人質姫と忘れんぼ王子

雪野 結莉

文字の大きさ
25 / 187
4章 新居に到着

1

しおりを挟む
「姫様、朝ですよ。まったく。机にうつ伏せて寝ているなんて。本を読みながら寝ちゃったんですね」

ジュディの声で目が覚めると、窓の外はかなり明るくなっていた。

身体中がギシギシいってる。
首も痛いし。

顔を起こした私をみて、ジュディは悲鳴をあげた。
「姫様っ!目が真っ赤です!おまけに隈が!!」
タオルにお湯を浸して温湿布を素早く作り、ガッと私の目元にあてた。
うーん。私の侍女は仕事が素早い。
「お顔も少しむくんでますよ~。うつ伏せて寝るからぁ!どうすんですか、今日登城なのに」

「…私の顔なんて少しむくんでいてもたいして変わらないのだから、気にしなくていいわよ」
むくんでいようが目が赤かろうが地味な顔はかわらない。
「もぉ~っっ!せっかく姫様のためにドレスをリメイクしたのに!初対面は完璧な姫様で登城してもらいたかったのに~!!」

肩にも温湿布を乗せてもらい、気持ち良くてまた眠くなってきた。
「姫様、寝ちゃダメですよ。落ち着いたらこちらのドレスに着替えてくださいね」

眠い目をがんばって開けると、チュールが虹色に光るドレスが目に入った。
セレーネ様の選ぶドレスはどれも扇情的なので、私の容姿とはあっていなかったけれど、ジュディはドレスにハサミを入れられるとなったら大胆にリメイクしたらしい。
このドレスは、多分衣装部屋で見たことがあるはずなのに、まったく別物になっている。
「胸元が寂しいので、白いバラの造花をあしらってみました」
うん。そうね。
私の胸は少し貧弱。
栄養が胸まで行き渡らなかったからね。

コルセットを締めてもらって、ドレスを見に纏う。
ウエストも私に合わせて絞られているし、胸元のサイズも私に合わせてあるので、とても着やすい。
「いい感じですね~。さっすがわたし!」
ジュディも納得の出来栄えらしい。
「では、ドレッサーの前に来てください」
次にヘアメイクをやってもらう。
「姫様、やっぱり少し髪色が薄くなってますね」
「そうかしら…?あぁ、少し薄いかも…。今まで塔にいてあまり日が出ているうちに外に出なかったけど、日焼けって怖いのね」
「瞳の色も戻りませんし、それより寝不足で赤いですもんね。お化粧の色合いも少し変えてみましょう」

長い髪を手際よくアップにし、華美にならないように気を遣い、パールの髪飾りだけをつける。
「ところで姫様、夜を徹してのお勉強の成果は何かあったんですか?」
「それがねぇ、いろいろな本を読んでみたけれど、ボナールとそう変わらないみたい」
「だから言ったんですよ。まったく。顔がむくむまで無理する必要なかったじゃないですか」

支度が終わり、ジュディが使った備品を片付けているとドアがノックされた。
「護衛のルドルフです。そろそろ出発の時刻ですが、第二王女殿下のお支度はお済みでしょうか?」
私が応対に出ることはできないので、ジュディがドアの外に出て返事をしてくれる。

さぁ、いよいよランバラルド王城に到着するのだわ。

今まで道中でしていた軽装ではなく、しっかりと正装をした私は、ルドルフにエスコートされてホテルの階段を降り、馬車へと向かう。
ふと、ルドルフがじっと私の顔を見ているのが気になり、視線をルドルフに向けると、ルドルフは困ったような表情になった。
「ルドルフ、何かありましたか?」
「いえ、殿下。いえ…」
一度は否定したものの、ルドルフは足を止め、意を決したように話始めました。
「わたしはボナール国の第二騎士団に所属しています。ですが、戦場に出られることのできなかった下っ端です。アーサー副団長からは、殿下のお話しを聞くことがありました。出征隊と待機隊に分かれた時に、アーサー副団長からは、もしもボナール王都に戦火が及んだ時は、第二王女殿下を御守りするように言われておりました。それが、このような形となり、なんと申し上げていいか…。もっと、わたしたち騎士団や兵士団が精進していれば、戦場に連れて行ってもらえ、少しでもお役に立つことができたかもしれないと、そう思うと…。それに、国の犠牲になってランバラルドへ行く殿下の護衛が、第一騎士団ではなく、わたしたち第二騎士団の下位の者であることも申し訳なく…」
ここにも、心優しい人がいた。
私のことを気にしていてくれた人がいた。
思わずにっこりとルドルフに向かって微笑む。
ルドルフは心なしか少し赤くなって目を見開いた。
つんつんと腕を引き、ルドルフを先を急ぐよう促す。
「いいのです。あなたが強くなり、戦場に行くということは、人を殺めに行くと言うことです。それは、あなたが絶対にしないといけないことではないはずです。もちろん、王命により、戦場に向かった者はその責務を果たす必要がありますが、戦場に行けなかったからといって、あなたが気にすることはありません。騎士として精進することは大切ですが、それは万が一の備えであって欲しいです。今後は、祖国ボナールが平和であることを望みます」
そして私は立ち止まり、もう一度ルドルフの顔を見た。
「…それに、一緒に来てくれた護衛の人があなたのような優しい人でよかったわ。このように、声を掛けてくれてうれしいです」
ルドルフも頬を赤く染めたまま、微笑んで私を送り出してくれた。

そして馬車まで到着すると、先に馬車の前で待っていたジュディが、ドレスの裾を捌きながら馬車に乗るのをサポートしてくれ、無事に馬車に乗り込んだ。


滞りなく、道を進み、馬車はお城の門をくぐる。

初めて見るランバラルドのお城は、ボナールよりも立派な気がした。
しおりを挟む
感想 49

あなたにおすすめの小説

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~

塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます! 2.23完結しました! ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。 相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。 ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。 幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。 好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。 そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。 それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……? 妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話 切なめ恋愛ファンタジー

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

噂の悪女が妻になりました

はくまいキャベツ
恋愛
ミラ・イヴァンチスカ。 国王の右腕と言われている宰相を父に持つ彼女は見目麗しく気品溢れる容姿とは裏腹に、父の権力を良い事に贅沢を好み、自分と同等かそれ以上の人間としか付き合わないプライドの塊の様な女だという。 その名前は国中に知れ渡っており、田舎の貧乏貴族ローガン・ウィリアムズの耳にも届いていた。そんな彼に一通の手紙が届く。その手紙にはあの噂の悪女、ミラ・イヴァンチスカとの婚姻を勧める内容が書かれていた。

離婚したいけれど、政略結婚だから子供を残して実家に戻らないといけない。子供を手放さないようにするなら、どんな手段があるのでしょうか?

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 カーゾン侯爵令嬢のアルフィンは、多くのライバル王女公女を押し退けて、大陸一の貴公子コーンウォリス公爵キャスバルの正室となった。だがそれはキャスバルが身分の低い賢女と愛し合うための偽装結婚だった。アルフィンは離婚を決意するが、子供を残して出ていく気にはならなかった。キャスバルと賢女への嫌がらせに、子供を連れって逃げるつもりだった。だが偽装結婚には隠された理由があったのだ。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...