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2章 想いの変化 きっかけ
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すっかり熱の下がったシャーロットは、いつもより少しいいドレスに身を包み、エドワード達の見送りに参加した。
出来る限りのお礼をと、たくさんの小麦や日持ちのする果物、植物が良く育つ特性を活かし、桑の木の栽培に手をつけ、最近始めた養蚕により少しだけ取れるようになった絹織物等、ボナールにできる限りの品をエリシアの兄妹に持たせた。
城の乗車場にて、エドワード、リリーの二人は、見送りに来ているボナールの面々と向かい合っていた。
リリーは、昨日のパーティーでエスコート役を務めた侯爵子息と、文のやり取りの約束を交わしている。
エドワードも、講義を聴きに来ていた貴族や技師志望の者たちと、別れの挨拶を交わし、次にシャーロットの前まで歩み出た。
「シャーロット陛下、昨日は楽しい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました」
エドワードが跪いてシャーロットの手の甲にキスを贈る。
「こちらこそありがとうございました。また、長きに渡り、貴重な技術の交流会をありがとうございました」
エドワードは立ち上がり、シャーロットに近付く。
「できれば、今後も陛下とは交流を深めたいと思っております」
だが、シャーロットが狼狽える猶予もなく、フレッドが間に入る。
「もちろん、エドワード殿とはボナールとして交流を深めていきたいと思っておりますよ」
目だけが笑っていない笑顔を浮かべ、フレッドはエドワードを牽制する。
エドワードはふっと笑うと、シャーロットから一歩離れた。
「どこぞの王子が側妃であるだけの女性を嫉妬深く見守っていると言う噂から、やっと解き放たれたというのに今度は宰相が強固にガードするとは……」
更に一歩下がり、エドワードはボナールの全員に見えるように礼をする。
それを見て、リリーもエドワードの隣に並んだ。
「この度は、みなさまと大変有意義な時間を過ごさせいただき、至極光栄に存じます。講義を通して気付かされたこともあり、わたしやリリーにも意味のあるものとなりました。遠いエリシアの地より、みなさまのご発展をお祈りしております」
エドワードとリリーは、そろってボナールの面々に一礼をした。
聴講生達から、わあっと拍手が巻き起こり、盛大な歓声の中、エリシアから来た二人は馬車に乗り込んだ。
馬車の扉が閉められ、いよいよ出発という時に、エドワードは窓越しにフレッドに目配せをする。
シャーロットの様子を見ながら、フレッドは窓に近付いた。
エドワードは身を乗り出し、フレッドに囁く。
「陛下は確固たる信念を持って国政に臨んでいるが、フレッド殿が思っているよりも脆い。ここまで執着するなら、しっかり支えてやるんだな」
「なっ、執着なんて……!」
「誰が見ても執着してるのなんか一発で見破るくらいの演技だったぜ。隠したいのなら、もっと気をつけることだな」
フレッドは眉根を寄せる。
「ご忠告、痛み入る」
ふと、二人の目が合い、同時に気が抜けたように笑った。
「では、お元気で」
「ボナールのみなさまも、お元気で」
別れの言葉と笑顔を残し、エリシアから来た兄妹はボナールを去って行った。
そして、エリシアの二人が残した技術をそれぞれが研究し、植物の掛け合わせの方はすぐに実験に着手し、機関車の方は予算を鑑みて数年単位での実現に向けてボナールには多方面に活気が出てきた。
そんな、平和な日々を過ごしていた時だった。
ランバラルドからの使者の来訪を告げる知らせが届いたのは。
出来る限りのお礼をと、たくさんの小麦や日持ちのする果物、植物が良く育つ特性を活かし、桑の木の栽培に手をつけ、最近始めた養蚕により少しだけ取れるようになった絹織物等、ボナールにできる限りの品をエリシアの兄妹に持たせた。
城の乗車場にて、エドワード、リリーの二人は、見送りに来ているボナールの面々と向かい合っていた。
リリーは、昨日のパーティーでエスコート役を務めた侯爵子息と、文のやり取りの約束を交わしている。
エドワードも、講義を聴きに来ていた貴族や技師志望の者たちと、別れの挨拶を交わし、次にシャーロットの前まで歩み出た。
「シャーロット陛下、昨日は楽しい時間を過ごさせていただき、ありがとうございました」
エドワードが跪いてシャーロットの手の甲にキスを贈る。
「こちらこそありがとうございました。また、長きに渡り、貴重な技術の交流会をありがとうございました」
エドワードは立ち上がり、シャーロットに近付く。
「できれば、今後も陛下とは交流を深めたいと思っております」
だが、シャーロットが狼狽える猶予もなく、フレッドが間に入る。
「もちろん、エドワード殿とはボナールとして交流を深めていきたいと思っておりますよ」
目だけが笑っていない笑顔を浮かべ、フレッドはエドワードを牽制する。
エドワードはふっと笑うと、シャーロットから一歩離れた。
「どこぞの王子が側妃であるだけの女性を嫉妬深く見守っていると言う噂から、やっと解き放たれたというのに今度は宰相が強固にガードするとは……」
更に一歩下がり、エドワードはボナールの全員に見えるように礼をする。
それを見て、リリーもエドワードの隣に並んだ。
「この度は、みなさまと大変有意義な時間を過ごさせいただき、至極光栄に存じます。講義を通して気付かされたこともあり、わたしやリリーにも意味のあるものとなりました。遠いエリシアの地より、みなさまのご発展をお祈りしております」
エドワードとリリーは、そろってボナールの面々に一礼をした。
聴講生達から、わあっと拍手が巻き起こり、盛大な歓声の中、エリシアから来た二人は馬車に乗り込んだ。
馬車の扉が閉められ、いよいよ出発という時に、エドワードは窓越しにフレッドに目配せをする。
シャーロットの様子を見ながら、フレッドは窓に近付いた。
エドワードは身を乗り出し、フレッドに囁く。
「陛下は確固たる信念を持って国政に臨んでいるが、フレッド殿が思っているよりも脆い。ここまで執着するなら、しっかり支えてやるんだな」
「なっ、執着なんて……!」
「誰が見ても執着してるのなんか一発で見破るくらいの演技だったぜ。隠したいのなら、もっと気をつけることだな」
フレッドは眉根を寄せる。
「ご忠告、痛み入る」
ふと、二人の目が合い、同時に気が抜けたように笑った。
「では、お元気で」
「ボナールのみなさまも、お元気で」
別れの言葉と笑顔を残し、エリシアから来た兄妹はボナールを去って行った。
そして、エリシアの二人が残した技術をそれぞれが研究し、植物の掛け合わせの方はすぐに実験に着手し、機関車の方は予算を鑑みて数年単位での実現に向けてボナールには多方面に活気が出てきた。
そんな、平和な日々を過ごしていた時だった。
ランバラルドからの使者の来訪を告げる知らせが届いたのは。
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