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エピソード4
擬態
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エピソード4
とあるビルの一室
「アヒルタイガーの遺伝子結合技術は恐らくプラズマによるものです。しかしながらその技術はジャック・オズワイルド一人が開発したものでして・・・。」
白髪で背の高い男が答えた。
「ふん!バカな!いったいどれほど投資をしたと思っておるのだ。そのジャックも死んでしまったのだろう?ならば、アヒルタイガーを捕まえて調べるしかないではないか!」
こちらはいかにも高級そうなスーツを着た男だ。
「はい。仰る通りでございます。有能な化学者を寄せ集め、アヒルタイガーを捕まえるべく強靭な生物の開発をしております。」
「日本という国は何の資源もないのだ。技術で世界を凌駕する・・・。それしかなかろう?」
男は銀縁のメガネを直しながら片方の眉毛をつりあげた。
国立民族学博物館の展示室ー
「あー、今日は宿直警備かー。セキュリティがあるんだから泊まる必要あるのかねー。」
博物館の警備員が懐中電灯を照らしながら最後の見廻りをしている。
見廻りが終わるとセキュリティシステムを作動させ宿直室で仮眠を取りながら警備することになっているのだ。
「何もないって。こんな展示物盗むヤツいないってー。」
そう呟いた時、何かが暗闇で動いた気がした。慌てて懐中電灯をそちらへ向ける。
「ん?気のせいかな・・・・。」
そこには木製のオールや狩猟道具が並んで飾ってあるだけだ。
木の枝がゆっくりと動いているようにも見えるが・・・。
「最近、老眼入ってきたからな・・・。目がかすんでよく見えん。」
メガネを外し、手の甲で目を擦った。
ふと横に何かの気配を感じ、メガネを片手で付け直して横を振り向いた。
すると、
「われはナナフシモドキバラスと申すものだ。」
昆虫の顔が目の前にあった。
「ひ、ひやぁぁぁぁ~!」警備員は腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
「た、た、たす、だ、だれか、たす、助けて~!」なかなか声にならない。やっとのことで大声が出せた。
「チッ、うるさいヤツめ。挨拶もロクにできぬ愚か者めが。」
ナナフシモドキバラスは近くに飾ってあった展示ケース近くに行くと、口から粘着力のある液体をケースに吐き出した。するとみるみるうちにケースが溶けた。
「これであるな。メキシコの太陽の石は。」
そこに展示してあったのは、メキシコ国立人類学博物館にある古代アステカ人が残した石彫と同じデザインが彫刻された小さな石であった。1790年に同時期に発見されたものだ。
ジリリリリリィィィ~!大きな音で非常ベルが鳴り響く。警備員が廊下を這いつくばって移動しやっとのことで非常ベルを鳴らしたのである。
「どうしたんだ!」同僚のもう一人の警備員が駆けつけた。
「む、虫い~!虫が~!」
「何言ってんだ。虫がどうしたんだよ!」
周りを見回したが何もない。木の枝がゆっくりと動いていたことには気がつかなかった。
カフェ「ハッピネス」ー
「ね、日本でもさ、現れたのよ、怪人。ナナフシモドキバラスって言うんだって。」
「知ってるよ。ワイドショーでやってたの見たよ。」
大垣裕也が自慢げに言ったことを即座に嗜める音原道彦。
「そうそう、エジプトの考古学博物館を襲ったバッタみたいな怪人と同じ犯人じゃないかって言われてる。」そこに唐島翔が割り込んできた。
「ギタ・・・えーっと、擬態!紛れこんで変身するやつ!それで忍び込んで・・・。」
「はいはい、擬態ね。別に変身はしてないけどね。」
裕也と道彦は高校時代からこんな掛け合いが多い。
「その国立民族学博物館で盗まれたメキシコの太陽の石なんだけど、何でも貴重なものらしいよ。すごく厳重に警備してた展示ケースから盗まれたらしい。」
考古学好きの翔がスマホの情報を見ながら言った。
「しかし、なんで急に怪人がそんな博物館ばっかり襲うんだよ。」
と、カフェのオーナー明がカウンターから顔を突き出した。
「アヒルタイガーそっちのけでって感じ。」道彦も同感している。
「共通していることって・・・。太陽?」翔が思いついたように呟いた。
「太陽?・・・。」4人は顔を見合わせた。
とあるビルの一室
「アヒルタイガーの遺伝子結合技術は恐らくプラズマによるものです。しかしながらその技術はジャック・オズワイルド一人が開発したものでして・・・。」
白髪で背の高い男が答えた。
「ふん!バカな!いったいどれほど投資をしたと思っておるのだ。そのジャックも死んでしまったのだろう?ならば、アヒルタイガーを捕まえて調べるしかないではないか!」
こちらはいかにも高級そうなスーツを着た男だ。
「はい。仰る通りでございます。有能な化学者を寄せ集め、アヒルタイガーを捕まえるべく強靭な生物の開発をしております。」
「日本という国は何の資源もないのだ。技術で世界を凌駕する・・・。それしかなかろう?」
男は銀縁のメガネを直しながら片方の眉毛をつりあげた。
国立民族学博物館の展示室ー
「あー、今日は宿直警備かー。セキュリティがあるんだから泊まる必要あるのかねー。」
博物館の警備員が懐中電灯を照らしながら最後の見廻りをしている。
見廻りが終わるとセキュリティシステムを作動させ宿直室で仮眠を取りながら警備することになっているのだ。
「何もないって。こんな展示物盗むヤツいないってー。」
そう呟いた時、何かが暗闇で動いた気がした。慌てて懐中電灯をそちらへ向ける。
「ん?気のせいかな・・・・。」
そこには木製のオールや狩猟道具が並んで飾ってあるだけだ。
木の枝がゆっくりと動いているようにも見えるが・・・。
「最近、老眼入ってきたからな・・・。目がかすんでよく見えん。」
メガネを外し、手の甲で目を擦った。
ふと横に何かの気配を感じ、メガネを片手で付け直して横を振り向いた。
すると、
「われはナナフシモドキバラスと申すものだ。」
昆虫の顔が目の前にあった。
「ひ、ひやぁぁぁぁ~!」警備員は腰を抜かしてその場にへたり込んだ。
「た、た、たす、だ、だれか、たす、助けて~!」なかなか声にならない。やっとのことで大声が出せた。
「チッ、うるさいヤツめ。挨拶もロクにできぬ愚か者めが。」
ナナフシモドキバラスは近くに飾ってあった展示ケース近くに行くと、口から粘着力のある液体をケースに吐き出した。するとみるみるうちにケースが溶けた。
「これであるな。メキシコの太陽の石は。」
そこに展示してあったのは、メキシコ国立人類学博物館にある古代アステカ人が残した石彫と同じデザインが彫刻された小さな石であった。1790年に同時期に発見されたものだ。
ジリリリリリィィィ~!大きな音で非常ベルが鳴り響く。警備員が廊下を這いつくばって移動しやっとのことで非常ベルを鳴らしたのである。
「どうしたんだ!」同僚のもう一人の警備員が駆けつけた。
「む、虫い~!虫が~!」
「何言ってんだ。虫がどうしたんだよ!」
周りを見回したが何もない。木の枝がゆっくりと動いていたことには気がつかなかった。
カフェ「ハッピネス」ー
「ね、日本でもさ、現れたのよ、怪人。ナナフシモドキバラスって言うんだって。」
「知ってるよ。ワイドショーでやってたの見たよ。」
大垣裕也が自慢げに言ったことを即座に嗜める音原道彦。
「そうそう、エジプトの考古学博物館を襲ったバッタみたいな怪人と同じ犯人じゃないかって言われてる。」そこに唐島翔が割り込んできた。
「ギタ・・・えーっと、擬態!紛れこんで変身するやつ!それで忍び込んで・・・。」
「はいはい、擬態ね。別に変身はしてないけどね。」
裕也と道彦は高校時代からこんな掛け合いが多い。
「その国立民族学博物館で盗まれたメキシコの太陽の石なんだけど、何でも貴重なものらしいよ。すごく厳重に警備してた展示ケースから盗まれたらしい。」
考古学好きの翔がスマホの情報を見ながら言った。
「しかし、なんで急に怪人がそんな博物館ばっかり襲うんだよ。」
と、カフェのオーナー明がカウンターから顔を突き出した。
「アヒルタイガーそっちのけでって感じ。」道彦も同感している。
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「太陽?・・・。」4人は顔を見合わせた。
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