繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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エピソード・オブ・お嬢ちゃん

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「アプローチを……逆に……?」

「ああ。当たり前の事だが、今までは森の中で迷わねぇように朝と昼の時間帯をメインに探してたからな、あと目印もな。だからそれを逆にした。森で迷った俺を助けて、道案内してくれたのならまた同じ状況になれば逢えるんじゃねぇかと思ったのさ」

「と、言うことは……夜の森で、再び迷った?」

「だな。そういう答えに行き着き、俺は昼前には捜索を切り上げて夜の捜索に備えて家に帰って仮眠をとった。両親の目を盗んで外に出ると空にはでっかい満月が浮かんでてな、まさにあの日の夜をまるまる再現したみたいでありゃあ僥倖ぎょうこうだった。そして、俺は胸に確信を抱いてあの日のように月明かりに妖しく照らされるこの森の中へ一人で入っていったんだ」

「そしてその日、遂にお母さんと再会したわけね?」

「おいおい、話を勝手に進めるんじゃねぇよ。落ち着きのねぇガキだな。話にゃ順序ってもんがあんだからよ、母ちゃんの出番はもう少し後だ」

「まだ引っ張るの? もうお父さんの出番はいいよ。それよりもお母さん。早くお母さんと出会うのところの話しを聞かせてよ」

「だからちょい待てっての! いきなり二人が出会ってちゃあ話が繋がらねぇ部分ができちまうだろ? 木こりの仕事も物語も手ぇ抜いちゃダメなんだよ。それとも、そんな中途半端な話で良けりゃ俺は一向に構いやしねぇが。どうする? 話すっ飛ばして出会ったところから話してやろうか?」

「うむぅ……。もうっ! 続けて!」

「なっははは! 何でそこで怒るんだよワイルドだな、おい」

「お父さん、娘に……というか女の子にワイルドって、お父さんが思っている以上に結構失礼だからね?」

「なっははは! そうかよ。あーっと……。どこまで話したっけな?」

「満月の夜に森の中へと入るところ」

「あーそうだそうだ。あの日みたいに森は満月の月明かりで青白く幻想的に光っててな、森の入り口に立ってるだけで何だかゾクゾクして鳥肌が立っちまってよ。何だかこのまま森に入っちまえば、もう二度と戻ってこられないような気がした。この世からあの世へと行っちまうような、そんな不思議な感覚にとらわれた。今日こそ逢えるって確信と、今日こそ入っちゃダメだって確信がぶつかり合ってたな。正直今すぐ逃げ出したい気持ちの方がデカかった。でも、そこは町中のガキや大人達からも一目置かれる俺様よ、自分の両頬にビンタ何発も入れて恐怖を叩き潰した。自分自身を鼓舞して、いざ森の中へと入っていったんだ」

「お父さん、怖い時って大体自分の顔にビンタするよね。この前も家にゴキブリが出た時『っしゃー! っしゃー!』って、言いながらやってた」

「ありゃ、お前……普通のゴキブリのサイズじゃ無かったからよぉ」

「確かにデカかったけど、普通より少し大きめって感じだったよ?」

「バッカお前。そりゃお前が窓の外から見てたからだ、間近で見てみろよ。子犬くらいの大きさはあったぜ⁉︎ マジで。俺も一瞬喰われるかと思ったくらいだ、全くゴキブリのくせにワイルドな奴だぜ。俺の読みが正しけりゃ、ありゃ……たぶんゴキブリ界のラスボスだったな」

「はいはい。続き続き。森に入ったらどうなったの? お母さんはすぐに見つかったの?」

「次、ゴキブリが出たらお前が退治する番だからな? あーっと。そう。森の中に入ってすぐに視界は奪われた。ずっと上の方は月明かりで枝葉が見えてるが、足元の方はほぼほぼ真っ暗でな。見えててもスポットライトみたいに点々としていて夜道を歩くにゃ正直あまり役にはたたねぇな。だから何で家からランプ持って来んの忘れたんだ! って頭抱えてその場に座り込んでよ、自分の馬鹿さ加減を痛感した。今から家に取りに帰って両親に見つかりでもして家に閉じ込めれちゃあ元も子もない。どうしたもんかって悩んでたら、ふと気付いたんだ」

「ーーーー木こりなんだから、月明かりを遮る邪魔な木々を全部切り倒す?」

「ここぞとばかりに何、訳の分かんねぇ事言ってんだ。当時の俺はまだ子供なんだよ! 木こりでもねぇ! ったく……。あれだあれ。最初、この森に来た時、あんなにも薄暗い森の中を何で俺は帰り道が分からなくなるほど森の奥に行けたのか?」

「ああ……確かに。あの時は……そう、光! 虫かモンスターか正体が分からない謎の光を夢中で追っていったから!」

「だな。だから今回もその謎の光を探したのさ、何度も何度もその場をぐるぐる回ってな。そしたら現れたんだよ、本当に。あの時の、あの謎の光が。ゆっくりと点滅しながら宙をフラフラと飛んでやがった。俺は見つけた途端に考えるでもなく走り出してた。光っては消え、また光っては消えるそれを追って俺は夢中になってどんどん森の奥に進んでいったのさ。その時は帰れるかどうかは全く考えてなかったな、この光の先にあの子がいる。やっとあの時のお礼が言えるって事だけを考えて息をきらして走ってた。そして、光を追って数分走ったところでーーーー」

「ーーーー遂にお母さんが⁉︎」

「ああ。あ、いや。もうちっとだな。フラフラ飛んでた謎の光が突然ついっと脇道に逸れてな、見失わねぇように草むらを掻き分けて突き進んでよ、しばらく進むと開けた場所に出たんだ。そこにはいったい何があったと思う?」

「な……何よ……。まさか、オバケとか……」

「ーーーー次回をお楽しみに」

「「「えぇー⁉︎」」」

「なっはははははは!」




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