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2章 想いの変化 きっかけ
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月の青白い光に照らされ横たわるシャーロットは、とても儚く見えて、フレッドは息をのんだ。
「ドレスがシワに……」
体を起こそうとするも、ふらつくシャーロットをそのままベッドに沈める。
額に手を充てると、やはり熱い。
「それどころじゃないでしょ? このまま毛布をかぶって寝ちゃいなよ」
「でも……」
「ドレスくらい、シワになったっていいじゃん。新しいドレスを買ってあげるよ」
ベッドの端に腰掛けて、シャーロットを見下ろすフレッドは、とても優しい顔をしていた。
「ジュディちゃんに声をかけておくから、今日はゆっくり寝て疲れを取って。じゃ、また明日」
フレッドが立ち上がろうとすると、シャーロットがフレッドの服の裾を掴む。
「……行かないで……側にいて。ずっと、ここに」
フレッドはドキっとしたものの、もう一度ベッドに腰掛けてシャーロットを覗き込むと、スースー寝息を立てていた。
「うわ言か……」
そっと裾に絡まるシャーロットの指をはずし、フレッドは部屋を出た。
使用人棟に行き、ジュディの部屋を訪ねる。
まだ眠る前だったジュディは、フレッドの呼び出しに快く応じ、シャーロットの元へと走って行った。
シャーロットの私室に行くと、ジュディはすぐに寝室に入って行ったが、フレッドは応接室でソファに腰掛けた。
フレッドはそのまま自分の部屋へ戻ろうか悩んだが、フレッドの服の裾を掴むシャーロットを思い出すと、シャーロットの私室から出て行くことができなかった。
カチャ、と寝室のドアが開き、ジュディが顔を出した。
「フレッド様、姫様を着替えさせてお化粧も落としました。少し前から風邪気味だったんですけど、姫様は自分が聞かないと機関車の講義が聴けないからって、ちょっと無理してたんですよね。まったく……。甘えることを知らないんだから」
ジュディは可愛い妹を見るように温かい目で、シャーロットの部屋の方に目をやった。
「熱はありますが、重病なほどではありません。わたしはこれで失礼しますね」
フレッドに礼儀正しく腰を折るジュディに、フレッドは慌てて引き留めようとする。
「待って待って。熱があるんだよ?」
具合の悪いシャーロットを、一人残して帰ろうとするジュディに、フレッドは待ったをかける。
「……そうですね。では、フレッド様、こちらに来てください」
そう言ってジュディはフレッドを私室内にある、給仕スペースに連れて来る。
「はい、氷嚢。氷はこちらの保冷庫に入っています。今までの経験から、姫様の熱は朝には引いていると思いますが、もしこの後上がるようなことがあればこちらを使ってください。熱が高くないのに冷やしまくると逆効果ですから、おでこや首筋を触って確認してくださいね」
「……は?」
「では、わたしはこれで失礼します」
ジュディはそう言うと、今度こそ一礼して部屋を出て行こうとする。
「いや、待って! ジュディちゃん、オレを残して行かないで」
「でも、わたし、もうやることありませんし」
「シャーロットちゃんについててよ!」
「だって、フレッド様がついていてくださるでしょう?」
「オレだって帰るよ! 寝室だぞ。オレが朝までいていいわけないじゃないか」
ジュディは微笑んだ。
「どうしてですか? 宰相様ですよ? 女王の一大事に女王の私室に入ってもおかしくありませんよ。それに、この宮に特別な許可なく入れるのは、わたしと母と兄だけです。誰かに見られて、変な噂を立てられることもありません」
フレッドにとって、ジュディの囁きは悪魔の囁きにも等しかった。
自分の部屋へ戻らなければと思う反面、ジュディの言う通り、シャーロットについていたいと思う気持ちもある。
「では、フレッド様。わたしはこれで失礼いたします」
今度こそ一礼し、ジュディは固まっているフレッドを残して、部屋を出て行った。
「ドレスがシワに……」
体を起こそうとするも、ふらつくシャーロットをそのままベッドに沈める。
額に手を充てると、やはり熱い。
「それどころじゃないでしょ? このまま毛布をかぶって寝ちゃいなよ」
「でも……」
「ドレスくらい、シワになったっていいじゃん。新しいドレスを買ってあげるよ」
ベッドの端に腰掛けて、シャーロットを見下ろすフレッドは、とても優しい顔をしていた。
「ジュディちゃんに声をかけておくから、今日はゆっくり寝て疲れを取って。じゃ、また明日」
フレッドが立ち上がろうとすると、シャーロットがフレッドの服の裾を掴む。
「……行かないで……側にいて。ずっと、ここに」
フレッドはドキっとしたものの、もう一度ベッドに腰掛けてシャーロットを覗き込むと、スースー寝息を立てていた。
「うわ言か……」
そっと裾に絡まるシャーロットの指をはずし、フレッドは部屋を出た。
使用人棟に行き、ジュディの部屋を訪ねる。
まだ眠る前だったジュディは、フレッドの呼び出しに快く応じ、シャーロットの元へと走って行った。
シャーロットの私室に行くと、ジュディはすぐに寝室に入って行ったが、フレッドは応接室でソファに腰掛けた。
フレッドはそのまま自分の部屋へ戻ろうか悩んだが、フレッドの服の裾を掴むシャーロットを思い出すと、シャーロットの私室から出て行くことができなかった。
カチャ、と寝室のドアが開き、ジュディが顔を出した。
「フレッド様、姫様を着替えさせてお化粧も落としました。少し前から風邪気味だったんですけど、姫様は自分が聞かないと機関車の講義が聴けないからって、ちょっと無理してたんですよね。まったく……。甘えることを知らないんだから」
ジュディは可愛い妹を見るように温かい目で、シャーロットの部屋の方に目をやった。
「熱はありますが、重病なほどではありません。わたしはこれで失礼しますね」
フレッドに礼儀正しく腰を折るジュディに、フレッドは慌てて引き留めようとする。
「待って待って。熱があるんだよ?」
具合の悪いシャーロットを、一人残して帰ろうとするジュディに、フレッドは待ったをかける。
「……そうですね。では、フレッド様、こちらに来てください」
そう言ってジュディはフレッドを私室内にある、給仕スペースに連れて来る。
「はい、氷嚢。氷はこちらの保冷庫に入っています。今までの経験から、姫様の熱は朝には引いていると思いますが、もしこの後上がるようなことがあればこちらを使ってください。熱が高くないのに冷やしまくると逆効果ですから、おでこや首筋を触って確認してくださいね」
「……は?」
「では、わたしはこれで失礼します」
ジュディはそう言うと、今度こそ一礼して部屋を出て行こうとする。
「いや、待って! ジュディちゃん、オレを残して行かないで」
「でも、わたし、もうやることありませんし」
「シャーロットちゃんについててよ!」
「だって、フレッド様がついていてくださるでしょう?」
「オレだって帰るよ! 寝室だぞ。オレが朝までいていいわけないじゃないか」
ジュディは微笑んだ。
「どうしてですか? 宰相様ですよ? 女王の一大事に女王の私室に入ってもおかしくありませんよ。それに、この宮に特別な許可なく入れるのは、わたしと母と兄だけです。誰かに見られて、変な噂を立てられることもありません」
フレッドにとって、ジュディの囁きは悪魔の囁きにも等しかった。
自分の部屋へ戻らなければと思う反面、ジュディの言う通り、シャーロットについていたいと思う気持ちもある。
「では、フレッド様。わたしはこれで失礼いたします」
今度こそ一礼し、ジュディは固まっているフレッドを残して、部屋を出て行った。
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