もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉

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9章 一筋の光は

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お屋敷に帰ると、お使いがゆっくりになってしまったので、サリーさんにはちょっと怒られた。

でも、オリバー様に見学を勧められたと、正直に話したら許してもらえたけど。
働いているとはいえ、まだ子どもと大差ない年齢のわたしが、ひとりでお使いに行ったきり帰ってこなかったことを心配していたらしい。
わたしは物凄くたくさん、サリーさんに謝った。

そしてその後、闘技場で見たことを話すと、サリーさんは心配そうな表情で、ため息をつく。
「では、今日はルーク様、お夕食は召し上がらないわね……」
「そうですね……。いつもそうなんですものね」

あんなに動いて剣を振るっていたルーク様。
お腹が空かないはずがない。
食べないということは。精神的に食欲がわかないということだ。
絶対に身体はエネルギーを欲しがっているはすだから、食べて欲しいんだけどな。

ルーク様のことを考えながら、仕事をしていると、ルーク様が帰宅された。

わたしは用意していた氷嚢を持って、ルーク様のお部屋を訪ねる。

ノックして了承を得てドアを開けると、サリーさんがルーク様の隊服を持って部屋を出るところだった。
「まあ、ニーナ。どうしたの?」

わたしは慌てて持っていた氷嚢を後ろ手に隠す。
別に悪いことをしている訳ではないんだけど……。
「えっと、その、あの」
サリーさんには、昼間あったことを話してあるけど、ローゼリア様に頬を打たれたことは言っていない。

わたしがしどろもどろになっていると、長椅子に腰掛けていたルーク様がこちらを向く。
「サリー。気にしなくていい。オレに必要な物を持って来てくれただけだ。ニーナ、その後ろに隠している物を持って、こちらに来い」

ルーク様にそう言われて、ビクビクと部屋の中に入る。

すれ違うサリーさんは、わたしの手の中に氷嚢があるのを見てにっこり笑い、「あとはお願いね」と言って部屋を出て行った。

「あの、ルーク様……」

わたしが声をかけても、ルーク様はこちらを向かずに手を差し出す。
「ほら。氷嚢持ってきたんだろ」
「はい」
そっとルーク様に差し出すと、それを受け取って頬にあてる。

傷は手当てをしてあったが、やはり頬は少し腫れていた。
ルーク様は色白なので、赤くなった肌が痛々しい。

「義兄上から聞いた。手袋を届けに来たおまえが、ローゼリアとの一部始終を見学して帰ったって」
ギロリと音がするくらい睨まれて、わたしは慌てて頭を下げた。
「もっ、申し訳ありません!」

「はぁ。いや、いいよ。それより腹減った。夕食用意してくれる?」

えっ、食べるの?
と思ったけど、できる侍女は声に出さない。

にこやかに「かしこまりました」と頭を下げて、早歩きでルーク様の部屋を出た。

パタン。
ドアを閉めると急いでサリーさんのところへ向かう。

「サリーさん、サリーさん。ルーク様、お食事召し上がるそうです!」
「えっ!」
サリーさんも驚いたようだ。

「あら、じゃあ急いでご用意しないと!」
2人でバタバタと本館調理場へ向かう。

ゼンに事情を話すと、すぐに用意をしてくれた。
「ごめんね、遅くに」
わたしが申し訳なく、そう言うと、ゼンは苦笑いを浮かべた。
「いや、別に。いつもなら食わない夕飯を食うって言ってんだから、いいことじゃん。早く持って行ってやりなよ」
「ありがとっ!」

わたしとサリーさんでワゴンに乗せて別棟に運ぶ。
当然、本館から別棟まで運ぶので、盛り付けした状態で運べるはずがない。
鍋やバットに入れたまま運んで来るので、別棟で温め直してから盛り付けして出す。
そのため、そこそこ時間がかかってしまった。

ルーク様はいつもご自身のお部屋で召し上がるので、サリーさんと2人でワゴンを押しながらルーク様の部屋を訪ねた。

「お待たせしました」
サリーさんがテーブルに食事を並べている間に、わたしが紅茶を入れる。

準備が出来た所で、ルーク様は書類に目を通していた机から、テーブルへと移動してきた。

席に着くと「ふたりとも下がっていいぞ」と言って、食事に手を付け始める。

頭を下げて部屋を出ようとすると、サリーさんが「ニーナは残って給仕をして。お茶もすぐに冷めてしまうでしょう?」と言い、わたしだけ部屋に残ることになった。
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