特盛お江戸猫家族

杏菜0315

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異世界の虹の橋

作 黒猫

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プロローグ
 これは、とても不思議な世界を冒険譚する3匹と3人のちょっぴりドジでヘンテコな旅の物語である。
 まずは、旅をする皆を紹介しよう。3匹のリーダーであり、唯一の男子スッキである。
 性格は、おっとりとして優しくのんびり屋で有り、3匹の中で一番の臆病なので、カミナリでも鳴ろうものならすぐに逃げてしまうけれどやっぱり男でありいざという時には、男らしくとても頼りになる存在なのである。
 そして、ジジはスッキの妹であるが兄と違い、ツンデレのわがままな性格だがいつも誰よりも冷静で周りが見えていてとても兄思いの強い子でいつもスッキを支えてあげているのである。
そして最後は、サーコである。サーコはジジとスッキからしたら一番上になり、2匹のお姉さん的な存在である。
 性格は怒りっぽくてセッカチな性格だが、2匹の事をしっかりと考えてくれているし、頼りがいのある存在である。
 さて次に、まだ3匹とは出会っていないが旅をする3人を紹介しよう。
 3人のリーダーであるアリーの性格はとてもやんちゃでわがままではあるけれど、何事に対しても諦める事のない強い心を持っているし、いつも皆を笑顔にさせてくれる思いやりの強い子である。
 そして、アリーの母トリスは性格は普段はとてもおとなしくて、優しいがいざとなるとカミナリを落としたように怖い存在でもあり、いつもアリーのリミッターになっているし何事にも冷静に対応してくれているとても大切な存在である。そして、アリーの父でありトリスの旦那のキューの性格はいつも能天気でボーっとしている事が多い、のんびり屋で娘のアリーにとても甘く、いつも母のトリスに怒られているがいざとなればどんな障害にも立ち向かう勇敢(ゆうかん)で男らしい所もあり、意外と2人からも頼りにされているのである。
 これから3匹と3人の物語が今ここに始まろうとしているのである。
3匹と3人がどこでどんなふうに出会い、どんな旅になるのかはこれからのお楽しみである。


第一章「出会いと旅立ち」
① ここレイニーシティーに暮らしている、スッキとジジは仲の良い兄(きょう)妹(だい)である。
ある日、2匹は一緒に近くの森を探検しているとそこに
「誰か~助けて~」
と森の奥の方から声が聞こえてきて、ジジとスッキの2匹は森の奥に行きながら
「何があったんだろう、こんな森の奥で?」
とスッキがジジに言った。
「でもその人が困っているのは間違いないから急いでいこう」
とジジが言った。
「そうだね、急いでいこう」
とスッキも声のする方へ急いで走って行きました。
 声のする場所に着いた2匹が見たものは、狩猟用の罠に足を挟まれた女の子でした。
「大丈夫?」
とスッキが言うと女の子は
「お願い、早くこれをはずして」
と言った。
「すぐに外してあげるからちょっと待ってね」
とスッキが言い、罠を急いで外してあげた。
 そしてジジが女の子に
「大丈夫?とりあえず家で足の手当てをした方が良いね」
と言い、その女の子は
「助けてくれてありがとう」
とスッキとジジに言ったのでした。
「僕が家まで背負って行くから心配しなくて良いからね」
と言い女の子を家まで背負って行きました。そして、家についてジジがせっせと女の子の足を手当てしている内にスッキは、食事の準備をしていました。
 女の子はスッキとジジに
「私はサーコ、助けてくれて本当にありがとう。あのまま誰も来なかったらと思うと、とても怖かったよ」
とスッキとジジに言いました。
「私はジジ、あっちで食事の準備をしているのが兄のスッキだよ。たまたま森の探検をしてたら森の奥の方から声がしてたからビックリしちゃったけれどケガもたいしたことがなくて本当に良かったよ」
とジジがサーコに話をしていて、そこにスッキが来てサーコに
「良かった、少しは元気になったみたいだから安心したよ」
と言い
「今ご飯も出来たから皆で一緒に食べようか」
と言い3匹は仲良くご飯を食べ始めました。

②そして食べながらスッキがサーコに
「なんであんな森の奥に1匹でいたの?」
と聞きました。
「私ね今までずっと1匹で旅をしてきたの、今回その途中だったの」
とサーコが言いました。
『ずっと1匹ってなんか寂しそうだな~』
とジジが言いました。
「寂しいのもあるけど楽しいことも色々あるんだよ」
とサーコが言いそしてそしてスッキが
「冒険は楽しいもんね」
と言ったら
「でもお兄ちゃん臆病だからすぐに逃げそうだな」
ジジが笑いながら言いました。
スッキが「それは言わないでよ」
と言ってシュンとなってしまったのを見て2匹で笑ってしまいました。
「でもなんで1匹でずっと旅をしているの」
とジジがサーコに聞きました。
「私はずっと絆の秘宝という物を探して旅をしているの」
とサーコが言いました。
するとスッキがビックリした顔で
「僕もそれ本で読んで知ってるよ。どこかにある洞窟の中を通り抜けた先の大地のどこかにある祠の中に秘宝があり、その秘宝が絆の秘宝だって本で読んだよ」
とスッキが言ったらジジが
「何でお兄ちゃんだけそんな本読んでるの」
とツンツンしながら言いました。
「どこかの本屋さんでたまたま読んだだけだし、本当にある物だとは思わなかったんだ。しかもその本屋さんも不思議な事に今どこにあるのかも分らないし」
とスッキがジジとサーコに言いました。
サーコがスッキとジジに言いました。
「そうなの、私も最初は物語かなにかだろうと思っていたんだけどね、本当にその絆の秘宝は存在するのよ、と死んでしまった母から聞いたの。だから私は1匹でその洞窟を探していたの。この近くにあると母から聞いていたから」
とサーコはジジとスッキに話しました。
「それなら僕らも一緒にその旅に連れていって欲しいな、ジジもそう思うよね?」
とスッキが言ったらジジが
「私達も一緒に行きたい」
と言いました。
サーコは最初は困っていたけれど
「わかったわ、じゃあスッキ君に旅のリーダーを頼んでもいいかな?絆の秘宝の本を読んでいて色々と知っていそうだから」
とサーコがスッキに言いました。
「お兄ちゃんで大丈夫かな?」
と少し心配になっているジジでした。
「じゃあ決まりだね。ジジ急いで旅の支度をしよう」
とスッキが言うとジジも
「はーい」
と返事をして支度をしに行きました。

「これから長い付き合いになると思うけどよろしくね、サーコ」
とスッキが言うとサーコも
「こちらこそよろしくね、スッキとジジ」
とお互いに言い握手をしました。
 そして、旅の準備も終わりスッキが
「いざ絆の秘宝を求める旅に出発だ~」
と元気に言いました。

③ そして、スッキ達は早速サーコと最初に出会った森の方へ向かいました。
そしてスッキが2匹に
「僕本で読んだのは、どこかの山の中の中腹辺りに洞窟があり、その洞窟は導きの洞窟と呼ばれてると書いてあったよ」
と言いました。
「じゃあこの辺りの山のどこかにその洞窟があるのかな?」
とジジが言いました。
「私が母から聞いたのはレイニーシティーの先のどこかとしか聞いてないから分らないけれどこの辺りという事は間違いないと思うよ」
とサーコが言いました。、
「山といったらこの先の虹の橋を越えた先のクラウドタウンの少し先に山があるよね?」
とジジが言いスッキが
「この辺りだと山はその結びの山ぐらいしかないと思うよ」
と言った。
「じゃあまずは、クラウドタウンに行って結びの山の情報を聞いたりして先に集めてから山に向かうようにしよう」
とスッキが言い、サーコとジジの2匹が揃って
「そうね、そうしよう」
と言いました。

④ そして3匹は虹の橋所までたどり着きました。
「ここが虹の橋なんだね」
とサーコが言っている中でスッキがなぜか橋の手前で後退りをしていました。
「どうしたのスッキ、早く渡るよ~」
とサーコが言った後にジジが
「お兄ちゃん高い所が苦手だから、この吊り橋にビビってるんじゃない?」
とスッキに言った。
「そ、そんなことないよ。吊り橋ぐらい平気だよ」
と言いながら少し前に進んで行きました。
 その後から渡っていたジジが少しイジワルで吊り橋を揺らしてみました。
「ウギャーアウウウ・・・」
とスッキが絶叫してその場に座り込んでしまいました。
ジジはやっぱりと呆れていたけれども
「お兄ちゃんやっぱり怖いんじゃん♪」
と言って手を貸してあげて、なんとか無事に渡りきる事が出来たけれど、すくみあがっているスッキを見て2匹は
「大丈夫?」
と言い
「吊り橋がこんなに揺れると思わなかったよ。ハァ怖かった」
と言っているスッキを見て2匹はまだ少し笑っていました。
 そんなこんなで橋を渡り、クラウドタウンへと向かう3匹でした。
 そしてしばらく歩いたところでスッキがずな2匹に向かって「そろそろ休んでご飯にしようか」
と言ったらジジが
「あ~お腹すいた~」
と言って
「そこに座れそうな所があるからそこで食べようか」
とサーコが言った。
 そしてご飯を食べながら
「でも絆の秘宝っていったいどんなのなのかな。すごく気になる」
とジジが言いスッキが
「そこまでは本にも書いてなかったから僕も分らないな」
と言い
「きっととてもキレイな宝石かなんかじゃないかな?」
とサーコが言いました。
「早く見つけて見てみたいね」
とスッキがいいその後3匹が揃って
「ごちそうさまでした」
と言った後で
「もう少しでクラウドタウンに着くと思うから頑張って歩こう!!」
とスッキが言いました。
「クラウドに着いたら情報を集めたり調べる事もあるからまずはどこかの宿を探して泊まれるようにしないとね」
とサーコが言いジジも
「そうだね」
と言いました。
そして3匹は無事にクラウドタウンに到着をしました。
「じゃあまずは情報の前に宿屋探しだね」
とスッキが言い3匹は宿屋を探し始めました。
「宿屋空いてる所あるかな?」
とジジが探しながら言っているとスッキが
「あそこの宿屋が部屋が空いてるみたいだよ」
と言い
「部屋が空いてるならその宿屋にしようよ」
とサーコが言いました。
「じゃあ泊まる場所も見つけれたし、早速皆で手分けをして山の事や洞窟の事を聞いて回ろう」
とスッキが言いサーコとジジが
「分かった、じゃあ情報を集めに行こう」
と言いました。
そして3匹は手分けをして町の図書館や町の人達に聞いて回る事にしたのです。
スッキはまず図書館に行き結びの山の事が書いてある本がないか探していました。
サーコはクラウドタウンに昔から住んでいそうなお爺さんやお婆さんなどから話を聞いて回りました。
そしてジジは々なお店の人に話を聞いて回る事にしました。
そして3匹はそれぞれが調べた情報を持って宿屋に戻って来ました。
宿屋でご飯を食べながら3匹は自分達の調べた事を話しをしました。
「結びの山にはやっぱり不思議な話しがあって、山の中腹辺りに必要としている人だけに前に現れる洞窟がいう事が本には書いてあったよ」
とスッキが言い
「私も色々な事を昔から住んでいる人に聞いてみたらあの結びの山にはとても不思議な力が宿ってる場所だと皆に言われたよ」
とサーコが言い、そしたらジジが
「私はね、色んなお店の人に聞いてみたらあの山の麓に住んでいるお爺さんがいるから、そのお爺さん猫に聞けば山にとても詳しいから色々と知ってるはずだよ色んな人から言われたよ」
2匹向かい言いました。
「じゃあ明日は山に向かいながらそのお爺さんの所にまずは行くようにしよう」
とスッキが言い2匹は
「賛成!!」
と言いました。
「じゃあ今日はゆっくりと休んで明日にそなえよう」
とスッキが言い
「はーい」
と2匹は返事をして寝る事にしました。
⑥ そして次の日3匹は元気良く山に向かっていきました。
そして山の近くまで来てジジが
「あそこに小屋があるよ」
とサーコが
「あそこにジジちゃんが聞いたお爺さん住んでいるのかな?」
と言いスッキが
「とりあえず行ってみよう」
「すみませーん、誰かいませんか~?」
とスッキが言いました。
すると小屋の中から声がして
「どなたかの?」
お爺さんの声がしてドアが開きました。
そしてスッキが
「すいません、結びの山と山にある洞窟の事について話を聞きたいのですが良いでしょうか?」
とお爺さんに聞きました。
するとお爺さんは3匹に
「わしに分かる事なら教えてあげるよ」
と言って3匹を小屋の中に入れてあげました。
「たしかに結びの山の中腹辺りには大小さまざまな洞窟があるのは知っておるぞ」
「そしてその君達が言っている導きの洞窟というのも聞いた事はあるがわしも見た事はないんじゃよ」
と続けて
「じゃが導きの洞窟あらわれし時、その洞窟の奥に一点の光現れんとわしは聞いておるがの」
とお爺さんが三匹に色々と洞窟の事を教えてくれました。
 そして、スッキ達3匹はお爺さんにお礼を言って山の洞窟があると教えてもらった場所を目指して歩いて行くのでした。
「洞窟の奥に光が見えるって言ってたけどそんな洞窟が本当にあるの?」
とジジがちょっと不安げに言いました。
「大丈夫だよ、きっと強い想いを持っていればきっと洞窟がその想いに反応してくれるはずだよ」
スッキが言いました。
そして長い間歩いて洞窟を探していると、いくつかの洞窟を見つける事が出来たけれど光を放つ洞窟を見つける事はまだ出来ませんでした。
「洞窟はぽつぽつと出てきたね」
とスッキが言いジジが
「そうねいくつかは、見つける事が出来たわね」
と言いサーコが
「でも今の所は光を放つ洞窟は一つもみあたらないね」
と言い二匹が
「そうだね」
と言いました。

⑦ そしてしばらく辺りをしっかりと見ながら、歩いていたらさっきまでとても天気が良かったのに急に霧がかかり辺り一面真っ白になってしまいました。
「あんなに天気が良かったのに急にどうしたんだろうね」
とスッキがビクビクしていました。
「お兄ちゃんまたビビっているんでしょう」
とジジが笑いながら言いました。
「そ・・・そんな事ないよ。ビビッてなんかないよ」
とスッキが言っているとサーコが
「ねえ、2匹ともあれを見て」
と言い2匹が
「どうしたの」
とサーコが言った方を見てみるとなんと洞窟があり奥の方からとても明るくて暖かい光を感じました。
「スゴイ本当に光ってる洞窟があった」
とジジが言いました。
「とても優しい光だね」
とスッキが言いサーコが
「うん、とても優しくて暖かい光だね」
と言いました。
「さあ、やっと導きの洞窟が見つかったんだ。洞窟の中に入って先を目指して進んで行こう」
とスッキが少しビクビクしながらも、2匹に向かって言った。
「よ~し先に進もう」
とサーコも言い
「行こう、行こう」
とジジも言った。
そしてスッキが
「洞窟の中は滑るかもしれないから皆足元には気を付けてね」
と言い3匹は洞窟の中へと入りました。
これからとても不思議な事が起こっていくことは、もちろん知るはずもありません。
第2章へ続く














第二章「決意の旅立ち」
① ここノースシティーで暮らしている仲良しの三人家族がいました。
 そして、今日もいつもと変わらない生活をしていました。
そしてそこに、娘のアリーが来て
「パパ、ママ、おはよう」
と言い、そして二人もアリーに向かって
「アリー、おはよう」
と言い、そして3人で食事をしました。
「ねえパパ私ねとても不思議な夢を見てね、夢の中でねなんだか毛むくじゃらの生き物と洞窟の中で会って私達3人とその子達皆で一緒になにかの秘宝を探しに行く夢を見たの」
とアリーが話をすると父親のキューが
「なんだアリーもパパと同じ夢を見たのか」
と言うと
「私も2人と同じ夢を見ましたよ」
と母親のトリスが言いました。
3人は不思議な事があるもんなんだなと考えていました。
そしてアリーは2人に言いました。
「パパ、ママ皆が同じ夢を見るなんてこと普通はないだろうし、こんな不思議な事ないだろうし、皆で夢と同じように私達も旅をしたら夢と同じ事が起きるんじゃあないかな」
と言った。
「たしかにこんな不思議なことはあまりないからアリーの言うように旅をすれば同じ起こるかもしれないね、ねママ」
とキューがトリスに言った。
「でも旅に出ると言ってもどこに行けば良いのかも分らないのに、旅をしても時間のムダになるだけじゃない」
とトリスが言った。
するとキューが
「それもそうだな」
と言うとアリーが
「夢の中では山の中に洞窟があってその洞窟はたしか」
とまで言うとキューが
「希望の洞窟とか言ってたような気がするな」
と言い
「うん、山の名前はたしか」
とアリーが言うとつられたように今度はトリスが
「繋がり山だったわよね」
と言った。
「なんだパパもママも覚えてるじゃん」
とアリーが笑顔で言った。
「それだけ覚えているんだったらきっと大丈夫だよ。皆で探しに行こうよその洞窟」
とまたアリーの我が儘(まま)が始まったのである。
もちろん毎回アリーの味方であるキューはこの時トリスに
「アリーがそこまで言うのであれば、皆で探しに行ってみるか、ねえママ」
とアリーの味方をしたのである。
「もう2人とも言い出したら本当になにも聞かないんだから」
と少し怒りながらではあるけれども
「分かりました、でもまずはしっかりとご飯を食べて片付けをして支度をして行くべき場所をちゃんと調べてからですよ」
とトリスが言い2人は
「はーい」
と返事をしました。
「パパはしっかりとどこに行けば良いのかを調べて下さいね」
とトリスが言うと
「分かったよ、ちゃんと調べるよ、アリーは必要な物をちゃんと用意して忘れ物がないようにするんだよ」
とキューがアリーに言うと
「はーい、パパ分かったよ」
とかわいい声でアリーが返事をしました。
そして2人はせっせと準備を始めたのでした。
そんな2人を見てトリスは呆れた感じの様子で
「ハァー本当に夢みたいな旅になるのかしら大丈夫かな~」
と不安な思いでしたが、あまりにも真剣な2人を見てトリスも決心をして旅の支度を始めました。
そして3人とも準備も終わりアリーが
「まずは洞窟のある繋がり山を目指して出発だ~張り切って行こう~」
と言いキューが
「お~出発」
と言った。
③ そして家を出発して歩きながらキューが言いました。
「パパが調べたら繋がり山という山はベアーズタウンの先にある山みたいだよ」
と言いました。
「じゃあまずはそのベアーズタウンに行けばまたほかの事も分かるかもしれないわね」
とトリスが言いました。
「でもあの夢に出てきた毛むくじゃらの生き物はなんだろうね」
とアリーが言いトリスが
「そうね、でもかわいかったし私達と同じでちゃんと言葉も喋れてたしね」
と言いキューが
「でも大きさは3人ともアリーと同じくらいだったし、自分達は猫だと言っていたと思うんだけどね」
と言い
「そうね、そう言ってたわ」
とトリスが答えた。
「でも夢と同じ事が起きたらすべて分かるから良いじゃん」
とアリーが言った。
「まあそれもそうだな」
とキューが能天気に答えました。
そしてしばらく歩くと森が見えてきました。
「この森を越えたら谷があるから、その谷を渡ってしばらく歩けばベアーズタウンが見えてくるはずだぞ」
とキューが言いました。
「じゃあまず森を越えた所で皆でご飯にしましょうか」
とトリスが言うとアリーが
「賛成」
と嬉しそうに言いました。
④ そして森を抜けた所は平原になっていたのでそこにシートを広げました。
「わあ~おいしそ~いただきます」
とアリーが言い
「いただきます」
と2人も言いました。
「あの谷を渡ったらすぐにベアーズに着くと思うよ。着いたら俺は少し洞窟や山の事を調べてくるから、トリスとアリーは今日泊まれる宿屋を探してくれるかな」
とキューが言いました。
「分かったよ~じゃあ見つけたら私はパパの所に行って手伝うからね」
とアリーが言い
「じゃあ私は色々と人に聞いてみる事にするわね」
とトリスが言い
「じゃあそれでお願いしようかな」
とキューが言うと
「わかったよまかせて」
と2人が言いました。
そしてご飯を食べ終わり3人はまたベアーズタウンに向け歩きだしました。
そして谷と谷を結んでいる橋の所まで3人は来ました。
「この吊り橋は結構揺れそうだな」
とキューが言っているとアリーが
「わ~い吊橋だ」
とはしゃぎながら渡って行きトリスもその後に付いて行きながら
「こらあんまりはしゃがないの、橋が揺れてるでしょ」
とトリスが言うとアリーの悪い癖で橋を少し揺らしたら
「キャア」
とトリスが声をあげるとキューとアリーが笑いながら
「ママはこういうの意外に苦手なんだね」
とキューが言うと
「真面目に渡りなさい二人とも~」
と声をあげて怒りながら2人に言いそして本気で怒っていました。
キューとアリーはトリスに
「ごめんなさいママ」
と2人で言いました。
そして無事に渡りきって少し歩くとベアーズタウンが目の前に見えてきました。
⑤ そしてベアーズタウンに着くとトリスとアリーまず宿屋を探しに行きキューは図書館に行きました。
しばらくするとキューの所にアリーが来て
「パパなにか分かった」
と聞きました。
「山の事は色々書いてあるから分かったけど洞窟の事があんまり書いてなくてまだ分からないんだよね」
とキューが答えるとアリーが
「じゃあ私も探してみるね」
とアリーが言い探しに行きました。
 そのころトリスは山の事や洞窟の事を知っていそうな町のお爺さんやお婆さんに話を聞いて回っていました。
 しばらくして3人は宿屋に戻りご飯を食べながら自分達で調べた事や聞いてきたことを話し始めました。
「調べて分かったのは繋がり山がこのベアーズタウンとフクゲートシティーのちょうど中間にある山という事と、山の中にはいくつもの洞窟があるという事と、これは本当なのかどうかは分らないけれど山には不思議な力が昔からあると言われているみたいで、色々な言い伝えもあるみたいだよ」
とキューが言うと
「私も本を少し探して読んだけれど、山の中に不思議な力を持っている洞窟がある事は書いてあったけれど全部昔話しの絵本に書いてあるだけしかなかったし、図書館のおじさんに聞いたら山の近くに住んでいるお爺さんがその話に詳しい事を教えてもらったよ」
とアリーが言った。
「私も町の人から色々と聞いてみたけれど、やっぱり皆教えてくれたのはアリーが言った昔話しと同じで誰も実際は見たことが無いらしいわ」
とトリスが言い
「そうなると後は頼みは、アリーが教えてもらったそのお爺さんに話を聞いてみるしかないかもしれないね」
とキューが言うとトリスが
「そうね、それが良いわね」
と言い
「じゃあ明日は山に向かいながらそのお爺さんに話を聞かないとだね」
とアリーが2人に言うとキューが
「そうだね、その後に洞窟を探しに行くとしようか」
と言い2人は
「そうしようそ、うしよう」
と返事をしました。
「じゃあ明日は早いから明日にそなえて少しでもゆっくりと寝るとしよう。おやすみ」
とキューが言い2人も
「はーい、おやすみなさい」
と言いました。
⑥ そして、翌日の朝一番で繋がり山を目指して3人は出発しました。
 しばらく歩いているとアリーが
「パパとママは昨日は夢を見たかな。私ね夢でまたあの3人に逢う夢を見たの」
と言うと2人とも
「アリーも見たの」
とキューとトリスが声を揃えて言った。
「やっぱりパパとママも見たんだね。しかも今度は結構しっかりと覚えているよ、私あの3人の名前もどこから来たのかも」
とアリーが言うと
「パパも覚えているよ。3人の名前はスッキにジジとサーコって言ってたよね」
と笑顔でキューが言うとトリスが
「それに今私達が向かっている山の事や不思議な洞窟の事もなんとなく覚えているわよ」
と言った。
「やっぱり夢のとおりになるって事だと私は思うし、きっと不思議な洞窟もあの3人も見つかると思うよ」
とアリーがはしゃぎながら言いました。
「たしかに本当に夢のとおりになるかもしれないね。これだけ同じ夢を3人が3人とも何回も見るなんて事は普通ではないだろうしね」
とキューが言いトリスが
「本当にそうね。こんな不思議な事はめったにないわね」
と言ったら
「早くあの3人に逢って色々と話をしたいな」
とアリーはとても嬉しそうにはしゃいでいました。
 そんな中トリス
「はたしかに不思議だと思うけれど本当にこれで良いのかな」
とこの時1人思っていました。
 そして、不安そうになっているトリスを見てキューがトリスに
「きっと大丈夫だよ。夢の中でも危険そうな事もなかったし、なによりも今回の旅はアリーが大人に成長する事が出来る良い旅でもあると俺は思うんだ。人の事を想いあったり大切な事を学ぶ事が出来る旅になると思う気がするんだ」
と言ったら
「そうね、私も心配し過ぎね」
とトリスはもう迷わない決意をしたのでした。
⑦そして3人は繋がり山のすぐ近くまで来たのでした。
 そして町でアリーが教えてもらったお爺さんも見つけることが出来て3人はそのお爺さんの話を聞きました。
「突然お邪魔をしてすいませんでした」
とキューがお爺さんに言ったら
「大丈夫ですよ。歳をとったら寂しくてね、こうやって話し相手が出来てわしも本当に嬉しいのじゃよ」
と言ってくれました。
「たしか繋がり山と山にある洞窟の事を知りたいのじゃな」
と言い
「はい、お願いします」
とキューが言うと
「繋がり山は昔から不思議な力があってな、ほかの世界と繋がっているというふうにわしは聞いておってな。その繋がりが今あなた達が言った希望の洞窟というわけじゃな。そしてその洞窟は人を選ぶのじゃよ。その選ばれた者の前にしかその姿を現さないといあれておるのじゃよ」
と教えてくれました。
「ねえ、お爺さんもその希望の洞窟を見た事があるの?」
とアリーが聞くと
「残念な事にわしはまだ見た事はないんじゃよ」
と言うとアリーが
「そうなんだ」
とちょっとがっかりして言った。
「じゃがな、わしは希望の洞窟は必ず繋がり山にあると思っているのじゃ。でないと昔からそんな事は言い伝えられていないと思うからの」
と言った。
「そうですね」
とキューとトリスが言い
「色々と教えてもらいありがとうございました」
とキューが言い、アリーがお爺さんに
「ありがとう。私がきっと洞窟をみつけるからね」
と言いました。
するとお爺さんが
「気を付けてな。君ならみつけられる気がするよ」
と笑顔で言ってくれました。
⑧ そして、アリー達は洞窟を探すために探す為に繋がり山までたどり着き、山の中を進んで行きました。
「やっと繋がり山に着いたね」
とアリーが言うと
「そうね。夢の中ではこの道を進んで行くと分かれ道になっていてその道を左側に山の奥の方に進んで行けば良かったのよね」
とトリスが言うと
「さすがママだね、良く覚えているね」
とキューが言った。
「たしかその後、何ヵ所か洞窟が出てきて探しながら少し歩いていると・・・」
とキューが言っているとアリーが
「急に天気が悪くなってきて辺りが一瞬にして霧に包まれてしまって真っ白になって、その中で一ヵ所だけ明るく光っている場所があって、そこが洞窟になっていたんだよね」
とアリーが嬉しそうに言った。
「そうね、そこが洞窟になっていたわね」
とトリスが返事をした。
 そして、アリーに全部言われてしまったのでキューは少しショボンとなりました。
 そして、歩いていると夢にでてきた分かれ道に着きました。
「分かれ道あった~」
とアリーは、はしゃぎながら左側に進んで行きました。
「あんまりはしゃいでいると転ぶわよ」
とトリスが注意すると
「大丈夫だよ~」
とアリーが返しました。
 そして、山の中腹辺りに来ると所々に洞窟が出てきました。
「この辺りだったよね、たしか」
とキューが言い、2人とも
「うん」
と返事をしてうなずきました。
 そして、しばらく歩いていると夢と同じように急に辺りが霧に包まれました。
そして、霧の奥から光が見えたので3人でそこに向かって歩いて行くと、そこには3人が夢で見たのと同じ希望の洞窟がありました。
「本当にあったわ。夢と全く同じだわ」
とトリスが言い
「うん。本当に夢と同じだね」
とアリーが笑いながら言い
「この洞窟を進んで行けばあの3匹に逢うことが出来るんだろうね」
とキューが言い
「うん、きっとであえるよね。パパママ早く洞窟の中に進もう」
とアリーが促した。
 そうして3人は、洞窟の中に進んで行きました。
 3人はその先に待っている不思議な出会いを期待して。

           第3章へ続く



























 コトハの通っている寺子屋に女の先生がやって来た。
先生は隣町の女(め)筆(ひつ)指南(しなん)を掲(かか)げる寺子屋のメス猫の師匠棗(なつめ)先生だ。
棗(なつめ)先生は、月に数回コトハ達の通う松五郎塾にお裁縫(さいほう)や琴など女の子向けの事を教えに来るのだ。
今日の授業は、それぞれの好きな楽器を教わるというものだ。
「楽器ねえ・・・」
あまり気の進まないコトハ。
何しろこの日はお弁当を持参し、夕方まで授業があるからだ。
「それでは、三味線の者から。始め!」
コトハも三味線を選んでいるが、なんか違うと気に入ってなかった。
三味線の弦は何でこんなにやわっちいんだろ?と思っていた。
もっと激しく弾けたらなあ・・・
そんな事を考えていたからか、三味線を強く弾きすぎたコトハ。
弦は当然切れてしまった。
「コトハさん、またですか」
呆れる先生。
何しろ、コトハが弦を切ってしまったのは今日が始めてではないのだ。
「この前も何度か弦を切れさせてましたね。なぜ、やさしく弾けないのですか?」
また、棗先生のお得意のお説教が始まった。
コトハはうんざりして、弦を張り替えている先生の目を盗んで部屋から逃げだしたのだった。

「えい!やあー!とう!」
何人もの気合いの入った掛け声が聞こえてくる部屋が一室。
そこは、松五郎先生が教える男オスの剣術部屋だ。
「そこ!木刀なんだからひるまない!!」
松五郎先生の指示がとぶが、もしも当たれば木刀でも怪我をしないわけではなく、何せこの時代は防具もまだ出始めで少なく、着けない道場も少なくなかった。
怪我をしないためには、双方寸止めでやらなければならなく、技量がいる厳しい稽古(けいこ)になるのは必至だった。
そんな中、コトハは男オスに紛れて入り込んでいた。
三味線弾きなんかやってられるか!と、思いながら一心にオス猫に打ち込んでいた。
「うわあ!刃引(はびき)刀(とう)なんか出すんじゃねえよ‼」
一匹の生徒が大声を上げた。
松五郎先生が見た先には、刀を岩などに打ち付けて使えなくした刃引刀を振りかざし打ち込む、コトハの姿があった。
「こら‼刃引刀なんか持ち出したのは誰だ。使うな‼」
その刃引刀は、松五郎先生が昔使っていて刃がぼろぼろになった物を再利用で刃引刀に打ち変えた物だ。
「またコトハか。刃引刀は居合の稽古の時以外持ち出し禁止だと何べん言ったら分かるんだ、え?」
怒られ慣れているコトハは、刀をしげしげと眺めて鞘(さや)にゆっくり納め、平然としていた。
「コトハ、お前はメスだろ」
横に居た信吉が肘でコトハをつついた。
「だって・・・女メスの方の稽古(けいこ)はつまんないんだもん」
「そこ、何か文句でも?」
すかさず松五郎先生が指摘(してき)。
「いいえ、何も」
慌てて(あわてて)取り(と)繕(つくろ)う信吉。
何も言わず知らんぷりのコトハ。
そこにらちのすけがやって来た。
「やーやー、帰ってたんだな、らちのすけ」
かつて同じ道場に通っていた仲だ。
松五郎先生は気さくに話しかけた。
「おい、何やってんだコトハ。お前は隣の女メスの部屋での稽古(けいこ)だろ?」
男オスばかりの道場では、さすがのコトハもメスだから見つかりやすい。
「だってつまんないんだもん。父ちゃん、昔みたいに稽古(けいこ)つけてくれよ」
コトハが退屈(たいくつ)と言わんばかりにらちのすけにせがみだした。
「おい、誰だ。あの猫?」
「バカ、らちのすけさんだろ」
男子やオス達のひそひそ声がしたので松五郎先生は皆にらちのすけを紹介した。
「このネ猫は原田らちのすけ。先生と同じ道場に通っていた事があり、私と同郷の友で私より腕の立つやつだ。そして、コトハの父親でもあるぞ」
皆が一斉にコトハを見た。
「道理で刃引刀なんか持ち出しても相手に傷一つ負わせない訳だ」
と皆がコトハの腕の秘密に感心したのであった。
「そんな事はないが、コトハ刃引刀なんか持ち出したのか?」
らちのすけが見ると、コトハの手には刃引刀が持たれたままだ。
見つかっておろおろするコトハ。
「そんな事をさせる為に、剣術の稽古(けいこ)をつけてやって居たわけではないんだぞ。お仕置きとして、今日は大人しく女メスの部屋での稽古を受けろ、良いな!」
「は、はい・・・」
コトハがとぼとぼと隣の部屋に戻って行くとすかさず、信吉がらちのすけの元に前に進み出た。
「お会いしたかったです、らちのすけ先生」
「ん?君は確かコトハと仲の良い信吉だな」
信吉の顔に見覚えがあったらちのすけ。
「はい、噂に聞く凄腕とか。ぜひ、教えを乞(こ)いたいと思っていました」
「いや、そうでもないぞ。松五郎はああ言ったがそれほど強くなんかないぞ」
困ったらちのすけ。人に物を教えるのが苦手なのだ。
「それでは、手合せだけでも!」
なおも食い下がる信吉。
懐(ふところ)から出した手を顎(あご)に当て思案することしばし。
「しょうがない、コトハの友のたっての願いだ。昼御飯の後に稽古(けいこ)をつけよう。待っていろ」
と告げたらちのすけだった。


















               
第二話 稽古をつけたら・・・
「コトハ、そう言えば朝弁当作ったって言ってなかったっけ」
お昼休み、信吉が思い出したようにコトハに聞いた。
「う、うん。信きっぁんの分もあるから食べてよ」
この弁当は、早起きしてコトハが自分で作ったものだ。
「ありがとな。大変だったろ」
そう言って受け取ると早速弁当箱を開く信吉。
「おっ、卵焼きがある!」
「へへ、大家の喜平さんに卵別けてもらったんだ。信きっぁん好きだって前に言ってたろ?」
コトハの弁当の中身に満足した信吉は道場の隅で嬉しそうに食べ始めた。
「おっ、愛妻弁当か。ヒューヒュー♪」
周りの男オスどもがはやし立てるのも気にせず食べて一口
「不味(まず)い・・・」
と信吉は吐き出しそうになったのだった。
「この卵焼き、しょっぺえ」
塩辛くて眉(まゆ)にシワを寄せる信吉。
「嘘!まさか砂糖と塩を間違えたのかな?」
コトハも自分の分の卵焼きを食べてみる。
「あっ、ほんとだ。ごめん・・・」
しょげかえるコトハ。
「いや、気にしてないないよ!ご飯美味しいし!」
慌てて取り繕(つくろ)う信吉だが、
「それ、アオ姉が炊(た)いたやつだし」
余計にコトハをしょげさせてしまった。
「つ、作ってくれただけでおいらは嬉しいぜ。なっ、機嫌(きげん)直してくれよコトハ」
一生懸命に言い繕(つくろ)ってコトハの機嫌(きげん)を取る信吉だった。

午後からはらちのすけも加わっての稽古(けいこ)になった。
「さあ、信吉。攻め込んでみろ」
らちのすけの一言で大きく振りかぶった信吉。
そのまま振り落すと思いきや、左に寄せた構え方に変え、小手を狙って振り下ろした信吉。
だったが、らちのすけの方が早く、払(はら)い除(の)けられ信吉の頭上に振り下ろされてしまった。
しかも、寸止めでやられたので避けようとした信吉は足を滑らせ尻餅をつく格好になってしまった。
「どうした、信吉。そんな腕で俺に稽古(けいこ)をつけてほしいと言った訳ではないだろう!」
らちのすけの一言にもひるまず、信吉は立ち上がるとまた木刀を構えた。
構えた木刀をらちのすけの木刀に下から持っていき、大きく手元を上げ、払って突こうとした。
しかし、またもらちのすけにかわされ、胴(どう)を突かれた信吉。
またもやられた信吉は、悔(くや)しくて面(めん)を取る形でぽんぽんぽんと木刀を打ち込みながららちのすけに迫っていった。
が、全部ひょいひょいとかわされて、らちのすけから見て右から脇腹に入れられてしまった。
それから何度やっても信吉は一つも当てられなかったのだった。
「ゼー、ゼー、ゼー・・・」
汗だくの信吉に対して息一つ乱さないらちのすけ。
いつの間にか周りも稽古(けいこ)の手を休めて二匹の対決に見入っていた。
「信吉、筋はいいが木刀が大振りだぞ」
「はい、先生」
言って立ち上がる信吉。
「もう一度基本の構えをやってみろ」
らちのすけの指示に木刀を真っ直ぐ構える信吉。
「試しに振り上げてみろ」
言われるままに振り上げた信吉。
その後ろから、らちのすけが信吉に手を添(そ)えた。
「振り上げると握(にぎ)りが強くなっているのに気付いたか?」
無意識の事に驚(おどろ)く信吉。
「握(にぎ)りが強すぎてせっかくの早さが半減しているし、木刀が大振りになるのもそのせいだぞ」
「はい!」
らちのすけに言われてから何度か木刀を振ってみる信吉。
確かに強く握っていたようで、意識して振ると速さがぐんと増した気がした。
「ありがとうございます」
「意識しないで振れるように体に覚え込ませることで、俺から一本ぐらいとれるようになるかもな」
らちのすけにそう言われ、嬉しそうな信吉だった。
そこに廊下を駆けて来る足音がした。
「コトハさん!どこですか、出てきなさい!!」
足音の正体は棗(なつめ)先生だった。
「どうしたんですか、棗(なつめ)先生?」
慌てて駆け寄った松五郎先生に棗(なつめ)先生は
「またですよ、松本先生。もうコトハさんには付き合ってられませんわ!」
怒っていてもきちんと松五郎先生を苗字で呼ぶ棗(なつめ)先生。
「コトハがどうかしましたか?」
らちのすけも聞いてみる。
「逃げたんですよ、私の授業から!もう、どこに行ったのかしら。もう、毎度毎度」
コトハが授業を抜け出すなんて思いもしなかったらちのすけは、ビックリして松五郎先生に聞いた。
「コトハがあれだけ楽しみにしていた寺子屋を抜け出すなんて事があったのかい、松五郎」
「いや、いつもは真面目に授業を受けているんだが。なぜか棗(なつめ)先生の時だけ勝手な事をするんだ、どうしたものかならちのすけ」
らちのすけは考えた。
幼い頃から戯(たわむ)れに教えた剣術のせいで、コトハはオスっぽく育ったのではないかと。
「俺のせいでメスらしい事が苦手になってしまい、授業を受けるのが苦痛で逃げ出したのかもしれないな」
あいた、しまったと育て方を間違えた事に気付かされたらちのすけだった。

その頃当のコトハは松五郎塾から抜け出して土手の上で一匹で木刀を振りながら稽古(けいこ)をしていた。
「正眼(せいがん)の構(がま)え」
スッと前に構(かま)えるコトハ。
そのまま上に上げる。
「右上段の構(かま)え」
そして振り下ろす。
「下段の構(かま)え」
そして剣道で言う脇(わき)構(かま)えを更に後ろに持っていって陰(いん)剣(けん)。
これを何度も繰り返しながら木刀を振り続けるコトハ。

しばらくして、遠くから呼ぶ声が聞こえてきた。
「「コトハー」」
「コトハさーん」
呼んでいたのは信吉とらちのすけ父さんと棗(なつめ)先生だった。
「どうしたの父ちゃん、それに棗(なつめ)先生に信きっぁんまで?」
「お前が松五郎塾から居なくなるからだろ!」
らちのすけ父さんは、コトハを怒鳴りつけた。
「何で居なくなったんだ!」
「だ、だって女メスのたしなみって言われても何やってもつまんないし、上達はしないし。剣の稽古(けいこ)の方がよっぽどましだよ」
こりゃ、育て方を本気で間違えたなと心底(しんそこ)母親の居ない生活が悪い事を知るらちのすけだった。
「だからって、塾から居なくなることはないだろう。凄(すご)く心配したんだぜ」
信吉はほっとした顔をした。
「そうですよ、コトハさん」
棗(なつめ)先生は、ちょっと怖い顔で固まってしまった顔を見せないように努力しながら話しているようだ。
何せ、松五郎塾を抜け出したのは一度や二度ではないからだ。
「すみません、塾を抜け出したのは謝ります。でも、たまには剣の稽古(けいこ)もさせてください」
真面目な顔で頼み込むコトハ。
「仕方ないですね。では、私からの課題を解決出来たら剣の稽古(けいこ)に行くというやり方でどうでしょう?」
意外にもあっさり稽古(けいこ)の参加を認めた棗先生。
「良かったな、コトハ」
信吉が、コトハが稽古(けいこ)出来ることを我が事のように喜んでくれた。
「頑張ってくださいね、女メスのたしなみが出来ない人は稽古(けいこ)する資格はありませんから!!」
何か考えがあるような口ぶりの棗(なつめ)先生。これは今まで以上に厳しくされること間違いなしだと、ちょっぴりコトハが可哀想(かわいそう)になるらちのすけ父さんだったのでした。



























第三話酔っ払い二匹組
「はぁ、ヤクザの用心(ようじん)棒(ぼう)で賭場(とば)に出入りする日が続いて眠たいなあ。今日は休みで良かった」
賭場とは丁半(ちょうはん)博打(ばくち)で有名な賭け事の場である。
開催されるのは夜が多く、しかも違法な為、らちのすけは警護(けいご)に駆り出され連日寝不足気味だった。
それでちょっとばかりふらついていたらちのすけは、辻(つじ)で人、いや猫にぶつかってしまったのである。
「いてっ⁉誰だ、フラフラ歩きやがって!危うく商売道具で怪我しちまうとこだったじゃねえか」
派手に鉋(かんな)や釘などをばらまいた大工は、怒ってカンカンだ。
「おっ、おおすまん。ぶつかって」
とらちのすけが謝り、互いに顔を見合わせるとなんとぶつかったのは長屋の隣のコトハと仲良しの信吉の父親、大吉だった。
「あらまっ!お宅は隣の原田様じゃないですか」
「そういうあなたは隣の大きっぁん」
「こんな刻に会うとは仕事はどうなすったんですか?」
釘を拾いながら質問する大吉。
「いやぁ、早く終わりましてね。このまま帰ろうか考えてたところなんですよ」
らちのすけも釘(くぎ)を拾うのを手伝いながら答えた。
「そういえば、お宅のコトハちゃん頭が良いそうじゃないですか」
「いやいや、算額の方は信吉君の方が良いらしいじゃないですか。おまけに剣の筋もいい」
互いの子供を褒(ほ)めあっているうちに釘(くぎ)を拾い終わったところで、大吉は提案した。
「どうです、私のおごりで一杯」
「おっ、良いですね♪」
誘(さそ)われて嬉しそうならちのすけ。
「もう少し信吉の剣の腕について聞きたいですし」
「こちらだって居ない間の子供達の暮らしぶりについて聞きたいですし」
と二匹は子供達をだしに飲む計画を立てたのだった。

大吉がらちのすけを連れて行ったのは、煮売り居酒屋八の字という所だった。
「ここ、ここの料理が簡単ながら安くて美味いんですよ」
大吉はそう言うと畳の一画に座り勝手に注文し始めた。
「熱燗(あつかん)二つと、それと煮物を二人前」
煮売り屋とは酒も飲めて、料理も持ち帰れる店で、だいたいが座敷か店先の縁台(えんだい)で食べるといった風な所だ。
住居兼店舗なので店自体はそれ程広くはない。
だが、煮物を一口食べてらちのすけはビックリ。
おすみちゃん家の小料理屋浪花屋の味にも劣(おと)らない美味しさ。
おまけに酒は、水で薄(うす)めるのが常識だが、その辺の安居酒屋に比べると薄め具合が低い。
「大きっぁん、あんた良い店知ってるね!」
らちのすけは、この店をおおいに気に入ったのだった。
「ところで、先日は息子に稽古(けいこ)をつけてくれたようで。あの日は、信吉のやつ大喜びで帰って来たんでさあ」
「それは良かった。俺自身、人に稽古(けいこ)をつけてやったことが無いからどうだったか気になっていたところでね」
里芋(さといも)を口に運びながら、ほっとした様子のらちのすけ。
「しかし、あの日はうちのコトハが松五郎塾を抜(ぬ)け出した日でもあった。信吉君には迷惑をかけた、すまなかったと伝えてください」
頭を下げるらちのすけ。
「そ、そんな頭を上げてくだせえ。お侍様に頭下げられた日には、こちとら困ってしまいます‼」
慌ててらちのすけの頭を上げさせる大吉。
「子供達は幼なじみなんですから、遠慮(えんりょ)しないでくだせえ」
そう言いながら、らちのすけの杯(さかずき)に酒を注ぐ大吉。
「そうですか♪」
らちのすけも酒を大吉の杯(さかずき)に注(そそ)ぎ返した。

「それにしても近頃のお侍はいけねえ」
鶏肉を探していた大吉がふと漏(も)らした。
「なにがです?」
「浪人といえらちのすけ様の前でなんですが、近頃のお侍は気位(きぐらい)ばかり高くていけねえ」
「と言うと?」
杯(さかずき)をあおるらちのすけ。
「いやね、この前浪人とおぼしきお侍(さむらい)に仕事の弟子がぶつかられましてね。どこ見て歩いておると怒鳴(どな)られたあげく、その日の給金(きゅうきん)全部スラれたらしいんでさ」
「ほう、すると食うに困った浪人が巾着(きんちゃく)切(き)り(江戸時代のスリの呼び方)を働いたと。その上、弟子の方からぶつかったと皆に聞こえるように言ったと、こういうことですか」
そうなんですよと悔(くや)しそうに畳を叩く大吉。
「そりゃ、いけねえな。いくら侍(さむらい)といえ、おごり高ぶってものを言うのは」
大吉の意見に賛同したらちのすけ。
「そうですよねえ、らちのすけ様みたいなお侍(さむらい)が隣で良かったですよ」
分かってもらえて嬉しそうな大吉。
らちのすけは、侍の品格が落ちていってるなと椎茸(しいたけ)
をつまみながら頭を悩ませたのだった。

それからお互いに杯(さかずき)に酒を注ぎ合いながら煮魚だなんだと食べ、酒をおかわりしてぐでんぐでんに酔った二匹。
「いりゃ?酒の足(た)らん。おかわりぐらい用意しげなんか」
「あっ、ほんとれすな~。おかわりくだせぇ~」
とろれつが回らないで言った大吉。
「今日は好い(すい)とぉだけ飲めれよかやね」
らちのすけもろれつが回らなくなってきた。
「いっつもいっちゃんうれん娘に、た(た)いのい(いがい)にしっちけっち言われてうるしゃいっちゃん」
「たいのいってなんれすか?」
「ばーかの、そげな事もわからんちん!はかたかたの方で産まれたもんらから」
いきなり怒鳴(どな)ったらちのすけ。なんだか言葉のところどころに博多弁まで混じり出した。
「お客さん!もう店閉めやすぜ」
「あっ、そうれつか」
店の主人に言われて返事はしたものの、いっこうに腰を上げない大吉。同じくらちのすけ。
「も~、家はどこでやすか?お侍(さむらい)さん方」
主人の問いに
「へっ、魚屋や八百屋がならぶとーりのうやの喜平なかやですよ~♪」
と答えた大吉。
「はいはい、分かりました。このお客人ちょっくら送ってくるわ」
「はいよー」
主人は女将(おかみ)さんにそう告げると二匹を送って行くことにしたのだった。

「おそいですね、おかえおばしゃん」
「そうねえ、またどこぞで飲んでるのかねえ」
喜平長屋の木戸の前で待ち構えているのは、大吉の奥さんの楓さんとアオ。
「ぎょーらしかばい、しゅーじん」
大袈裟(おおげさ)だよ、主人と言いたいらしいらちのすけ。
「はいはい」
博多弁の分からない主人はあいまいに返事をして誤魔化(ごまか)した。
「あ~、あそこれすよ。おかえ~」
大声で楓さんの名を叫ぶ大吉。
「あんた酒臭いし、酔っ払ってるね。大声出したら近所迷惑だよ!」
カンカンの楓さん。
「あー、一緒に飲んでたの父ちゃんだったんでしゅね!道理で二匹して帰りが遅いと思ったでしゅ」
「しかも、誰だか送ってもらって」
楓さんがすまなそうに店の主人に頭を下げた。
「いや良いですよ、こんなのうちの店では日常(にちじょう)茶飯事(さはんじ)ですから。眠ってしまわれなかっただけ良いですよ」
しきりに謝る楓さんと、良いですよと手を前で振る店の主人。
「ありがとうございます、お父ちゃんが迷惑かけました」
アオもお礼を言ってから店の主人はようやく帰っていったのだった。
「木戸閉めますよ」
そこに、後ろから喜平さんの奥さんのお松さんの声がした。
「ちょっと待ってください、うちのが酔って座り込んじゃったんで」
「おかえさん、コトちゃん達呼んで来て加勢(かせい)してもらうでしゅよ」
らちのすけなんか侍(さむらい)だというのに、その場でイビキをかき始める始末だ。
「そうね、うちの信吉も呼んで来てくれる」
「分かりましゅたー」
慌てて木戸をくぐるアオ。
「仕方ないわねえ、じゃあ後四半刻(しはんとき)待ってあげるから、早く中に入れてちょうだいね」
「すみません」
あっちにもこっちにも頭を下げてばかりの楓さんだった。














第四話ヒメちゃんのある一日
その日は、朝からモモ先生の所に呼び出されたヒメ。
行ってみるとモモ先生の仕事場の前には、同じく呼び出されたのだろうおすみちゃんが居た。
ここしばらく仕事が無くて呼び出されなかった二匹。
「また、久しぶりにお披露目会かな?」
嬉しそうなヒメ。
「そうだと良いわね」
うなずくおすみちゃん。
しかし、中に入ってみるとなんだかどんよりと暗い感じが漂っていた。
「すみませーん、ヒメとおすみですけど」
「あら、よく来てくれたわね!」
慌てて駆け寄って来たモモ先生は、顔を輝かせた。
「今ね、お上(かみ)からお触れが出て南蛮の物が厳しく規制されてるの」
困った風なモモ先生。
「だから、しばらくお披露目会がなかったんで+すね」
納得の二匹。
どうりで、お披露目会会場裏のモモ先生の仕事場は落ち込んだ様子で着物職人も居ない訳だ。
「でもそれじゃ、何であたし達を呼んだんですか?」
疑問が残るヒメ。
「それでね、女メスだけじゃなくて男オスのお披露目会もやってみようと思っているの」
お上(かみ)からお触(ふ)れが出ているのに大胆(だいたん)発言(はつげん)のモモ先生。
「えっ、それって開催(かいさい)しても良いんですか?」
慌てるおすみちゃん。
「でもね、ひいきの侍(さむらい)の奥方(おくがた)によれば男オス達が女メスばかり派手になってと言っているのを聞いたらしいの」
「えーと、つまりそれは・・・」
ヒメもおすみちゃんも気付いて顔を見合わせる。
「そっ、ひがんでるのよ。要するに」
だからって大丈夫かなぁと不安な顔のおすみちゃん。
「でも、男物となったら着てお披露目会に出る人いないじゃないですか」
そんな不安なおすみちゃんをよそに、モモ先生の話は進んでゆく。
「だから来てもらったの。あなた達に、出演者の男オスの心当たりはないかと思って。もちろん、他の出演者の女メス達にも聞いてあるわ」
「えっ!」
「難しそう」
困惑する二匹。
でもすぐに、ピンときたヒメ。
「そうだ!コト姉に頼んで見れば良いんだ」
「そうだった、ヒメちゃん姉妹が居たんだった。良いなぁ」
おすみちゃんは人間の一人っ子だ。その点ネコは、最低同時に三匹から産まれる。
「それじゃ、ヒメちゃんが心当たりがあるのね」
助かったと、ほっと胸を撫で下ろすモモ先生。
「決まったら入場券あげるわね、二人には」
と言われて、モモ先生の仕事場を後にした二匹だった。

「ただいまー、コト姉帰ってる?」
アオ姉に聞くと
「寺子屋終わって、昼ご飯を食べてとっくに瓦版屋の仕事に行っちゃったでしゅよ」
と言われた。
「あり、新しいネタがあるって言って瓦版に書いてもらえるように頼もうと思ってたのに」
困ったヒメ。
ヒメはコトハの働いている瓦版屋一番屋でこの話を扱ってもらおうと思っていたらしい。
それなら、隣の信きっつぁんに寺子屋で探してもらおうと思いついたヒメは、早速頼みに行った。

「信きっつぁんいますか?」
戸を叩くと出て来たのは楓さんだった。
「ごめんね、信吉なら今コトハちゃんの仕事を手伝うとかで、出掛けちゃってるのよ」
すまなそうに言う楓さん。
「あっ、そうですか」
多分仕事は口実で、二匹でどっかに出掛けている可能性もあるなと思ったヒメだった。
そこで町中などを探してみる事にしたヒメ。
一番に瓦版屋の一番屋に行くと、オスを連れてコトハが来た事は間違いなかったようだ。
「やっぱり仕事かなあ?」
疑問をつのらせながらもヒメは、大通りの店が立ち並ぶ周辺や松五郎塾の近くの土手などを探したが見当たらなかったのだった。
しかし江戸は広い。諦めかけたヒメは夕暮れのカラスの鳴き声で「しまった!こんな事しなくても帰って家にいれば帰って来るじゃんコト姉は」と徒労(とろう)だったことに気付いて疲れてしまったのだった。
仕方ないの渋々(しぶしぶ)帰るとコトハはまだ帰ってきていなかった。

その夜、ヒメは夕食の時帰って来たコトハに聞いてみた。
「信きっつぁんとどこ行ってたの?」
食べていたご飯で、おもいっきりむせたコトハ。
実は、瓦版の取材がてら二匹で逢引(あいびき)していたことは内緒である。
「どうした、コトハ?」
事情を知らないらちのすけ父さんが、疑問を口にした。
アオからもらった湯呑(ゆのみ)の水を飲みながら、仕事で出掛けただけだよと、否定したコトハ。
納得してない様子のヒメ。
「それよりコトちゃんに用事があったんじゃないんでしゅか、ヒメちゃん」
ヒメがコトハに話があったことを思い出したアオ。
『おっ、助かったアオ姉』話がそれてホッとしたコトハ。
「そうなの、コト姉。実はモモ先生がね・・・」

詳細を聞いたコトハは、
「う~ん、男オスのお披露目会か~、難しいな。明日信きっぁんに話して探してもらうかな。それとも瓦版で呼びかけるかな。しかしお上(かみ)は近頃瓦版の内容にまで首を突っ込んで規制しやがるからなぁ」
と考え込んでしまった。
考える事は、姉妹そろって同じだったわけだ。









第五話お披露目会男子オス選抜会
次の日、信吉に聞いてみると、松五郎塾で選抜会をやらせてもらったらどうかと言われた。
「大丈夫かなぁ、松五郎先生許可してくれるかな?」
不安なコトハをよそに、早速朝一で塾に着くと相談し始める信吉。
「おお、それは着てみたい」
松五郎先生の方が乗り気になった。
「ええっ!松五郎先生出たいんですか、男オスのお披露目会?」
「大人物があればの話じゃよ」
と非常に乗り気で許可してくれたのだった。

選抜方法はいたって簡単。
出演してみたい人から順に、モモ先生の持って来た、出来たてホヤホヤの着物を男オス達に試着してもらい、モモ先生が直接決めるという方法だ。
「ねえ、信きっぁん・・・」
なぜか、恥ずかしそうに話しかける、コトハ。
「出てみてくれないかい、お披露目会」
「へっ?い、良いけど」
そんな才能無いと思っていた信吉は、コトハに頼まれてビックリ。
「あたい、信きっぁんの南蛮着物姿、見てみたいんだよ」
意外と可愛い一面を見せるコトハだった。

次の日、急きょお披露目会男オス選抜会が松五郎塾で開催されたのだった。
「まあ♡かわいい!」
信吉やその友達を見るなり抱き締めるモモ先生。
「若いって良いわぁ~♡」
とゲイ全開だ。
「先生、真面目にやってください!!」
「あら、私はいたって真面目よ」
こんな人とよく付き合えてるなヒメと、逆に感心してしまいそうになるコトハ。
「では、この“こおと“と言うものを着物の上から羽織(はお)ってみてください♡」
モモ先生が取り出したのは、何やら首元に止める箇所(かしょ)が1つの、膝(ひざ)丈(たけ)まである長いのが特徴の羽織(はお)り物だ。
「うわ、長くて冬暖かそう」
「でもこれじゃ、着物着てるの分からなくなるな」
と、口々に意見が飛び交う。
「前を止めなくても良いし、好きな着方を選んでみて♡」
もう、モモ先生は仕事を忘れて男漁(あさ)りを始めそうな勢いだ。
「せ、先生真面目にやってくれんかの」
松五郎先生が注意する程だ。

そして、ようやく決まったお披露目会出演者は五人。その中に信吉も入っている。
他に、なぜか松五郎先生とらちのすけも出る事になった。
「なぜ俺が出なきゃならんのだ」
嫌がるらちのすけ。
松五郎に呼ばれてホイホイ出てこなけりゃ良かったと後悔(こうかい)した。
「いいじゃないか、らちのすけ」
松五郎とらちのすけのそんなやり取りに気付いたモモ先生。
「あら、不満?男オスは、冬に向けてのこおと祭りみたいな感じでやりたいから、格好良い大人が必要なの♡」
と、らちのすけに腕を絡めるモモ先生。
「や、やめてくれ。俺には男色主義はない⁉」
慌てふためく、らちのすけだった。

その日の午後、早速モモ先生の仕事場に呼ばれた五人と松五郎先生とらちのすけ。
「何で俺まで・・・」
まだブツブツ言うそうならちのすけ。
「俺は日本の着物以外の着物は、着にくくて嫌だ」
「そんな事はないぞ、ほら」
と、松五郎先生が早速茶色い、ボタンが少ないこおとを羽織(はお)って見せた。
「着心地良いぞぉ‼着てみないか?」
「だから‼俺は着たくないって言っているだろうが!」
「そんな事言わないで♡」
二匹が言い争っている間に、こおとをらちのすけにかけたモモ先生。
「ほら、こうやって袖(そで)を通さなくても、着物の上から羽織(はお)るだけで。どう?」
無理矢理(むりやり)着させられたらちのすけ。
しかしなんだか、満更(まんざら)でもない様子。
「ん、う~ん。なかなか・・・」
良さそうと言いそうになって、慌ててどもるらちのすけだった。
「あなた達には、こっちを着てもらうわ」
そう言ってモモ先生が取り出したのは、白や黒などの柄(がら)に襟(えり)の付いたボタンがいっぱいで、袖(そで)にまでボタンが付いたものだ。
「これ、しゃつって言うの」
信吉達五人はそれを着せられ、ずぼんを履かされ、その上からこおとを羽織(はお)った。
とそこに、誰かやって来た。
「こんにちはー」
見るところ簡易(かんい)の筆や墨(すみ)を入れる矢立(やたて)を持っている。
「紹介するわ、絵師の山本様よ。今度、南蛮着物ばかりの本を書いてもらおうと思って呼んだの」
それは現代で言う所のファション雑誌のようなものだ。
「皆、着替え終わったら並んでみて。山本様に誰から描くか決めてもらうから」
左端に信吉が並び始めた。
子供達五人と大人二人が並び終わると、山本はう~んとうなりながら皆にああだこうだと姿勢の指示をだし、らちのすけに決めた。
「それじゃ、らちのすけ様以外帰って良いわよ。らちのすけ様が終わり次第、順々に来てもらうからね。あと、お披露目会の日時は決まり次第松五郎先生に知らせるわね♡」
モモ先生が手際よく解説して、その日は解散となった。らちのすけだけを除いて。
「ええっ‼まだ出るとも言ってないのにー!」
叫ぶらちのすけだった。





















第六話男オスのお披露目会と本
男オスのお披露目会の当日。
舞台そででは、ニコニコしながら松五郎先生がお客の入りを見ていた。
「おお、なかなかの客入りだなぁ」
男オスのお披露目会では、出演者の載った本を売るといった趣向(しゅこう)にした、モモ先生。
「き、緊張するなあ」
そのせいか、そわそわする信吉。
「大丈夫、俺が付いている」
仕事にはギリギリ間に合うとのことで、とうとう出演することになったらちのすけが、信吉を励(はげ)ました。

「これから、男オスのお披露目会を開催いたします」
司会のオスネコが始まりの合図を述(の)べた。
最初は信吉。
洗いざらしのクシャッとした感じの青いしゃつに、紫(むらさき)のボタン式のこおとだ。
「キャー、信吉くーん」
「格好良いー!」
松五郎塾の生徒がたくさん見に来ていた。
それから、残り四人の生徒が出終わると、松五郎先生の番になった。
松五郎先生は紺色(こんいろ)の着物に茶色い、ぼうし付の紐(ひも)のような形をした留め具のこうとだ。
「こちらは、着物に合わせる形のこおとになります」
司会のオスネコが説明した。
「うわぁ、凄(すご)い!」
日本の着物に南蛮の着物を合わせるといった斬新(ざんしん)さに、驚(おどろ)きの声が上がった。
「わぁー、買っていこうかしら」
子供や旦那に買っていってあげようと思う女メスの声が飛び交った。
そして、らちのすけの番になった。
枯(か)れ草色の着物にネズミ色のボタンが一つで後は張り付けて止める形のこおとだ。
「あれ、有名なおヒメちゃんの侍(さむらい)のお父さんよ」
「ほんとう?」
なぜか知れわたっていたらちのすけ。
客の声に驚(おどろ)き、歩いていた足がもつれかけて四足歩行になるところだった。

その後は、出演者の載った本の即売会(そくばいかい)が催(もよお)された。
信吉やらちのすけ目当ての女メス達が、とぶように買っていったのだった。
「信吉君着こなしが爽(さわ)やか♪」
「あら、らちのすけ様も大人の雰囲気(ふんいき)で格好良いわよ」
とその場で本をめくり、ワイワイ言い合っている。
「あら、この子の着てる着物、うちの子に似合いそう」
「そうね、これなんか出てこなかった着物じゃありません?」
お披露目会では出さなかった格好の南蛮着物にも、注目が集まった。
そのお陰で南蛮着物の予約がさっとうし、受け付けは嬉しい悲鳴をあげるはめになったのだった。

その次の日。
らちのすけが、上総(かずさ)の国までヤクザ見習いを送って行く日がきた。
「三匹とも良い子にしてるんだぞ」
ヤクザの仕事場まで、見送りに来た三姉妹に声をかけるらちのすけ。
「早く帰ってきてね、父ちゃん!」
悲しそうに別れを惜(お)しむ、ヒメ。
「道中気をつけてでしゅ」
無事を祈るアオ。
「父ちゃん、早く決まった仕事見つかると良いな」
仕事の心配をする、コトハ。
「あっ、娘さん達見送りに来たんですね」
送って行くヤクザ見習いが気づいたようで、らちのすけに声をかけた。
「おう、自慢の三姉妹よ!」
「皆、父ちゃん早く帰れるように急いで上総(かずさ)まで送ってもらうからね。お父ちゃん借りるよ」
優しく話しかけられた三姉妹。
二十歳位に見えるのにしっかりした身なりに見えるヤクザ見習い。
「はい、父ちゃんをよろしくお願いしましゅ」
となぜか逆の事を言うアオ。
「何言ってるんだ、送って行くのは父ちゃんの方だぞ」
突っ込んだコトハ。
「行ってらっしゃい父ちゃん、無事で帰って来てねー」
手を振る三姉妹。
「じゃ行ってくるなぁー」
と言って別れを惜(お)しみあう、三姉妹とらちのすけだった。

























第七話現代で言うところのストーカー
「あーあ、遅くなっちゃった」
暮れ(午後)六つ(七時)半(頃)ヒメは、暗くなった大通りの道を、モモ先生の仕事場から急いで家まで帰っていた。
男オスのお披露目会で売った本が予想以上に好評だったため、女メス版も作るということになり、呼び出されたヒメ。
ヒタヒタヒタ・・・
あれ?
ヒタヒタ。
ヒタ。
何やら自分の足音の他に、追いかけて来るような足音がした気がしたヒメ。
ちょうど長屋の前だったため、急いで木戸をくぐり、家に帰ったのだった。

次の日。
ヒメはおすみちゃんと出掛ける約束をしていた。
「ヒメちゃん、どこ行こうか?」
待ち合わせ場所のおすみちゃん家(ち)の小料理屋浪花(なにわ)屋の前で、ヒメが待っていると、中からおすみちゃんの声がして顔を出した。
「モモ先生のたるとき屋」
すかさず答えたヒメに
「ええー、またぁ!今月何回目だと思っているの、ほんとにヒメちゃん甘いもの好きだね」
と、おすみちゃんが呆(あき)れた声をあげた。
「へへっ♪」
笑っているヒメにおすみちゃんが脅(おど)しをかけた。
「笑ってる場合じゃないわよ、お披露目会の着物入らなくなっても知らないわよ」
「ええっ‼それ困るー‼」
現代と違って大量生産が整っていないので、いちいち採寸して南蛮着物を作っているため、今の採寸で作っているのが入らなくなってしまうと言いたいらしいおすみちゃん。
「ぶー!意地悪(いじわる)、あたしはそんなに太りませんよーだ」
そんな事を言い合いながら、ヒメとおすみちゃんが行くと、たるとき屋はすでに長蛇(ちょうだ)の列と化していて入れなさそうだった。
しかし、そこはモモ先生の関係者。店の裏に回ると二匹は扉を開けて、中の作業員にあいさつして、サクッと立ち入りの許可(きょか)を得(え)たのだった。
ヒタヒタ。
その時また、夕べのように足音が聞こえた気がしたヒメは、立ち止まった。
「んっ?立ち止まってどうしたの、おヒメちゃん」
先に扉をくぐりかけていたおすみちゃんに聞かれてヒメは、
「ううん、何でもない」
と答え後(あと)から入っていった。

中は一心不乱(いっしんふらん)にけいきなどの南蛮菓子を作る従業員とそれを買いに来た客の熱気(ねっき)で満(み)ちていた。
「良い、おヒメちゃん。いつものように作るお手伝いをしてそのお礼にもらって帰るんだからね」
毎度の事ながら言い聞かせる口調のおすみちゃん。
「うん、そうしないと店にもお客さんにも悪いもんね」
そう言うと二匹は、割烹(かっぽう)着(ぎ)に着替えて生くりいむを泡立てる作業に加わったのだった。

それからしばらくして、
「あのー・・・」
店の表側でやけにのんびりした声で従業員に話しかける男の客が居た。
「あそこで働いてるの、おヒメちゃんとおすみちゃんですよね」
「ああ、はい。そうですが」
「えっ!うそ、あのおすみちゃんとおヒメちゃん?」
新人従業員が簡単に答えてしまったせいで、聞いていた別の客にまで伝わり、店の中がざわつき始めた。
「握手させてください‼」
「いやいや、この紙に名前書いてくださいよ!」
調理場に繋(つな)がる通路は、従業員が止めに入ったはいいが、ヒメ達のひいきが集まって仕事どころではなくなってしまったのだった。

「しょうがない新人だな、悪いけど裏から帰ってもらえるかな?これじゃ仕事にならんからな」
店を任されている職人の主任で、モモ先生の片腕の男の人に頼み込まれて帰るはめになってしまったヒメ達だった。
「ちぇ、お菓子はおわずけか」
とのんきな事を言うヒメに
「おヒメちゃん状況分かって言ってる?」
とたしなめながら、おすみちゃんが裏口を開けようとしたが開かない。
何やら声がしているような気配がある。
もしやと思ったが、もう遅い。
裏の出入り口まで突き止めて、押し寄せていた。
「ちっ、あの新人ただじゃおかねえ!店が営業出来なくなったらモモ先生にどんだけ叱られると思ってるんだ全く!」
主任の男が悪態(あくたい)をついたが、だからって帰れるようになる訳ではなく、仕方なくヒメ達は握手や名前書きをしながら揉(も)みくちゃにされてようやく外に出られたのだった。

「ぷはぁー、やっと出られたわ」
「もう、しばらく店には行けないね」
残念そうなヒメ。
ガサガサ
「?」
あれぇー?と後ろを向いて首をかしげるヒメ。
「おヒメちゃん、さっきから何気にしてるの?」
「何か昨日から誰かにつけられている気がしてるんだけど・・・おかしいなぁ?」
首をかしげるヒメにおすみちゃんは
「ええっ‼それ早くお役人様に届けなくちゃ、怖くないのおヒメちゃん」
とヒメ以上に驚(おどろ)いたのだった。
「えー、それってあたしのひいきの人じゃないの」
とちっとも怖(こわ)がっている様子がないヒメ。
「もし、夜道で襲(おそ)われたらどうするの?」
おすみちゃんの問いにようやく
「あっ、それは嫌かも!」
とつけられる怖(こわ)さにようやく気付いたヒメ。
それじゃ遅いって、おヒメちゃん・・・
と心の中で呆(あき)れかえるおすみちゃんだった。

そこへ、何やら使いのようなものが現れた。
「あの、原田ヒメさんですよね。ある人からこれを渡してくれと頼まれたんでさぁ」
と、そのオス猫は懐から文(ふみ)を取り出すとヒメに押し付けて、ヒメ達の制止も聞かずさっさと立ち去って行ったのだった。
不審(ふしん)に思いながらも、ヒメが文(ふみ)を開いて見ると文(ふみ)にはこう書かれていた。
『原田ヒメさん、あなたを好(す)いてしまいました。つきましては私と会っていただけないでしょうか。越後屋(えちごや)福(ふく)太郎(たろう)』
しかし、かわいそうかな。字があまり読めないヒメとおすみちゃん。
ヒメに至(いた)っては自分の名前がやっとだ。
「読めなぁい。コト姉に聞いてみるから明日だね、これ読めるのコト姉だから」
「そうだね、なんだかおヒメちゃん宛(あて)みたいだし」
これにて、ヒメを付け回すやからが分り少しほっとしたヒメとおすみでした。






第八話てんてこまいの松五郎塾
「大変だぁ!」
息せき切って喜平長屋に帰って来たのは、コトハだった。
「どうしたの、コトちゃん?」
家で待っていたアオに問われて
「いや、それが、松五郎塾が大変なんだよ」
と言って事と次第(しだい)を話し出した。

なんでもこのところ入塾希望者が増えているらしく、特に男オスの希望者が多いらしい。
しかも皆、剣術(けんじゅつ)の稽古(けいこ)をつけてほしいと言う者ばかり。
「そうなんだ、楽しそうだね♪」
とアオ。
「それどころじゃないよ!」
それもそのはず。皆一様に、原田らちのすけ先生はどちらにと松五郎先生に聞いてくるのであった。
「ちょっと上総(かずさ)まで出ておる」
と松五郎先生がいうもんだから皆、帰って来たら松五郎塾の先生に戻るのだと信じて疑(うたが)わないらしく、生徒は増える一方だそうだ。
「それのどこが大変なの?」
首をかしげるアオにコトハは
「そんな調子で父ちゃんに憧れる素人ばかりが集まってるんだぞ。教える方は足りなくなるだろう」
と言われようやく
「ああ、そうだね」
とうなずくアオだから話がややこしくなる。
「今日なんか棗(なつめ)先生の授業の日だったんだけど、手が足りなくて、あたいまで駆り出される始末(しまつ)だよ」
とそこまで話終えるとアオの後ろで何かがはっている音がした。
アオの後ろを覗(のぞ)いたら、そこには横たわるヒメの姿があった。
「ど、どうしたんだあ?ヒメ」
と驚く(おどろく)コトハ。
「お腹(なか)が・・・痛い・・・」
「朝は元気だったじゃないか、昼何食べた?」
「けいき」
そこまでヒメが話すと、入口の扉を叩く音がした。
「はぁーい」
のんびりとアオが返事をして扉を開けると、そこにはおすみちゃんの姿があった。
「いつまでたっても来ないから迎(むか)えに来ちゃった」
しかし、ヒメは起き上がることも出来ずにうなったままだ。
「どうしたの、おヒメちゃん?」
心配そうにヒメに駆(か)け寄(よ)るおすみちゃん。
「けいきの食べ過ぎでバチが当たったんだ、きっと」
とこれまたのんきに構(かま)えているコトハにおすみちゃんは
「何言ってるんですか!すぐお医者様に見せなきゃ、おヒメちゃんのことだからまた人間用食べたんでしょ!」
「だって、くりーむ少ないし美味しくないんだもん。猫用」
この期(ご)に及んで言い訳(わけ)するヒメ。
「あっ、そうか!」
納得(なっとく)した様子のアオ。
「どうしたのアオ姉」
何に納得(なっとく)したのかコトハが聞くと
「猫用のけいき見たことあるけど、白いのが少なかったのはそのためかぁ」
と、知っていたにも関わらず猫用がある理由がわからず、ヒメが食べるのを見ていたのに止めなかったアオという間抜(まぬ)けなことが分かっただけだった。

それから急いで医者を連れて来て見てもらうと、やはりくりーむ中毒だと言われたヒメ。
お腹痛(なかいた)を止める薬をもらい、安静(あんせい)にして、これからはくりーむを控(ひか)えることと言い渡し医者は帰って行った。
「モモ先生が言ってたわ、人間と猫じゃ栄養素の量がまるで違うって」
食べ物に関(かん)しては、やはり料理屋の娘だけあって物知りなおすみちゃん。
「ありがとな、助かったぜ」
コトハがお礼を言うと
「いいえ、どういたしまして。おヒメちゃんお大事にね」
と唸(うな)るヒメに言い渡(わた)しておすみちゃんは帰っていったのだった。

次の日。
「皆さん喜べ、あの松五郎塾に二三日中に原田らちのすけ先生が帰って来るって話だよ!瓦版屋一番屋が仕入れた取って置きだよ」
その瓦版は、松五郎塾の生徒や家族を中心に瞬く間に売れていったのだった。
しかし一体誰がこの事を一番屋に教えたか。
それはコトハだ。
松五郎先生が困って、らちのすけに手紙を書いて返事をもらった内容を宛先(あてさき)を聞かれたコトハがこっそり盗(ぬす)み見たのだ。
コトハだって、早く父ちゃんに帰って来てほしい一匹だ。良い記事が最近なかった一番屋は、それを聞いて売れると思い記事にしたって訳だ。

「あおってどうするおつもりですか、先輩!」
松五郎塾が困り果てているのは百も承知(しょうち)のコトハは、この記事を書いた一番屋の先輩に詰(つ)め寄(よ)った。
「ごめんごめん。だって瓦版取りまとめの役の指示なんだよ」
好きな事だけ書いてりゃ儲(もう)かる訳じゃないんだなと現実を知るコトハだった。

一方、とうの松五郎塾は、部屋も先生も足りない状況で、先に入った者から後(あと)から入った者に教えるといった仕組みが出来上がっていた。
「だから!!お前の名前は三太だろ、こう書くんだよ」
書いて見せる先輩に
「こうですか?」
と後輩が書いたのはミ太に見えるような字だ。
こんな調子で授業の方は、遅々(ちち)として進まないのに剣術(けんじゅつ)の日になるとやる気を出す奴ばかりだから、困ったものだ。
コトハも、教える側に回され、てんてこまいだ。
父ちゃん、早く帰って来てよー!と、叫び出したい毎日だった。










第九話辻占い煎餅って知ってますか?
ある日の明け方。
まだ人もまばらだというのに、たるとき屋にはもう人が並び始めていた。
それもそのはず、今日はたるとき屋の新製品『辻(つじ)占(うらな)い煎餅(せんべい)』の発売日だからだ。
辻(つじ)占(うらな)いとは、おみくじのようなことを辻(つじ)でやっていたから付いた名前だ。
そのおみくじを煎餅(せんべい)に入れて売っているのが、辻(つじ)占(うらな)い煎餅(せんべい)である。
しかし、そこはモモ先生の独自性(どくじせい)。
南蛮から伝わった焼き菓子、くっきいにおみくじを入れた『辻(つじ)占(うらな)いくっきい』というのを開発して新しい辻(つじ)占(うらな)い煎餅(せんべい)を作り出し、売り出すことになったのだ。
それを買い求(もと)める中に、この前ヒメに手紙を渡(わた)した使(づか)いとそれを書いた本人、福太郎がいた。
「若旦那(わかだんな)、なにもご自分で買いに来られなくても、あたしに言ってくだされば買って来ましたのに」
「いや、こういうのは自分で買ってこそ、意味があるんだ!」
「またまたぁ、そう言って実は、おヒメちゃんに会うのが目的なくせに。素直(すなお)じゃないですね、若旦那(わかだんな)」
図星をとられ、真っ赤になった福太郎。
とその時、たるとき屋が開店の刻限(こくげん)をむかえ、扉を開ける従業員の姿が現れた。
「本日発売の辻(つじ)占(うらな)いくっきいは、先着100箱限りですのでそれをふまえてお並びください‼」
店員のメスネコが叫(さけ)んで呼(よ)びかけている。
どうやら今日は、まだ試(ため)し売(う)りの様だ。
「これじゃ、皆の分までは買えそうにないな」
福太郎が呟(つぶや)くと
「あらま!いつもそんなこと考えない若旦那(わかだんな)が、これは珍(めずら)しい」
と、皮肉(ひにく)交(ま)じりに言われてしまった。
「それは、いやみか?」
「いいえ、とんでもございません‼」
そうこう言い合っているうちに順番が来て、店内に入るとお客でごった返していた。
「すいませんが、従業員の中に原田ヒメさんは居ますか?」
その辺の店員を捕まえて聞く福太郎。
「お姉さんの原田アオさんなら居ますが、どういったご関係で?」
じろりと睨(にら)まれ、
「ひ、ヒメさんのひいきの者なんですが・・・」
と福太郎がどもりかけた時
「ちゅいかのくっきい持ってきましたよー!」
と、奥から出て来たのはアオだ。
「あ、アオさん来てちょうだい」
「なんですかぁ?」
アオが駆(か)け寄(よ)ると、人込みでつまずいて福太郎にドッシーンとぶつかってしまった。
「すみまちぇん、どんな用件でしょうか?」
「いたた、あの、ヒメさんに渡した手紙の返事を聞きに来たんですが」
こんなネコが、ヒメさんの姉とは思えないという表情の福太郎。
「手紙でしゅか?そんな話は聞いてないでしゅね」
首をかしげるアオ。
「そんなはずはない!おい、いせじ!本当にヒメさんに渡したんだろうな、手紙」
「はい、確かに!」
と、いせじが手に持てないくらいの南蛮菓子を持って、福太郎の元に戻って来た。
「あ、明日も来るから聞いといてくださいよ!この越後屋(えちごや)福太郎の手紙の返事を」
「すみまちぇん、聞いときまちゅので」
アオが謝ると、福太郎は使いのいせじに商品を全部持たせたまま、帰って行ったのだった。

「ヒメちゃん!」
アオは、帰って来るなり寝ていたヒメを叩(たた)き起こした。
「手紙ってなんでしゅか?今日たるとき屋に、いつも行く越後屋(えちごや)の若旦那(わかだんな)が来て返事を聞かれたでしゅよ!」
ぷりぷり怒るアオ。
「あっ、忘れてた。コト姉に読んでもらおうと思っていたんだった」
そう言ってヒメが取り出したのは、ぐしゃぐしゃの紙切れだ。
「もう!人からもらった手紙をそんなにして」
ヒメからその手紙を取り上げると、ちょうど昼飯に帰っていたコトハの前に突き出したアオ。
「何だよ、これ?」
「こんなんじゃ、読みずらいと思いまちゅけど読んでください、コトちゃん」
仕方なく、箸(はし)を置いて手紙を受け取るコトハ。
「えーと、なになに、原田ヒメさん、あなたを好(す)いてしまいました。つきましては私と会っていただけないでしょうか。越後屋(えちごや)福太郎。って誰だよ、ヒメ?」
「多分、いつも行く店の若旦那(わかだんな)」
ヒメも、手紙の内容に困ったらしく、それ以上口にしない。うかつに返事をして、どうにかなったらと、思い悩む三匹。
そこへ
「今帰ったぞ、コトハ。これで松五郎塾は心配要(い)らんぞ!」
大声で帰って来たのは、父親のらちのすけだった。
三匹の様子に
「ん、お呼びじゃなかったかな」
こりゃしまった、調子(ちょうし)狂(くる)わせだったかなと皆を見回したらちのすけ。
「父ちゃん!良いときに帰って来てくれたよ」
喜ぶコトハ。
「へっ?」
「この手紙の主(ぬし)に断(ことわ)りに行くの手伝ってよ」
ゆっくりと手紙をらちのすけ父さんに手渡すアオ。
「・・・なにぃ!ヒメを嫁(よめ)に欲しいだぁ!」
「父ちゃん、そこまで書いてないはずだよ」
突っ込むヒメ。
「とにかくこれは早く、断りに行かないといけない。ヒメ、付いて来なさい」
「はぁーい」

「ごめんください」
やって来たのは江戸一番の繁華街(はんかがい)にある、呉服屋(ごふくや)越後屋(えちごや)。
「へい、何でしょう」
店番の番頭(ばんとう)に声をかけ、事と次第(しだい)を話した。
「実は、ここの若旦那(わかだんな)の福太郎さんから、うちの子のヒメ宛(あ)てに恋文(こいぶみ)をいただきまして」
「まあ、それはまた。すぐに旦那(だんな)様(さま)と若旦那(わかだんな)をお連れします」

しばし待って、福太郎と父親の一太郎が現れた。
「私が、この店の主人の一太郎です。なんでも、ここにいる息子福太郎が、お宅の娘さんに恋文(こいぶみ)を渡したとか。本当だろうね、福太郎?」
問い詰(つ)める口調の一太郎。
「はい、確かに渡(わた)しましたよ」
平気な顔の福太郎。
「お前は、いつもそうだ!女の尻(しり)ばかり追いかけて、いつになったら仕事に身(み)をいれるんだ!」
その後も、ネチネチと朝からたるとき屋に行っていたことを叱(しか)りだした一太郎。
なぜか、付いて行ったいせじまでがしかられるはめに。
「あの、それで、うちのヒメは・・・」
おそるおそる、らちのすけが聞いてみると
「ああ、すみません、愚息(ぐそく)が大変ご迷惑をかけました。もう帰ってよろしいですよ」
その後も、
「よりによってお侍様の娘に手を出そうとは!福太郎聞いているのですか?」
と、更(さら)なるお説教をくらっていた福太郎さんだった。

帰り道。
「ありがとう、父ちゃん」
恥ずかしそうにらちのすけ父さんにお礼をを言ったヒメ。
「おう」
かわいい娘に、大事がなくて良かったとほっとしたらちのすけ。
「父ちゃん。手、繋(つな)ご」
最近、そういうベタベタした親子間の行動を嫌がるようになってきたヒメが、急に言い出した。
「えっ、急にどうした?」
「何でもないよ」
そっと繋(つな)いでやる、らちのすけ。
働いていてもまだまだ、子供なんだなと思ったらちのすけ父さんだったのでした。
第十話らちのすけ、駆り出される
「誰かー!あっちで喧嘩(けんか)が始まっちまったよ」
喧嘩(けんか)を止めてほしいと、叫んで回るメスネコが一匹。
「お嬢(じょう)さん、喧嘩(げんか)はどこかな?」
それに気づいて声をかけたのは、らちのすけ。
どうするつもりだろうと、一緒にいたコトハと信吉は思った。
「あっちです」  
メスネコに言われたすじを曲がると、オスネコどうしでの喧嘩が繰り広げられていた。
「お千(せん)ちゃんは、俺の嫁(よめ)になるんだ!」
「なにおう!そりゃ、こっちのセリフだい!」
場所は、二つの長屋の通りの境(さかい)。
「下がっていなさい、コトハ、信吉くん」
「「はい」」
らちのすけ達は、松五郎塾に向かう途中だった。
「てやぁー!」
一発、らちのすけの掛け声で、喧嘩中だったオスネコどうしが、離(はな)された。
見ていたメスネコ含(ふく)め、野次(やじ)馬(うま)達(たち)は何が起きたのか分からなかった。
しかし、そこは松五郎塾で剣の腕一二を争う、二匹。
ちゃんと、らちのすけがオスネコ達の間(あいだ)をぬって手を振り下ろし、二手に分け、捕まえたのが見えていた。
「これ以上やりあうならば、この剣(けん)でバッサリいかしてもらうが良いかね」
「げっ!お侍(さむらい)様(さま)だ」
「逃げろー!」
そう言って、オスネコ達は素早く逃げて行った。
「ありがとうございます。こら、二匹とも待ちなさーい」
お千(せん)ちゃんらしきメスネコも、お礼を言うとオスネコ達を追いかけて行ったのだった。
「やれやれ」
らちのすけがため息混じりに言うと
「信吉くんとコトハさんじゃないですか、こんなところでどうしたんですか?」
話しかけて来たのは、野次馬の中にいた三太という、最近松五郎塾に入ったオスネコの生徒だ。
「ん、塾(じゅく)行く途中で父ちゃんが、喧嘩(けんか)の仲裁(ちゅうさい)かってでたから」
いつも、信吉とコトハが仲良く塾に来るのは、みんな知っている。
「えっ!今父ちゃんて・・・てことは、あの方がコトハさんのお父様のらちのすけ様ですか?」
「いかにも」
らちのすけは居住(いず)まいをただし、答えた。
「嬉(うれ)しいです‼こんなところで会えるとは」
興奮気味(こうふんぎみ)の三太。
「今日から松五郎塾に来てくださるからな」
信吉が付け加えると、更(さら)に興奮(こうふん)して四足で跳(と)び跳(は)ねだした三太。
「三太、一緒に行こうぜ」
コトハの提案(ていあん)に、跳(と)び跳(は)ねながら三太は三匹に付いて塾への道を急いだのだった。

塾では、今日はらちのすけが来たので急きょ剣術(けんじゅつ)の稽古(けいこ)が行われた。
「らちのすけ先生に習いたい人は、松五郎先生と信吉くんと娘のコトハさんのいずれかに勝ったら習えますので、頑張(がんば)って下さい」
説明役の男の子が説明すると、三人の前には瞬(またた)く間(ま)に行列ができた。
しかし・・・

「弱い」
らちのすけがぼやくのも仕方なく、最初の行列が嘘のようにバンバン三人にやられて、一人としてらちのすけの元に辿(たど)り着(つ)けずに居たのだ。
「ようし、そろそろ出番かな」
そう言ったのは、今まで傍観(ぼうかん)を決め込んでいた、先輩達だ。
彼らは、今まで並んでいた誰よりも、威圧感(いあつかん)たっぷりだ。
はじめにやられたのは、コトハだ。
勢(いきお)いよく剣先(けんさき)で突(つ)かれ、はらおうとコトハが手元を大きくあげた。
そこを、お腹(なか)を突(つ)かれそうになり後ろに飛び退くが、足を滑(すべ)らせて転けてしまったのだ。
この動作の間(あいだ)、わずか一瞬。
そして、上からバンとやられて、コトハは、負けてしまったのだった。
「ふにゃ!」
コトハが、声をあげた直後
「いてっ‼」
「うおっ⁉」
信吉や松五郎先生からも、やられた声が上がった。
やっと骨のあるやつが現れたかと、ちょっと興奮し出したらちのすけ。
「松五郎がやられるとは、お前、腕(うで)鈍(にぶ)ってないか?」
「うるさい、油断しただけだ。そう言うらちのすけはどうなんだ?」
「へっ、見ていろ」
やられて戻ってきた松五郎にそう言うと、三匹の誰かをやっつけた者達に順番に挑んでいった、らちのすけ。
「いざ!」
らちのすけの構(かま)えた掛(か)け声で、先輩生徒達がらちのすけの前に並びだした。
一人目は、大きく振り上げてスッスッとよって来たので、アタマを狙(ねら)っているのがバレバレだった。
そこで、らちのすけは相手の脇腹(わきばら)に 剣先を当てに行ったが、横に飛び退(の)かれ、はずしてしまった。
らちのすけは、はずしてしまった剣先(けんさき)をそのまま高くあげ、バンバンと振りながら相手めがけて、歩みよった。
相手は、その早さに木刀でとっさに防(ふせ)ぎ、らちのすけの股(また)ぐらをスッとすり抜(ぬ)けていったのだ。
一連の動作に、体制(たいせい)を崩(くず)しかけたらちのすけ。
そこに、後(うし)ろから脇(わき)に一括(いっかつ)され、らちのすけが負けてしまった。
「なかなかやるな!」
それからの挑戦者もまずまずまで、 らちのすけは稽古(けいこ)のしがいがあるなと松五郎塾の腕の高い生徒に関心(かんしん)したのだった。
その日は、らちのすけに勝った者の攻撃をお手本に、皆(みな)手取(てと)り足取(あしと)り、自分より強い先輩に教わった。
実践(じっせん)は、似(に)たような位の者にどちらかが勝てるまで行われ、ようやく後輩達は自分の腕の位を知っていったのだった。
「さすが、らちのすけ先生だ。これじゃ、僕が勝てないのも納得だな」
そんな声が、三太をはじめ、後輩達から聞こえてくるほどだ。
結局、らちのすけに勝ったのは、股(また)をくぐった一人だけだった。
が、惜(お)しいところまで行くものが先輩達には多く、うかうかしてられないと思うらちのすけ。
それでも、らちのすけが完全に本気というわけではないため生徒から、松五郎先生とやって、本気を見せてくれと頼(たの)まれた。
二人が睨(にら)み合った瞬間(しゅんかん)、松五郎先生もさっきまでと違ってなにやら隠(かく)していたらしく、本気の殺気(さっき)を放(はな)ちだした。
「うそ、さっき俺が倒した先生とまるで違う・・・」
誰もが場の空気に、息を呑んだ。
はじめに攻撃に打って出たのは、らちのすけ。
右に木刀をあげ、
「うりゃー!」
と、掛け声とともに小手を狙った。
それを松五郎先生は、すんでで木刀で防(ふせ)いで押し返し、そのまま振り上げてらちのすけに下ろしたが、こちらも木刀で防(ふせ)がれた。
力を木刀に乗せておす、松五郎先生。
負けじと木刀で踏(ふ)ん張(ば)る、らちのすけ。
ここまで一瞬(いっしゅん)と言って良い速さだ。
その時、踏ん張っていたらちのすけが急に力を抜(ぬ)き、横にそれた。
力のやり処に困った松五郎先生は、つりあいがとれず、前につんのめった。
が、片足を半歩ほど前にやり、これまた踏(ふ)ん張(ば)った。
が、背中ががら空(あ)きになり、勢(いきお)いよく打たれた。ようにみえて、姿勢(しせい)を前に向け倒(たお)れ混(こ)ませて、ギリギリ当たらなかった松五郎先生。 
そのまま倒(たお)れ、床を転(ころ)げて逃げた松五郎先生は、素早く立つと、らちのすけめがけて突進(とっしん)。
また、木刀で防(ふせ)いだらちのすけ。
「やるな!松五郎」
「おうよ、腕は鈍(にぶ)ってなんかないわ!」
そう言いあうと、両者飛び退(の)いて構(かま)え直した。
ここまで、息ひとつ乱(みだ)していない両者。
「さすが父ちゃん!」
ここまで本気のらちのすけ父さんを見たことがないコトハが、興奮(こうふん)の色を見せる。
「いや、松五郎先生も凄(すご)いよ!」
賞賛(しょうさん)する信吉。
「そろそろ、決着を着けようぞ!」
「おう!」
そう言い、二人が互いをめがけて走り出した。
そして、勝負は一瞬(いっしゅん)でついた。
皆(みな)何が起こったか分らなかった。
「旅をしてるだけあるな、らちのすけ」
そして松五郎先生は、そう言うとパタッと倒(たお)れ込(こ)んで、乱(みだ)れた息を整えるように天井を向き、大きく深呼吸をしたのだった。
先輩達とコトハと信吉だけが見えていたようで、一瞬(いっしゅん)の間(あいだ)に半瞬(はんしゅん)早くらちのすけが木刀を振(ふ)り下(お)ろしていたのだった。

















































第一話
ここは虹の橋
 猫たちが集う、猫たちの国
ここにきつい性格のさーこ、ツンデレのジジ、おっとり屋のスッキの三兄弟が暮らしています
おっとり屋のスッキはいつもマイペース。
 さーこはそんなスッキを叱る毎日
 ジジはそれを見ながらツンツンしていました。
「お姉ちゃんはなんでいつも僕を叱るの」
 とスッキ。
「マイペース過ぎるからよ」
 とさーこ。
 「二人とも大変ね」
とジジ。
そんな毎日が続く中、ある日スッキが何も言わず旅に出ました。
 「スッキはどこに行ったの!!」
とさーこがハンカチをかじりながらジジに聞いています。
「さーこお姉ちゃんがいつも叱るからよ」
とジジ。
「スッキを探しに行くわよ」
「さーこお姉ちゃん、わかったよー」
二人は虹の橋から初めての旅に出ました。
「忘れ物はない?」
「ないよ、出発!!」
初めての旅にワクワクドキドキの二人。
「あれはなあに?」
「あれはね別の世界に行くふねよ」
「乗りたい」
「乗ってスッキを探そう」
こうして二人は船に乗って旅にでました。
初めての世界に興味しんしんなジジ。
スッキを探すのに必死なさーこ。
途中で猫又と出会いました。
「こんな子知らない?」
とさーこ。
「あの子ならあっちに行ったよ」
と猫又。
二人は猫又に感謝してスッキの後を追いかけました。
「さーこお姉ちゃん疲れたよ」
とジジ。
「休憩しようか」
「うん、おやつ食べよう」
「それにしてもスッキはどこまで行ったんだろうね」
「人間の世界にいったのかな」
そんな話をしながら二人はまた歩き出しました。

続く

















第2話
突然旅にでたスッキを探すサー子とジジ。
一方でスッキはのんびりマイペースで旅をしていました。
「人間の世界にはどういくの?」
とスッキ。
あの船に乗れたら人間の世界に行けるよと教えてもらいワクワクしながらその船に乗ったスッキ。
「人間の世界と、猫の世界は何がちがうの?」
と聞くスッキ。
「人間の世界には寿命ってのがあってね、寿命が来たらまた、虹の橋に戻るんだよ」
と猫の船頭さん。
「そうなんだあ、優しい飼い主さん見つかるかな?」
とスッキ。
「あとは人間には猫の言葉はつうじないよ」
と猫の船頭さんが言います。
「えーそうなの、なんて聞こえるの?」
「にゃーって聞こえるんだよ」
と猫の船頭さん。
「そうなんだあ」
少し考えるスッキ。
「でも僕行くよ?」
とスッキ。
船に乗って人間の世界に到着しました。
人間の世界に猫はいるのかな?とワクワクのスッキ。
半面お家あるのかなと不安になっていました。
そうしていると、一人の女の子がやって来ました。
「お家なくて困ってるの?」
と女の子。
「僕の話がわかるの?」
とスッキ。
「うんちゃんと聞こえるよ?」
と女の子。
「人間でも話せる子がいるんだ?」
「私だけだけどね、うちに来る?」
「いいの?」
「いいよー!パパもママも良いっていうから、後ろに着いてきて」
「わかったよ」
虹の橋がどんな世界か、どうやって人間の世界に来たのか楽しそうに話すスッキ。
女の子もニコニコしながら聞いています。
「さーこお姉ちゃんとジジも来るかな?」
と不安がるスッキ。
「きっと来るよ」
と女の子。
「何でわかるの?」
とスッキ。
「大切な弟とお兄ちゃんがいなくなったら探すよ」
と女の子。
「来たらみんなで暮らせるといいな、僕、一人で旅出来たからさーこお姉ちゃんに自慢するんだ」

続く















第三話
人間の世界に来たスッキ。
女の子と話してると突然
「あああああああああああ!」
とスッキが叫びました。
女の子が
「どうしたの?」
と聞くとスッキは
「僕うかれてて名前言うの忘れちゃった!僕の名前はスッキって言うんだよろしくね」
女の子は
「ビックリした!何かあったのかと思ったよ。私の名前はあおよろしくね。」
「今からね近所の猫ちゃんに挨拶に行くからね。」
とあおが言うと
「緊張するなあ」
とスッキ
「大丈夫だよ、優しいお姉さんだから」
とあお。
そんな話をしていると
「ここだよ」
とあおがスッキに言いました。
あおは「こんにちは!」と言うと
「だあれ?」
という声と共におっとりした猫が出てきました。
「あみちゃんあおだよー!」
というとあみが
「あおちゃんね、そちらの子は?」
とあみ
「ぼ、僕スッキと言います、虹の橋から来ました!」
というと
「私もよ~」
とあみがいいました。
「私の名前はあみって言うの
虹の橋から人間の世界にきたのよ
わからないことがあったらいつでも相談してね」
とのんびりと説明するあみ。
「わかましたあみさん!」
とスッキ。
「あみちゃん寝てるとこごめんね」
とあお。
「大丈夫よ~」
とあみ。
「私たち帰るからあみちゃんゆっくり寝てね」
とあお。
「ありがとう~」
と言って家の中に入って行ったあみ。
「ね、あみちゃん優しいでしょ」
とあお。
「頼りになりそうだね」
とスッキ
「あみちゃんがここの事大体知ってるからね」
「凄いなあ」
「うちはあみちゃんのお家の隣だからね」
とあお。
「そんなに近いの?」
とスッキ。
「あそこがスッキの住む家だよ」
とあおが言いました。
「凄いお家だあ‼」
とスッキ。
「スッキのお部屋もあるんだよ」
「えっ!どこどこ?」
「あそこの日がよく当たるお部屋」
「わーい」
とこんなことを二、三日繰り返しているとあみちゃんから突然呼ばれました。
ドキドキするスッキ
あみちゃんは写真を見せて
「この猫ちゃん二人知らないかしら?」
と言うのでマジマジと見たら
「サーコお姉ちゃんとジジだ‼」
とスッキが叫びました。
「どこで見かけたの?二人は元気?」
と捲(まく)し立てるスッキ。
あみちゃんは優しく
「公園付近でよく見るそうだからその公園に行ってみたらどうかしら?」
と言いました。
スッキはあわてて
「ありがとうございました」
と言って公園に向かいました。
するとそこにはサーコとジジがいてご飯を食べていました。
「何してるの?二人共」
とスッキ。
「スッキお兄ちゃんだあ!」
とジジ。
「なにやってるの‼」
とサーコ
「何ってここで暮らしてるよ」
「はじめましてあおって言います。飼い主とこの国では呼ばれています。スッキ君の飼い主です」
するとジジが「ズルい‼ジジも飼い主さん欲しいの‼」
と言ったところであおが
「ジジとサーコのお部屋もあります心配しないでください」
と言いました。
ジジは「わーい飼い主飼い主」と浮かれていて話にならないのでサーコが聞くことになりました。
「飼い主って何をしてくれるんですか?」
「ご飯の準備をしたり毛並みがよくなるようにブラッシングしたりトイレの掃除もしてくれますよ」
「そんなに便利なの?」
とサーコは驚いてビックリした表情をしていました。
「サーコとジジは今日から家の家族だね」
とあお。
「家族だあー」
とサーコとジジとスッキでした。
あみちゃんのお家から帰った4人。
「人間の家ってこうなってるんだ」
とサーコ。
「おトイレどこ?」
とジジ
スッキは説明におわれてバタバタでした。
ふうとスッキ
「わーいわーい涼しい」
とジジ
「なんでこんなに涼しいの?」
とサーコ
「それはね、エアコンって言うのがあるからだよ」
とスッキ。
「エアコンってなあに?」
とジジ
「涼しい風を出したり暖かい風を出したりする機械だよ」
とスッキ。
「へえ、凄い機械があるんだね」
とサーコ。
「それよりみんなあみちゃんにお礼に行こうよ」
とあお。
「みんな挨拶に行かないとねみんなが会えたのはあみちゃんのおかげだし」
とサーコ。
「じゃあじゃあ鰹節持ってしゅっぱーつ」
とサーコが言うとみんながしゅっぱーつと言ってあみちゃんの家に向かいました
「あみちゃんあおだよー」
「だあれ?あおちゃんにみんなどうしたの?」とあみちゃん
「あみちゃんのおかげでみんなが出会えました、ほんの気持ちですがもらってください」
とスッキが鰹節を差し出すと
「あらあらそんなこといいのに、でもみんなの気持ちだから受け取っておくね」
とあみちゃんは言いました。
みんなが帰宅したらご飯が出来ていました
「贅沢」
とサーコ
「美味しそう」
とジジ
「みんな食べるよ~いただきまーす」
続く









第四話
後日またあみちゃんの元へ来た四人
あみちゃんの飼い主さんが出してくれた鰹節でお話していました。
「頂きます」
とみんな鰹節に夢中のなか、ジジがふと
「あみちゃんの飼い主さんてどんな人?」
と聞き出しました。
「優しくて料理がとっても上手で自慢の飼い主さんよ~」
とあみが言いました。
「素敵な飼い主さんなんだね」
とジジが鰹節をいっぱいほうばって、言いました。
「ジジちゃん食べるか話すかのどっちかにしたら?」
とあみが言いました。
「ちょとジジ!」
とスッキとさーこ
「むっ?」
と振り向くと頬が鰹節で膨らんだジジがいました。
「食べ過ぎ!」
っとみんなが一斉に叫びました。
「ジジちゃん凄い顔になっているよ」
とあみ。
「ジジ頬が凄いことになってるよ」
とさーことスッキ。
「かちゅおぶしおひしいんだもん」
と言うジジ
「何言ってるかわかんないよ」
とみんなが一斉に言いました。
しばらくして
「そろそろ帰るね」
とあおが言うと、あみがちょっと待っててと言ってお部屋に向かって行きました。
しばらくして奥からあみちゃんの飼い主さんが出てきて
「鰹節ありがとうね、みんなあみと仲良くしてね」
と挨拶に来ました。
優しそうでふわふわしたお洋服を着たお姉さんが出てきました。
「はーい」とみんな挨拶するとあおが
「みんな仲良くするって」
と飼い主さんに伝えました。
「改めてみんなよろしくね」
とあみと飼い主さんが言いました。
「こちらこそよろしくお願いします」
とさーこ、ジジ、スッキ、あおが言いました。
「あみちゃんの飼い主さん優しそうだったね、いいなあ」
と言ってスッキが振り向くと、頬いっぱいに鰹節を溜め込んでいるさーことジジがいました。
「ほうだね、やひゃひほうだっね」
とさーこ。
「かちゅおぶしおひしい」
とジジ。
そんなことを話していると、家の前に着きました。
「お隣さんだから近いね」
とあお。
「ほもったよひひかかったね」
とジジ。
「いい加減鰹節食べ終わりなよ」
とスッキ。
「おひしいんだもん」
とさーこ。
「さーこお姉ちゃんも!」
「みんな遠慮しなさい!」
とスッキ。
それを見てケラケラ笑うあお
「遠慮ってなに?」
とさーこ。
「それはね、さーこお姉ちゃんやジジみたいに山盛り食べないことだよ」
とスッキ。
「へーそうなんだあ」
とジジ。
「でもジジは出されたもの全部食べるよ」
とジジ。
「さーこも!」
とさーこ。
「この二人わかってない」
とずるっと二人の意見に転ぶスッキは時々二人の意見に悩まされるのであった。

次の日、あおは朝からバタバタしながらスッキたちに「あお今日保育園だからちゃんとお留守番しててね」
と言ってあおが出掛けて行きました。
「ホイクエンってどんなところだろう?」
「楽しいのかな?」
「行ってみたいな」
「行ってみよう!」
と3人はあおの通う保育園を目指しました。
あおの後ろを見つからないように歩く3人。
「ワクワクするね」
とさーこ。
「あおちゃんの行くとこいくの楽しみ」
とジジ。
「怒られないかな?」
とスッキ。
そこうこうしてると保育園に着いたらしく
「あおをよろしくお願いします」
と言ってあおのお母さんがさって行きました。
しばらく隠れていると
「あっ!猫ちゃんがいる!」
と見つかってしまいました。
わらわらとやって来る子供たちにビクビクする3人。
すると
「さーこ!ジジ!スッキ!」
とあおの声がしました。
「あ、あおちゃん~」
と言うとあおは
「ついてきちゃいけないって言ったでしょ!」
と怒るあお
「いやぁやめて」
「毛引っ張らないで」
「痛いよ~」
とジジとスッキ。
「ウゥゥゥシャー」
という声と共に周りを蹴散らすさーこ。
「さーこ強い」
とあお。
「なんの騒ぎ?」
と奥からお姉さんがやって来ました。
「先生うちの猫が着いてきちゃったんです」
とあお。
「なら今日は特別に皆で遊びましょうか?」
とお姉さん。
「ありがとうございます」
とあお。
「ありがとう」
と三匹
お部屋に入ると楽しそうなおもちゃが沢山ありました。
「これで遊んでいいの?」
とスッキ
「お遊びの時間になったらね」
とあお。
「みんなお歌歌いますよ」
とお姉さん。
「ジジお歌好きらんらる~♪」
「さーこもお歌好き」
「僕苦手」
皆で楽しくお歌を歌い、ご飯の時間になりました。
「みんないただきまーす」
「ご飯おいひい」
ジジまた頬に溜め込んで言いました。
「美味しいね」
とスッキ
「美味しいよね」
とさーこ。
「あー!ジジまた」
「う?ほいひいほのはいっはいたへなきゃ」
「もうなにいってるかわかんないよ」
とスッキ
「ジジ美味しいものお口いっぱい溜め込むのやめなさい」
とさーこ。
ジジの顔を見てみんな笑いました。
続く













吾輩(わがはい)も猫である
 ~馬琴猫ぼやくの巻~
 みゅーすとれいらむ 作

吾輩も猫である。
名前はやっぱり無い。
明治という未来世界の猫の真似をするつもりは毛頭ないが、せっかく物書きのうちに住みついたのだ。
あやつの真似事をしてもバチは当たるまい。

どこで生れたかは、俺もとんと見当がつかぬ。
何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いてた事だけは記憶している。
吾輩はここではじめて人間というものを見た。
しかもあとで聞くと、それは内弟子という、人間の中でかなり獰悪(どうあく)な種族であるらしい。
この内弟子というのは時々我々を捕まえて、川に投げすてるという話である。
しかしその当時は何という考えもなかったから、別段恐ろしいとも思わなかった。
ただ彼のてのひらに載せられて、スーと持ち上げられた時、何だかフワフワした感じがあったばかりである。
てのひらの上で少し落ちついて、内弟子の顔を見たのがいわゆる人間というものの見はじめであろう。
この時妙なものだと思った感じが…

馬琴猫先生。
これでは明治の本家本元と、ほとんど同じじゃないですか。

同じじゃねえよ。
でえいち俺は江戸弁だ!

文章江戸弁になってないじゃないですか。
やだなあ。
滝沢馬琴先生の猫だっていうからもうちょいましなものが上がると思ったのに…

なんてえ言いぐさだ。
わかった金輪際(こんりんざい)、おめえんとこには書かねえ!

ほおお、そうですか。
人間様んとこじゃA社B社と出版社もいろいろあるでしょうが、猫の世界じゃうちだけだ。
そのたった一軒の出版社に背(せな)を向けるってんだからいい度胸だ。
おとといきやがれってんだ!

…ってなわけで、俺ァ一気に職失っちまった。
常磐津のお師匠さんとこの三毛ちゃんに慰めて貰おうと思ったら、三毛のやろう、棒手ふりの権三のとこの黒とイチャついてやがる。
俺に気づいて、
「あらセンセー、おしごとポシャッたってほんとですの?」
と来たもんだ。
しかも続けてこう言いやがる。
「いえね、黒さんたらね、権三さんからのお下がりだってんで、秋刀魚三匹もってきてくれたんですよ。粋よねえ」
うっ。
その言い方は、
あんたは何もくれないじゃない
を含んでんな?
けっ。
いい毛並みだと思ったが、こいつぁとんでもねえアバズレだあ。

なんかすごすごとうちへ帰る。
帰ったらちょうど、内弟子が馬琴先生にど叱られておった。


何で口述ひとつまともに出来ぬ!!
こっそり猫を殺すことくらいしか出来ぬ半端者めっ!

へっ!
その半端者がおらんと、八犬伝の口述筆記は誰がやってくれんです?

おっ、おぬしなどおらんでも何とかなる!
それ!
そこの猫でも出来る!!

先生様よ。
あっしは今日、シゴト一つなくしたんでさ…


この日限りで内弟子が出てって、馬琴先生は不自由におなりだ。
息子の嫁のお路っちゃんが筆記をしてくれるようになるのはまだ先だ。
馬琴先生と俺の日々は、ここからますます苛酷になっていくんでさ。


ぼやくの項
これにて読み切り


滝沢馬琴。
ほとんど原稿料のみで生計を営むことのできた日本で最初の物書き。
別名、曲亭馬琴。
江戸時代後期の読本作家。
本名は滝沢興邦。
後に解(とく)と改む。
代表作はなんといっても「南総里見八犬伝」。
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌。
八つの玉。
八つのアザ。 
俺もあんなの書きてえな。









俺は猫。
名前はまだねえ。
たぶんこれからもきっとねえ。
「次号っどうなる俺っ」

吾輩(わがはい)も猫である ~お弟子難儀の巻~
みゅーすとれいらむ 作

まあ内弟子ったってあいつひとりじゃないやね。
ひょろ長えの小せえの、年とったの若えの。
人気作家だから掃いて捨てるほどいんだこりゃ。
なら続きは楽勝だな、ってんで、軒先からだらりん、尻尾垂らしてたらだ、何やら馬琴先生が、のっぽ弟子を怒鳴りつけ始めたんだ。

どうしてここで女郎が出てくるんじゃ!
ここは夜っぴて寝ずの番をする件りなのじゃぞ!?

のっぽは口が重い。

もじょじょ、もじょもじょ、もじょじょじょ。

と答えたイミフの音のいみは、

いろっぺえ場面もなきゃ、面白くありませんぜ。

だと、誰が聞いてもわかる。
のっぽはべらぼうにすけべえなのだ。

八犬伝は色本ではないと、何度言ったらわかるのじゃ!
出てけ!!

また追い出しちまったよおお。
その前が激遅筆のいなかもん。
その前が口ばっか達者な上方出っ歯。
先生俺見て言ったね。

字さえ書けりゃあ、おまえでいいんじゃ。

弟子どもみんな聞いてましたぜそん時。
みんなのむっとした感じも俺てきにはわかったね。
先も見えねえ、教えてももらえねえ、なのに先書きゃ叩かれる。
いくら弟子ったって、ジンケンってもんがあらあ。

にっ。
人間にジンケンがあるんなら…私らにはチュー権ありますよねえ。

こざかしいねずみがチューチュー言いやがる。

ねえよ。

オイラの口にまっさかしま落とすつもりで細い尻尾掴んで上からぶら下げると、鼻っ先に煙(けむ)の匂いが飛び込んでくるじゃねえか!
気ィそれた瞬時に、ねず公チューチェー逃げやがる。
でも俺ァ構いつけねえ、原稿燃える!
馬琴じいさんの労作が!!

声の出る限りニャアニャア鳴いた。
ススを吸った。



幸いボヤですんだものの原稿は巻紙二ツ分燃えた。
火ィ出したのは小せえのだ。
気づかなんだのは年とったのだ。
二人もすぐに叩き出された。
そしたら若えのしかいねえ。
しかもこの若えのは女なんだ。

馬琴先生のー、文体がすきでえー、内弟子なれないかなーって。

聞いたこともねえような抑揚で話しやがる。
幸い二巻分の下書きはあるので、試しに先生清書をさせてみたんだが、途中から話が曲がっていきやがった。


毛野。
おまえは美しい。

そういう信乃こそ心惹かれる。

犬士なんか犬に食われろ!
俺はおまえを放さないぞ!!

信乃!!

……………。

衆道か?

女弟子もその晩のうちに叩き出された。


清書も大事だ。
書き進みも大事だ。
嫁のお路っちゃんに清書頼み、鬼嫁お百が聞き書きするが、さすがお百は一筋縄ではいかない。

待っとくれよ巻四、段十二。
あたしゃもう肩がゲコゲコだよ!

四行しか書いてねえ。

馬琴先生は非常に几帳面で、ほんとにこつこつ書いてなさった。
朝焼けん中起き出して、洗面、仏壇に手ェ合わせ、縁側で斉昭様考案のお体操いそしんでから飯。
客間で茶ァ一服して、書斎に移って日記したため、おもむろに執筆作業にかかるって寸法だ。
戯作者ってのは書いてりゃいいわけじゃねえ、直しもある。
それも、二度も三度もだ。
校正校閲もせにゃならんのだ。
なのにお百はわからない。
つらつら文字書いていいご身分だ、みたく思ってる。
あたしが日常おさんどんから何からやってるから鈍亀馬琴、飯食えるんだってな偉ぶりで、先生様に当たりやがる。
俺はお百がでえ嫌えで、お百も俺がでえ嫌えで。
だから俺は嫁姑揉めるたび、こそっとお路っちゃんの味方して、いけすかねえお百の突っかけ草履にたっぷり粗相してやるのだった。
そういやお路っちゃん……


お路っちゃんは弟子部屋で、写し疲れてうたた寝してた。
髪が落ちて原稿紙汚さねえように、姉さんかぶりまでしてる。
見れば清書はそれこそあと二行のところまできてた。
見上げたもんだ。
ああ寝てろ。
俺は代わりに筆を取った。
作家猫様の面目ここにあり。
『次巻ニ續ク』と書き終えて筆を置く。
新刊は約定の日に十分間に合ったのだった。


お弟子難儀の項
これにて読み切り


滝沢馬琴。
ほとんど原稿料のみで生計を営むことのできた日本で最初の物書き。
別名、曲亭馬琴。
江戸時代後期の読本作家。
本名は滝沢興邦。
後に解(とく)と改む。
代表作はなんといっても「南総里見八犬伝」。
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌。
八つの玉。
八つのアザ。 
俺もあんなの書きてえな。
俺は猫。
名前はまだねえ。
たぶんこれからもきっとねえ









































杏 菜


















第一話 喜平長屋の三姉妹
お江戸の町の片隅にある長屋、喜平(きへい)長屋には三匹の猫姉妹が暮らしていました。
一番上はアオ、真ん中がコトハ、末っ子がヒメ。父親は博打(ばくち)でこさえた借金でいなくなり、母親は遊郭(ゆうかく)に売り飛ばされてしまい、三匹でつましく暮らしていました。
そこへ、朗報が飛び込んできました。
「おーい、喜平さんの口利きで寺子屋に行けるってさ。よかったな、コトハ」
そう知らせてくれたのは、長屋で一番仲の良い、隣の寺子屋に通っている信吉でした。
「ホントー? 嬉(うれ)しいなあ、いつも周りから寺子屋に行けばいいのにもったいねえって言われてたんでぇ」
嬉しさに顔がにやけるコトハ。
「よかったね、コトちゃん!」
我が事のように一緒に喜んでくれたのは、姉のアオ。
「ねえねえ、寺子屋って何する所?」と馬鹿な質問をしてきたのは末っ子のヒメ。
明日から新しい日々の始まりです。
「二×二=?」
「四です。先生」
「はい。コトハちゃん、よくできました」
午前中いっぱいが寺子屋の時間。
新しいことだらけでウキウキしながら笑顔で授業を受けるコトハ。
「それでは算術が全問解けた人は名前を書いて先生に出してか
ら帰りましょう」
そう言って、紙を配り出す松五郎先生。
覚えたての掛け算を使いながらスラスラ問題を解いていくコトハ。
「先生、できました」
一番に提出したのはコトハだった。
「あいつスゲー! ここに通いだして、まだ二~三日だぜ」
寺子屋に通う他のみんなにびっくりされ、ヒソヒソと話される注目の的になるまでに、そう時間はかからなかった。

「ただいまー」
「あっ、お帰り、コトちゃん。お昼ごはん、今、できるからね」
台所に立つのはアオ。
アオは家の家事一切をゆっくりとこなすのが精一杯で、寺子屋には通っていない。
「あれ、ヒメは?」
「友達と出かけたよ。なんでも今流(はや)
行(り)の南蛮(なんばん)の着物を取り扱っているお店に行くんだってさ」
ご飯をつぎながら説明するアオ。
「また遊び歩いているな、あいつ」
蓄(たくわ)えがあまりないというのに、つけでいろいろ買ってきてしまう、どうしようもないヒメ。
「おっ、今日の飯は煮干しが二匹もついてらぁ」
「今日は煮干しがいつもより安かったから多めに買えたんだー」
そう言って、今度は自分の分のご飯をつぐアオ。
「しかもいい具合に焼けてるなぁ。よし昼飯食ったらヒメを探しに行こう。あいつ、今日こそは何も買わせずに連れ帰ってやる」

「さー、寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい! 今流行りの着物のお披露目会(ひろめかい)だよ」
何かをやっている会場前で、呼び込みをする若い男が一人。
「あら、何かなぁ」
その声に気付いたのは、買い物中のヒメと友達のおすみ。
「行ってみましょう」
そう提案したのは、おすみちゃんの方。
「おっと、君たち、かわいいね。どうだい、着物のお披露目会に出てみる気はないかい?」
何この人、出る人も集めてるの?と、ヒメちゃんたちは顔を見合わせた。
「今、かわいこちゃんが足りなくてお披露目会が中止になりそうなんだ。良かったら今日出てみて、今後も出るか決めてくれて構わないよ」
どうしようかなぁ……。悩み顔のヒメちゃんたち。
「今日出てくれたら特別にお給金もはずむよ」
「お給金! やるやるやる、あたしお披露目会出るから、おすみちゃんも出よ。ほら早くー」
「う、うん」
こうしてお披露目会に引き入れられたヒメとおすみだった。

「ヒメのやつどこに行ったんだ、南蛮の着物屋にはいなかったしなぁ」
ヒメを探してコトハは町を回っていた。
「さー、寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい! 今流行りの着物のお披露目会だよ」
その時、コトハの耳に客引きの男の声が聞こえてきた。
ん? もしかして……。
「あの、すみませんが。このお披露目会、南蛮の着物も出てきやすか?」
「出てくるよー。南蛮のすかあととかいうやつなんかとか他にも……」
そうと聞いてコトハはピンときた。この会場にヒメは客として居る。
そう思ったコトハは、客引きの制止を振り切り、中へと入りこんだのだった。












 第二話 入ってビックリお披露目会
「ねえねえ、これってどうやって着るのかなぁ」
「んー。こうかなぁ、ヒメちゃん」
お披露目会の裏の楽屋では、ヒメとおすみちゃんなどの出演者がわいわいと着替えたりお化粧をしたりと大忙し。
「こうかなぁ? でもなんだか足元スースーするよ、おすみちゃん」
すかあとを初めてはいたヒメが不安そうに答えた。
「そうそう、それでいいのよ、ヒメちゃん。丈もピッタリだわ♡」
横から教えてくれたのは、このお披露目会の主催者でもあり、服の考案もしたゲイのモモ先生。
「あなたは、そうねぇ、これなんかどうかしら」
そう言って、モモ先生が、おすみちゃんに取り出したのは、長くて帯の付いてない男物にも見える着物のような上から羽織るもの。
「さっ、私がお化粧してあげるから早く着替えて。もう出番が近いのよ♡」
「はーい」

一方、客席の方では相変わらずヒメを探してコトハがうろついていた。
「御免なすって。お通しくださいましよ」
客でごった返している場内を、器用に人をよけて歩きまわるコトハ。
「それでは、開場のお時間となりましたので、これより南蛮の着物のお披露目会を開催いたします」
舞台では、司会進行役のオス猫が大きな声で早速一番目の南蛮の着物を着た女性を紹介していた。
「何だ何だ、あんなのを海の向こうでは着るのかぁ!」
コトハも立ち止まって舞台の上の半袴(はんはかま)のようなものをはき、肩のあたりを見せた着物を着
た女性を見つめた。
おっと、いけねぇいけねぇ、ヒメを探すんだった。

五分後……
「ヒメのやつどこにもいねぇなぁ」
客席をくまなく探したコトハだったが、いっこうにヒメは見つからない。
「ここ以外ありえねぇと思ったんだがなぁ……」
「続いては原田ヒメさんの登場です」
そんな時、司会進行のオス猫が言った言葉に耳を疑った。
「ヒメだって‼」
見上げた舞台上には紛れもない妹のヒメが姿を現した。
服装は、すかあとに蝶々結びが大きく付いた、白い何だかフワァとした装飾の着物だ。
「な、何やってんだ、お前?」
壇上のヒメに思わず話しかけてしまったコトハ。
「あら、コト姉ねえどうしたの?」
しれっとした顔で舞台を歩いていたヒメがコトハに気付いて足を止めた。
「降りてこい、ヒメ。話が……」
「ごめん、今、仕事中なの。また後で楽屋でね」
それだけ言い残したヒメは軽やかに壇上の裏に消えて行った。

「それでヒメ、何がどうなってるのか教えてもらおうか?」
楽屋裏、関係者以外立ち入り禁止を気にもせずのり込んできたコトハに、説教をくらう羽目になってしまったヒメ。
「だから~、さっきから言ってるじゃない。お披露目会に出てみないかって客引きのお兄さんに勧められて~」
「それでおすみちゃんと出たってわけか、あぁん」
コトハのおでこにはうっすらと青筋が出ている。
「怒らないでください、止めなかったあたしも悪いんですから。それにお給金も出るそうですし……」
ヒメの横で助け舟を出すおすみ。
「お給金⁉」
「そうだよ。これでつけも返せるんだから、ねっねっ。怒らないで~」
猫なで声で訴えるヒメ。
「そ、そうかぁ」
「そうよ♡」
そう言って、コトハの肩を叩いたのは、モモ先生。
「良かったってヒメちゃんたちも評判よ~♡ よかったらこれからもうちのお披露目会に出てくれないかしら」
モモ先生にヒメとおすみは手を握られて頼まれた。
「で、でもぉ」
コトハの顔色をうかがうヒメ。
「そんなに良かったでやんすか? ヒメたち」
疑い深い目でモモ先生を見るコトハ。
「本当よ~♡ 内緒だけど、次からはお給金、みんなの倍にしてあげたっていいくらいなんだから♡」
お給金倍‼
「のった! この契約、このコトハが証人として引き受けた。頑張るんだぞ、ヒメ」
さっきとはうって変わって笑って認めてくれたコトハだった。
もぉー、現金なんだからコト姉は。恥ずかしっ。


















第三話 信吉からの贈り物
「へぇー、ヒメちゃん、お仕事決まったんだぁ」
ヒメがお披露目会に出た日の夕食。アオ姉はその日の出来事を二匹から聞いてビックリ。
「良かった、これで壺(つぼ)のお金に手を付けなくても安心な日がくるね」
壺とは、お金を貯めている小さな貯金箱代わりのもの。
これをいっぱいにして、遊郭にいる母親のさくらをいつか家に連れ帰るのが三姉妹の目標だった。
「話は変わるけどよぉ、アオ姉、ヒメの仕事が決まったぐらいでこの料理は、ちいっと豪勢じゃないか」
夕食の膳(ぜん)には、ご飯とみそ汁と、そして、おかずにさんまの切り身が一匹を三等分してそれぞれの皿に盛ってあった。
「お金だって」
「あっ、大丈夫だよ、コトちゃん。それ信きっつぁんからのもらい物だから」
「えっ、なんで信きっつぁんが?」
首をかしげるコトハにかまわずヒメは喜んでいる。
「わーい、いただきます。モグモグ……」
「なんでもね、ヒメちゃんのことを見ていたらしくて、好きになったとかなんとか」
おっとりしゃべり終わると箸でさんまの身をほぐして口に入れるアオ。
「食べないの?」
「今食べようと思ってたんでい!」
そうかぁ、お披露目会を見に行ってたんだ、信きっつぁん、と思いながら、久しぶりのさ
んまに舌
したつづみ
鼓を打つ三姉妹だった。
次の日の朝。
「信きっつぁん、昨日はありがとうな。おかげで楽しい夕食だったぜ」
寺子屋に一緒に通っている信吉にお礼を言うコトハ。
「大したことはしてないよ。おいら、おヒメちゃんが気に入ったから。なあ、次はいつお披
露目会をやるんだい」
聞かれて言葉に困るコトハ。
「い、いや、次と言われてもなぁ……」
困ったあげく、
「お披露目会の主催者の先生に聞いとくから」
「頼んだぜー」
にこにこ笑顔で話す信吉だった。
コトハたちがそういう話をしているころ、家の方では、
「ヒメちゃん、一緒に行こう」
突然そう言い出したアオ。
「どこに?」
返事は当然そうなる。
「どこって決まってるじゃん。昨日のお給金もらいに行くんだよ」
「なんでアオ姉と一緒に行かなきゃなんないわけ」
不満そうなヒメ。
「だってぇ、一緒に行かなきゃまたすぐお給金使って買い物してくる気でしょ」
図星のヒメ。
「コトちゃんからしっかり管理するように言われてるんだぁ」
あぁー、見抜かれてたのね、あたし。ガックリと肩を落とし、しょうがなくアオと家を出るヒメだった。

寺子屋の休み時間。コトハの机の周りには人垣(ひとがき)ができていた。
「昨日はかわいかったね、ヒメちゃん」
「ヒメちゃんがあんなにかわいいとは知らなかったぜ」
皆、口々にヒメへの称賛を語る。
「そ、そうかい」
ヒメがほめられることなんてめったにないことだから照れるコトハ。
「おーい皆、席につけ」
そこに松五郎先生がやってきて、休み時間は終わりを告げたのだった。

「ありがとうございます」
そう言ってヒメのお給金を受け取ったアオ。
場所はお披露目会の会場の裏にあるモモ先生の仕事場。
「またよろしくと、モモ先生から言付(ことづ)かってやす」
会計係らしいオス猫がそう言った。
「はい、分かりました。今後ともヒメちゃんをよろしくお願いします」
なぜかアオが答えたので、恥ずかしいヒメは黙ってアオの袖を引っ張った。
「では、これにて」
頭を下げて会計係のオス猫は仕事場に引っ込んだ。
「あーもう、親でもないのにあたしの代わりに答えないでよ!」
「それよりヒメちゃん、今度はここへ行くからね」
ヒメの話をまったく聞いてないアオが懐(ふところ)から出したのは、一枚の紙切れ。そこには三軒ほどお店の名が記してあった。
「これ、なんて読むのかなぁ? すいませーん」
通りすがりの女性に声をかけ、記してある文字を読んでもらってきたアオ。コトハに書いてもらったのはいいが文字が読めないアオだった。
「コトちゃん、ひらがなで書いてくれててよかった。すぐに読んでもらえたよ」
そう言ってヒメの手を取って引っ張っていくアオ。
「えぇー、お給金は?」
「つけを返して余ったらあげるね、ヒメちゃん」
と(、)ほほ(、、)のヒメ。
早くもお給金の管理をされる羽目になろうとは。

少し歩いて着いたのは、この町一番のお店や問屋が並ぶ通り。
「こんにちはー、つけを返しにきましたー」
「おっ、今回は早いね」
着物屋「天上屋」の主人はそう言った。
「数えてくださーい」
数も大きくなると数えるのに苦労するアオは、主人にお給金の入った巾着(きんちゃく)を渡した。
「ひい、ふう、みい……ちょうど二〇〇〇文が、二着でしめて四〇〇〇文ですから、一朱(しゅ)金(きん)一六枚ですね。まいどあり」
こうしてヒメのお給金はどんどん減っていくのであった。















第四話 お給金の行方
「紅が三〇文、その他、お化粧品、装飾物を合わせて六〇〇文。しめて、六六〇文と着物二着四〇〇〇文で四六六〇文、二両もらってこれだけ余ったね。余ってよかったね、ヒメちゃん。これで晩の買い物できるよ」
「え、えー! あたしのから出すのぉー」
ビックリして立ち止まるヒメ。
「今日だけだよー。出してくれてもいいじゃん」
優しくヒメの背中をたたいて笑うアオ。
「値切り上手のアオ姉よろしくね」
「がってん!」

一方、寺子屋が終わったコトハが家に帰ると誰もいなかった。
「あれ、アオ姉たちまだ帰ってないのかぁ? 弱ったなぁ、飯の支度もしてねえぜ……」
しばらく待っていると二匹が帰ってきた。
「今月の支払い全部終わったよ、コトちゃん。天上屋も大黒屋と越後屋も、払うの早かったってほめてくれたよ」
我が事のように嬉しそうなアオ。
コンコン。
そこで戸を叩く音と鈴の音がした。
「あっ、飛脚(ひきゃく)屋さんだ」
アオが気付いて戸を開けると、挟(はさ)み箱という箱に棒を付けて担ぎ、そこに鈴をつけた鉢巻(はちま)き姿の飛脚がいた。
「ちわ、いつものお届けに参りやした」
そういうと慣れた手つきで箱から一通の手紙を取り出した。
「いつもご苦労さん」
コトハがねぎらいの言葉をかけた。
「毎度どうもー」
渡し終えるとすぐに飛脚は帰っていった。
「だれから? だれから?」
はしゃぐヒメ。
「どうせいつもの、どこいるかわからない父ちゃんからの手紙だろ」
コトハの予想通り、手紙は父親で浪人のらち(、、)の(、)すけ(、、)からであった。
「三匹とも達者にやってるかい。俺は達者だ。いつもの金子(きんす)、入れとくから、母ちゃんのいる店に届けといてくれよ」
それだけの短い文(ふみ)に金子が三〇両六〇分(一日一両二分の計算で)入っていた。
「まただよ、父ちゃん。こんだけ稼げるんだったら、さっさと母ちゃん迎えに行けばいいのによぉ」
文を読んだコトハは呆(あき)れてぐちった。
「母ちゃんに会いたいなぁー。今度はあたしがその金子届けてくるぅ」
駄々(だだ)をこねるヒメ。
「無理だよ、ヒメちゃん。女の子はいけないからね、吉原に」
なだめるアオ。
「そうだぜ、だからいつも信きっつぁんの親父さんに届けてもらってるんだろぉ」
コトハも仕方なさそうに説得する。
「あっ、そうだ! もうすぐ吉原俄(にわか)の季節じゃねえか」
おりしも日付は七月末。
吉原俄は、八月のうちの晴れた日に催される吉原の年中行事の一つ。普段入れない町娘たちも入れて、いつもより吉原が賑(にぎ)わう。
「この期間中だったらひょっとしたら母さんに会えるかもしれねえぜ。行ってみないか?」
「賛成ー」

八月一日は晴れ渡って、雲一つない青空になった。場所は吉原の大門の前。
「よし行こう」
コトハの言葉で大門をくぐると、笛を吹き太鼓を叩く音が響く。そんな中、男装した花魁(おいらん)や何かの芝居をする男が店の並ぶ中之町通りにあふれていた。
普段入れない所とあって、特に女性やメス猫の姿が目につく。
そんな中、運よく中之町通りの人垣の中に母親さくらの顔を見つけた三姉妹。
「あっ、さくら母さんだ!」
最初に声をあげたのはヒメ。
三姉妹は母親のいる方へ小走りに近づいた。
「あら、もしかしてお前たち、アオにコトハにヒメかい?」
「そうだよ」
アオの返事で目に涙を浮かべるさくら。
「大きくなって三匹とも……」
うるうるしながら三匹の頭を順々に撫(な)
でるさくら。
「あのね、アオ、ご飯炊き上手くなったよ」
「おいら寺子屋に通えるようになったんでぇ!」
「あたし、着物のお披露目会に出たんだよ!」
三匹同時に話す話を目を細めて聞くさくら。
「色々あったんだねぇ」
さくらが感慨(かんがい)に浸(ひた)りながらいると、後ろから声がした。
「ちょいとさくら! 何こんな所で油売ってんだい。店に帰るよ‼」
現れたのはさくらの売られた店「西国屋」の女将(おかみ)お末(すえ)。
お末は三姉妹との別れを惜しむ暇さえ与えず、仕事仕事とぶつぶつ文句を垂れながら、さくらを引っ張って行ってしまった。
「ああ、母ちゃん」
別れを惜しむように手を伸ばすヒメ。
「仕方ないよ」
慰めるアオ。
「会えただけでも来たかいがあるってもんよ。そうだ、帰りに飴(あめ)買ってやるぜ」
「えぇー、そのお金、ヒメのお給金じゃない‼」
そう言ってプリプリ怒るヒメを尻目に、コトハはさくらの行ってしまった方を見た。
一番涙を堪(こら)えていたのは実はコトハだったかも知れないのだった。
























第五話 モモ先生のヒ・ミ・ツ
吉原俄に行ってから数日後。
モモ先生に次のお披露目会の準備で呼ばれるヒメ。おすみちゃんも一緒だ。
「おすみちゃん、次どんな着物が着れるのか楽しみだね」
「この前ヒメちゃんが着たす(、)か(、)あと(、、)、あれはやだなぁ……足元がスースーするって言ってたから」
そんな話をヒメとおすみがしていると、この前のお披露目会の会場に着いた。すると、裏のモモ先生の仕事場から騒ぎ声が聞こえてきた。
「こんにちはー」
モモ先生の仕事場に行くと、先生の助手をして着物を作っている人や会計係の猫たちが「モモ先生は猫か人間か」で議論していた。
「だからぁ髭(ひげ)も毛もないんだから、先生は人間だよ」
「そうかしら? いつも帽子をかぶっているから猫よ。耳を隠しているんだわ、きっと」
そこに当の本人モモ先生が現れた。
「え、なになに? 私、そうねぇ……人間じゃないわよ。猫との混血よ、毎日毛を剃って人間みたいに見せるために苦労してるんだから。だから帽子外さないでしょ? 外してみましょうか」
ばぁーと言って、帽子を外した頭の上には猫耳があった。
「うわぁー⁉」
思わず声をあげたのはヒメとおすみちゃん。他の皆も驚きであんぐりと口が開いていた。

「先生、人間だから着物作るの上手いのかと思ってた」
ヒメとおすみちゃんは採寸されながら、口々にそう言ってうなずいた。
採寸を書き記した紙を助手の男の人に渡しながら、モモ先生は、
「あらそう、これでも毎日髭やらを剃って、それが分らないようにお化粧してるのよ。全部で一時(今の二時間)もかかるのよ」
「たぁいへんそう!」
ヒメとおすみは同時に言って顔を見合わせた。
「これ、今度のお披露目会で発表する着物の図案なんだけど、あなたたちどうかしら?」
他の出演者にはまだ見せてないらしい着物の絵が描かれた紙を見せてくれるモモ先生。
「わあー、きれい!」
紙には襟(えり)の部分にフリフリが付いた着物に、丈の短いす(、)か(、)あと(、、)の図案が描かれていた。
「そうかなぁ、丈が短いからこの前より足元スースーするよ、きっと。先生これやだぁ」
すか(、、)あと(、、)の丈に文句を言うおすみちゃん。
「そうかしら? いいと思ったんだけど、丈の短いす(、)か(、)あと(、、)」
少しの間腕組みのような格好で考え込むモモ先生。
「そしたら、丈を長くしてフリフリを付けるっていうのはどうかしら」
やっぱりどうしてもすか(、、)あと(、、)にしたいらしい。
「そして、とっておきのこれ」
モモ先生が取り出したのは足袋(たび)のような物。
「すか(、、)あと(、、)を長くするんだったらこれを履いたらどうかしら。靴下っていうのよ」
「わぁー!何これ、足袋と違って色とりどり!」
「すごーい!」
色と種類の豊富さに驚くヒメとおすみ。そこに試作品の着物を持ってきたオス猫が聞いた。
「出来やした。先生、こういうのって男の方から考えつくんでやんすか、それとも女の方からでやんすか?」
「そんなこと聞くんじゃないわよ‼」
オス猫の問いにモモ先生の鉄拳が飛び、オス猫は仕事場の壁に背中を打ち付けた。
「あがっ⁉」
目を白くして伸びてしまったオス猫。
「せ、先生……」
ビックリして仕事場の空気がシーンとなった。
「あ、あらやだ。私ったらホホホッ……」
もう何も聞くまいと思うその場の全員だった。
「これ、ヒメちゃんたちにどうかと思って」
機嫌をとり直してモモ先生が持ってきたのは、何やら前を留めるのがたくさん付いた白い上にすか(、、)あと(、、)が引っ付いたような長い着物とその色違い。
「南蛮から特別に手に入れたの。今度のお披露目会で観客に見せて売ろうと思っているの。おすみちゃん、ヒメちゃん、着てみてくれる?」
おすみちゃんが白い方、ヒメが青い方を着た。
「やっぱり足元スースーするね」
おすみちゃんの一言にモモ先生が取り出したのは、何やら見慣れぬ三角の布。
「何ですか、それ?」
訝(いぶか)しがるおすみちゃん。
「これはね、ぱんつ(、、、)と言ってすか(、、)あと(、、)
の下にはくものよ」
「へぇー、南蛮では着物の下はこんな薄い布だけなんだぁ。って、どうしたの、ヒメちゃん?」
悲しそうな顔で着物の胸元を見せたヒメは、「おすみちゃん、あたし胸のところがぶかぶかだよぉー……」と嘆いたのだった。

帰り道。
「おすみちゃんはいいよね、そんなに胸が大きくて」
「そ、そうかなぁ」
返事に困るおすみちゃん。
「あっ、そうだ! 今からうちに寄ってかない? 鰹節(かつおぶし)あげるからさ、元気出しなよ」
「えっ、鰹節‼ わぁーい、やったぁ」
おすみちゃんの家は小料理屋。だから、鰹節が常時あるのであった。
ヒメちゃん、機嫌直ってくれて良かった。ほっとするおすみちゃんだった。





















第六話 コトハの恋心
原田コトハ。メス。喜平長屋に住む三姉妹の真ん中である。
今日も朝から隣の信吉のお迎えだ。
「信きっつぁん、寺子屋行く時間だよぉー」
「いつもすまないねえ、コトハちゃん。ほら信吉、起きなさい」
母親に尻を叩(たた)かれやっと目を覚ました信吉。
「おはよう、コトハ」
「おはようじゃないよ! 寺子屋遅刻するって‼」
「へーい」
「まったくもう。また朝ご飯抜きじゃない、はいこれ」
コトハが手渡したのはにぎりめし。
「いっつもすまないなぁ」
そう言ってコトハからにぎりめしを受け取り、ほおばる信吉。
実は、毎朝コトハが早起きして握っているのだが、信吉は知らない。
「アオちゃんの握りかた不格好だな」
ガビーン‼
「そ、そうだね……」
「ヒメちゃん握ってくれないかなぁ。そしたらきっとかわいいのが握れるんだろうなぁ」
ぶつぶつ言いながら食べる信吉。
「コトハは握れないだろうな。家事できなさそうだしな」
あたいだってこうやって毎日握ってるんだい! 信きっつぁんのばか!
そうこうしているうちに寺子屋に着くのであった。

「コトハちゃん、ここが分らないんだけど」
「ん、どこだい? ああ、ここね」
コトハは頭がいいので、休み時間には必ず誰かしら勉強を聞きにくる。
一方、信吉は他の男の子たちとおしゃべり。
「コトハちゃんどうしたの?」と言われて、信吉を見ていたことに焦る。
「な、なんでもないやい」

帰り道。
「ねえ、昼飯食べたら湯屋に行かないかい」
信吉を銭湯に誘ってみるコトハ。
「おっ、いいねえ。待ち合わせは長屋の入口な」
「うん」

「アオ姉、昼飯の後、出かけてくるからな」
急いでご飯をかきこむコトハ。
「どこ行くの?」
「湯屋だよ」
アオの問いにうっかり答えてしまったのが運のつき。
「あ、あたしも行く。明日お披露目会だから」
「じゃ、あたしも行こうかな。久しぶりに」と、ヒメとアオが言い出してしまったのだ。
しまったぁー‼ 心の中で項垂(うなだ)れるコトハだった。

「おヒメちゃん、今度のお披露目会、いつでやすか?」
ちえっ、せっかく信きっつぁんと二人っきりで出掛けようと思ってたのに……。
「明日だよ、明日の八つから七つ(午後二時から四時)までだよ」
営業用の笑顔で答えるヒメ。
「行きやすからね、絶対に!」
デレデレで話す信吉。あーあ、かっこいいのが台無しだよ、信きっつぁん。
コトハは、どうしてこんな猫好きになったのか分らなくなりそうだった。
そうこうしているうちに湯屋に着いた四匹。
ここは猫(ねこ)水(み)屋と言って猫専用の風呂屋さん。隣には、猫の蚤(のみ)のみ取りや猫の毛を切ってくれる店も併設されている。
「じゃ、あとでね、信きっつぁん」
入ってすぐの土間の所で、コトハの言葉を合図に、右に三姉妹、左に信吉と別れた。
猫はたいてい水嫌いが多く、蒸し風呂が一般的だ。それに、もし湯に浸(つ)かったら抜ける毛も人間より多い。そこで猫の湯屋は人間より高くなっている。例えば、人間の湯屋は大人八文、猫水屋では一〇文取っている。
「あたし、湯に浸かってくるね」
珍しくヒメがそう言った。
「どうしたの? ヒメちゃん、水嫌いじゃなかったっけ」
首をかしげるアオ。
「明日、お披露目会だから念入りに洗っとこうと思って」
そう言って着物を脱ぐと湯船の方に行ってしまうヒメ。
「勇気あるなぁ、ヒメ。あたいらはいつも通り蒸し風呂だな」
「そうだね」
四半時後。
猫水屋の隣の店でのぼせてしまったヒメが伸びていた。
「もう、無理してお湯に浸かるからだよ。はい、お水」
アオが心配そうにさしだした湯(ゆ)呑(の)みの水をヒメは一気のみして言った。
「だぁって、すみずみまできれいにしておきたかったんだもん」
「それでのぼせてたら意味ねえだろ」
言いながらヒメをうちわで扇(あお)ぐコトハ。
「うぅー……」
「大丈夫でやすか、おヒメちゃん? 帰れやすか?」
信吉も心配そうにヒメの顔をのぞきこむ。
「無理でやしたら、あっしがおぶってあげやしょうか?」
「ええー、そうしようかなぁ」
いいな、ヒメは。あたいが湯あたりすればよかったのに。ヒメに対する信吉の態度に焼きもちをやくコトハだった。

「ありがとね、信きっつぁん。ほらヒメもちゃんとお礼言って」
喜平長屋に帰って来た四匹。
アオにうながされてお礼を言うヒメ。
「ありがとー、そうだ! お礼がわりにこれ」
ヒメが取り出したのは明日のお披露目会の入場券。
「い、良いんでやんすか‼」
大喜びの信吉。
「いいのいいの、これモモ先生からもらった物だから」
あっ! それあたいが先生に言って特別にもらったやつなのに!
コトハの苦労はいつ報われるのやら……














第七話 握手会券争奪戦
次の日の寺子屋。
「なぁなぁ、お披露目会行くよな?」
「当たり前じゃない」
女子も男子もメスもオスもこの話で持ちきりだった。
「なあ、どの子がいいと思うか。俺は絶対おすみちゃんだぜ」
「なにおぉ、おヒメちゃんがいいに決まってらぁ!」
そして、オスや男たちの間には、ヒメ派とおすみちゃん派で対立までおきていた。
「はいはい、騒がない。席に着きなさい」
松五郎先生の言葉でようやく静かになった。

まだ六つ前だというのに、お披露目会の会場には行列ができていた。
「はーい、並んで並んで」
入場券を求めて並んでいる観客を整理するオス猫。
「うわぁー! 大盛況だね、お披露目会」
アオが目を丸くするほどの盛況ぶりだ。その横をアオとコトハと信吉は並びもせず会場内に入っていく。
「並んでたら買えたか分かんないでやんすね。コトハが昨日、湯屋に誘ってくれたから良かったでやんす」
すっごく嬉しそうな信吉。
と、その横に見慣れた顔を見つけたコトハ。
「松五郎先生―」
「げっ! 見つかったかぁ」
頭をかく松五郎先生。
「あたいらの寺子屋の先生で、松五郎先生」
「いつもコトちゃんがお世話になってます、姉のアオです」
「おー、偉いね。お姉さん」
アオの頭を撫でる松五郎先生。
「それより先生、何しにここへ?」
信吉が疑問を口にすると、急に慌て出した松五郎先生。
「いや、その……南蛮の服を見に……」
「南蛮の着物なら、最近じゃ普通の着物屋でも見かけますぜ、先生」
「そうですよ」
コトハとアオに言われてますます困る松五郎先生。そこへ、
「松五郎―」
「あっ! 呼んでるから、先生行かなきゃ。それじゃーね」
皆の疑問をかわして松五郎先生は逃げていったのだった。
「本当は誰のこと見に来たのかな?」
アオにさえバレバレであった。
「おすみちゃんだったりして」
「いやいや、おヒメちゃんの方に決まってるでやんすよ」
そんなことを言っているうちに開演時刻が迫ってきた。

「おすみちーゃん」
「おヒメちーゃん」
いつの間にか壇上前の席には、右と左に分かれてお揃(そろ)いのはっぴに鉢巻き姿の団体が二組も集まっていた。その中に、おすみちゃん派で声援をおくる松五郎先生がいた。
「あっ、やっぱりおすみちゃんが目当てだったんだ」
アオに気付かれていることにさえ気づかず、一心に声援を送っていた。
「松五郎先生、何考えてるんだろう?」
松五郎先生は若くても四〇歳くらい。
「なんか年な声、聞こえねえか?」
「さあ、聞こえるかぁ?」
観客の二人が気付きかけたが、他の観客の声援でかき消されたのだった。
「さあ、いよいよ本日の主役。まずは、おすみちゃん! 着ている着物は南蛮から取り寄せたわんぴ(、、、)いす(、、)という着物」
おすみちゃんが手を振りながら観客席真ん中の花道をかわいく歩いた。
「かわいいかしら♡」
「ヒューヒューおすみ! かわいい、おすみ」
「キャー! おすみちゃん素敵!」
おすみちゃん派から黄色い声援が飛び交った。
おすみちゃんは一番前まで来ると、わんぴ(、、、)いす(、、)の裾(すそ)を持ってくるっと回ってから、しなやかに退場した。
「続いては原田おヒメちゃん!」
「あっ! おヒメちゃんの番だ」
信吉はヒメに向かって手をふった。
ヒメが着ているのはあっ(、、)ぱっぱ(、、、)というわんぴ(、、、)いす(、、)の袖(そで)の付いてないもの。
「ヒューヒュー、おヒメちゃん色っぽいー」
「おヒメちゃん大胆♪」
信吉はじめ、こちらの応援団からも黄色い声援が飛び交う。
そこに、再びおすみちゃんが出てきて、ヒメちゃんたちの着ている着物を会場入口で即売していると司会の男が言う
と、二人は壇上裏へ去っていった。
「ヒメちゃんたちきれいだったね、コトちゃん!」
あたいにもあれくらい女らしさがあったらなぁ、と横でヒメの応援をする信吉を見るコトハだった。

「それでは本日最後にして最大の目玉! 握手会券抽選会を行います‼」
壇上の司会者の男が言うと、箱の二つ乗った台を奥から運んできた。
「この中から右二〇個、左二〇個ずつ引きますので、右で番号を呼ばれた人はおヒメちゃん、左で呼ばれた人はおすみちゃんと握手できます」
皆、期待の目で壇上を見つめた。
「最初の当選者は右五番、左一一番でーす」
壇上の司会者が紙を広げて客席にみせた。
「やったぜ‼ 早起きして並んだかいがあったぜ」
当選したと思(おぼ)しき男の騒ぎ声が会場に響いた。
「当選した方は当選した人の前にお並びください」
そして、どんどんと当選者が呼ばれていく。
「当たれ当たれ当たれ……」
入場券を握りしめて祈る信吉。
「続きまして右一二五番、左一六〇番の人」
「やった‼ 当たった、ってこれおすみちゃんの方だぁー」
がっくりと項垂れる信吉。
「信きっつぁん、当たっただけ良かったじゃねーか」
慰めるコトハ。
それもそうだなと周りを見回すと、外れたのであろう人や猫たちが項垂れ、悔し涙を流しているものまでいた。
「しゃーねえ、当たっただけ良しとするか」
気持ちを切り替えて、おすみちゃんの方の当選者の列に並んだ信吉だった。
それから、四半刻(とき)後―
ようやくヒメちゃんたちの握手会が終わった。
「疲れたよー……」
楽屋裏で座り込み愚痴(ぐち)ち
るヒメ。
「今日はいつもより観客多かったね」
そう言うおすみちゃんも疲れた顔をしている。
「はいはい、皆、お疲れさま。道具の片付けがある人以外帰っていいわよ」
モモ先生の合図で、その日はお開きになったのだった。






















第八話 喜平さんは人間です
喜平さんは喜平長屋という棟(むね)割り長屋(一〇軒分)の家主で人間の男の人だ。歳は六〇位で、女房持ち。大の猫好きで、長屋には猫ばかり住まわしている。
ある日、毎朝の仕事になっている木戸を開ける作業をしていると、オス猫が声をかけてきた。
「ちわぁ、鳴門(なると)屋です。お届け物にあがりました」
「鳴門屋? そんな店から私は何も買ってないがねえ」
大家の喜平さんは首をかしげた。
「なんでも、ここの大家の喜平さん夫婦にお中元を届けるように申しつかってきやした」
そう言うと、脇に抱えていた徳利(とっくり)と風呂敷包みを喜平さんに手渡し、オス猫はさっさと帰ってしまった。

「誰からだろうねえ、あんた?」
そう言って飯の支度の手を止めて、奥さんのおたえさんが風呂敷を開けると、中から原田と書かれた、のし付きの木箱が出てきた。
「あら、これ浪人の原田さん家の三姉妹からだわ」
「へー、あいつらも偉いじゃねえか。こんなことをするようになって」
感心しながらうなずく喜平さん。
「きっと、コトハちゃんを寺子屋に口利(くちき)きしたお礼だろうね」
おたえさんも感心しながら、さらに木箱を開けると、見慣れない物が入っていた。
「あんた、何なんだい、これは?」
おたえさんが広げてみると、何やら肩にかける紐(ひも)のようなものと丸っこいお椀型が付いて後ろで細長い布切れが一周した布が一枚と、着物が入っていた。
「さ、さぁ……おヒメちゃんが南蛮から仕入れてきたもんじゃねぇのか? ほら、一緒に着物も入ってるじゃねえか」
困り顔で答える喜平さん。
「そうかしらねぇ? しょうがないわ。お酒はあんたが飲むとして、これはあたしが後で鳴門屋に行って聞いてくるわ」
おたえさんはそう言うと飯の支度に戻った。

午前中のうちに、おたえさんは鳴門屋へ向かった。
「鳴門屋さん」
「へい、いらしゃいませ」
番頭らしき男が返事をして入口の方を振り向いた。
「これ、貰い物なんだけど、どうやって使ったらよいのかしら?」
木箱を開けて見せるおたえ。
「あぁ、それは南蛮で今流行りのし(、)たぎ(、、)とかいうのの女性版ですね」
番頭は、一瞬見ただけでさらっと答えた。
「あちらに手前どもの店の者でメス猫がおりやすので、着方を聞いておくんなさい」
番頭が指した方では、メス猫がにこやかに近くの小部屋を開けて待っていた。
「こちらの部屋で着物を脱いでおくれでやす」
「全部ですか?」
「全部です」
にこやかさを崩さないメス猫は、これまた有無を言わさず、小部屋の襖(ふすま)を閉めると、おたえの着物を脱がせにかかったのだった。
「キャー! どこ触ってんのよ」
「いやいや、胸に着けるから、ここをこういたしましてですね」

五分後―
ドタバタの末にようやく出てきたおたえさんは着物姿ではなく、三姉妹に貰(もら)った南蛮のあっ(、、)ぱっぱ(、、、)を着て涼しげな格好になっていた。汗だくでゼーゼー言っていたことを除けば。
「大変でしたね、茶でもどうですか?」
気をきかせた番頭が言った。
「熱くて飲めるかい‼」
おたえさんは頭から湯気を出しながら帰って行った。

喜平長屋に帰ったおたえさんは長屋中の注目の的だった。
「どうしたんですかい、その南蛮の着物?」
井戸の辺りで洗濯していたメス猫がビックリして目を丸くした。
「いいでしょう。これね、原田さん家(ち)の三姉妹からのお中元」
裾をひるがえして回って見せるおたえ。
「へー、よかったですね……!」
そう言ってからメス猫は、自分ちは大家さん夫婦に何も送ってないことと家賃を滞納していたことに気付き焦った。
「お宅もしかして、家賃……」
隣で一緒に洗っていたメス猫がこっそり耳打ちしてきた。
「そうなの、それにお中元も」
おたえさんに聞こえないように、その場にいたメス猫たちは小声で言い合ったのだった。

「あんたー、どうだい?」
家に帰って喜平さんに自慢するおたえ。
「い、色っぺえな。特に袖がない部分が」
こんな着物初めてだなー、喜平さんは目のやりどころに困った。
「む、胸も大きくなったんじゃないか?」
「やだ、あんたったらどこ見てんだい。もう」
「うへっ⁉」
はずみで、照れ隠しに喜平さんの背中をバシッと叩くおたえさんだった。

昼時になってコトハが帰ってくると、大家さん夫婦が来ていた。
「あの、何のご用ですか? 家賃は滞納していませんよ」
アオが困って必死に喋(しゃべ)っていた。
「あっ! お中元届いたんでやすね」
おたえさんの格好で気が付いたコトハ。
「何、おちゅうげんて?」
隠れていたのであろうヒメが、枕(まくら)屏風(びょうぶ)という夜具をしまっておく場所の屏風の仕切りからひょっこり顔を出した。
家賃の取立てでないと分かると出てくるなんて、なんて子なんだか。
「この前三匹で鳴門屋に行っただろう」
呆れるコトハだった。
「ありがとうね、この着物高かったんじゃない」
おたえさんが心配そうに三姉妹を見回した。
「大丈夫ですよ。うちのヒメがいるから、モモ先生の紹介だって言ったら安くしてくれましたもん」
「そうだよ」
アオとヒメが値段の話をしはじめてしまった。まったくもう、あげた人に値段のことなんか言って恥ずかしい。
頭をかくコトハだった。

























第九話 お復習(さらい)の語源は「浚(さら)い」かな
夏の暑いある日。
お中元の季節が過ぎると、コトハたちの通っている寺子屋では「浚い」が行われる。
「信吉、頑張れー!」
「コトハちゃん、頑張ってー!」
声援をおくるのは早くも脱落した者たち。
「では、朝方に使うあかつき(、、、、)という字は?」
しばしの後、先に手を挙げたのは信吉。
「先生出来ました」
「どれどれ」
松五郎先生が見ると、
「おしいなぁ、あかつき(暁)とはこう描くのだよ」
と言われて直された信吉の半紙には左の部分が「目」になっていたので、赤で松五郎先生が「日」に直した。
次に手を挙げたのはコトハ。
「先生できましたー」
「どれどれ、あっ! 正解だね」
「わぁー! コトハちゃん正解したわよ」
「これでコトハちゃんが一番ね」
このように教科書を見ないでどんどん答えたり、書いたりするのが「浚い」である。

一方、長屋では、この時刻アオが家事に精を出している。
「アオちゃん、頑張ってるわね」
信吉のお母さん、楓(かえで)さん(通称おかえさん)が嬉しそうに米を研ぐアオにそう言った。
アオはご飯が炊けるようになって最近ルンルンなのだった。
「へへへ」
はにかむアオ。
「今日もコトちゃん、おにぎり握って行ったんだよね♪」
ふと漏らすアオ。
「おにぎり握ってるって何?」
聞き返すおかえさん。
「コトちゃん、毎朝おにぎり握ってますよ」
コトハが毎朝おにぎりを握って行くことを不思議がるアオ。
その話を聞いたおかえさんは、道理(どうり)で朝ご飯食べていかない訳だと、信吉の朝寝坊に納得するのだった。

「ただいまー」
ちょうどアオがお昼の支度を終えた頃、コトハが帰って来た。
「どうしたの、コトちゃん」
足取りがおかしいコトハ。
「浚いがあったんだけど……。信きっつぁんに勝っちまったんだ。きっと信きっつぁん落ち込んでるだろうなぁ。なのに無理して笑顔作って」
信吉の「いいよ。コトハが勝ったんだから」と言って笑った顔が浮かぶコトハ。
すると隣から、
「どうしたんだい、信吉?」
「浚いがあったんだけど、コトハに負けたんだー……」
「そうかい。それはしょうがないわよ、コトハちゃんはこの長屋でお前と一、二を争う頭の良さなんだから。元気だしな!」と、隣から聞こえてきた。
「大丈夫! 明日はあんたの得意な算術があるじゃない」
「よーし、算術ではコトハに負けないぞ‼」
へこんでいた信吉のやる気な声にホッとするコトハだった。

夜―
コトハは隣の信吉の家を訪ねた。
「こんばんは、信吉さんいますか」
「なんだい、コトハ」
戸を開けて現れたのは信吉本人だった。
「さ、散歩でもと思って」
「いいよ。母ちゃん、ちょっくら出掛けてくるよ」
「あんまり遅くなるんじゃないよ」
そんな声が交わされ、出てきた信吉。
散歩といっても、木戸は閉まっているため長屋の周りを歩くだけだ。
「朝はごめんね、明日は算術頑張ってね」
そう言って、コトハが信吉に手渡したのは手作りのお守り。
不器用なコトハらしく、形は不格好だった。
「気にするなよ。それより俺を気にして全力出さなかったら承知しないからな!」と明るい声で返す信吉。
「それじゃーね、明日寝坊したらおにぎり抜きだからね」
コトハは照れ隠しにそう言って自分ん家に帰った。
「おにぎり……?」
コトハの最後の言葉に疑問がわく信吉だった。 
次の日の寺子屋。。
「三六五÷一二=は?」
「先生!」
先に手を挙げたのは信吉。
「先生、答えは三〇・一四六六六六……で割り切れません」
「ありゃ、しまった! 問題作り間違った!」
「先生、割り切れない問題なんか作らないでください」
コトハが不満を口にした。
「な、何はともあれ答えたのは信吉だ。だから、一番は信吉で決まり。今日の寺子屋はおしまい、皆、帰った、帰った!」
そう言ってごまかす松五郎先生。
それでも一番になったことを喜ぶ信吉だった。
「昨日と今日でおあいこね。信きっつぁん」
コトハが帰り支度をする信吉に声をかけた。
「ありがとよ、にぎりめし」
なぜかそう返された。
「母ちゃんから聞いたんでい」
そして恥ずかしそうにさっさと行ってしまった信吉だった。

第十話 モモ先生は実業家
「今度新しくお菓子の店を出そうと思って、あなたたちの意見を聞きたいわ」
ある日の、お披露目会場裏のモモ先生の仕事場。今日は仕事ではないが、呼ばれたヒメとおすみちゃん。
「試作品なんだけど、これ食べて感想聞かせてほしいの」
そう言ってモモ先生が取り出したのは、鈴の形をしたふわふわな一口状のおかし。
「長崎の出島から来た人に習ったカステラを一口状にしてみたんだけど、どうかしら?」
「うわぁー! 柔らかい」
一口で頬張ったヒメが食べながら話した。
「おヒメちゃん、美味しいのは分かるけど、食べながら話すのはさすがにメスとしてどうかなと思うよ」
おすみちゃんに叱られたヒメだが、いっこうに気にしてない様子だった。
「これも食べて」
今度は大きめの、何やら果物がのった焼き菓子のようだ。
「これは、確かたる(、、)と(、)とかいうの。焼くのに手間がかかるから、たぶんお店に出したら数量限定になると思うわ」
そう言って、モモ先生が一人ずつに切り分けた。
「白いの何だろう? すごく甘ーい!」
口々に女の子やメス猫から感想がもれる。
「さぁ、どんどん食べてね」と、モモ先生が出したのは、たる(、、)と(、)の他にもいろんな見たこと
のない南蛮菓子ばかりだ。
「先生食べきれませんよ。どんだけ作ったんですか」
試作品縫い係のメス猫が音(ね)を上げた。
すると、私も、あたしもと次々に音を上げだした。
「あら、徹夜で作ったのよ♡ だめだったかしら?」
げんなりするみんなだった。。

「ただいまー、戸を開けてアオ姉!」
「どうしたの、ヒメちゃん‼」
戸を開けたアオが驚いた。なんと、ヒメは両手に持ちきれないほどの南蛮の菓子を抱えていた。
「ヒメちゃん何なの、そのお菓子?」
「あのね、モモ先生が作った南蛮のお菓子なんだけど……よいしょ」
ふぅーと、一息つくヒメ。
「それにしても多いね」
数に驚くアオ。
「モモ先生が、甘いの好きな子が三匹もいるからって渡されちゃったぁ」
「でもいくらなんでも食べきれないよ、ヒメちゃん」
困り果てるアオ。
「だったら隣の信きっつぁんちに持ってけばいいじゃないか」
この案を出したのは寺子屋から帰って来たばかりのコトハ。
「さすがコトちゃん!」
感心しながら、菓子を分けるアオ。
「い、良いんでやんすか?」 
南蛮菓子に目を輝かせる信吉。
「いつもすまないねえ」
頭を下げるおかえさん。
「へっ、菓子なんざ、酒のつまみにもなりゃしない」
珍しく早く帰って来ていた信吉の父さん、大吉さんがぐちった。
「あら、あんた、早いわね」
「雨が降ってきたから今日の仕事はしめーだ」
不機嫌そうな大吉。
しかし、本音では食べてみたいなと思いながらも言い出せず、ぶつぶつぐちる大吉だった。
「持ってったぜ、信きっつぁんとこ」
コトハが戻ると、アオのいれた猫用のお茶で、お茶会が始まっていた。
「このたる(、、)と(、)ってのとか、け(、)いき(、、)ってのとか白いのがいっぱいでおいしいね、ヒメちゃん」
口に白いのをいっぱいつけながら、アオがニコニコ顔でパクついていた。
「なんでもその白いの、な(、)まくりー(、、、)む(、)っていうらしいよ」
ヒメがしたり顔に解説した。
「南蛮なんかでは牛の乳を飲むらしいんだけど、食べ物にも使うんだって」
「で、その牛はどうしてるんだ?」
けいき(、、、)を口に運びながら、コトハが質問した。
「高いから牛乳だけ仕入れてるらしいよ」
「じゃ、数量限定だね」
アオがお茶を一杯飲んで口をふいた。
「それじゃ高いな、一つずつが」
腕を組んで、皆買えるのかなぁ、成功するのかなぁとなぜかコトハが心配するのだった。

九月になってから最初の週。
やっとこさ、モモ先生のお菓子屋さん「たるとき屋」が開店した。
「並んで並んで! 南蛮菓子のたるとき屋だよ」
「けいき(、、、)に、たる(、、)と(、)など見たことない南蛮菓子勢勢ぞろい。数量限定だから早めに並んだ、並んだ‼」
いつもはお披露目会の裏方の男の人やオス猫が、看板を持って店の前で客の呼び込みをしていた。そのかいあってか、まだ午前中だというのに店には行列ができていた。
「ここでいったん打ち切りにします。けいき(、、、)を買いに来た方は売り切れましたので、残念ですがまた明日来てください」
すると、諦(あきら)めきれない客が、店の周りで口々にため息や文句を垂れていた。
「ちっ! やっぱり予想以上に売れやがる、あの時意地はらねぇで食ってりゃよかった……」
その中に信吉の父さん、大吉さんもいたのは誰も知らないのだった。


異世界の虹の橋




























プロローグ
 これは、とても不思議な世界を冒険譚する3匹と3人のちょっぴりドジでヘンテコな旅の物語である。
 まずは、旅をする皆を紹介しよう。3匹のリーダーであり、唯一の男子スッキである。
 性格は、おっとりとして優しくのんびり屋で有り、3匹の中で一番の臆病なので、カミナリでも鳴ろうものならすぐに逃げてしまうけれどやっぱり男でありいざという時には、男らしくとても頼りになる存在なのである。
 そして、ジジはスッキの妹であるが兄と違い、ツンデレのわがままな性格だがいつも誰よりも冷静で周りが見えていてとても兄思いの強い子でいつもスッキを支えてあげているのである。
そして最後は、サーコである。サーコはジジとスッキからしたら一番上になり、2匹のお姉さん的な存在である。
 性格は怒りっぽくてセッカチな性格だが、2匹の事をしっかりと考えてくれているし、頼りがいのある存在である。
 さて次に、まだ3匹とは出会っていないが旅をする3人を紹介しよう。
 3人のリーダーであるアリーの性格はとてもやんちゃでわがままではあるけれど、何事に対しても諦める事のない強い心を持っているし、いつも皆を笑顔にさせてくれる思いやりの強い子である。
 そして、アリーの母トリスは性格は普段はとてもおとなしくて、優しいがいざとなるとカミナリを落としたように怖い存在でもあり、いつもアリーのリミッターになっているし何事にも冷静に対応してくれているとても大切な存在である。そして、アリーの父でありトリスの旦那のキューの性格はいつも能天気でボーっとしている事が多い、のんびり屋で娘のアリーにとても甘く、いつも母のトリスに怒られているがいざとなればどんな障害にも立ち向かう勇敢(ゆうかん)で男らしい所もあり、意外と2人からも頼りにされているのである。
 これから3匹と3人の物語が今ここに始まろうとしているのである。
3匹と3人がどこでどんなふうに出会い、どんな旅になるのかはこれからのお楽しみである。


第一章「出会いと旅立ち」
① ここレイニーシティーに暮らしている、スッキとジジは仲の良い兄(きょう)妹(だい)である。
ある日、2匹は一緒に近くの森を探検しているとそこに
「誰か~助けて~」
と森の奥の方から声が聞こえてきて、ジジとスッキの2匹は森の奥に行きながら
「何があったんだろう、こんな森の奥で?」
とスッキがジジに言った。
「でもその人が困っているのは間違いないから急いでいこう」
とジジが言った。
「そうだね、急いでいこう」
とスッキも声のする方へ急いで走って行きました。
 声のする場所に着いた2匹が見たものは、狩猟用の罠に足を挟まれた女の子でした。
「大丈夫?」
とスッキが言うと女の子は
「お願い、早くこれをはずして」
と言った。
「すぐに外してあげるからちょっと待ってね」
とスッキが言い、罠を急いで外してあげた。
 そしてジジが女の子に
「大丈夫?とりあえず家で足の手当てをした方が良いね」
と言い、その女の子は
「助けてくれてありがとう」
とスッキとジジに言ったのでした。
「僕が家まで背負って行くから心配しなくて良いからね」
と言い女の子を家まで背負って行きました。そして、家についてジジがせっせと女の子の足を手当てしている内にスッキは、食事の準備をしていました。
 女の子はスッキとジジに
「私はサーコ、助けてくれて本当にありがとう。あのまま誰も来なかったらと思うと、とても怖かったよ」
とスッキとジジに言いました。
「私はジジ、あっちで食事の準備をしているのが兄のスッキだよ。たまたま森の探検をしてたら森の奥の方から声がしてたからビックリしちゃったけれどケガもたいしたことがなくて本当に良かったよ」
とジジがサーコに話をしていて、そこにスッキが来てサーコに
「良かった、少しは元気になったみたいだから安心したよ」
と言い
「今ご飯も出来たから皆で一緒に食べようか」
と言い3匹は仲良くご飯を食べ始めました。

②そして食べながらスッキがサーコに
「なんであんな森の奥に1匹でいたの?」
と聞きました。
「私ね今までずっと1匹で旅をしてきたの、今回その途中だったの」
とサーコが言いました。
『ずっと1匹ってなんか寂しそうだな~』
とジジが言いました。
「寂しいのもあるけど楽しいことも色々あるんだよ」
とサーコが言いそしてそしてスッキが
「冒険は楽しいもんね」
と言ったら
「でもお兄ちゃん臆病だからすぐに逃げそうだな」
ジジが笑いながら言いました。
スッキが「それは言わないでよ」
と言ってシュンとなってしまったのを見て2匹で笑ってしまいました。
「でもなんで1匹でずっと旅をしているの」
とジジがサーコに聞きました。
「私はずっと絆の秘宝という物を探して旅をしているの」
とサーコが言いました。
するとスッキがビックリした顔で
「僕もそれ本で読んで知ってるよ。どこかにある洞窟の中を通り抜けた先の大地のどこかにある祠の中に秘宝があり、その秘宝が絆の秘宝だって本で読んだよ」
とスッキが言ったらジジが
「何でお兄ちゃんだけそんな本読んでるの」
とツンツンしながら言いました。
「どこかの本屋さんでたまたま読んだだけだし、本当にある物だとは思わなかったんだ。しかもその本屋さんも不思議な事に今どこにあるのかも分らないし」
とスッキがジジとサーコに言いました。
サーコがスッキとジジに言いました。
「そうなの、私も最初は物語かなにかだろうと思っていたんだけどね、本当にその絆の秘宝は存在するのよ、と死んでしまった母から聞いたの。だから私は1匹でその洞窟を探していたの。この近くにあると母から聞いていたから」
とサーコはジジとスッキに話しました。
「それなら僕らも一緒にその旅に連れていって欲しいな、ジジもそう思うよね?」
とスッキが言ったらジジが
「私達も一緒に行きたい」
と言いました。
サーコは最初は困っていたけれど
「わかったわ、じゃあスッキ君に旅のリーダーを頼んでもいいかな?絆の秘宝の本を読んでいて色々と知っていそうだから」
とサーコがスッキに言いました。
「お兄ちゃんで大丈夫かな?」
と少し心配になっているジジでした。
「じゃあ決まりだね。ジジ急いで旅の支度をしよう」
とスッキが言うとジジも
「はーい」
と返事をして支度をしに行きました。

「これから長い付き合いになると思うけどよろしくね、サーコ」
とスッキが言うとサーコも
「こちらこそよろしくね、スッキとジジ」
とお互いに言い握手をしました。
 そして、旅の準備も終わりスッキが
「いざ絆の秘宝を求める旅に出発だ~」
と元気に言いました。

③ そして、スッキ達は早速サーコと最初に出会った森の方へ向かいました。
そしてスッキが2匹に
「僕本で読んだのは、どこかの山の中の中腹辺りに洞窟があり、その洞窟は導きの洞窟と呼ばれてると書いてあったよ」
と言いました。
「じゃあこの辺りの山のどこかにその洞窟があるのかな?」
とジジが言いました。
「私が母から聞いたのはレイニーシティーの先のどこかとしか聞いてないから分らないけれどこの辺りという事は間違いないと思うよ」
とサーコが言いました。、
「山といったらこの先の虹の橋を越えた先のクラウドタウンの少し先に山があるよね?」
とジジが言いスッキが
「この辺りだと山はその結びの山ぐらいしかないと思うよ」
と言った。
「じゃあまずは、クラウドタウンに行って結びの山の情報を聞いたりして先に集めてから山に向かうようにしよう」
とスッキが言い、サーコとジジの2匹が揃って
「そうね、そうしよう」
と言いました。

④ そして3匹は虹の橋所までたどり着きました。
「ここが虹の橋なんだね」
とサーコが言っている中でスッキがなぜか橋の手前で後退りをしていました。
「どうしたのスッキ、早く渡るよ~」
とサーコが言った後にジジが
「お兄ちゃん高い所が苦手だから、この吊り橋にビビってるんじゃない?」
とスッキに言った。
「そ、そんなことないよ。吊り橋ぐらい平気だよ」
と言いながら少し前に進んで行きました。
 その後から渡っていたジジが少しイジワルで吊り橋を揺らしてみました。
「ウギャーアウウウ・・・」
とスッキが絶叫してその場に座り込んでしまいました。
ジジはやっぱりと呆れていたけれども
「お兄ちゃんやっぱり怖いんじゃん♪」
と言って手を貸してあげて、なんとか無事に渡りきる事が出来たけれど、すくみあがっているスッキを見て2匹は
「大丈夫?」
と言い
「吊り橋がこんなに揺れると思わなかったよ。ハァ怖かった」
と言っているスッキを見て2匹はまだ少し笑っていました。
 そんなこんなで橋を渡り、クラウドタウンへと向かう3匹でした。
 そしてしばらく歩いたところでスッキがずな2匹に向かって「そろそろ休んでご飯にしようか」
と言ったらジジが
「あ~お腹すいた~」
と言って
「そこに座れそうな所があるからそこで食べようか」
とサーコが言った。
 そしてご飯を食べながら
「でも絆の秘宝っていったいどんなのなのかな。すごく気になる」
とジジが言いスッキが
「そこまでは本にも書いてなかったから僕も分らないな」
と言い
「きっととてもキレイな宝石かなんかじゃないかな?」
とサーコが言いました。
「早く見つけて見てみたいね」
とスッキがいいその後3匹が揃って
「ごちそうさまでした」
と言った後で
「もう少しでクラウドタウンに着くと思うから頑張って歩こう!!」
とスッキが言いました。
「クラウドに着いたら情報を集めたり調べる事もあるからまずはどこかの宿を探して泊まれるようにしないとね」
とサーコが言いジジも
「そうだね」
と言いました。
そして3匹は無事にクラウドタウンに到着をしました。
「じゃあまずは情報の前に宿屋探しだね」
とスッキが言い3匹は宿屋を探し始めました。
「宿屋空いてる所あるかな?」
とジジが探しながら言っているとスッキが
「あそこの宿屋が部屋が空いてるみたいだよ」
と言い
「部屋が空いてるならその宿屋にしようよ」
とサーコが言いました。
「じゃあ泊まる場所も見つけれたし、早速皆で手分けをして山の事や洞窟の事を聞いて回ろう」
とスッキが言いサーコとジジが
「分かった、じゃあ情報を集めに行こう」
と言いました。
そして3匹は手分けをして町の図書館や町の人達に聞いて回る事にしたのです。
スッキはまず図書館に行き結びの山の事が書いてある本がないか探していました。
サーコはクラウドタウンに昔から住んでいそうなお爺さんやお婆さんなどから話を聞いて回りました。
そしてジジは々なお店の人に話を聞いて回る事にしました。
そして3匹はそれぞれが調べた情報を持って宿屋に戻って来ました。
宿屋でご飯を食べながら3匹は自分達の調べた事を話しをしました。
「結びの山にはやっぱり不思議な話しがあって、山の中腹辺りに必要としている人だけに前に現れる洞窟がいう事が本には書いてあったよ」
とスッキが言い
「私も色々な事を昔から住んでいる人に聞いてみたらあの結びの山にはとても不思議な力が宿ってる場所だと皆に言われたよ」
とサーコが言い、そしたらジジが
「私はね、色んなお店の人に聞いてみたらあの山の麓に住んでいるお爺さんがいるから、そのお爺さん猫に聞けば山にとても詳しいから色々と知ってるはずだよ色んな人から言われたよ」
2匹向かい言いました。
「じゃあ明日は山に向かいながらそのお爺さんの所にまずは行くようにしよう」
とスッキが言い2匹は
「賛成!!」
と言いました。
「じゃあ今日はゆっくりと休んで明日にそなえよう」
とスッキが言い
「はーい」
と2匹は返事をして寝る事にしました。
⑥ そして次の日3匹は元気良く山に向かっていきました。
そして山の近くまで来てジジが
「あそこに小屋があるよ」
とサーコが
「あそこにジジちゃんが聞いたお爺さん住んでいるのかな?」
と言いスッキが
「とりあえず行ってみよう」
「すみませーん、誰かいませんか~?」
とスッキが言いました。
すると小屋の中から声がして
「どなたかの?」
お爺さんの声がしてドアが開きました。
そしてスッキが
「すいません、結びの山と山にある洞窟の事について話を聞きたいのですが良いでしょうか?」
とお爺さんに聞きました。
するとお爺さんは3匹に
「わしに分かる事なら教えてあげるよ」
と言って3匹を小屋の中に入れてあげました。
「たしかに結びの山の中腹辺りには大小さまざまな洞窟があるのは知っておるぞ」
「そしてその君達が言っている導きの洞窟というのも聞いた事はあるがわしも見た事はないんじゃよ」
と続けて
「じゃが導きの洞窟あらわれし時、その洞窟の奥に一点の光現れんとわしは聞いておるがの」
とお爺さんが三匹に色々と洞窟の事を教えてくれました。
 そして、スッキ達3匹はお爺さんにお礼を言って山の洞窟があると教えてもらった場所を目指して歩いて行くのでした。
「洞窟の奥に光が見えるって言ってたけどそんな洞窟が本当にあるの?」
とジジがちょっと不安げに言いました。
「大丈夫だよ、きっと強い想いを持っていればきっと洞窟がその想いに反応してくれるはずだよ」
スッキが言いました。
そして長い間歩いて洞窟を探していると、いくつかの洞窟を見つける事が出来たけれど光を放つ洞窟を見つける事はまだ出来ませんでした。
「洞窟はぽつぽつと出てきたね」
とスッキが言いジジが
「そうねいくつかは、見つける事が出来たわね」
と言いサーコが
「でも今の所は光を放つ洞窟は一つもみあたらないね」
と言い二匹が
「そうだね」
と言いました。

⑦ そしてしばらく辺りをしっかりと見ながら、歩いていたらさっきまでとても天気が良かったのに急に霧がかかり辺り一面真っ白になってしまいました。
「あんなに天気が良かったのに急にどうしたんだろうね」
とスッキがビクビクしていました。
「お兄ちゃんまたビビっているんでしょう」
とジジが笑いながら言いました。
「そ・・・そんな事ないよ。ビビッてなんかないよ」
とスッキが言っているとサーコが
「ねえ、2匹ともあれを見て」
と言い2匹が
「どうしたの」
とサーコが言った方を見てみるとなんと洞窟があり奥の方からとても明るくて暖かい光を感じました。
「スゴイ本当に光ってる洞窟があった」
とジジが言いました。
「とても優しい光だね」
とスッキが言いサーコが
「うん、とても優しくて暖かい光だね」
と言いました。
「さあ、やっと導きの洞窟が見つかったんだ。洞窟の中に入って先を目指して進んで行こう」
とスッキが少しビクビクしながらも、2匹に向かって言った。
「よ~し先に進もう」
とサーコも言い
「行こう、行こう」
とジジも言った。
そしてスッキが
「洞窟の中は滑るかもしれないから皆足元には気を付けてね」
と言い3匹は洞窟の中へと入りました。
これからとても不思議な事が起こっていくことは、もちろん知るはずもありません。
第2章へ続く














第二章「決意の旅立ち」
① ここノースシティーで暮らしている仲良しの三人家族がいました。
 そして、今日もいつもと変わらない生活をしていました。
そしてそこに、娘のアリーが来て
「パパ、ママ、おはよう」
と言い、そして二人もアリーに向かって
「アリー、おはよう」
と言い、そして3人で食事をしました。
「ねえパパ私ねとても不思議な夢を見てね、夢の中でねなんだか毛むくじゃらの生き物と洞窟の中で会って私達3人とその子達皆で一緒になにかの秘宝を探しに行く夢を見たの」
とアリーが話をすると父親のキューが
「なんだアリーもパパと同じ夢を見たのか」
と言うと
「私も2人と同じ夢を見ましたよ」
と母親のトリスが言いました。
3人は不思議な事があるもんなんだなと考えていました。
そしてアリーは2人に言いました。
「パパ、ママ皆が同じ夢を見るなんてこと普通はないだろうし、こんな不思議な事ないだろうし、皆で夢と同じように私達も旅をしたら夢と同じ事が起きるんじゃあないかな」
と言った。
「たしかにこんな不思議なことはあまりないからアリーの言うように旅をすれば同じ起こるかもしれないね、ねママ」
とキューがトリスに言った。
「でも旅に出ると言ってもどこに行けば良いのかも分らないのに、旅をしても時間のムダになるだけじゃない」
とトリスが言った。
するとキューが
「それもそうだな」
と言うとアリーが
「夢の中では山の中に洞窟があってその洞窟はたしか」
とまで言うとキューが
「希望の洞窟とか言ってたような気がするな」
と言い
「うん、山の名前はたしか」
とアリーが言うとつられたように今度はトリスが
「繋がり山だったわよね」
と言った。
「なんだパパもママも覚えてるじゃん」
とアリーが笑顔で言った。
「それだけ覚えているんだったらきっと大丈夫だよ。皆で探しに行こうよその洞窟」
とまたアリーの我が儘(まま)が始まったのである。
もちろん毎回アリーの味方であるキューはこの時トリスに
「アリーがそこまで言うのであれば、皆で探しに行ってみるか、ねえママ」
とアリーの味方をしたのである。
「もう2人とも言い出したら本当になにも聞かないんだから」
と少し怒りながらではあるけれども
「分かりました、でもまずはしっかりとご飯を食べて片付けをして支度をして行くべき場所をちゃんと調べてからですよ」
とトリスが言い2人は
「はーい」
と返事をしました。
「パパはしっかりとどこに行けば良いのかを調べて下さいね」
とトリスが言うと
「分かったよ、ちゃんと調べるよ、アリーは必要な物をちゃんと用意して忘れ物がないようにするんだよ」
とキューがアリーに言うと
「はーい、パパ分かったよ」
とかわいい声でアリーが返事をしました。
そして2人はせっせと準備を始めたのでした。
そんな2人を見てトリスは呆れた感じの様子で
「ハァー本当に夢みたいな旅になるのかしら大丈夫かな~」
と不安な思いでしたが、あまりにも真剣な2人を見てトリスも決心をして旅の支度を始めました。
そして3人とも準備も終わりアリーが
「まずは洞窟のある繋がり山を目指して出発だ~張り切って行こう~」
と言いキューが
「お~出発」
と言った。
③ そして家を出発して歩きながらキューが言いました。
「パパが調べたら繋がり山という山はベアーズタウンの先にある山みたいだよ」
と言いました。
「じゃあまずはそのベアーズタウンに行けばまたほかの事も分かるかもしれないわね」
とトリスが言いました。
「でもあの夢に出てきた毛むくじゃらの生き物はなんだろうね」
とアリーが言いトリスが
「そうね、でもかわいかったし私達と同じでちゃんと言葉も喋れてたしね」
と言いキューが
「でも大きさは3人ともアリーと同じくらいだったし、自分達は猫だと言っていたと思うんだけどね」
と言い
「そうね、そう言ってたわ」
とトリスが答えた。
「でも夢と同じ事が起きたらすべて分かるから良いじゃん」
とアリーが言った。
「まあそれもそうだな」
とキューが能天気に答えました。
そしてしばらく歩くと森が見えてきました。
「この森を越えたら谷があるから、その谷を渡ってしばらく歩けばベアーズタウンが見えてくるはずだぞ」
とキューが言いました。
「じゃあまず森を越えた所で皆でご飯にしましょうか」
とトリスが言うとアリーが
「賛成」
と嬉しそうに言いました。
④ そして森を抜けた所は平原になっていたのでそこにシートを広げました。
「わあ~おいしそ~いただきます」
とアリーが言い
「いただきます」
と2人も言いました。
「あの谷を渡ったらすぐにベアーズに着くと思うよ。着いたら俺は少し洞窟や山の事を調べてくるから、トリスとアリーは今日泊まれる宿屋を探してくれるかな」
とキューが言いました。
「分かったよ~じゃあ見つけたら私はパパの所に行って手伝うからね」
とアリーが言い
「じゃあ私は色々と人に聞いてみる事にするわね」
とトリスが言い
「じゃあそれでお願いしようかな」
とキューが言うと
「わかったよまかせて」
と2人が言いました。
そしてご飯を食べ終わり3人はまたベアーズタウンに向け歩きだしました。
そして谷と谷を結んでいる橋の所まで3人は来ました。
「この吊り橋は結構揺れそうだな」
とキューが言っているとアリーが
「わ~い吊橋だ」
とはしゃぎながら渡って行きトリスもその後に付いて行きながら
「こらあんまりはしゃがないの、橋が揺れてるでしょ」
とトリスが言うとアリーの悪い癖で橋を少し揺らしたら
「キャア」
とトリスが声をあげるとキューとアリーが笑いながら
「ママはこういうの意外に苦手なんだね」
とキューが言うと
「真面目に渡りなさい二人とも~」
と声をあげて怒りながら2人に言いそして本気で怒っていました。
キューとアリーはトリスに
「ごめんなさいママ」
と2人で言いました。
そして無事に渡りきって少し歩くとベアーズタウンが目の前に見えてきました。
⑤ そしてベアーズタウンに着くとトリスとアリーまず宿屋を探しに行きキューは図書館に行きました。
しばらくするとキューの所にアリーが来て
「パパなにか分かった」
と聞きました。
「山の事は色々書いてあるから分かったけど洞窟の事があんまり書いてなくてまだ分からないんだよね」
とキューが答えるとアリーが
「じゃあ私も探してみるね」
とアリーが言い探しに行きました。
 そのころトリスは山の事や洞窟の事を知っていそうな町のお爺さんやお婆さんに話を聞いて回っていました。
 しばらくして3人は宿屋に戻りご飯を食べながら自分達で調べた事や聞いてきたことを話し始めました。
「調べて分かったのは繋がり山がこのベアーズタウンとフクゲートシティーのちょうど中間にある山という事と、山の中にはいくつもの洞窟があるという事と、これは本当なのかどうかは分らないけれど山には不思議な力が昔からあると言われているみたいで、色々な言い伝えもあるみたいだよ」
とキューが言うと
「私も本を少し探して読んだけれど、山の中に不思議な力を持っている洞窟がある事は書いてあったけれど全部昔話しの絵本に書いてあるだけしかなかったし、図書館のおじさんに聞いたら山の近くに住んでいるお爺さんがその話に詳しい事を教えてもらったよ」
とアリーが言った。
「私も町の人から色々と聞いてみたけれど、やっぱり皆教えてくれたのはアリーが言った昔話しと同じで誰も実際は見たことが無いらしいわ」
とトリスが言い
「そうなると後は頼みは、アリーが教えてもらったそのお爺さんに話を聞いてみるしかないかもしれないね」
とキューが言うとトリスが
「そうね、それが良いわね」
と言い
「じゃあ明日は山に向かいながらそのお爺さんに話を聞かないとだね」
とアリーが2人に言うとキューが
「そうだね、その後に洞窟を探しに行くとしようか」
と言い2人は
「そうしようそ、うしよう」
と返事をしました。
「じゃあ明日は早いから明日にそなえて少しでもゆっくりと寝るとしよう。おやすみ」
とキューが言い2人も
「はーい、おやすみなさい」
と言いました。
⑥ そして、翌日の朝一番で繋がり山を目指して3人は出発しました。
 しばらく歩いているとアリーが
「パパとママは昨日は夢を見たかな。私ね夢でまたあの3人に逢う夢を見たの」
と言うと2人とも
「アリーも見たの」
とキューとトリスが声を揃えて言った。
「やっぱりパパとママも見たんだね。しかも今度は結構しっかりと覚えているよ、私あの3人の名前もどこから来たのかも」
とアリーが言うと
「パパも覚えているよ。3人の名前はスッキにジジとサーコって言ってたよね」
と笑顔でキューが言うとトリスが
「それに今私達が向かっている山の事や不思議な洞窟の事もなんとなく覚えているわよ」
と言った。
「やっぱり夢のとおりになるって事だと私は思うし、きっと不思議な洞窟もあの3人も見つかると思うよ」
とアリーがはしゃぎながら言いました。
「たしかに本当に夢のとおりになるかもしれないね。これだけ同じ夢を3人が3人とも何回も見るなんて事は普通ではないだろうしね」
とキューが言いトリスが
「本当にそうね。こんな不思議な事はめったにないわね」
と言ったら
「早くあの3人に逢って色々と話をしたいな」
とアリーはとても嬉しそうにはしゃいでいました。
 そんな中トリス
「はたしかに不思議だと思うけれど本当にこれで良いのかな」
とこの時1人思っていました。
 そして、不安そうになっているトリスを見てキューがトリスに
「きっと大丈夫だよ。夢の中でも危険そうな事もなかったし、なによりも今回の旅はアリーが大人に成長する事が出来る良い旅でもあると俺は思うんだ。人の事を想いあったり大切な事を学ぶ事が出来る旅になると思う気がするんだ」
と言ったら
「そうね、私も心配し過ぎね」
とトリスはもう迷わない決意をしたのでした。
⑦そして3人は繋がり山のすぐ近くまで来たのでした。
 そして町でアリーが教えてもらったお爺さんも見つけることが出来て3人はそのお爺さんの話を聞きました。
「突然お邪魔をしてすいませんでした」
とキューがお爺さんに言ったら
「大丈夫ですよ。歳をとったら寂しくてね、こうやって話し相手が出来てわしも本当に嬉しいのじゃよ」
と言ってくれました。
「たしか繋がり山と山にある洞窟の事を知りたいのじゃな」
と言い
「はい、お願いします」
とキューが言うと
「繋がり山は昔から不思議な力があってな、ほかの世界と繋がっているというふうにわしは聞いておってな。その繋がりが今あなた達が言った希望の洞窟というわけじゃな。そしてその洞窟は人を選ぶのじゃよ。その選ばれた者の前にしかその姿を現さないといあれておるのじゃよ」
と教えてくれました。
「ねえ、お爺さんもその希望の洞窟を見た事があるの?」
とアリーが聞くと
「残念な事にわしはまだ見た事はないんじゃよ」
と言うとアリーが
「そうなんだ」
とちょっとがっかりして言った。
「じゃがな、わしは希望の洞窟は必ず繋がり山にあると思っているのじゃ。でないと昔からそんな事は言い伝えられていないと思うからの」
と言った。
「そうですね」
とキューとトリスが言い
「色々と教えてもらいありがとうございました」
とキューが言い、アリーがお爺さんに
「ありがとう。私がきっと洞窟をみつけるからね」
と言いました。
するとお爺さんが
「気を付けてな。君ならみつけられる気がするよ」
と笑顔で言ってくれました。
⑧ そして、アリー達は洞窟を探すために探す為に繋がり山までたどり着き、山の中を進んで行きました。
「やっと繋がり山に着いたね」
とアリーが言うと
「そうね。夢の中ではこの道を進んで行くと分かれ道になっていてその道を左側に山の奥の方に進んで行けば良かったのよね」
とトリスが言うと
「さすがママだね、良く覚えているね」
とキューが言った。
「たしかその後、何ヵ所か洞窟が出てきて探しながら少し歩いていると・・・」
とキューが言っているとアリーが
「急に天気が悪くなってきて辺りが一瞬にして霧に包まれてしまって真っ白になって、その中で一ヵ所だけ明るく光っている場所があって、そこが洞窟になっていたんだよね」
とアリーが嬉しそうに言った。
「そうね、そこが洞窟になっていたわね」
とトリスが返事をした。
 そして、アリーに全部言われてしまったのでキューは少しショボンとなりました。
 そして、歩いていると夢にでてきた分かれ道に着きました。
「分かれ道あった~」
とアリーは、はしゃぎながら左側に進んで行きました。
「あんまりはしゃいでいると転ぶわよ」
とトリスが注意すると
「大丈夫だよ~」
とアリーが返しました。
 そして、山の中腹辺りに来ると所々に洞窟が出てきました。
「この辺りだったよね、たしか」
とキューが言い、2人とも
「うん」
と返事をしてうなずきました。
 そして、しばらく歩いていると夢と同じように急に辺りが霧に包まれました。
そして、霧の奥から光が見えたので3人でそこに向かって歩いて行くと、そこには3人が夢で見たのと同じ希望の洞窟がありました。
「本当にあったわ。夢と全く同じだわ」
とトリスが言い
「うん。本当に夢と同じだね」
とアリーが笑いながら言い
「この洞窟を進んで行けばあの3匹に逢うことが出来るんだろうね」
とキューが言い
「うん、きっとであえるよね。パパママ早く洞窟の中に進もう」
とアリーが促した。
 そうして3人は、洞窟の中に進んで行きました。
 3人はその先に待っている不思議な出会いを期待して。

           第3章へ続く












































































































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