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9章 一筋の光は
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二階の席で見ていると、ルーク様は模擬剣を使った剣の訓練をしていて、隊員相手にうまく剣を捌いている。
何人か、相手を替えて訓練をしているが、相手とルーク様の実力差がすごい。
前世で学園の剣術大会では、一回生ながら優秀な成績を収めたルーク様。
あれからも、かなり努力をしたに違いない。
そこに、下に降りたお兄様がやってくる。
何かルーク様と話した後、ルーク様に手袋を渡してくれていた。
そして、ルーク様とお兄様で訓練を始めた。
お兄様は副隊長をやっていると聞いていたけど、納得の実力だ。
他の隊員相手の時と、ルーク様の動きが違う。
さっきは、ルーク様が手加減していたのがわかる。
わたしが練習を眺めていると、闘技場がザワザワし始めた。
光の討伐隊が中に入ってくる。
白い修道服のようなものを着た男女30人くらいの先頭に、足首より上の丈のドレスを着た女性が堂々と歩いてきた。
闘技場に不似合いなアクセサリーをつけた、あの人がローゼリア様だろう。
前世ではわたしの一つ年下だったから、幼いイメージでいたけれど、大人になったローゼリア様はとてもお美しくなられていた。
……ただ、その濃い化粧とアクセサリーは、訓練には相応しくないだろうに。
ルーク様は、表情を失くして、ローゼリア様に跪いた。
「本日も訓練にご参加頂き、ありがとうございます」
「うむ。今日はしっかりと光の力と連携させるよう精進せよ」
「……はい」
ルーク様とローゼリア様のやり取りは、とても婚約者同士とは思えなかった。
その後、ルーク様達討伐隊は、真剣に持ち替えて光の討伐隊の前に並んだ。
10人ずつ、5列に並んだ討伐隊に、光の討伐隊が近づいて行く。
そして、一人一人の剣に祝福をしていた。
光の討伐隊の方が人数が少ないので、二回祝福を授ける人もいた。
そして、10人の討伐隊は、誰もいない方向に向かって、一列ずつ剣を振った。
すると、剣はそれぞれの魔法を取り込み、闘技場の空を切った。
祝福された剣がうまく光の魔法と連携できたものは、剣筋が光でキラキラとして、火の魔法保持者は火が、風の魔法保持者は風が、水の魔法保持者は水が、威力を増して剣から放たれた。
一度連携できた者は列から離れ、連携できなかった者は再度列に並ぶ。
また別の人から剣に祝福を受けて、連携させようとしている。
ルーク様はローゼリア様から祝福を受けるが、以前聞いていた通り、何度やっても連携はされなかった。
何度目かの祝福をもらおうと、ルーク様がローゼリア様に近付いた時、バシッと鋭い音が闘技場に響き渡った。
「何故、ちゃんとできないの! わたくしが祝福をしているのだから、できて当たり前。できないのはルーク、おまえの怠慢です!」
激昂するローゼリア様に、頬を打たれたルーク様は、表情の抜け落ちた顔で淡々と答える。
「でしたら、ご協力いただかなくても構いませんが。ついでに婚約も解消いたしましょうか」
ぱしん!
再度、ローゼリア様がルーク様の頬を叩く音が響き渡る。
「不愉快です! わたくしは帰ります!」
1人、踵を返し引き返すローゼリア様に、光の討伐隊は狼狽えながら後をついて帰って行った。
わたしは、取り残されるルーク様を見て、胸が締め付けられる思いだった。
ほとんどの人が連携ができている中、どうしてルーク様だけうまくいかないんだろう。
わたしが代わりに剣に祝福をしたら、うまくいくのかな。
でも、前世でも祝福の勉強をしてる最中に死んでしまったから、勉強しないとできないし、光の魔法が使えることは誰に言っていないし……。
こうなったら祝福の勉強をして、できるようになったら、こっそりルーク様の剣に祝福をさせてもらおう。
教会に行けば祝福の仕方は教えてもらえるのかな。
それとも、図書館とかで本に載ってたりしないかな。
どうやって勉強しようかを考えていたら、ぽんっと肩を叩かれた。
「よお。どうだった? 見学は」
声をかけられて振り返ると、困ったような顔で笑っている、オリバーお兄様が立っていた。
何人か、相手を替えて訓練をしているが、相手とルーク様の実力差がすごい。
前世で学園の剣術大会では、一回生ながら優秀な成績を収めたルーク様。
あれからも、かなり努力をしたに違いない。
そこに、下に降りたお兄様がやってくる。
何かルーク様と話した後、ルーク様に手袋を渡してくれていた。
そして、ルーク様とお兄様で訓練を始めた。
お兄様は副隊長をやっていると聞いていたけど、納得の実力だ。
他の隊員相手の時と、ルーク様の動きが違う。
さっきは、ルーク様が手加減していたのがわかる。
わたしが練習を眺めていると、闘技場がザワザワし始めた。
光の討伐隊が中に入ってくる。
白い修道服のようなものを着た男女30人くらいの先頭に、足首より上の丈のドレスを着た女性が堂々と歩いてきた。
闘技場に不似合いなアクセサリーをつけた、あの人がローゼリア様だろう。
前世ではわたしの一つ年下だったから、幼いイメージでいたけれど、大人になったローゼリア様はとてもお美しくなられていた。
……ただ、その濃い化粧とアクセサリーは、訓練には相応しくないだろうに。
ルーク様は、表情を失くして、ローゼリア様に跪いた。
「本日も訓練にご参加頂き、ありがとうございます」
「うむ。今日はしっかりと光の力と連携させるよう精進せよ」
「……はい」
ルーク様とローゼリア様のやり取りは、とても婚約者同士とは思えなかった。
その後、ルーク様達討伐隊は、真剣に持ち替えて光の討伐隊の前に並んだ。
10人ずつ、5列に並んだ討伐隊に、光の討伐隊が近づいて行く。
そして、一人一人の剣に祝福をしていた。
光の討伐隊の方が人数が少ないので、二回祝福を授ける人もいた。
そして、10人の討伐隊は、誰もいない方向に向かって、一列ずつ剣を振った。
すると、剣はそれぞれの魔法を取り込み、闘技場の空を切った。
祝福された剣がうまく光の魔法と連携できたものは、剣筋が光でキラキラとして、火の魔法保持者は火が、風の魔法保持者は風が、水の魔法保持者は水が、威力を増して剣から放たれた。
一度連携できた者は列から離れ、連携できなかった者は再度列に並ぶ。
また別の人から剣に祝福を受けて、連携させようとしている。
ルーク様はローゼリア様から祝福を受けるが、以前聞いていた通り、何度やっても連携はされなかった。
何度目かの祝福をもらおうと、ルーク様がローゼリア様に近付いた時、バシッと鋭い音が闘技場に響き渡った。
「何故、ちゃんとできないの! わたくしが祝福をしているのだから、できて当たり前。できないのはルーク、おまえの怠慢です!」
激昂するローゼリア様に、頬を打たれたルーク様は、表情の抜け落ちた顔で淡々と答える。
「でしたら、ご協力いただかなくても構いませんが。ついでに婚約も解消いたしましょうか」
ぱしん!
再度、ローゼリア様がルーク様の頬を叩く音が響き渡る。
「不愉快です! わたくしは帰ります!」
1人、踵を返し引き返すローゼリア様に、光の討伐隊は狼狽えながら後をついて帰って行った。
わたしは、取り残されるルーク様を見て、胸が締め付けられる思いだった。
ほとんどの人が連携ができている中、どうしてルーク様だけうまくいかないんだろう。
わたしが代わりに剣に祝福をしたら、うまくいくのかな。
でも、前世でも祝福の勉強をしてる最中に死んでしまったから、勉強しないとできないし、光の魔法が使えることは誰に言っていないし……。
こうなったら祝福の勉強をして、できるようになったら、こっそりルーク様の剣に祝福をさせてもらおう。
教会に行けば祝福の仕方は教えてもらえるのかな。
それとも、図書館とかで本に載ってたりしないかな。
どうやって勉強しようかを考えていたら、ぽんっと肩を叩かれた。
「よお。どうだった? 見学は」
声をかけられて振り返ると、困ったような顔で笑っている、オリバーお兄様が立っていた。
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