5 / 20
第5話 キャベツパスタとお嬢と私
しおりを挟む
私がまい子と暮らし始めてから変わったこと。暮らしにバイオリンの音色が加わった。
持たせてもらっているであろう、最新のスマートフォンからその音色は聞こえてくる。同じ空間にいる私に気を遣ってなのか、そもそも持っていないだけなのか、イヤホンの類はしていない。
時間や状況は弁えているし、まあ、優雅な感じもするので、ここ最近は私も一緒になって聴いてみている。
「お嬢はさ、バイオリンが好きなの?」
音楽に委ねるように、とろんと閉じていた瞳が開く。
「しおりさん、バイオリンがお分かりで?」
大人を舐めるなよとゲンコツでも食らわせてやろうかと思ったが、話を聞くとこの曲の奏者はまい子の父親の友人だそうだ。とは言ってもただの友人ではなく、世界を飛び回り演奏を続ける大物のバイオリニストで、日本にいる期間は年間を通してもかなり少ないという。名前を聞いてもピンと来なかった。
「ま、まあ名前くらいは聞いたことあるかな。私もそれなりにクラシックとか聴くし」
本当ですか?とでも言いたげにジロリと睨むまい子の視線を遮るように昼食の準備を始めた。
◯材料(2人前)
・パスタ(150~200g)
・キャベツ(拳くらいの大きさ)
・チューブニンニク(親指くらいの大きさ)
・オリーブオイル(大さじ2)
・塩胡椒(お好み)
・塩(パスタを茹でる用)
◯作り方
お湯をたっぷり沸かす。その間にキャベツを一口サイズに切る。
お湯に塩をたっぷり入れて、パスタを表示より短めの時間で茹でる。この時に茹で汁をお玉二杯くらい取っておく。
パスタが茹で上がったら、ザルに移す。
フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、弱目の中火で香りがするまで熱する。
キャベツを入れてしんなりするまで炒める。
キャベツがしんなりしたら、茹で汁を入れて手早く混ぜる。
パスタ、塩胡椒を入れてよく混ぜ合わせる。
お皿に盛って完成!
「バイオリン聴きながらパスタ食べるとさ、おしゃれな味に感じない?」
「しおりさんはいつも面白い発想をされますわよね」
馬鹿にされているのか肯定されているのか分からなかったが、味がいいことは確かだ。
まい子が画面をなぞると曲が切り替わった。それは彼女が気に入ってよく聴く曲で、自分も自然とメロディを覚えてきた。
便利な世の中になったな、と思う。生まれた頃から携帯電話はあったが、自分のものを自分で操作するなど子供の頃はあり得なかった。まい子くらいの小学生や、ベビーカーの赤ちゃんが画面をタッチしているといまだに少し驚く。
誰でも、どの世界にもアクセスできる時が来たのだ。自分で自分を年寄り扱いしたいわけではないが、時代は変わったなとこの間の友人との話を思い出しながらまた一口、パスタを口に含んだ。
弦が、ポンと弾かれる音がした。
持たせてもらっているであろう、最新のスマートフォンからその音色は聞こえてくる。同じ空間にいる私に気を遣ってなのか、そもそも持っていないだけなのか、イヤホンの類はしていない。
時間や状況は弁えているし、まあ、優雅な感じもするので、ここ最近は私も一緒になって聴いてみている。
「お嬢はさ、バイオリンが好きなの?」
音楽に委ねるように、とろんと閉じていた瞳が開く。
「しおりさん、バイオリンがお分かりで?」
大人を舐めるなよとゲンコツでも食らわせてやろうかと思ったが、話を聞くとこの曲の奏者はまい子の父親の友人だそうだ。とは言ってもただの友人ではなく、世界を飛び回り演奏を続ける大物のバイオリニストで、日本にいる期間は年間を通してもかなり少ないという。名前を聞いてもピンと来なかった。
「ま、まあ名前くらいは聞いたことあるかな。私もそれなりにクラシックとか聴くし」
本当ですか?とでも言いたげにジロリと睨むまい子の視線を遮るように昼食の準備を始めた。
◯材料(2人前)
・パスタ(150~200g)
・キャベツ(拳くらいの大きさ)
・チューブニンニク(親指くらいの大きさ)
・オリーブオイル(大さじ2)
・塩胡椒(お好み)
・塩(パスタを茹でる用)
◯作り方
お湯をたっぷり沸かす。その間にキャベツを一口サイズに切る。
お湯に塩をたっぷり入れて、パスタを表示より短めの時間で茹でる。この時に茹で汁をお玉二杯くらい取っておく。
パスタが茹で上がったら、ザルに移す。
フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ、弱目の中火で香りがするまで熱する。
キャベツを入れてしんなりするまで炒める。
キャベツがしんなりしたら、茹で汁を入れて手早く混ぜる。
パスタ、塩胡椒を入れてよく混ぜ合わせる。
お皿に盛って完成!
「バイオリン聴きながらパスタ食べるとさ、おしゃれな味に感じない?」
「しおりさんはいつも面白い発想をされますわよね」
馬鹿にされているのか肯定されているのか分からなかったが、味がいいことは確かだ。
まい子が画面をなぞると曲が切り替わった。それは彼女が気に入ってよく聴く曲で、自分も自然とメロディを覚えてきた。
便利な世の中になったな、と思う。生まれた頃から携帯電話はあったが、自分のものを自分で操作するなど子供の頃はあり得なかった。まい子くらいの小学生や、ベビーカーの赤ちゃんが画面をタッチしているといまだに少し驚く。
誰でも、どの世界にもアクセスできる時が来たのだ。自分で自分を年寄り扱いしたいわけではないが、時代は変わったなとこの間の友人との話を思い出しながらまた一口、パスタを口に含んだ。
弦が、ポンと弾かれる音がした。
1
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
馬小屋の令嬢
satomi
恋愛
産まれた時に髪の色が黒いということで、馬小屋での生活を強いられてきたハナコ。その10年後にも男の子が髪の色が黒かったので、馬小屋へ。その一年後にもまた男の子が一人馬小屋へ。やっとその一年後に待望の金髪の子が生まれる。女の子だけど、それでも公爵閣下は嬉しかった。彼女の名前はステラリンク。馬小屋の子は名前を適当につけた。長女はハナコ。長男はタロウ、次男はジロウ。
髪の色に翻弄される彼女たちとそれとは全く関係ない世間との違い。
ある日、パーティーに招待されます。そこで歯車が狂っていきます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる