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13章 告白
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今日はライとの約束の日。
私は鏡の前で朝から格闘していた。
ライと一緒に選んだ青のワンピースにするか、ギルバート様に買っていただいた若草色のワンピースにするか。
お城での生活はメイド服で済んでしまうので、結局あの後は服を買い足していないのだ。
しばらく悩んだ後、青いワンピースに決めた。
ライさえ良ければ、またお買い物に付き合ってもらおう。
パルフェに行っていつも通りクッキーを卸し、そして最近売り出し中のパウンドケーキも、また3本卸す。
パウンドケーキも好評で、あっという間に売れてしまうらしい。
マリーとアーサーには、また服や小物を買いに行きたいので今日はお手伝いができないと言ってある。
お昼をパルフェで食べて行くように言われたけれど、トランケで自分でお金を払って食べて来ると言うと、微笑ましい目で了承してくれた。
まだお昼と言うには早い時間なので、トランケも空いている。
ライは、いつも通りのカウンターで、ロジャーと話しながら待っていてくれた。
「ライ、こんにちは。お待たせしました」
「ロッテ、来てくれてありがとう」
振り向いたライは、キラキラとした笑顔を向けてくれる。
ライって、よく見るとハンサムで所作も綺麗で物語に出てくる王子様みたいよね。
そして、今日はいつもの服より少し上等な服を着ていたから、余計にそう見えた。
そう。ギルバート様がお忍びで町に来たときにきていたような、ラフだけどデザインや仕立てがしっかりしていそうな、そんな服。
「ライ、今日はなんだかおしゃれね」
頬をポッと染めて、照れたようにライが笑う。
「うん、まあね。一張羅」
ロジャーさんもカウンターから身を乗り出して手招きする。
「今日は朝早くから待ってたんですよ~」
「ロジャー、余計なことは言うなよ」
「はいはい。で、何か食っていきます?」
あ、私、この間のサイコロステーキが食べたい!
そう言おうと思って、息を吸い込んだところで、ライが先に返事をしてしまった。
「いや、今日は別の店で食うよ。また次に一緒に来たときにここで食う」
えー……と思ったけれど、顔には出さない。
「ここで食べて行ってくれてもいいじゃないですか。カウンターから遠くの席を確保しますよ?」
ライは立ち上がりながら言う。
「お前が聞き耳立てなくても、クリスが来るだろ。また今度な。ほら、ロッテ行こう」
促されて私も立ち上がる。
トランケを出て少し歩いた所に、私が乗り合いで乗るような馬車ではなく、裕福な男爵や子爵が乗るくらいのクラスの馬車が停まっていた。
誰か貴族様が町にお買い物に来ているのねと、通り過ぎようとすると、御者さんが馬車の扉を開けた。
「ロッテ、今日はこの馬車を借り切っているから、これに乗って」
「え、馬車を借り切るって、高いんじゃ…」
「まあ、いいからいいから」
そのままライにエスコートされて馬車に乗り込んだ。
馬車の中の椅子は、ふかふかで、いつも固い椅子に腰掛けて移動している私にしたら、居心地が悪かった。
なんだか、ボナールからランバラルドへ移送された時を思い出す。
それに、馬車を借り切るって、ライはそんなにお金を使っても大丈夫なのかしら。
服もいつもよりお金がかかっているようだし…。
私も、パルフェで働いたり、町で買い物するようになってから、金銭感覚が身について来たから考えてしまう。
ライは、そんなにお金持ちなのだろうか…。
私が小さくなって座っているのを見て、向かい側に座るライが笑う。
「そんなに緊張しなくていいよ。馬車の中はオレたちだけだから」
「でも、貸し切り馬車なんて緊張するわ。それに、この馬車高かったでしょう?」
「ん?あぁ、まあね。あ、そろそろ着いたよ。ここでランチにしよう」
馬車が止まり、御者さんがまた扉を開ける。
先にライが降りて、私に手を差し出した。
「ほら、ロッテ」
「ええ」
私は手を取り、馬車を降りた。
馬車が止まったその先には、大きな二階建ての建物があった。
ライが建物のドアを開けると、赤い絨毯が敷き詰められており、天井にはシャンデリアが吊り下がっていた。
ライの存在に気がつくと、すぐに支配人らしき男の人が近寄ってくる。
「これはこれは。お待たせして申し訳ありません。夜にいらしっしゃるものだと思っておりまして」
ライは臆することなく、答える。
「ああ、予定が変わってランチを食べたいと思って。ふたり、大丈夫か?」
「はい、ただいまご用意をいたします」
ライは慣れた風に、支配人さんに続いて店の中を歩いて行った。
私も後をついて行くけれど、どんどんと店の奥へと入って行く。
知識としてしかないけれど、奥は裕福な人か貴族が使う部屋なのでは…。高い部屋なのでは…。
奥の個室に着くと、2人で使うには少し広めの白いクロスの掛けられたテーブルに案内される。
よかった。
奥の部屋だから、王城で食事するようなだだっ広いテーブルの置いてある部屋に通されたらどうしようかと思ったけど、これならまあ普通かも。
支配人さんが椅子を引いてくれて、私は腰掛けた。
「メニューはいかがいたしましょうか?」
支配人さんがライに問いかける。
「ロッテ、好き嫌いはある?」
いきなり振られて、私はしどろもどろで答える。
「いえ、特にはないですけれど…」
「じゃ、ここの定番ランチコースを頼む」
支配人さんは「かしこまりました」と腰を折ってから、部屋を退出して行った。
何?何?
絶対、ここ、とんでもなく高いところだわ。
私、お金そんなに持ってないわよ~!!
服やアクセサリーを買おうと思って、持っているお金を全部持ってきたけれど、足りそうにないレストランに、気分はブルーになる私だった。
私は鏡の前で朝から格闘していた。
ライと一緒に選んだ青のワンピースにするか、ギルバート様に買っていただいた若草色のワンピースにするか。
お城での生活はメイド服で済んでしまうので、結局あの後は服を買い足していないのだ。
しばらく悩んだ後、青いワンピースに決めた。
ライさえ良ければ、またお買い物に付き合ってもらおう。
パルフェに行っていつも通りクッキーを卸し、そして最近売り出し中のパウンドケーキも、また3本卸す。
パウンドケーキも好評で、あっという間に売れてしまうらしい。
マリーとアーサーには、また服や小物を買いに行きたいので今日はお手伝いができないと言ってある。
お昼をパルフェで食べて行くように言われたけれど、トランケで自分でお金を払って食べて来ると言うと、微笑ましい目で了承してくれた。
まだお昼と言うには早い時間なので、トランケも空いている。
ライは、いつも通りのカウンターで、ロジャーと話しながら待っていてくれた。
「ライ、こんにちは。お待たせしました」
「ロッテ、来てくれてありがとう」
振り向いたライは、キラキラとした笑顔を向けてくれる。
ライって、よく見るとハンサムで所作も綺麗で物語に出てくる王子様みたいよね。
そして、今日はいつもの服より少し上等な服を着ていたから、余計にそう見えた。
そう。ギルバート様がお忍びで町に来たときにきていたような、ラフだけどデザインや仕立てがしっかりしていそうな、そんな服。
「ライ、今日はなんだかおしゃれね」
頬をポッと染めて、照れたようにライが笑う。
「うん、まあね。一張羅」
ロジャーさんもカウンターから身を乗り出して手招きする。
「今日は朝早くから待ってたんですよ~」
「ロジャー、余計なことは言うなよ」
「はいはい。で、何か食っていきます?」
あ、私、この間のサイコロステーキが食べたい!
そう言おうと思って、息を吸い込んだところで、ライが先に返事をしてしまった。
「いや、今日は別の店で食うよ。また次に一緒に来たときにここで食う」
えー……と思ったけれど、顔には出さない。
「ここで食べて行ってくれてもいいじゃないですか。カウンターから遠くの席を確保しますよ?」
ライは立ち上がりながら言う。
「お前が聞き耳立てなくても、クリスが来るだろ。また今度な。ほら、ロッテ行こう」
促されて私も立ち上がる。
トランケを出て少し歩いた所に、私が乗り合いで乗るような馬車ではなく、裕福な男爵や子爵が乗るくらいのクラスの馬車が停まっていた。
誰か貴族様が町にお買い物に来ているのねと、通り過ぎようとすると、御者さんが馬車の扉を開けた。
「ロッテ、今日はこの馬車を借り切っているから、これに乗って」
「え、馬車を借り切るって、高いんじゃ…」
「まあ、いいからいいから」
そのままライにエスコートされて馬車に乗り込んだ。
馬車の中の椅子は、ふかふかで、いつも固い椅子に腰掛けて移動している私にしたら、居心地が悪かった。
なんだか、ボナールからランバラルドへ移送された時を思い出す。
それに、馬車を借り切るって、ライはそんなにお金を使っても大丈夫なのかしら。
服もいつもよりお金がかかっているようだし…。
私も、パルフェで働いたり、町で買い物するようになってから、金銭感覚が身について来たから考えてしまう。
ライは、そんなにお金持ちなのだろうか…。
私が小さくなって座っているのを見て、向かい側に座るライが笑う。
「そんなに緊張しなくていいよ。馬車の中はオレたちだけだから」
「でも、貸し切り馬車なんて緊張するわ。それに、この馬車高かったでしょう?」
「ん?あぁ、まあね。あ、そろそろ着いたよ。ここでランチにしよう」
馬車が止まり、御者さんがまた扉を開ける。
先にライが降りて、私に手を差し出した。
「ほら、ロッテ」
「ええ」
私は手を取り、馬車を降りた。
馬車が止まったその先には、大きな二階建ての建物があった。
ライが建物のドアを開けると、赤い絨毯が敷き詰められており、天井にはシャンデリアが吊り下がっていた。
ライの存在に気がつくと、すぐに支配人らしき男の人が近寄ってくる。
「これはこれは。お待たせして申し訳ありません。夜にいらしっしゃるものだと思っておりまして」
ライは臆することなく、答える。
「ああ、予定が変わってランチを食べたいと思って。ふたり、大丈夫か?」
「はい、ただいまご用意をいたします」
ライは慣れた風に、支配人さんに続いて店の中を歩いて行った。
私も後をついて行くけれど、どんどんと店の奥へと入って行く。
知識としてしかないけれど、奥は裕福な人か貴族が使う部屋なのでは…。高い部屋なのでは…。
奥の個室に着くと、2人で使うには少し広めの白いクロスの掛けられたテーブルに案内される。
よかった。
奥の部屋だから、王城で食事するようなだだっ広いテーブルの置いてある部屋に通されたらどうしようかと思ったけど、これならまあ普通かも。
支配人さんが椅子を引いてくれて、私は腰掛けた。
「メニューはいかがいたしましょうか?」
支配人さんがライに問いかける。
「ロッテ、好き嫌いはある?」
いきなり振られて、私はしどろもどろで答える。
「いえ、特にはないですけれど…」
「じゃ、ここの定番ランチコースを頼む」
支配人さんは「かしこまりました」と腰を折ってから、部屋を退出して行った。
何?何?
絶対、ここ、とんでもなく高いところだわ。
私、お金そんなに持ってないわよ~!!
服やアクセサリーを買おうと思って、持っているお金を全部持ってきたけれど、足りそうにないレストランに、気分はブルーになる私だった。
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