辺境伯令嬢は冒険者としてSランクを目指す

柚木ゆきこ

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第3章 帝都へ

仕組まれたものでした

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「終わった‥‥か?俺の探索魔法には引っかからないんだが‥‥」

 私も念の為、探索魔法を展開するが、街道の方にゴブリンが数体いるくらいで強い魔物はいないようだ。
そう思ったのか、緊張がドッと解けた気がする。

「私の魔法にも反応はありません。大丈夫かと思います」

 そう答えると、ロランは肩の力が抜けたようだ。胸をなで下ろしている。
だから私はロランに無茶ぶりをした事を謝ることにする。

「ロラン、ごめんなさい。あの土壇場で無茶な事を言いました」
 
 目を見開いたロランだったが、すぐに笑顔に戻る。
そして私の肩をぽん、と優しく叩いた。

「いいや、逆に発破かけてくれて助かった。セリーが信じてくれたからできたんだ」

 そう言われて喜ぶ自分がいる。けれども申し訳ないと思っている自分もいる。
ロランといると、感情の整理が追いつかない‥‥
まだ心配そうな顔を私がしていたからか、肩に置いた手を離し、私の前に手を出した。

「そんな心配するなって。また一つ強くなれた気がしたよ。セリーありがとう」

 お礼の握手のようだ。私は差し出された手を恐る恐る握ると、そっと握り返してくれた。


 私たちはワイバーンの周りを清浄魔法で綺麗にしていた。
血の匂いを垂れ流していてはまずい、そう思っての処置だ。
処置がひと段落すると、後ろから声がかけられる。振り向くとそこにはアンナさんと知らないお爺様がいる。

「セリーちゃん、大丈夫?怪我はない?」

 アンナさんは私を抱きしめると、手でペタペタと身体を触っている。
傷がないか探してくれているみたいだ。

「無事でよかった‥‥」

 怪我がない事がわかると、目に涙をためてアンナさんは私を見ていた。
場違いながら、とても綺麗な目だな‥‥と私は心の中で思っている。
アンナさんがしばらく私に黙って抱きついていると、お爺様がロランと私に話しかけてきた。

「この度は何とお礼を言って良いか‥‥私はこの街の長老をしておりますザガリーと申します」

 そこで詳しく聞いた。
ワイバーンの襲撃に気づいたのは、道中の冒険者だったようだ。
彼らが近くの街のギルドに報告したらしい。そこで伝令を聞いた長老様の息子さんが鐘を鳴らして今に至るようだ。

「だからワイバーンが来る前に避難が終わったのですね」
「はい、その冒険者は街の見える位置で発見したのも大きいようです。本当にありがとうございます」

 一言喋ればお礼を伝える長老様。
その様子に気づいたのか、わらわらと平屋から村人が飛び出してくる。

「ワイバーンが‥‥」
「首を切られてる、切り口が綺麗ね」
「これ倒したのかよ、すげー」

 と騒めき始めた所を長老様が諌めた。
一瞬で静かになる。長老様の威厳に満ちた態度に村人が圧倒されているようだ。

「あの‥‥長老様。この街の付近でワイバーンを見かけることがあるのでしょうか?」

 静かになったので、私は戦闘時から疑問に思っていた事を長老様に聞いていた。
思った以上に私の声が響いて恥ずかしい。

「いや、儂が生きている間‥‥父、祖父の代でもその話は聞いた事がございませんな」
「つまりは干渉の可能性があるのか?」
「‥‥ええ、魔種のワイバーンも居りますから」

 私の言葉に長老様は目を見開く。

「何と!魔種とは魔の森にのみ生息する種の事でしたな?」
「一番上の奴が魔種の可能性があるようだ」
「‥‥何ですと‥‥?」

 これで何かがこの村で怒っていることは間違いない。

「長老さん、一応確認するが‥‥魔種をこの近くで見たことはあるか?」
「いやいや滅相もない!素材でしか見たことがありませぬ!」
「だよなあ‥‥。それじゃあ、最近何か変わった事が起こったりしなかったか?例えば、何かがなくなった、いきなり出来たとか、変な人がいたとか?」

 そうロランが話したところで、村人の中から一人手を挙げるものがいる。

「ほう、お主は雑貨屋のアーロンか」
「ああ、ウチの雑貨屋に2、3日前黒いローブを全身で覆った奴が来て、買い物をしていったんだが‥‥妙なものを受け取ったんだ」
「‥‥見せてもらえるか?」
「ああ、いいぞ!‥‥長老、家に連れてっても大丈夫か?」
「儂も行く」

 そして私とロランと長老様はアーロンさんに連れられてお店まで向かう。
アンナさんはそこで分かれて、一旦宿に戻っていったようだった。
 

 雑貨屋さんで見せてもらったのは、片手で持てるくらいの球体だ。
魔力を伴っているようで、球体は紫色に輝いている。

「これなんだけどよ」

 と軽々しく渡されたので、私は思考が追いつかなかった。

「珠‥‥か?」
「ふむ、水晶玉のようじゃが‥‥」

 は、と気づく。3人にはオーラを見る事が出来ない。
これが危険な物だという認識ができないという事だ。

「‥‥その水晶玉には、魔法が掛けられていたようです」
「なんだと?」
「なんじゃと?」
「は?そんな危険な物置いてったのか?」

 3者3様に答えるが、一番危なかったのはアーロンさんだろう。
水晶玉を平屋に持っていたら、平屋までワイバーンが襲ってきたかもしれない。

「もらった時はこんな水晶玉だったのか?」
「いや‥‥中心が黒くなっていた気がするが‥‥気のせいかもしれない」

 多分気のせいではないだろう。
この水晶玉は魔物を引き寄せる禁忌魔法が封じられていたようだ。
だが、込めている魔力が少なかったのか、それとも一度の使い捨てなのか。
もうこの状態になると効力は発揮しない。

「この水晶玉はもう危険な物ではないと思いますが‥‥念の為、私がお持ちしても良いでしょうか?」

 アーロンさんに渡されたものだ。確認はする。

「ああ、助かる。黒いフードのやつなんて、顔も知らないからな。次から気をつけないといけないな‥‥」

 そうして私は収納魔法の中に水晶を放り込んでおいたのだった。
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