辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第1章 旅立ち編 〜冒険者になろう〜

チーム名が決まりました

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「光魔法の適性って珍しいな」

 おじ様の武器屋から大通りを通り、ギルドへ向かう途中。
急に防音魔法を展開された事に気づいた私は、ロランの方を向いた。
そして声を掛けられたのだ。
私のステータスに関わる事だから、魔法を掛けてくれたのだろう。

「余り居ないのですか?」

 私も防音魔法があるからと言う事、そしてロランが思考を読み取れると言う事もあり、すぐに声に出して聞いていた。
ロランも気にせず、質問に答えてくれる。

「光魔法は回復系魔法だから、四大元素に比べて適性が少ないらしいと聞いたことがある。もし適性が見つかれば、冒険者ではなく神官か貴族のお抱えになっている可能性が高い」
「‥‥何故でしょう?」

 普段お兄様以外にこのように連続で質問することは滅多に無い。
もしここにアルノーたちがいれば、目を剥いて驚くかもしれないな、と思う。
ロランも少しびっくりしたのか、私の顔を覗き込んでいる。
どうせ、顔で考えていることが分かるなら、聞いてしまった方が良い、と思えてきたのだ。
あとはロランがそう思える優しい人柄だったと言うことも大きいだろう。

「いや、何でも無い。冒険者にならない理由だったな。正直神官とか貴族のお抱えの方が、給料も高いし安全だからだな。それと子どもに適性が見つかった場合、幼いうちから神官として働かせる親もいるらしい。ま、そのまま流されてその道に就職すること多いんじゃないか?」
「わざわざ危険を犯してまで、冒険者をしないってことですね」
「ま、簡単に言うとそうだな」

 私のお父様も、泣いて「セリーヌ、旅なんてしないで一緒にお家で過ごそう」と言うくらいだ。
自分の子どもが危険な仕事に就くなんて、親としては辞めさせたい人もいるのかもしれない。

「流石にここだと色々と教えることもできないな‥‥あ、そうだ。また機会があったら俺のステータスも教えるな」

 ギルドが近づいてきたこともあり、ロランはそう言って話を切り上げたのだった。


 ギルドに入ると、二人で受付に向かった。
思った以上に早くおじ様のところで武器が調達できたからか、ギルドが混んでいる時間に当たってしまったようだった。
順番待ちの列に並んでいると、受付のカウンター内でマリオンさんと男性が必死に人を捌いているのが見える。
 周りを見渡してみると、老若男女すぐには数えきれないくらい多くの人が話したり、依頼を見ていたりしていた。
そしてちらほらと、ロランさん、ロランと彼の名前が聞こえる。やはり彼は有名なのかもしれない。

ーーちなみにその会話は「ロランの隣の女の子可愛くね!?」なのだが、彼女には残念ながら聞こえていない

 順番が回ってくると、担当してくれたのは男性の方だった。
眼鏡を掛けて前髪を切りそろえているからか、少し幼く見える。

「あ、ロランさん。今日はどの依頼を受けられますか?」
「依頼も後でお願いするが‥‥先にパーティーの申請をお願いしたい」

 男性は口を開けたまま固まっていた。
それだけではなく、ギルド中が一斉に静かになっている。何が起こったのだろうか?

「し、失礼しました!パーティー申請ですね?!こちらの紙にメンバーの名前とパーティー名を記入してください。その後、カードに記載するよう手続きを致します」

 渡された紙にロランが名前を書いていると、静かだったギルドにポツポツと話し声が聞こえ始める。

「あのロランが、パーティーを組むだと?!」
「誰とも組まなかったあのロランさんが!?」
「隣の女の子、もしかしてロランの彼女か??」

 あの静けさはどこへやら。いつの間にか元の騒がしいギルドに戻っていった。

 二人の名前の記載を終えて、最後に残るはパーティー名だけとなった。

「何が良いかな、くそっ。こう言う時、俺の案は採用されたことがないからな‥‥」

 正直、私もチーム名など考えたことがない。どうしたらいいのだろうか。
受け付けてくれた男性が「決まったら紙を持ってきて下さい」と気を遣ってくれたので、私たちは受付を離れてソファーに座った。

 チーム名と言われても真っ先にどんなものがあるか分からない。
‥‥そう言えば昔、お兄様と騎士の訓練の見学をした時、チーム名を決めていたことがあったっけ。
その時は確か、好きな言葉だったり、共通点をチーム名にしていたような気がする。

 そこで私ははっと気づいた。
ロランとの共通点が一つあるではないか。
ダメ出しされるのを承知で、話をしようと思った。

「ロラン、名前なんですけど‥‥」
「ん、なんか思い浮かんだか?」
紅玉こうぎょくってどうでしょうか?」

 二人の共通点、それは目の色だった。私は濃い赤目である。
そしてロランも赤髪、赤目だったのだ。

「紅玉のロラン、紅玉のセリー‥‥良いじゃないか!じゃあ紅玉にするか」

 ロランは満面の笑みで喜んでくれた。
それが嬉しくて、少しだけ私も口角が上がっていたのに気が付く。

 これが私とロランがチームを組んだ瞬間だった。
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