アヒルタイガー

ブルッキ

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エピソード2

プレリュード

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アヒルタイガー
エピソード2
プレリュード

「ねぇ、聞いた?」
事件の翌朝である。仕事の準備をしているリュウキに話しかけてきたのは、リュウキが勤める郵便局のアイドル的存在で、アルバイトの春野レイナである。
「何が?」
「昨日のポストを襲った化け物の事件よ!」
朝から職場はその話で持ちきりであった。
「あぁ、なんとなくは。」
「でね、なんでもその化け物をやっつけた正義の味方がいるらしいのよ。」
「へー。」とリュウキは顔を上げ、視線をレイナに向けた。
「ヘー、ってまた間の抜けた返事よねー。リュウキもちょっとくらい社会に貢献したら!」
とか言いながらバシッとリュウキの背中を叩いた。
「痛っ・・・。」
昨日カエルバラスに攻撃された背中はもちろん完治していない。
「オレは信じないね・・・。」
そこにやってきたのはリュウキの同僚、唐島翔である。
「どうせUFOとか、ネッシーとかああいう類の都市伝説みたいなもんさ。」
「相変わらず夢の無いことを言う人ねー。」とレイナ。
「だってさ、上半身が虎で、下半身がアヒルなんだろ。ありえないよ。」
「そうなのよね、変なのー。」
「こらーっつ!何やってんだ!仕事しろ、仕事!」
そこへ怖い顔で割り込んできたのは上司の東尾保人である。
「うひゃー。」レイナと翔は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

数日後―
夜、配達を終えたリュウキが郵便局に戻ってくると、何台ものパトカーが赤い光を辺りに放ちながら停まっていた。バイクを近くに寄せると、そこに上司の東尾が立っていた。
「東尾さん、何かあったんですか?」
「ああリュウキか。実はな・・・」
東尾の話によると、夜7時頃にATMの非常ベルが鳴り響き、駆けつけると何か動物のようなものが飛んで逃げていったというのだ。ATMは破壊され、中の現金も奪われていたらしい。
「強盗ですか・・・」とリュウキ。
「あぁ、動物がな。」と苦笑いをしながら東尾はつぶやいた。

翌朝―
「うーん。」
「どうしたんです?」
さっきから唸っている東尾にリュウキが声をかけた。
「これなんだが・・・。」
東尾は数枚の写真をリュウキに手渡した。
「写真ですか?」
「ああ、ATMの破壊事件の直前の画像だ。」
「女性ですね・・・。」
写真には若い女性が写っていた。それもモデルのような美しい容姿である。
「その直後にカメラが一瞬で破壊されている。」
「じゃ、この女性が?」
「さあな・・。まさかとは思うが。」
「ですよね・・・。」リュウキは再度その写真に見入った。

そのまた数日後―
リュウキは街に配達に出ていた。街角の小さな郵便局に、若い綺麗な女性が入っていくのが見えた。
「うわっ、すごい美人だよー。あれで傘持ちゃレースクイーンだな、いやキャンペーンガールてのかな。」とつぶやいたその時、
グァシャーン!という破壊音がして、その後、ジリリリリリィイイイ!と大きなベルの音が鳴り響いた。
すると、入り口から動物のようなものが飛び出してきた。
「カ、カンガルー?!」
人間以上の大きさのカンガルーらしき動物がピョーンと大きく跳ね、リュウキを飛び越していった。リュウキは急いで赤バイクを反転しその後を追った
リュウキの赤バイクは辻チャノフ博士によって改造され、ハンドルに設置されたボタンを押すと変形し、スポーツタイプの前傾姿勢となった。マフラーが2本に増え、ターボ音がキーンと響いた。
「ファイヤー!アヒルタイガー!」
リュウキはハンドルの手を離し、腕をクロスしながらGショックのボタンを押した。
目も眩むほどの光がリュウキを包む。
カンガールバラスの前にアヒルタイガーが立ちふさがった。カンガールバラスの腹部のポケットにはたくさんの紙幣が入っている。
「ATMを襲っていたのはお前か!」
「そうなのよネー。お金欲しいのよネー。カンガールバラス様には誰も勝てないのよネー。」
カンガールバラスの拳が一瞬でアヒルタイガーの顔を捕えた。
後ろへ吹っ飛ぶアヒルタイガー。かなりのパンチ力である。ATMを破壊したのもこのパンチのようだ。しばらく起き上がれない。
そこへ飛び込んでくるカンガールバラス。
アヒルタイガーは身体をひねり、
「ガーガーキック!」と叫びながら、起き上がりざまカンガールバラスの後頭部にまわし蹴りを入れた。
「ギョエー!やられたのよネー!」
吹っ飛び砕けるカンガールバラス。
するとカンガールバラスは、カンガルーと綺麗な女性に分裂しそこへ倒れこんだ。
ウー、ウーー。パトカーの音が聞こえてくる。アヒルタイガーはその場を離れた。

辻チャノフ博士の研究所―
「しかし、博士。キャンギャルとカンガルーの響きが似てるという理由で化け物を作る発想はオヤジギャグのセンス抜群ですよね。カンガールバラスですよ。いったいどんな組織がこんな化け物を作り出しているんでしょうね。」
リュウキが笑いながら話しかけたが、博士は黙ったまま窓の外を眺めている。
しばらくの沈黙のあと博士は重い口を開き、静かに話し始めた。
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