幼馴染のリスナーに媚びて人気者になりたい

久羽しん

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第4章

165 グルチャに相談

 
 グループチャットを開いてみると、何やらみんなで雑談をしていた。

 社会人の床さんやBlauさんも、夜だから揃っているんだろう。

 [ウェーブ:こんばんは~。今日はみんないるんだな!!]
  
 {床:ウェーブさん! こんばんは……!}

 {オクラ沼:こんー}

 {しゅがー:Wくんちわっ~す!(๑>◡<๑)}

 [ウェーブ:通知すごかったぞ! めっちゃ盛り上がってたんだなっ!]

 {しゅがー:そーなの~~!!(๑>◡<๑)いまね、昨日出た動画のこと話してたよぉ~~(๑>◡<๑)}

 [ウェーブ:ああ! あれか! どうだった……!?]

 昨日ごちゃまぜのチャンネルで出した動画は、人狼ゲームだ。

 ゲームといえばいつも珀斗の独壇場だけど、人狼ゲームに限っては演技力のある秋風が激強で無双しまくっていた。

 (あいつ、村人の時も人狼の時も顔色変わらなすぎなんだよな……)

 しかも、秋風に『俺は善良な村側だよ。俺を信じて』とか言われてしまえば、桃星は『そうなんだ~♡もちろん信じるよ!!』とか言って絶対に投票しないから、秋風は実質ずっと二票を持ってるわけで……。そんなのズルだ。許せない。

 {オクラ沼:『どうだった』って何? ウェーブくんはまだ見てないの?}

「あっ……!!」

 やばい。質問が俯瞰的になっちゃったかも。

 [ウェーブ:いや、もちろん見たんだけど、他の人の感想も知りたいじゃん!!?]

 {オクラ沼:あーね。アキアオの美味しい絡みが皆無だったのは残念だけど、アオが人狼ゲーム弱々すぎてそれが面白かったよ}

 {床:アオくん人狼の時バレバレでしたよね! かわいい……!!}

 {しゅがー:みんなが悩んだ時、『とりあえずアオでも吊っとくか』ってなってるの超ウケた!笑(๑>◡<๑)}

「…………」

 そうなのだ。俺……人狼の時怪しすぎて、そのせいで村側の時まで怪しまれるようになっちゃって。

 何回やっても大体、俺が追放されていた。日頃の行いやメンバーからの好感度の低さのせいもある。

 人狼ゲームじゃなくて人徳ゲームじゃんもう。

 コメント欄でも、デフォ黒のアオ──デフォルトで黒い(=怪しい)──とか書かれまくっちゃうし……。

 {Blau:アオきゅんをいじめるとは許せんな……^^ꐦ
 わしならば、たとえアオきゅんが狼であったとしても、処刑せず共存の道を選ぶが^^*}

 いやBlauさんそれもうゲームの趣旨変わってる。

 {床:でもユウさんは優しかったですよね!『アオたんがこんなに違うって言ってるんだよ!? アオたんが人狼なわけない……! 可哀想だから追放するのはやめて!!!』とアオくんのことをずっと庇ってくれていて……!}

 [ウェーブ:あ!! そうそう! ユウさん、人の言うことなんでも信じすぎて、最終的に『この村人狼なんていないんじゃ……?』とか言い出して怖かったもん]

 {オクラ沼:ああいう善良なタイプは洋画だと真っ先に襲われるんだけど、昨日の動画だと最後まで残されてたね。特にアキが人狼の時}

 {Blau:騙しやすいのを残しとく戦法よな^^; アキ野郎め、まったく小賢しい……}

 {しゅがー:策士だよね~! 頭良いアキくん、かっこいい~~!!(๑>◡<๑)}

 (なんでも褒めるじゃん……)

 夕陽さんや桃星を利用して勝ちまくっていたアキ秋風だが、推しの人からしたらそういう策士なところも良いらしい。やっぱりズルだ……。


 *


 (……そろそろ言ってみるか……?)

 その後もしばらく供給について取り留めのない雑談をして、数十分経った頃やっと話題がひと段落した。

 チャットのスピードも落ちてきたし、そろそろ他の話題に移ろうかという感じだ。

 今がチャンスと思い、俺は思い切って相談してみることにした。

 [ウェーブ:急なんだけどさ。ちょっとリアルのことを相談しても良いか?]

 返事を待つ間緊張したけど、すぐに好意的なチャットが返ってきた。

 {床:えっ……! 大丈夫ですよ!! どうされたんですか!?}

 {しゅがー:いいよいいよもちろんだよ~っ!(๑>◡<๑)}

 {オクラ沼:いーよーー}

「……!!」

 (よかった……。優しいな、みんな)

 そして、相変わらずみんなの文字を打つ速度が早すぎる……。

 {Blau:シラネ。さらば^^ノシ サラダバー^^}

 [ウェーブ:あ……!! Blauさん、ごめんな!? 空気読まないでリアルの話しちゃって! またな……!]

 Blauさんは興味ないのか落ちてしまうようだ。

 アオにしか興味ない人だから当然か……。
 推し活の話をしたくてグループチャットにいるのに、全然関係ない男のリアル相談なんて聞きたくないだろうし、呆れられても仕方ない。

 (まあ、俺がアオなんだけども…………)

 {オクラ沼:Blauのことは気にしないでいいよ。この人忙しいから、いつも急に抜けるし。それでウェーブくん、相談って?}

 [ウェーブ:あ! えっと、あの……こないださ、悩みがあるなら聞くから、一人で抱え込まないでって言ってくれただろ? だから俺、みんなに一個だけ聞きたいんだけど……]

 {オクラ沼:うん。どうぞ}

 {床:打ち明けていただけて嬉しいです……! 大丈夫ですよ! なんでも聞いてください!!}

 {しゅがー:Wくん、なになに~!?(๑>◡<๑)}

 [ウェーブ:ありがとう! その……みんなはさ、友達と恋人の区別ってなんだと思う……?]

 {床:???  友達と……恋人、ですか……?}

 {しゅがー:えっ!? なになになにー!? 待って!!! 悩みってまさか、まさか恋バナッッ!?๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐Wくんが!!??}

 {オクラ沼:あ。もしかしてその質問、こないだ話してた件に関係してる? ウェーブくんが初めてデートできたっていう女子}

 {しゅがー:?? なにそれっ?(๑°⌓︎°๑) }

 {床:デート……?}

「……!!」

 (あっ……!! あ、あれは……!)

 多分かりんちゃんとしたデートのことだ。
 そういえば、しゅごフェスの前日にオクラ沼さんに相談したんだった。
 あの時はオクラ沼さんしかグループチャットにいなかったから、他の人は知らないはずだ。

 {オクラ沼:あ、DMで相談に乗ったんだったっけ。DMした後、ここでの前段階のやり取りは消したからみんなは知らないか}

 {しゅがー:!!? えぇっ……ちょっっずるーーい!!! 沼っちだけWくんの信頼を得てるの!? 二人でコソコソ、み、密会……!?๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐}

 (密会て……!)

 {床:……ウェーブさん、私は頼りないでしょうか……? 私には、個人的にリアルの相談をしてくださったこと、一度たりともないですよね……}

「──えええええ!!」

 [ウェーブ:いやいやいやいや!! そもそも最初に俺をここに紹介してくれたのは床さんじゃん!? 床さんと一番DMしてたし、めちゃくちゃ頼りにしてる……!! いや、あのっ、でも、あの時はグルチャにオクラ沼さんしかいなかったから……!! マジでそれだけで……ッッ!!]

 {オクラ沼:浮気男みたいなキョドり方でくさ}

 {床:ふふ。冗談ですよ(o^^o)}

「……!!?」

 (な、なんだ……。揶揄われただけか……)

 本気で床さんが悲しんでると思って弁解してしまった。床さんもお茶目な人だな……。

 {オクラ沼:まあほんと、ウェーブくんの言う通り、たまたま私しかいない時でさ。後から来たみんなに見られるのが恥ずかしい内容だって言うから、DMで話を聞いてログも消しただけだよ}

 {しゅがー:へーーなるほど~(๑°⌓︎°๑) そうなんだねぇ๐·°(৹˃̵﹏˂̵৹)°·๐いいなー、沼っち! わたしもWくんの恋バナ聞きたかった~~~!!}

 [ウェーブ:あっ、でも、その時オクラ沼さんに話した子のことじゃないんだ! 今回相談したいのは……!]

 {オクラ沼:ん? そうなの? え……てことはまた新しい子の出現……? 意外にモテるんじゃん、ウェーブくん}

 [ウェーブ:いや、新しい子っていうか……。あの……前にさ、しゅがーがいる時にも相談した、友達のことなんだけどな]

 六月の初め、ドライヤー案件の撮影をした後、秋風と若干口論になってしまって──。

 その件で、しゅがーとオクラ沼さんに助けられたことがあった。

 あれは、確か……。

 ── [ウェーブ:ありがとう。ちょっと現実の話するとな……俺、実は最近友達……のような奴と、喧嘩してたんだ。通話で謝って、大丈夫とは言ってくれたんだけど、本当に大丈夫なのかどうかはわからなくて……。ちゃんと仲直りできた気がしないから、ずっとモヤモヤしてて……]

 ──[ウェーブ:でも、この漫画を読んで、気づいた。俺に足りなかったのは、素直になることだな。あの時自分の弱みを……恥ずかしいところを、さらけ出さなきゃいけなかったんだ。相手を責める言葉じゃなくて]

 ──[ウェーブ:向き合わなきゃいけないのは、相手とじゃなくて、自分となのかもしれないなって。思った。だから俺……今度こそ、自分の気持ちを誤魔化さないで友達に伝えようと思う。ありがとな。オクラ沼さん。そう思えたのは、オクラ沼さんの漫画のおかげ]

 ──そうだ。

 あの時は、オクラ沼さんの漫画や、しゅがーの言葉に応援されて秋風に素直な気持ちを伝えることができたんだ。

 思えば、四月にこのグループチャットに入ってから、もう半年以上が経ったけど……。
 何度も何度もみんなに力をもらって救われてきたなと思う。しゅごフェスの時だってそうだ。

 グループチャットのみんなには感謝してもしきれない。

 {しゅがー:あっ! そうだね! 前に言ってたよね~!(๑>◡<๑)Wくんが喧嘩したっていうお友達……!}

 [ウェーブ:うん。それで、今な。そいつと俺、お試し交際……? ってやつをしてて……。このまま告白して本当の恋人になるか、それとも元の友達に戻るか、今すごい考えてるんだよ]

「…………」

 何もフェイクを入れずありのままのことを言ってみたけど、本当にこれで良いんだろうか。

 でも、『これは俺じゃない知り合いの話なんだけどさ~』なんて遠回しに相談したとしたら、どうせ自分の話でしょ? とバレてしまうに決まっている。

 それなら最初から、正直に相談したい。悩みを聞くよと言ってくれたみんなの優しさに、小賢しい嘘で応えるわけにはいかないから。

 {オクラ沼:え…………? ちょっと待って}

 {しゅがー:んと、あ、あの喧嘩してたお友達って、女の子だったんだ!?!(๑•̌.•̑๑)ˀ̣ˀ̣ Wくん、異性のお友達いたんだね……!?}

「!! あああ……」

 (やっぱこうなるよな……)

 男同士がお試し交際なんて、絶対に飲み込めない。

 みんなを困らせてしまうかもと分かっていた。
 BL好きの腐女子といったって、それはただ単にフィクションを楽しんでいるだけであって、現実の男同士の話は受け付けない可能性があるし……。

 だけどやっぱり、秋風を女の子だということにして話すのは嫌だ。

 身分を隠してグループチャットに紛れている時点でやばいのに、これ以上嘘をつくのはしたくない。

 それに……同性だから悩んでいるのだという情報を知った上で話を聞いてもらわないと、色々ややこしくなってしまう。

「…………」

 みんなの反応を見て一瞬止まってしまった指を、俺は再び動かし、チャットを打ちこんだ。

 [ウェーブ:いや、それが……男なんだ、そいつ。もちろん俺も…………]

 {しゅがー:!!!!????}

 {オクラ沼:マ??????????}

 {床:しょ、詳細をお伺いしてもよろしいでしょうか……}

 {Blau:流れ変わったな}

「……!!?」

 (Blauさん、いたのかよ!!!!)
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