アヒルタイガー2

ブルッキ

文字の大きさ
6 / 9
エピソード6

光芒

しおりを挟む



「そろーり、そろーり。」
木の枝がゆっくりと動いている。

鹿原の研究所。鹿原の机の上にはリュウキの時計。
机から少し離れたソファーで鹿原がうとうとしている。

「こんなところに置いていては取ってくださいと言ってるようなものではないか。」
リュウキの時計は鹿原と呉羽が調べるために少しの間預けられているのだ。

「ワタシにかかればこんなこと造作もないこと。」
ゆっくりと時計を拾い上げ、ゆっくりと部屋を出て行った。

ナナフシモドキバラスは研究所を出ると、外に停めてあったジープに乗り込みどこかへ向かって走りだした。

するとその後を静かに追う車があった。

「思ったとおりだ。」
「どこへ向かってるんでしょう?」
鹿原とリュウキだ。

しばらく走るとジープは超高層ビルの地下駐車場へと入って行った。

「こ、ここはー。」
驚く鹿原。

「ど、どうしたんです?」
「NEW  RECOMBINATIONー世界的な製薬会社のビルだ。」
ビルから少し離れた道端に車を駐めて二人はビルを見上げた。

「リュウキくん。君を狙っているのはこの企業ということだ。」
「企業ですか?」
「ああ。盗んだ時計が偽物とわかればまた君を狙ってくるだろう。今日はひとまずここまでだ。」

二人を乗せた車は帰路についた。


次の日ー

「そう。そんな大企業があなたを狙っているのね。」
呉羽は前髪を整えながら言った。

「ええ、これからどうしたものかと・・・。」
鹿原の研究室がある大学の正門からリュウキと呉羽が出てきた。

「あなたの時計のことなんだけど。」
リュウキの時計は呉羽らに分析されてすでにリュウキに返されている。

「紫外線、プラズマを発生する装置の他に鉱物が入っていたわ。」
「鉱物?」
「そう、突然変異を可能にするエネルギーを秘めた鉱物。石のようなものね。あなたを狙う組織もその秘密を知りたいのよ。」
「で、何かわかったんですか?」

大学近くの公園に来ていた。二人は公園のベンチに腰掛けた。

「そうね・・・。これは私の仮説なんだけど・・・。」
少し困ったような顔で呉羽は言った。

「地球ってね、過去に爆発した星の星屑からできているのよ。だから太陽のエネルギーが宿った鉱物があるのかもしれないわ。ジャック・オズワイルド博士はそれを発見したとか・・。」
「じゃあ、博物館が襲われて石を盗まれる事件はその石を探していると?」
「そんなところじゃないかしら。あ、そろそろ大学に戻らないと。じゃあね。」
呉羽はベンチから立ち上がりしばらく歩いてから急に立ち止まった。
そしてポケットに両手を突っ込み振り向いた。

「あー、さっきからこっちを睨んでる娘がいるわよ。」
笑いながらそう言うと何やら楽しそうに歩きだした。

「え?」
リュウキが辺りを見回すと、スタスタと歩み寄る人影が。リュウキの恋人レイナだ。

「ちょっと!誰よ!あの綺麗な女は。」
完全に勘違いされている。

「ち、ちがう。勘違い、ご、誤解だ・・・よ・・・ガッ!」

言い終わるのを待たずに足の甲に激痛が。
レイナの靴のヒールがリュウキの右足の上にある。

「あれー?ごめんなさーい。」
感情のない微笑みが怖いー。

「っぐ(T . T)・・・。」
リュウキは右足を両手で掴み片足でクルクル回り続けた。

それをレイナが鬼の形相で腕組みして見ている。
と、その背後の木から何かが動いてるような・・・。

「ちょ、ホントに信じて・・・よ・・・?」
止まってレイナがいたであろう場所を見るとレイナがいない。

「あれ・・・?おかしいな。さっきまで居たのに・・・」
リュウキはその場に立ち尽くした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

処理中です...