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エピソード5
行方
しおりを挟む「リュウキくん、ジャック・オズワイルドは君に『紫外線を浴びせて』アヒルタイガーに突然変異させたと言ったんだよな。」
鹿原の研究室。鹿原が人差し指を立て、何かを確かめるようにその指を揺らしている。
「ええ、確か・・・。」
ジャック・オズワイルドーあの頃は辻チャノフ博士と呼んでいたがーの実験室で光線を浴びた時を思い出しながら答えた。
「紫外線は太陽の光線の中に含まれてるのは知ってるよな。生物のDNAが紫外線に照射されると
DNAを構成する原子が励起される。DNA分子を不安定にして螺旋構造を構成する『はしご』を切り離すんだ。」
「あの・・・よくわからないです・・・すいません。」
リュウキが頭を掻いている。
「ああ、すまん。要はその紫外線で君はアヒルタイガーに変身するわけだが・・・。紫外線だけではないはずなんだ。」
すると鹿原の後ろからポケットに両手を突っ込んだ白衣の女が現れた。白衣に不釣り合いな赤いパンプスという出で立ち。
「そう、恐らくプラズマね。低周波の電圧パルスで発生する誘電体バリア放電プラズマで細胞の内部に他の生物のDNAを送り込んで定着させるんじゃないかしら。」
「え?・・・失礼ですけど・・・誰・・・ですか?」驚いてリュウキが尋ねた。
「物理工学が専門の呉羽あずさ准教授。オレはプラズマのことを詳しくは知らないので相談していたんだよ。」と呉羽に手を振った。
「しかしね、それは非常に高度な技術だわ。突然変異を瞬間で行いそれを定着させるなんてね。そんな技術が手に入れば巨万の富を得ることになるわねー。」
「でも・・・、ジャック・オズワイルドはもういませんし・・・。」
「そう・・・でもね、その技術が欲しい人はたくさんいるんじゃない?」
呉羽は頭を少し傾けて微笑んだ。
「その時計なんだけど。少し調べさせてくれないかしら。」
カフェ「ハッピネス」ー
「本当かよ?」
明が目を丸くして顔を突き出した。
「うん、警察が調べたら確かにジャック・オズワイルドの墓は空っぽになってたって。」
道彦が答えた。
「じゃあ、一連の事件はやっぱりアイツの仕業ってわけだ。」
腕を組んでアゴを撫でる明。
「いやいや、ジャック・オズワイルドが生き返ったっていうの?」
「もともと死んじゃいなかったんだよ。」道彦の問いにすぐに答えた。
「そんな、ムチャクチャな~。崖から落ちたんだよ。生きてる人間なんているわけないじゃん。」
「人間ならな。」
「?!・・・な、なんだって?」
道彦は頭の中でそんな可能性はないかとグルグル考えを巡らせた。
「何?じゃあ、ジャック・オズワイルド自ら怪人になってたりするってこと?」
「まあ、思いつきなんだけどね(笑)」
明の考えにはいつも深みがない。
「ああ、生きてても死んでても・・・ジャック・オズワイルドはどこへやら・・・だね。」
道彦が頬杖をついてため息をついた。
とあるビルの一室ー
「エジプト考古学博物館の石とメキシコのアステカの太陽の石を手に入れました。ジャックが何か太陽に関係する石に着目していたようなのです。この石のエネルギーを使って今までにない怪人を作り出せるのではないかと。」白髪の長身の男が頭を下げて報告した。
「ジャックの研究は謎が多い。アヒルタイガーの突然変異技術は特別な何かがあるに違いないのだ。」
と答えた男の銀縁の眼鏡が光った。
「今度こそアヒルタイガーを超える怪人を作り出させます。」
「頼んだぞ。この技術を使って我が社は世界一の企業になるのだ。」
都心の一等地にある高層ビル。そのビルの入り口には株式会社NEW RECOMBINATION と掲げている。夕陽が辺り一面を茜色に染めている。
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