115 / 135
ベネツィ大食い列伝
25
しおりを挟む
かなりの重量がある大皿を掲げていると、大会スタッフが二名こちらに駆け寄ってきて大皿とテーブルを一通り確認してからにっこりと微笑み、
「予選一位通過、おめでとうございます!」
との、祝福の言葉をかけてくれまた元いた場所まで走っていった。
「ありがとう! パティ、アリシア! おかげで予選一位通過だよ!」
「そんなにお腹空いてなかったんだけど、テキーラの揚げ物が美味しすぎてどんどん食べちゃった」
「うん。私も最近食べてなかったから、テキーラの揚げ物が食べたいなーって思ってたんだよね。だからついつい食べすぎちゃった」
「にゃー!」
「よしよし。このまま決勝もぶっちぎりで勝ってしまおうではないか!」
「うん……そうしたいけれど、でもお腹いっぱいだよ。さすがに……」
「当分の間、揚げ物は見たくないかな……」
ぬぅ。
見事、予選一位通過は出来たが二人のお腹がいっぱいになってしまったようだ。俺もあと少しは食べられるけれど、決勝戦のメニューを全て食べきる自信はさすがにないな……。
この後の一時間の休憩をどう過ごすのかがカギとなりそうだ。
「ずいぶん早く食べ終えたのだな……タケル」
と、
不意に声をかけられドキリとする。
声がした方へ振り返るとそこには、揚げ物を手で鷲掴みにして口に放り込む選手連中との対比のように、フォークとナイフで一口サイズにカットしてから揚げ物を頬張るデュークの姿がそこにはあった。
「あれ⁉︎ デューク⁉︎ いつの間に⁉︎ と言うか、参加してたんだ」
「ああ。屋台が貰えると聞いたのでな、旅をする者としてぜひとも手に入れておきたい物の一つではあるからな。しかしタケルよ。いつの間に、もなにも。私達は最初からずっとここにいたぞ? なあ、シドよ」
「ーーーーええ。むしろ私達の方が先にいましたから」
デュークの問い掛けに対しシドは持っていたナイフとフォークを皿の上に置いて右手で口元を隠しながら答えた。ナイフの刃先は自分の方を向いている。
しかし、そうだったのか。全然気が付かなかった。
じろうといい、デューク達といい、予選通過のためとはいえ周辺の事にかなり盲目的になっていたようだ。
気を付けなければ。
「私達の存在に気付かないほど食事に夢中になっていたのか。愛い奴め、仲間にしてやろうか?」
必死になって食べていたのは事実なので、そう言われてしまうと恥ずかしくもあった。
「ーーーーで、他の連中もそうなのだがなぜそんなにも急いで食べるのだ? 食事とは本来もっとゆっくりと味わってするものだろう?」
「我々と違って食事のマナーがなっていないのでしょう、デューク様。ほらご覧下さい、あの者達を。口に詰め込み過ぎて一部口からはみ出てしまっているではありませんか……。なんと品のない連中なのでしょうか」
「いや……あの……デューク? いち早く食べ終えた五組のチームが決勝戦進出って説明聞いてなかったの? だからみんな必死こいて、ああやって手掴みで食べてるんじゃないか……」
普段からあんな食べ方してる人なんていないよ。
「なにっ⁉︎ それは本当か⁉︎ 明日までゆっくりと時間をかけて食べる気でいたぞ!」
「いたぞ! って、言われても……」
やっぱりデューク達は安定のおバカさんなんだな。と、改めて痛感させられた。しかしそのペースでいくと食べ終える頃にはテントもテーブルも片付けられちゃって、この広場でシドと二人きりなっているだろうからさすがのデュークといえど、途中で何か変だなーって異変に気付くとは思うけれど。
それはそれで楽しそうなので、正直言って見てみたいところではある。
そうこうしていると、実況席の方からは四番目のチームが予選を通過したとの知らせが入った。
「ほらっ! 予選通過はあと、一組だよ! 今からじゃ追い上げは無理だろうけど最後まで頑張って!」
「ーーーーくっ!」
デュークはようやく状況を理解したらしく、かなり焦った様子で顔をしかめつつ大皿を手に取ると、またとんでもない事をしでかしたのであった。
「予選一位通過、おめでとうございます!」
との、祝福の言葉をかけてくれまた元いた場所まで走っていった。
「ありがとう! パティ、アリシア! おかげで予選一位通過だよ!」
「そんなにお腹空いてなかったんだけど、テキーラの揚げ物が美味しすぎてどんどん食べちゃった」
「うん。私も最近食べてなかったから、テキーラの揚げ物が食べたいなーって思ってたんだよね。だからついつい食べすぎちゃった」
「にゃー!」
「よしよし。このまま決勝もぶっちぎりで勝ってしまおうではないか!」
「うん……そうしたいけれど、でもお腹いっぱいだよ。さすがに……」
「当分の間、揚げ物は見たくないかな……」
ぬぅ。
見事、予選一位通過は出来たが二人のお腹がいっぱいになってしまったようだ。俺もあと少しは食べられるけれど、決勝戦のメニューを全て食べきる自信はさすがにないな……。
この後の一時間の休憩をどう過ごすのかがカギとなりそうだ。
「ずいぶん早く食べ終えたのだな……タケル」
と、
不意に声をかけられドキリとする。
声がした方へ振り返るとそこには、揚げ物を手で鷲掴みにして口に放り込む選手連中との対比のように、フォークとナイフで一口サイズにカットしてから揚げ物を頬張るデュークの姿がそこにはあった。
「あれ⁉︎ デューク⁉︎ いつの間に⁉︎ と言うか、参加してたんだ」
「ああ。屋台が貰えると聞いたのでな、旅をする者としてぜひとも手に入れておきたい物の一つではあるからな。しかしタケルよ。いつの間に、もなにも。私達は最初からずっとここにいたぞ? なあ、シドよ」
「ーーーーええ。むしろ私達の方が先にいましたから」
デュークの問い掛けに対しシドは持っていたナイフとフォークを皿の上に置いて右手で口元を隠しながら答えた。ナイフの刃先は自分の方を向いている。
しかし、そうだったのか。全然気が付かなかった。
じろうといい、デューク達といい、予選通過のためとはいえ周辺の事にかなり盲目的になっていたようだ。
気を付けなければ。
「私達の存在に気付かないほど食事に夢中になっていたのか。愛い奴め、仲間にしてやろうか?」
必死になって食べていたのは事実なので、そう言われてしまうと恥ずかしくもあった。
「ーーーーで、他の連中もそうなのだがなぜそんなにも急いで食べるのだ? 食事とは本来もっとゆっくりと味わってするものだろう?」
「我々と違って食事のマナーがなっていないのでしょう、デューク様。ほらご覧下さい、あの者達を。口に詰め込み過ぎて一部口からはみ出てしまっているではありませんか……。なんと品のない連中なのでしょうか」
「いや……あの……デューク? いち早く食べ終えた五組のチームが決勝戦進出って説明聞いてなかったの? だからみんな必死こいて、ああやって手掴みで食べてるんじゃないか……」
普段からあんな食べ方してる人なんていないよ。
「なにっ⁉︎ それは本当か⁉︎ 明日までゆっくりと時間をかけて食べる気でいたぞ!」
「いたぞ! って、言われても……」
やっぱりデューク達は安定のおバカさんなんだな。と、改めて痛感させられた。しかしそのペースでいくと食べ終える頃にはテントもテーブルも片付けられちゃって、この広場でシドと二人きりなっているだろうからさすがのデュークといえど、途中で何か変だなーって異変に気付くとは思うけれど。
それはそれで楽しそうなので、正直言って見てみたいところではある。
そうこうしていると、実況席の方からは四番目のチームが予選を通過したとの知らせが入った。
「ほらっ! 予選通過はあと、一組だよ! 今からじゃ追い上げは無理だろうけど最後まで頑張って!」
「ーーーーくっ!」
デュークはようやく状況を理解したらしく、かなり焦った様子で顔をしかめつつ大皿を手に取ると、またとんでもない事をしでかしたのであった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!
菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは
「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。
同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと
アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう
最初の武器は木の棒!?
そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。
何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら
困難に立ち向かっていく。
チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!
異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。
話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい!
****** 完結まで必ず続けます *****
****** 毎日更新もします *****
他サイトへ重複投稿しています!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う
こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。
億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。
彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。
四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?
道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!
気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?
※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる