幼馴染のリスナーに媚びて人気者になりたい

久羽しん

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第4章

145 珀斗、四面楚歌

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「……うっっっわ~……。こいつ、マジで要らんことばっか言う天才だろ。逆にこえーわ……」
「!? こっ、こらーー!! 年上に、こいつって言うのはやめなさい……!」

 俺に呆れる珀斗の背中を、夕陽さんが慌ててばしっとはたいた。

「ってぇな……」
「とっというか、なおちゃんと珀斗がハグ!?! おま、なおちゃんに何をやってんだ!!? 俺は謝れとは言ったが、ハグしろとは言ってない! びっくりしすぎて固まったわ!! うちのグループで堂々とセクハラをするとはなんて奴だ!!!」
「はぁ? セクハラって──」
「たしかになおちゃんは話しているとついつい抱きしめたくなるような、頭を撫でさせて貰いたくなるような猫ちゃん的愛らしさがあるけどな、」
「ねぇよ」
「だからって、嫌がってる人の体に無理やり抱きつくのはハラスメントだろう!? なおちゃんがいつも暴言ばかりのお前にハグを許すわけがない!! 友好を示すハグがしたいんならもっとなおちゃんと仲良くなってからにしろ!! 今の段階ではお兄さんは絶対にぜーったいに許しませんっっ!!!」
「ふざけんな。誰がこんなへなちょこに近づきたいんだよ。勝手な妄想を──」
「なおちゃん怖かったよな!? 大丈夫か……ッ!? 怖くて困惑して話せなかったのかもしれないけど、次からは俺に相談して……! 絶対にお兄さんが守るからッ!!!」
「え!? い、いや、あの……っ」

 早口すぎてよく分からないものの、多分夕陽さんが珀斗から俺を庇って? くれている。こないだの打ち上げの日と同じ構図だ。

 だけど、あの時のような張り詰めた重たさはなくて、あくまで軽口レベルというか……。

 (……あの時はもっと、夕陽さんの声も低かったし、ピリピリしてたよな……、……)

 ──『良い加減にしろ。怯えてるだろ』

 ──『……ハッ……。庇う価値ねーだろこんな奴に』

 ──『俺はいい加減にしろと言ったよな』

 ──『だから? 俺を黙らせたいんなら、殴れば良いじゃん。何をためらってんの?』

 ──『……』

 ──『あのさぁ……。分かってないようだから言ってやるけど、個性だなんだ言って散々甘やかして放置してきたアンタにも原因あるだろうが。アオくんみたいな奴は、言われねーと分かんねーのに。アンタのそれは、優しさでもなんでもない』

 ──『……っ』

 ──『昔からそうだよな、アンタ。アンタのそういう、お人好しなツラ見てると……反吐が出る』

 ──『待てよ……!』

 あの時の二人は、まさに一触触発の空気だった。俺のヤバさのせいで……。

 (もしかしたら、あれから夕陽さんと珀斗も、話し合いをしたのかな……。この休止期間中に)

 俺のせいでごちゃまぜの空気を悪くしたことも、二人を揉めさせてしまったことも本当に申し訳なかったから、今二人の空気感が元通りになってくれていてすごくホッとした。

「……」
「おい。アンタ、黙ってないでさっさと説明しろよ。俺が自分からやったみたいに思わせんのやめてくれる? 大迷惑なんっすけど」

 ついつい、(良かったな……)と一人で考え込んでいたら、珀斗からクレームが飛んできてしまった。

 (え……!? ……──!! あっ……そういうことか! みんな、珀斗が俺に一方的にやったって誤解してるのか!!)

 夕陽さんが今早口で珀斗に物申していたのも。

 さっき秋風が恐ろしい声になっていたのも……。

 どっちも、俺が無理やりされたと思って怒ってくれていたんだろう。

 俺がお願いしたことなのに、誤解されて珀斗が責められるのはまずい。訂正しなくては。

「あ……!! うん、違う違う! 誤解だ! えっと……夕陽さん! あの、ハグは、ハクが自分からやったんじゃなくて、俺の方から頼んだことで……っ!!」
「──え!? そっ、そうなの……!? ……そっかぁ……? でも、なんでなおちゃんがわざわざハグを珀斗なんかに……。そんな……。お兄さんだって頼まれたことないのに…………」

 夕陽さんにしょんぼりとした顔をさせてしまった。やばい。
 俺は慌てて手を振って補足した。

「あっっ、いや、っあの、ハクに頼んだのはごちゃハウスでたまたま二人きりになったから! それで、相談に乗ってもらったからです……!! 俺、綺麗な人とハグをしたら誰にでもドキドキするもんなのかな? っていうのを、試したくて……」
「綺麗……、……珀斗が?」
「え?」
「どこが…………?」

 黙っていた秋風が、俺の言葉に反応してボソッと言った。

「……!」

 (ど、どこがって……。……秋風らしくないな?)

 秋風はいつも人の悪口は言わずに、基本誰でもベタ褒めしてくれるようなタイプなのに。

「え……すっごい美形じゃん!?? ハクって」
「……そうかな。全然だと思うけど」

 (ええええぇ……)

 見る目が厳しいな。

 (まあ、秋風は毎日洗面の時とかに鏡で自分の顔を見てるもんな……?)

 それなら、基準が変になっていても不思議じゃないか。秋風以上に整ってる人なんて早々いないし。美に対するハードルが上がっているんだろう。

「波青はこういう顔が好きなの?」
「!! ちょ……っ指さしちゃダメだぞ!?」

 秋風が険しい顔でびしっと珀斗に人差し指を突きつけるものだから、俺は慌てて服を引っ張って止めた。
 礼儀を気にする秋風が、こんなふうに不躾なことをするだなんて。

 珀斗とめちゃくちゃ仲良いから、あまり気を遣っていないってことだろうか。つまり、プロレスってやつ。
 
 (うわぁ。そういう関係、すっげー羨ましい……)

「お前らってほんと仲良いよな~!! いいなぁ」
「──はぁ?」
「──誰と誰が?」

 珀斗と秋風の両方から強くツッコまれてしまい、俺は苦笑した。図星をつかれて恥ずかしがっているのかも。

「いや……、まあいいやっ。とにかく、俺が好きっていうか、世間的に、客観的に見てハクは綺麗だしかっこいいだろ!? でも俺、試しにハクにハグしてもらっても全然ちっともドキドキしなくてさ! やっぱ、綺麗だったら誰にでもドキドキするってことはないって気づいたんだよ。俺は、特定の人だけ!」

 (ミュージカルの時、秋風にハグされてドキドキしたからなっ!!)

「……、そっか……そうなんだね……」

 秋風は納得してくれたのか、珀斗を指さしていた指をゆっくり下ろした。口元が少し緩んでいて、どことなく嬉しそうだ。照れている気もする。

 (俺が秋風にだけドキドキするって伝わったか……!?)

「だっっっる。イチャついてないではよ謝れよ。聞いただろ? 俺は、こいつ……、……じゃなくて、アオくん、の謎確認に付き合っただけ」
「そうなんだ」
「そうなんだじゃねーだろ。『勝手に勘違いして睨んでごめんなさい』、『イチャつきのだしに使ってごめんなさい』、な。アキくん、上手にごめんなさいできるかな~~?」
「え……。俺はただ見ていただけなのに。睨まれたと思うのは珀斗の『被害妄想』じゃない? それに、普段からの波青に対する横暴な行いのせいだよ。お前に信頼がないのは」
「そうそう! 全部、しゅーちゃんの言う通り!!」

 秋風の言葉に夕陽さんが全力で頷いている。

「……」

 旗色の悪くなった珀斗は苦々しく眉をひそめ、どかっと椅子に片膝を立てた。相変わらず、行儀が悪い……。

「……チッ。そもそもさぁー、アキくんは俺に丸投げしすぎだろ。自分はさっさと抜けて、こんな世話のかかる奴らを俺一人に押し付けようとしてたの、やべーわ。どう考えてもやばい」
「はぁ!? 何を言ってんだ! 珀斗、お前だろ世話のかかるやつは!!!」
「ほんと、こっちのセリフ!! しゅーかがごちゃまぜに残ってくれてほんとーによかった~!!! こんなクソガキのお守り、僕とユウ兄だけじゃ絶対できないもーんっっ」
「ねー! せいちゃん、そうだよね~っ」
「ねーーー」

 今度は夕陽さんと桃星が共感して手を合わせている。
 珀斗、四面楚歌……。さすがにちょっと可哀想だ。

 (うーん。ハクのフォローしてあげたいけど、でも俺は、秋風の味方でいたいし……。……ど、どうすれば…………)

 俺はキョロキョロと珀斗と秋風を忙しなく見やりながら上手い言葉を探した。
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