繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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ベネツィ大食い列伝

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 大会のエントリーを済ませた俺達は本番に備えて準備体操をしている。しかし、ただの準備体操ではない。お腹をなるべく減らすため普段より大きく激しく動くダイナミック準備体操を入念に行っているのであった。

 準備体操が進むにつれ会場には更に多くの人々が集まってきており、その人数はざっと見ただけで千人はゆうに超えている気がする。

 それは数日前に行われたベネツィ武道大会よりも遥かに多い人数が集まっており、それは記念すべき第一回目の大会だからなのか、はたまた豪華すぎる優勝商品が目当てなのかは定かではないが、会場は異常なほどの熱気に包まれている。

 そして会場大広場に集まった面々が異様なほど老若男女問わず様々で、わんぱく盛りの子供達や、背中に赤子を背負ったママさん軍団や、夜の酒場で働いていそうな俺ほどではないにせよ端正な顔立ちをした若い男達や、何かの間違いで集合したのではないかと思われる御年寄の集まりや、パッと見は女性なのだがよく見ると明らかに男性の骨格をした謎の種族や、力だけなら誰にも負けないといった様子の筋骨隆々なお父さん軍団や、朝起きて食べて休憩してからまた食べて寝ながら食べて起きてまた食べる。そんな過酷なライフスタイルが作り上げた奇跡のわがままボディーを有する超重量軍団など多方面に渡った顔ぶれである。

 さすがに全ての人が出場する訳ではないにせよ圧巻の一言である。

「ふぉっほっほっほっ! 若い子達がずいぶんと集まっておるが、ワシ等も負けてはおられんのう!」

「じゃな。世代……交代はまだまだ先じゃと……言う……こ……とを……教えてやら……ねば……。のう……」

 本当に大丈夫なのだろうか。心配しかないのである。

 しかしまあ、この規模の大会ともなればそれなりの準備もしっかりとされている筈なので、もしもの時でも恐らくは大丈夫なのだろう。

 もちろんそんな事は起きないのが一番だが。

「ああ! ああ! テスト中! テースートー中ー!」

 拡声器で普段の何倍にも大きくなったどこかで聞き覚えのある声が突如会場に響き渡る。

「デイル……さん?」

「えー! 会場にお集まりいただきました皆々様! 大会開始の時間が迫ってきておりますので、大広場中央に三人一組、グループごとに分かれて整列して下さい! 正面はこちら実況本部ですので、こちらを向いて下さいねー!」

 との、拡声器から元気よくテンポよく放たれる指示に広場に集まっていた出場者達はアリの子がわらわらとうごめくようにその場で動き始め、たちどころにそれっぽく整列する事に成功した。

「うん。やっぱりデイルさんだ」

「あ、副団長さんだ」

「それでは! 只今より第一回ベネツィ大食い大会を開催したいと思います! まずは簡単にルールの説明をしておきましょう。チラシにも掲載されていましたが基本三人で構成されたグループを1チームとし、チーム対抗戦で競って頂きます。三名のメンバーが集まらない方々は二名、一名での出場も可能ですが1チームに割り当てられる料理の量はチーム内の人数には関係ありませんので、当然チーム内の人数が多いほど有利になります。次に大会の流れと致しまして、このあと全員で予選を行なっていただき見事、いち早く料理を食べ終えたチーム上位五組の方々が決勝戦進出となります。予選後一時間の休憩を挟んだのち、決勝戦開始という流れであります。これまでの説明で何か質問などある方いらっしゃいますか?」

「予選のメニューはいったいどんな物を食べるんだー?」

「ええ……少しお待ち下さい。予選のメニューは……っと。はい、予選のメニューは揚げ物屋テキーラさんの定番メニュー揚げ物ミックスですね。通常の若鶏の唐揚げ、魚介の天ぷら、厚切り豚カツ。これらの揚げたてを各2キロづつご用意する模様です。揚げ物が合計六キロ、鳥、魚、豚、どれもお腹にたまるパンチのある食材ですね。それに忘れてはいけない油と脂。どちらも大量摂取すれば胸やけを起こしそうで私などは想像するだけで若干気持ち悪くなってしまいます。あと、全て揚げたてというところも選手の皆さんを苦しめそうですね。と言ったところで定刻となりますので、開催者の特別町長でありますカルロスちゃんより開催の言葉を賜りたいと思います。それではカルロスちゃん、よろしくお願いします!」

 デイルさんの言葉に皆の視線は大広場中央、実況本部の椅子に座る見事なまでに紳士的な紳士の隣に座る、見事なまでに陽気そうな御老人へと集まる。






 
 
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