辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第2章 冒険者編 ~シャルモンの街~

訓練をしてみよう

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 あの後、ロランは魔法陣を書き写していたが私のアドバイスもあって、魔法のイメージも描いていた。
ひと段落したら、また魔力操作の訓練に戻っている。
頑張れば、そう時間が経たないうちにできるようになるだろう。

 だが、私の方は訓練が終わると暇である。何かやることがないかと考えていた。
 
 ふと腰につけていた扇を見る。
そう言えば、この扇で炎の剣を具現化させた事を思い出す。

‥‥氷の剣もできるのかな?

 そう思った私は、「氷の剣アイスソード」と詠唱してみる。
目の前には表面に凹凸のある氷の剣ができていた。
もっと綺麗な剣を作ろうと、収納魔法から所持していた鉄の剣を取り出す。
触れたり、感触を確かめた後、もう一度氷の剣を作り出す。
次は上手く行ったので、思わず笑みがこぼれた。

 試し切りをしてみようと、目の前に水の柱を創造する。
そしてできた水柱に、氷の剣を横から当てた。
その瞬間、水柱が氷の結晶と化し、剣を当てた箇所から真っ二つに切れる。
切れ目の上側の氷は、ずれて地面にドスンと落ちた。

 その音に驚いたロランがこちらに走ってくる。
 
「どうした?何があった?」

 先程の状況を伝えると、驚いた後にジトーと目を細めて私を見てきた。

「危なくないことは分かったが‥‥あんまり危険な事をするなよ」
「う‥‥はい」

 なんだろう、最近ロランの対応が子どもに対するものに見えてきた気がする。
しかし、私が心配をかけていることもあるので、何も言わない。

「しかし、ここまで綺麗に切れるとは。凄いんだな、氷の剣」

 そう言われてまじまじと私も見つめる。これはおかしい。

「普通こんなに綺麗に切れないと思うんですが‥‥もしかして」
「ん?」

 慌てて媒体にしていた扇を広げてみると、扇の真ん中辺りに青色の模様が描かれている。

「青色?今まで無かったよな?」
「多分扇に魔力を通したり、受けたりすると、この扇が変化するようですね」
「そうか。まあ危なくはなさそうだから問題ないな」

 そう言ってロランは鍛錬に戻っていった。

 
 翌日も依頼は据え置き、洞窟にやってくる。
昨日の反省を生かしたのか、ロランが私に何をするのか尋ねてきた。

「土魔法と火魔法を使って、磁器を作りたいです」
「磁器を魔法で作れるのか?」

 以前お兄様が言っていた。
辺境伯の領土に、火魔法を使う兄と、土魔法を使う弟がおり、彼らは分担して磁器を作っていると。

「お兄様がそう仰ってましたから、できると思います」

 磁器は粘土に石英の粉末を混ぜて作ったのが原材料になるらしい。
粘土は土魔法で作ることができるが、石英は作れるかが分からないので洞窟の中を探しに行こうと思っている。

 そう伝えると、最初は渋っていたロランだが一緒に探してくれることになった。
洞窟の中には透明な石が埋まっていて、それが石英である可能性が高い、と昔聞いた記憶がある。
入るとすぐに見つかったので、土魔法で掘りつつ、集めることにした。

 そして30分ほどでにリュックサック一杯の石英らしき透明な石が集まった。
私たちは洞窟の前の広間に戻り、お互いの訓練に戻る。
ロランは昨日教えた魔力操作の合間に、書き写した魔法陣を何度も見直している。
私は集めてきた石を「破壊ディストラクション」で粉砕し、土魔法で作った粘土と混ぜ合わせ始めたのだった。


 粘土ができた後は、いくつか試しに食器を作ってみることにする。
これもイメージの練習になる。モンテーニュ家で使っていた食器を思い出す。
そしてまずは真っ白のメインで使うお皿をイメージした。
 もちろん、魔法では形が変わるだけで粘土の色は変わらない。
繊細な作業なので、詠唱を唱えておく。

「土よ、我が思うままに創造せよ、物質創造クリエイション

 戦闘に必要のない魔法なので、魔法陣を覚えていない。
そういう魔法は詠唱だけ覚えている。
詠唱が終わると同時に、丸い状態だった粘土はあっという間に想像していたお皿の形をとった。

「次は火魔法で焼く‥‥」

 以前焚き火に火をつけたように、火球で問題ないだろう。
そう思い、お皿を包むような火のイメージを作り、火球を展開する。
5分ほどして火が消えた頃、目を凝らして見ると、皿には大きなヒビが入っていたのだった。

「‥‥失敗したみたい」

 お兄様から聞いただけでは、ダメだったようだ。
そう言えば、磁器を作るときには火の温度が決まっている、という話をしていた気がする。
魔法の訓練に良さそうなのに、これは失敗かもしれない。

 諦めて粘土を収納魔法に仕舞おうとすると、後ろからロランが声をかけてきた。

「ため息ついて、何かあったのか?」

 失敗した事を話していると、ロランがこう言い始めた。

「確か1200~1300度くらいの温度で、焼き時間は2分ぴったりでいいと聞いたことがある。昔家の近くにいた陶芸家のにいちゃんが、興味がないのに教えてくれた。まさかここで役立つとはな」

 そしてその言葉通りもう一度作ってみたら、綺麗なお皿ができました。
やはり、手順を守ることって大事なんだな。
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