陽はいつのまにか姿を隠し、雨の匂いが漂いだした。
しかし、修行と言ってもやる内容は以前のものと特に変わらず実践を想定したただの打ち合いだ。
単に俺が稽古という言葉の響きよりも、修行という言葉の方が好きだというだけである。
少年パティの繰り出す剣筋をひたすらに叩き、躱し、いなしていく。
途中、暇になったらこちらからも手を出してみる。が、どうにも上手く避けられるので、次第にムキになってきてパティではまだ避けられないような攻撃を繰り出してはパティを半泣き状態にしてしまっていた。
「ーーーー痛っ! ちょっと今、本気出したでしょ⁉︎」
「本気じゃねえ。三割くらいだ」
「痛いの嫌いなんだってば!」
「だったらきちんと避けなさい」
「避けてるじゃん! 必死に避けてたらアニキがちょいちょい本気出してくるんじゃん!」
「君が避けるからだ!」
「避けるからだ! って、避けて、本気出されて、それでも避けて、本気出されて、ちゃんと避けろって、避けて、避け避け避け避け……もう訳わかんないよっ!」
「避けられて、避けられて、ムキになって、それでもまた避けられたら誰だって更にムキになるだろう? 当てられたくなかったら、俺よりムキになって避ければいい。そしたら俺はまたーーーー」
「結局、最終的に当てられるんじゃん!」
この会話はもう何度目だろう。何回やっても気持ちがいい。
ともあれベネツィ武道大会は明日、開催される。
パティの方も過酷な修行を終え最終調整段階である。
「あ……そうだ。パティ君、ステータスを確認してみようか?」
「すてーたすって何?」
「ステータスとは自身の能力の事だよ。君の強さみたいな事だね」
「僕の強さ……」
「試しにステータス! って言ってみて」
「試しにステータス!」
「あっ……違……」
またやってしまった。言い回しが難しい。
村長元気でやってるかなぁ……。
パティの目の前にステータス画面が表示される。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
パティ
Lv 8
HP 60/60
MP 3/3
力 15
守り 9
早さ 136
魔力 1
職業 街の少年
装備 朽ちた枝
旅人の服
旅人の靴
お金 0G
状態 厨二病
召喚獣 じろう
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うわぁ……何これ……」
ややリアクションに困ったようにパティが言う。
「それが君の強さを数値化したものだね。ふむふむ。やはり武道を歩むものだけって、子供にしては能力値が高いね」
「そうなの⁉︎ 僕って凄いの⁉︎」
「特に早さが異常に高い。すばしっこいからねぇ……君は。あのすばしっこさを思うとその能力値は納得できる」
「ふぅん。ん? この……状態のところの厨二病って何? 僕まさか病気なのっ⁉︎」
「ああ……いや、それはアレだね。君が元気で正しく成長してるって事だね」
「そうなの? 良かった」
パティは安堵の表情を浮かべる。
「じゃあ、この召喚獣って?」
「そっ……それは……何だろうね。俺も初めて見たからよく分かんない」
どういう事なのだろう……少年パティは召喚士なのだろうか? しかし、職業は街の少年となっているし。じゃあ将来は騎士ではなく、召喚士に? あるいは召喚騎士とか? やべぇじゃん。勇者よりよっぽど格好いいよ。普通に羨ましいよ。
「ふぅん。このステータス画面ってみんな出るものなの? お母さんも出るの?」
「うーん。気が向いたら出るんじゃない? きっと。俺もよく分かんないよ」
それに、そこは曖昧にしておこうよ。
そんな楽しい時間はあっという間に経つもので、
「パティ。そろそろじゃないか? 道場」
「あっ! そうだね。じゃあ行って来ます!」
走り、広場を後にするパティの背中を見送って俺は思う。
パティはもう大丈夫だ。もう一人でやっていける。明日の大会も絶対に優勝できる。
俺の役目は終わったのだ。
太陽はいつのまにか姿を隠し、雨の匂いが漂いだした。
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