辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~

魔人アウラウネとの戦闘 中

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「‥‥嘘だろ」

 ポツンと隣から聞こえた声。ロランだ。
アウラウネが魔石を飲み込んだ後、すぐにこちらに向かってきたのが見えた。
炎の剣を使って怒らせたのは私。きっと心配してくれたのだろう。

「話に聞いた事はありましたが‥‥初めて見ました」
「‥‥俺もだ」

 アウラウネは蔓で私たちを攻撃しつつも、魔石を取り入れた身体を確認しているようだ。
蔓と上半身が別々の思考を持って動いているように感じる。

「たまには人間も良い物をくれる」
「‥‥良い物ですって?」

 アウラウネが漏らした言葉に思わず反応する。
今、なんて言った?良い物をくれる‥‥?
答える必要のない筈のアウラウネだが、気分が良いのか喋り始める。

「さっきの魔石は違う人間から貰った」
「どんな人間だ?」
「黒いフードを被った人間。ワイルドボアが倒されたら、次は私が村を襲えと言われた」
「「なんですって(なんだと)?」」

 ワイルドボアも人的被害だった可能性がある。

「まさか、ワイルドボアや子どもに魔法をかけたのはお前か?」
「子ども?知らない。かけたのはワイルドボアだけ」

 と言うか、ここまでペラペラ喋ってくれるのは予想外だ。
それはロランも思っているだろう。だが、その思いに答えたのはアウラウネ だった。

「人間は、死ぬ。だから聞かせてやった。私の養分となるが良い」

 そして第2ラウンドが始まった。


「心なしか‥‥蔓が硬くなっている気がするが気のせいか?」
「魔石の魔力で強化していますね」
「まじかよ‥‥」

 先程から切っては切っては再生の繰り返し。
しかも蔓が強化されているせいか、切れるスピードも遅くなった。
頼みの綱であった私の炎の剣も、魔石を飲み込んだアウラウネ には効かなくなったらしく、すぐに消化される。

「くそ、なにか突破口がないか‥‥?」

 ロランは風魔法「切断の風ウインドカッター」でアウラウネの上半身を狙うが、蔓で受け止められてしまう。
その間にも剣で蔓を相手にしているから、相当な技能である。

 そんな攻撃を繰り返して何度目か。時間が永遠に終わらないのでは、と錯覚しそうになる頃。
行き詰まる二人を他所にそれを楽しそうに見ているアウラウネがいた。
 
「中々生きの良い人間。気に入った」

 詠唱を始めたアウラウネ。
その周りには紫色のオーラが纏われ始めている。しかも非常に濃い。

「ロラン、逃げて下さい!」

 私は思わずロランに声をかける。
色が濃くなることは、それだけ魔力を消費していると言うこと。
アウラウネは相当強い精神系魔法を使うつもりだ。

 しかし、逃げようとしても蔓に前後を挟まれて逃げることができない。
それはロランも同じだった。

「精神系の魔法が来ます、気をつけて下さい!」
「分かった!」

 ロランはアウラウネの目を見ず蔓の対処に走っている。
そんなロランをニヤニヤと見つめているアウラウネ。そこで私は嫌な予感がする。

「まさか‥‥」

 魔石を飲む前のアウラウネは目を見なければ、精神系の魔法が使えない。
だが、魔石の効果によって、使‥‥

「ロラン!!」

 私はロランを守るため、叫びと同時に特大の「火炎放射」フレイムをアウラウネに向けて打つ。
だが、強化された蔓によってそれが防がれる。
灼け落ちないところを見ると蔓に防御魔法も使われていたようだ。

 そして気づくとロランとの距離が離されている。
それに気づいたのと同時に‥‥アウラウネの詠唱が終わりを迎えた。

精神メンタル操作オペレーション

 アウラウネの伸ばした右の手のひらから、紫色の光が放たれる。
そして、その光がロランに当たったかと思うと、ロランは急に攻撃を止める。
無情にも‥‥ロランは精神操作の魔法に掛かってしまったようだ。
それは、彼の周りから発せられるオーラによって分かる。

「ロラン‥‥」

 いつもなら笑ってくれるロランが、反応しない。
まるで私がここにいる事が見えていないようだ。

「ロラン、と言ったか。あの娘を倒せ」

 アウラウネの言葉でロランは私に向かって走り出したのだった。
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