39 / 255
4章 そして運命の歯車は回り出す
6
しおりを挟む
ルーク様は、ローゼリア様の言うことを鼻で笑った。
「何が婚約だ。オレとの婚約を断ってきたのはそっちだろ」
ローゼリア様は、ルーク様の冷たい視線をものともせず、淡々と話す。
「おまえのその顔が気持ち悪かったのだから、しようがあるまい。でも治すことができ、もうじき跡も全部消える。おまえは学園での成績もいいようだし、傷跡さえなければ顔も悪くはない。剣も一回生で剣術大会三位と聞く。わたくしが降嫁するとしても、侯爵家ならば公爵に爵位を上げることもできる。おまえとて、子爵のような平民に近い身分の者より、わたくしのように美しく血筋も確かなものと婚姻を結ぶ方がどれだけ良いか」
ルーク様はわたしを後ろ手に隠したまま、わたしの手を握る。
「あいにくだが、爵位が上でも下でも関係ない。オレはジーナとの婚約を破棄しない」
「それではわたくしが困る」
困る?
「それは何故だ?」
わたしの疑問をルーク様がローゼリア様に投げかける。
「わたくしにも婚約の話が出てきている。ソフィアお姉様は隣国の第一王子との婚約が決まっている。第一王子は、お姉様との婚約を持って、王太子となることが決まっている。わたくしは光の術者だから、ルークがジーナとの婚約を万が一破棄した時に婚約できるように、婚約者を決めていなかった。だが、ルークがもう12歳になるというのに、ジーナとの婚約は破棄されない。王室はもうルークがこのままジーナとの婚姻をすることを認め、わたくしが英雄に光の加護を与える役目を諦めたのだ」
いやあ、まだローゼリア様との婚約を王室が企んでいたとはびっくり。
にこやかにわたしたちミラー子爵家を応援する一方、隙があればローゼリア様をルーク様の婚約者に再度推そうと思っていたのか。
「そこでわたくしも、別の婚約者を探さなければならなくなったが、ルーク以外で政略結婚が成り立つのは海の向こうのペルジャ国の王太子くらいだ」
ローゼリア様は、眉を寄せて吐き捨てるように言った。
ペルジャ国の王太子様。
わたしも話は聞いたことがあるけど……。
ペルジャ国は王と王妃の間には王太子一人しか子どもが生まれなかった。
甘やかしに甘やかして育てた15歳になる王太子は、とても太っていて15歳には見えないほどらしい。
厳しく育てられなかった王太子は、学園にも真面目に通わず、頭の出来もよくないそうだ。
それでもたった一人の後継者は、そのまま王太子として不動の地位を築いている。
ただし、現国王が崩御すれば瞬く間にその地位は奪われるだろうというのが、近隣諸国の見方だ。
そうならないために、後ろ盾のしっかりした国の王女を王太子妃として迎えたいと、やっきになって王太子妃候補を探していると聞いている。
ルーク様はニヤリと笑ってローゼリア様を見た。
「いいじゃん。ボンクラ王太子と結婚して幸せになりなよ」
ローゼリア様はカッと顔を赤くして、パチンと扇子を鳴らした。
「ルーク、不敬であるぞ」
不快感を露わにしたローゼリア様は、扇子を持つ手をワナワナと震わせる。
「どちらにしても、オレには関係ないんで。いくぞ、ジーナ」
ルーク様はわたしの右手を取る。
「痛っ」
「ごめん」
取る手を左手に変えて、ルーク様はわたしを連れて部屋を出た。
ドアを開いた所で、モニカ様が紅茶をワゴンに乗せて押してくるのが見えた。
「ルーク様、もうお帰りですか? お茶が入りますが」
ルーク様は、またわたしを後ろに隠す。
「モニカ嬢。君はローゼリア殿下の侍女にでもなったのか」
モニカ様はにこりと笑う。
「侍女? 侍女ではありませんわ。でも、自分の意思を通すためにはプライドを捨てることも必要だと思っていますのよ」
「……ジーナへの復讐か? それは逆恨みだ」
モニカ様はにこやかだった笑顔を、薄暗い笑みに変える。
「さぁ? どうでしょうかね」
「行くぞ、ジーナ。こんな胸糞の悪い所には、1秒だって居たくない」
ルーク様はモニカ嬢からわたしを庇うように、わたしの腰に手をあてて、ピッタリと体をつけたまま、外まで急いで出た。
「何が婚約だ。オレとの婚約を断ってきたのはそっちだろ」
ローゼリア様は、ルーク様の冷たい視線をものともせず、淡々と話す。
「おまえのその顔が気持ち悪かったのだから、しようがあるまい。でも治すことができ、もうじき跡も全部消える。おまえは学園での成績もいいようだし、傷跡さえなければ顔も悪くはない。剣も一回生で剣術大会三位と聞く。わたくしが降嫁するとしても、侯爵家ならば公爵に爵位を上げることもできる。おまえとて、子爵のような平民に近い身分の者より、わたくしのように美しく血筋も確かなものと婚姻を結ぶ方がどれだけ良いか」
ルーク様はわたしを後ろ手に隠したまま、わたしの手を握る。
「あいにくだが、爵位が上でも下でも関係ない。オレはジーナとの婚約を破棄しない」
「それではわたくしが困る」
困る?
「それは何故だ?」
わたしの疑問をルーク様がローゼリア様に投げかける。
「わたくしにも婚約の話が出てきている。ソフィアお姉様は隣国の第一王子との婚約が決まっている。第一王子は、お姉様との婚約を持って、王太子となることが決まっている。わたくしは光の術者だから、ルークがジーナとの婚約を万が一破棄した時に婚約できるように、婚約者を決めていなかった。だが、ルークがもう12歳になるというのに、ジーナとの婚約は破棄されない。王室はもうルークがこのままジーナとの婚姻をすることを認め、わたくしが英雄に光の加護を与える役目を諦めたのだ」
いやあ、まだローゼリア様との婚約を王室が企んでいたとはびっくり。
にこやかにわたしたちミラー子爵家を応援する一方、隙があればローゼリア様をルーク様の婚約者に再度推そうと思っていたのか。
「そこでわたくしも、別の婚約者を探さなければならなくなったが、ルーク以外で政略結婚が成り立つのは海の向こうのペルジャ国の王太子くらいだ」
ローゼリア様は、眉を寄せて吐き捨てるように言った。
ペルジャ国の王太子様。
わたしも話は聞いたことがあるけど……。
ペルジャ国は王と王妃の間には王太子一人しか子どもが生まれなかった。
甘やかしに甘やかして育てた15歳になる王太子は、とても太っていて15歳には見えないほどらしい。
厳しく育てられなかった王太子は、学園にも真面目に通わず、頭の出来もよくないそうだ。
それでもたった一人の後継者は、そのまま王太子として不動の地位を築いている。
ただし、現国王が崩御すれば瞬く間にその地位は奪われるだろうというのが、近隣諸国の見方だ。
そうならないために、後ろ盾のしっかりした国の王女を王太子妃として迎えたいと、やっきになって王太子妃候補を探していると聞いている。
ルーク様はニヤリと笑ってローゼリア様を見た。
「いいじゃん。ボンクラ王太子と結婚して幸せになりなよ」
ローゼリア様はカッと顔を赤くして、パチンと扇子を鳴らした。
「ルーク、不敬であるぞ」
不快感を露わにしたローゼリア様は、扇子を持つ手をワナワナと震わせる。
「どちらにしても、オレには関係ないんで。いくぞ、ジーナ」
ルーク様はわたしの右手を取る。
「痛っ」
「ごめん」
取る手を左手に変えて、ルーク様はわたしを連れて部屋を出た。
ドアを開いた所で、モニカ様が紅茶をワゴンに乗せて押してくるのが見えた。
「ルーク様、もうお帰りですか? お茶が入りますが」
ルーク様は、またわたしを後ろに隠す。
「モニカ嬢。君はローゼリア殿下の侍女にでもなったのか」
モニカ様はにこりと笑う。
「侍女? 侍女ではありませんわ。でも、自分の意思を通すためにはプライドを捨てることも必要だと思っていますのよ」
「……ジーナへの復讐か? それは逆恨みだ」
モニカ様はにこやかだった笑顔を、薄暗い笑みに変える。
「さぁ? どうでしょうかね」
「行くぞ、ジーナ。こんな胸糞の悪い所には、1秒だって居たくない」
ルーク様はモニカ嬢からわたしを庇うように、わたしの腰に手をあてて、ピッタリと体をつけたまま、外まで急いで出た。
3
あなたにおすすめの小説
四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?
白雲八鈴
恋愛
アルディーラ公爵夫人であるミレーネは、他の人からみれば羨ましいと思える立場にいた。
王妹の母譲りの美人の顔立ち、公爵夫人として注目を集める立場、そして領地の運営は革命と言えるほど領地に潤いを与えていた。
だが、そんなミレーネの心の中にあるのは『早く離婚したい』だった。
順風満帆と言えるミレーネは何が不満なのか。その原因は何か。何故離婚できないのか。
そこから始まる物語である。
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち
せいめ
恋愛
侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。
病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。
また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。
「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」
無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。
そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。
生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。
マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。
「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」
三度目の人生はどうなる⁈
まずはアンネマリー編から。
誤字脱字、お許しください。
素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。
職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい
LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。
相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。
何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。
相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。
契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?
妾に恋をした
はなまる
恋愛
ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。 そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。
早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。
実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。
だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。
ミーシャは無事ミッションを成せるのか?
それとも玉砕されて追い出されるのか?
ネイトの恋心はどうなってしまうのか?
カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる