もう一度あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜

雪野 結莉

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最終章 こぼれ落ちた運命は

「ローゼリア。あなたはもう王女ではないのだから、自分のことくらいできるようになりなさい」

かつてわたくしの専属侍女だった女は、わたくしに簡易なワンピースを渡してきた。
寝衣から、着替えるために。

ここは王宮。
まだ、わたくしは王宮にいる。

裁判が終わり、わたくし達は身分を剥奪された。
お父様とお兄様は、先に王宮を出されて辺境の地へ向かったという。
そこで、他国との外交を労働とし、無償で提供するのだという。

無償。
提供する労働に対価が払われないこと。
衣食住は保証されるが、その他に支払われる金銭は全くないと聞いている。

趣味にもお金がかけられない。
心無いマリオネットのように、ただ動くだけ。

わたくしに耐えられるのだろうか。

わたくしは、まだ魔獣火傷の治療があるため、王宮に残っているが、まもなく治療も終わると聞く。

火傷が治るわけではない。
痛みが消え、膿が固まるだけ。傷跡は残る。
そう。かつてのルークのように。

今、わたくしのいる部屋は、城の客間だ。
それも、貴族が滞在に使う部屋ではなく、貴族に付き従って滞在する従者が使う部屋。
自分の部屋に戻ることは許されなかった。
そして、この客間の全ての鏡は取り外されている。

わたくしが、鏡に映る自分のあまりの醜さに耐えかねて、鏡をことごとく壊すからだ。

わたくしはノロノロとワンピースを手に取り、袖を通す。

顔の火傷は鏡を見なければ済むが、腕についた火傷は、何かの折に目についてしまう。

火傷を目にする度に、胸が張り裂けんばかりに痛む。
ルークなどに騙されず、わたくしがもっと上手くやっていれば、こんな惨めな生活を送ることはなかったのに。

前ボタンをしめて侍女の方に向き直ると、侍女はため息をついてわたくしに近付く。

「ローゼリア、ボタンが互い違いになっています」

侍女は黙ってボタンを留め直した。

「今日は議会に呼ばれています。ローゼリアの今後の話があるでしょう。わたしが、あなたの世話をするのは、これが最後かもしれませんね」

ボタンを留め直した後、ワンピースの襟を直してわたくしの顔を仰ぎ見た。
侍女も思うところがあるのだろう。
わたくしの顔を見て、なんとも言えない表情で笑った。


白い襟に紺のワンピースを着て、逃げられないように衛兵が前後左右に張り付いたまま、監視されてわたくしは城の会議室へと向かう。
大きな扉の前に立つと、衛兵が静かにドアを開け放った。

重い足取りで中に入ると、かつてお父様の座っていた中央の大きな席に、裁判の時にルークの横に座っていた大臣がおり、両隣にはルークとオリバーが座っていた。

そこは、お兄様とわたくしの席です! どきなさい!

ルークとオリバーに、そう怒鳴りそうになるのを必死で堪えた。


その3人を囲むように、幾人もの役人が会議の席についていた。
それは、あまり見たことのない者ばかりであった。
きっと、王族派の貴族は粛清されてしまったのだろう。

こんな所にひとりで立たされていても、わたくしの心は落ち着いていた。

もう、何も奪われるものはない。
王族としての地位も、名誉も、財産も。そして、わたくしの美貌まで。
全てあのルークに奪われた。
これ以上、何を恐れることがあるだろう。

怖いものは何もない。
わたくしはじっと、真ん中に座る大臣を睨みつけるように見た。

大臣は慌てて、手元の資料に目を落とした。

「こ、こほん。さて、ローゼリア殿。あなたも判決を聞いていたのでご理解されていると思いますが、あなたには無償労働20年の判決が出ています。その内容をここで決めます」

この時のわたくしは、これ以上の酷いことがあるなど夢にも思っていなかった。
だが、その考えが甘いことを知る。













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