繰り返される転生劇〜喜劇こそ、笑いこそ世界を救うたった一つの手立てではないかっ!〜

清水花

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ベネツィ大食い列伝

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 かなりの重量がある大皿を掲げていると、大会スタッフが二名こちらに駆け寄ってきて大皿とテーブルを一通り確認してからにっこりと微笑み、

「予選一位通過、おめでとうございます!」

 との、祝福の言葉をかけてくれまた元いた場所まで走っていった。

「ありがとう! パティ、アリシア! おかげで予選一位通過だよ!」

「そんなにお腹空いてなかったんだけど、テキーラの揚げ物が美味しすぎてどんどん食べちゃった」

「うん。私も最近食べてなかったから、テキーラの揚げ物が食べたいなーって思ってたんだよね。だからついつい食べすぎちゃった」 

「にゃー!」

「よしよし。このまま決勝もぶっちぎりで勝ってしまおうではないか!」

「うん……そうしたいけれど、でもお腹いっぱいだよ。さすがに……」

「当分の間、揚げ物は見たくないかな……」

 ぬぅ。

 見事、予選一位通過は出来たが二人のお腹がいっぱいになってしまったようだ。俺もあと少しは食べられるけれど、決勝戦のメニューを全て食べきる自信はさすがにないな……。

 この後の一時間の休憩をどう過ごすのかがカギとなりそうだ。

「ずいぶん早く食べ終えたのだな……タケル」

 と、

 不意に声をかけられドキリとする。

 声がした方へ振り返るとそこには、揚げ物を手で鷲掴みにして口に放り込む選手連中との対比のように、フォークとナイフで一口サイズにカットしてから揚げ物を頬張るデュークの姿がそこにはあった。

「あれ⁉︎ デューク⁉︎ いつの間に⁉︎ と言うか、参加してたんだ」

「ああ。屋台が貰えると聞いたのでな、旅をする者としてぜひとも手に入れておきたい物の一つではあるからな。しかしタケルよ。いつの間に、もなにも。私達は最初からずっとここにいたぞ? なあ、シドよ」

「ーーーーええ。むしろ私達の方が先にいましたから」

 デュークの問い掛けに対しシドは持っていたナイフとフォークを皿の上に置いて右手で口元を隠しながら答えた。ナイフの刃先は自分の方を向いている。

 しかし、そうだったのか。全然気が付かなかった。

 じろうといい、デューク達といい、予選通過のためとはいえ周辺の事にかなり盲目的になっていたようだ。

 気を付けなければ。

「私達の存在に気付かないほど食事に夢中になっていたのか。愛い奴め、仲間にしてやろうか?」

 必死になって食べていたのは事実なので、そう言われてしまうと恥ずかしくもあった。

「ーーーーで、他の連中もそうなのだがなぜそんなにも急いで食べるのだ? 食事とは本来もっとゆっくりと味わってするものだろう?」

「我々と違って食事のマナーがなっていないのでしょう、デューク様。ほらご覧下さい、あの者達を。口に詰め込み過ぎて一部口からはみ出てしまっているではありませんか……。なんと品のない連中なのでしょうか」

「いや……あの……デューク? いち早く食べ終えた五組のチームが決勝戦進出って説明聞いてなかったの? だからみんな必死こいて、ああやって手掴みで食べてるんじゃないか……」

 普段からあんな食べ方してる人なんていないよ。

「なにっ⁉︎ それは本当か⁉︎ 明日までゆっくりと時間をかけて食べる気でいたぞ!」

「いたぞ! って、言われても……」

 やっぱりデューク達は安定のおバカさんなんだな。と、改めて痛感させられた。しかしそのペースでいくと食べ終える頃にはテントもテーブルも片付けられちゃって、この広場でシドと二人きりなっているだろうからさすがのデュークといえど、途中で何か変だなーって異変に気付くとは思うけれど。

 それはそれで楽しそうなので、正直言って見てみたいところではある。

 そうこうしていると、実況席の方からは四番目のチームが予選を通過したとの知らせが入った。

「ほらっ! 予選通過はあと、一組だよ! 今からじゃ追い上げは無理だろうけど最後まで頑張って!」

「ーーーーくっ!」

 デュークはようやく状況を理解したらしく、かなり焦った様子で顔をしかめつつ大皿を手に取ると、またとんでもない事をしでかしたのであった。




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