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第2章
100 ふーもちアオくんと誘惑《後編》
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「……!!」
リラックス効果か、六回目は無事ふーもちアオくんの端っこを掴むことができた。
「きっ……キタ!!」
「やったね! ……あっ」
「あーー!!!」
しかし、結局てっぺんの反動で落ちてしまった。
「ノーーーっっ! 惜しすぎるっ……」
俺はガラスに額を押し付け目をつむった。
「ほんと。もうちょっとだった。でも、かなり近づいたから大丈夫」
「……っ……だな。前進はしてる。あと何回かでいけそう……」
「うんうん。がんばれ」
「あ! そだ。俺、ボタン押すのやっぱちょっと間違ってる気ーするから、秋風が良いとこで『今!』って言ってくんね? こんな近づいた大チャンス、逃したくないわ」
せっかく大チャンスなのに、早く押しすぎたせいでアームの爪がふーもちアオくんにかすって、変なところに転がりでもしたら嫌だし……。
そう思って提案してみたら、秋風は二つ返事で引き受けてくれた。
「分かった。俺が良さそうなタイミングで言うね」
「さんきゅー……!」
俺はよくぼーっとしてると言われるし、反射神経も全くない。秋風に頼った方が確実だ。
人の手を借りるのは正直悔しいが、この一世一代の場面、もはやそんなことを言っている場合じゃない。
(楽しいけど、これはただの遊びじゃないんだ……)
──ふーもちアオくんの生き残りがかかっている……。
俺は真剣な気持ちで、ごくりと唾を飲み込んだ。
「じゃあ……七回目、いくぞ」
「うん。頑張って」
息を止め百円を入れる。じーっと標的を睨み、意識を全集中させる。
(もうちょっと右……、……ん~、これ、ちょい奥行きすぎてる? やべー、わかんねぇ。疑心暗鬼になってきた……)
他の人の意見も知りたいと思って、そっと秋風を見上げる。
「……」
ガラスの中に視線をやっていた秋風が俺の視線に気づき、こっちを見た。
「……」
けれど、『もう少し前だよ』も『この位置でいいんじゃない?』もなく、ただ無言でニコッと笑いかけてくる。
(──いやそれどっち!??)
あばばばばば……と口を開けて焦る俺に、秋風がふはっと吹き出した。
「顔がかわいい……」
「……」
かわいいと言うのは、イコール面白いということか。笑っているところを見ると、怪しい。
『顔がおもしろい』と言ったら俺に怒られるから、上手く濁しているに違いない。小癪なことを……。
「唐突にディスるなんて。最低だぞ。神様から戴いた、俺のこの『ゲームの初っ端でやられそうな地味モブ敵顔』……下っ端Fくらいのザ・プレーンフェイスを──」
「秒数なくなるよ」
「あっやべ! 秋風なんかに構ってる場合じゃなかった……!」
俺は慌てて操作画面に向き直った。自分からちょっかいかけた事は棚に上げておく。
(うーむ。やっぱりもう少し左にしておくか……)
減る秒数を見ながら最終調整していたら、安心させるような声が降ってきた。
「大丈夫だよ、波青。自分の目を信じれば」
「……じゃ、じゃあ、ここだ。ここにするっ。これ以上は動かさない!」
「そうだね。俺もそこで良いと思う」
お墨付きを貰えたので、安心して降下指示をするボタンを押した。
よし、あとは掴むタイミングだけ……。
「秋風、ちゃんと俺に今だって教えるんだぞ!」
「はい。イエス・サー」
俺は下がっていくアームを見守りながら、ドキドキ秋風の合図を待った。
(いつくる? まだ? え、まだ押しちゃダメ……!? もうそろそろ押さないとやばいんじゃ……ッッ俺だったらもう押してる!!)
震える指でボタンの上をくるくるする。
固唾を飲むさなか、秋風の冷静な声が空気を震わせた。
「今」
「──わーーー!!!」
叫びと共に、俺はボタンを思いっきり押し込んだ。
バチンっという音が響き渡る。
──ガラスの中のアームは、ふーもちアオくんをがっちりとホールドしていた。
「わぁっ……!!!」
俺は思わず、隣の秋風の服を掴んだ。
(あとは、てっぺんの振動に耐えられるかどうか……!)
タグには引っかかってなさそうだから、無理だろうか……。
ヒヤヒヤ凝視する俺の前で、ふーもちアオくんが揺れた。
(あっ、耐えられない……!)
心配した通り無理で、一番上に来たらまた空中に投げ出されてしまった。
全てがスローモーションに見える。
ゆっくり弧をえがいて落ちていく、ふーもちアオくん……。
そして、落とし口の方へ──
落ちていった。
「……!!!!」
ことん、と音がする。
落とし口から、受け取れる場所へふーもちアオくんがやって来たのが分かった。
「──……や……っ」
俺はぶるっと身震いし、秋風に思い切りしがみついた。
「やったー!!!!!」
興奮状態で秋風を見上げる。秋風も目を見開いているし、今のふーもちアオくんの素晴らしい落ち方にびっくりしているようだ。
「おっ……お前、いいい今の見た!? 落ちる角度やばくね!!?」
「……えっ?? あ、えッッ、な──」
「ッッ奇跡じゃん!! 途中でアームに離された時、絶対もう無理かと思ったのにっ! あんなことある!? マジすごい! ふーもちアオくん、天才!! まじ空気読んでた!! 見事な落ち方だわこれは絶対に表彰されるべきだわ……!!」
「ッいや、え……っあっ……う…………」
俺もパニックだが、秋風もめちゃくちゃどもっている。日本語が話せなくなるくらい感動しているようだ。わかる。マジですごかった。今の光景は。
「あっっっ早く救出せんとっ……!」
木にしがみつくコアラみたいになっていた俺は、木……じゃなくて秋風から離れ、前に向き直ると、即座にしゃがみこんだ。
取り出し口に手を突っ込み、ふーもちアオくんをゲットする。
両手に抱えたそいつは、自分で獲ったという喜びもあってか、とてもとても愛らしく思えた。俺のキャラなのに。
「~~~っ! 見てー! お前のと俺の、表情が違うみたい!! なんか愛着湧いてきたっ! こいつ、かわい~なぁ!」
「…………」
俺のふーもちアオくんは、口をへの字に曲げた仏頂面だけど、秋風がさっき獲ってたふーもちアオくんは口の片端をニヤリと上げたドヤ顔タイプ。
つり上がった目の形も前髪のギザギザも一緒だけど、ほっぺの赤みと口元は個体差があるようだ。よくできている。
そういえば……このシリーズはレアなやつだとウインクバージョンもあるんだっけ。
俺はともかく、ふーもちアキくんのウインクバージョンなんて、フリマアプリで高額転売されてそうだ。ここに無かったのは、もうすでに狩られていたからだろう……。
(……ん……?)
秋風に見せびらかしながらそんなことを考えていた俺は、ふとなんの反応も返ってこない事に気づき首を傾げた。
「秋風、どうした?」
「…………え……?」
「あっ、俺のゲットの仕方がすごすぎて感激で声も出ないのか~! 分かるわかる! あっ、そうだ! この喜びのまま二人で記念ツーショ撮ろ!」
「──え゛」
(てか、今が大チャンスだな! プラベアピールの為のツーショ撮らなきゃなんじゃん。今思い出せて良かった……!)
しかもすんごく自然な誘い方ができた。最高だ。
「はい、俺のスマホ! これで撮って!」
「え゛……、」
「お前、焼肉奉行……じゃなくて写真奉行なんだろ? 写真大好きだもんなっ! 俺が撮ってブレブレになったらうるさそうだしさー秋風に任せてやるよ」
「えっ?」
「はい、背景はクレーンゲーム機で、お互いゲットしたふーもちアオくんを手に持って──」
呆然とする秋風に、俺はスマホを──無理やり──渡し、カメラに収まるよう隣にくっついた。
(秋風、さっきから『え』しか言ってない気がするな……)
でも、秋風が景品ゲットに感動してぼーっとしてくれているのはこっち的には助かる。冷静な時に誘って断られたら嫌だから。
(相手がペースを乱してくれてるこの隙に、流れでいくぞ!!)
ゲームでもそうだ。『格上を倒すには、相手が動揺したりミスったりしたところを狙うしかないんだよー』と夕陽さんが言っていた。
まさに今だ。
このまま哀れな子羊を勢いで流しまくり、どさくさに紛れまくり、なんやかんやああしてこうして……ツーショットを撮ってもらおう。うん。それが良い。
さすが俺。賢い。天才。超策士。床さんたちに褒められまくる未来が見える。
(なはははは……!!!)
「なー、早く! 早く撮って!! 早くしないとやばいぞ!」
まず、時間ないアピールをして、焦らせて、正常な思考を妨害しよう。
(頼むから秋風、冷静になるなよ……!)
「…………」
(……うーん……反応ないな。考えてるのか……?)
ダメなら、次の手は頼み込みだ。
海乃莉と海依斗が良くやってくるやつ。俺みたいなのがやっても意味ないかもしれないけど、なんでもやらないよりはマシだし。
「な? 撮ろー。俺とツーショ撮った方が良いと思うぞ。撮ったら良いことあるぞ。明日から幸運になるかも。宝くじ当たるかも。俺とツーショ撮ったら、壁に小指ぶつけることなくなるしさ、街中でつんのめって転ぶこともないしさ、鳥のふんだって当たらなくなる!! すごー!! 今後の人生においてありとあらゆる効能があるの。本当の本当。これはマジだぞ」
(……うん。……俺、口うますぎだわ……)
嘘つくのうますぎて我ながら尊敬だし自分に拍手したい。
(ほら、秋風もかなり騙されてる……!!)
『え、鳥のふん落ちてこなくなるの? それは良いな……。波青すごい』とでも思ったのか、瞳が揺れている。
幸運になるという誘惑に負け、グラグラと。
(ぐふふふ……チョロいやつ)
もうひと押しだ。
「ねー、良いことばっかだろ? だから撮ろうぜ~~。なーーーお願い~……」
「…………」
リラックス効果か、六回目は無事ふーもちアオくんの端っこを掴むことができた。
「きっ……キタ!!」
「やったね! ……あっ」
「あーー!!!」
しかし、結局てっぺんの反動で落ちてしまった。
「ノーーーっっ! 惜しすぎるっ……」
俺はガラスに額を押し付け目をつむった。
「ほんと。もうちょっとだった。でも、かなり近づいたから大丈夫」
「……っ……だな。前進はしてる。あと何回かでいけそう……」
「うんうん。がんばれ」
「あ! そだ。俺、ボタン押すのやっぱちょっと間違ってる気ーするから、秋風が良いとこで『今!』って言ってくんね? こんな近づいた大チャンス、逃したくないわ」
せっかく大チャンスなのに、早く押しすぎたせいでアームの爪がふーもちアオくんにかすって、変なところに転がりでもしたら嫌だし……。
そう思って提案してみたら、秋風は二つ返事で引き受けてくれた。
「分かった。俺が良さそうなタイミングで言うね」
「さんきゅー……!」
俺はよくぼーっとしてると言われるし、反射神経も全くない。秋風に頼った方が確実だ。
人の手を借りるのは正直悔しいが、この一世一代の場面、もはやそんなことを言っている場合じゃない。
(楽しいけど、これはただの遊びじゃないんだ……)
──ふーもちアオくんの生き残りがかかっている……。
俺は真剣な気持ちで、ごくりと唾を飲み込んだ。
「じゃあ……七回目、いくぞ」
「うん。頑張って」
息を止め百円を入れる。じーっと標的を睨み、意識を全集中させる。
(もうちょっと右……、……ん~、これ、ちょい奥行きすぎてる? やべー、わかんねぇ。疑心暗鬼になってきた……)
他の人の意見も知りたいと思って、そっと秋風を見上げる。
「……」
ガラスの中に視線をやっていた秋風が俺の視線に気づき、こっちを見た。
「……」
けれど、『もう少し前だよ』も『この位置でいいんじゃない?』もなく、ただ無言でニコッと笑いかけてくる。
(──いやそれどっち!??)
あばばばばば……と口を開けて焦る俺に、秋風がふはっと吹き出した。
「顔がかわいい……」
「……」
かわいいと言うのは、イコール面白いということか。笑っているところを見ると、怪しい。
『顔がおもしろい』と言ったら俺に怒られるから、上手く濁しているに違いない。小癪なことを……。
「唐突にディスるなんて。最低だぞ。神様から戴いた、俺のこの『ゲームの初っ端でやられそうな地味モブ敵顔』……下っ端Fくらいのザ・プレーンフェイスを──」
「秒数なくなるよ」
「あっやべ! 秋風なんかに構ってる場合じゃなかった……!」
俺は慌てて操作画面に向き直った。自分からちょっかいかけた事は棚に上げておく。
(うーむ。やっぱりもう少し左にしておくか……)
減る秒数を見ながら最終調整していたら、安心させるような声が降ってきた。
「大丈夫だよ、波青。自分の目を信じれば」
「……じゃ、じゃあ、ここだ。ここにするっ。これ以上は動かさない!」
「そうだね。俺もそこで良いと思う」
お墨付きを貰えたので、安心して降下指示をするボタンを押した。
よし、あとは掴むタイミングだけ……。
「秋風、ちゃんと俺に今だって教えるんだぞ!」
「はい。イエス・サー」
俺は下がっていくアームを見守りながら、ドキドキ秋風の合図を待った。
(いつくる? まだ? え、まだ押しちゃダメ……!? もうそろそろ押さないとやばいんじゃ……ッッ俺だったらもう押してる!!)
震える指でボタンの上をくるくるする。
固唾を飲むさなか、秋風の冷静な声が空気を震わせた。
「今」
「──わーーー!!!」
叫びと共に、俺はボタンを思いっきり押し込んだ。
バチンっという音が響き渡る。
──ガラスの中のアームは、ふーもちアオくんをがっちりとホールドしていた。
「わぁっ……!!!」
俺は思わず、隣の秋風の服を掴んだ。
(あとは、てっぺんの振動に耐えられるかどうか……!)
タグには引っかかってなさそうだから、無理だろうか……。
ヒヤヒヤ凝視する俺の前で、ふーもちアオくんが揺れた。
(あっ、耐えられない……!)
心配した通り無理で、一番上に来たらまた空中に投げ出されてしまった。
全てがスローモーションに見える。
ゆっくり弧をえがいて落ちていく、ふーもちアオくん……。
そして、落とし口の方へ──
落ちていった。
「……!!!!」
ことん、と音がする。
落とし口から、受け取れる場所へふーもちアオくんがやって来たのが分かった。
「──……や……っ」
俺はぶるっと身震いし、秋風に思い切りしがみついた。
「やったー!!!!!」
興奮状態で秋風を見上げる。秋風も目を見開いているし、今のふーもちアオくんの素晴らしい落ち方にびっくりしているようだ。
「おっ……お前、いいい今の見た!? 落ちる角度やばくね!!?」
「……えっ?? あ、えッッ、な──」
「ッッ奇跡じゃん!! 途中でアームに離された時、絶対もう無理かと思ったのにっ! あんなことある!? マジすごい! ふーもちアオくん、天才!! まじ空気読んでた!! 見事な落ち方だわこれは絶対に表彰されるべきだわ……!!」
「ッいや、え……っあっ……う…………」
俺もパニックだが、秋風もめちゃくちゃどもっている。日本語が話せなくなるくらい感動しているようだ。わかる。マジですごかった。今の光景は。
「あっっっ早く救出せんとっ……!」
木にしがみつくコアラみたいになっていた俺は、木……じゃなくて秋風から離れ、前に向き直ると、即座にしゃがみこんだ。
取り出し口に手を突っ込み、ふーもちアオくんをゲットする。
両手に抱えたそいつは、自分で獲ったという喜びもあってか、とてもとても愛らしく思えた。俺のキャラなのに。
「~~~っ! 見てー! お前のと俺の、表情が違うみたい!! なんか愛着湧いてきたっ! こいつ、かわい~なぁ!」
「…………」
俺のふーもちアオくんは、口をへの字に曲げた仏頂面だけど、秋風がさっき獲ってたふーもちアオくんは口の片端をニヤリと上げたドヤ顔タイプ。
つり上がった目の形も前髪のギザギザも一緒だけど、ほっぺの赤みと口元は個体差があるようだ。よくできている。
そういえば……このシリーズはレアなやつだとウインクバージョンもあるんだっけ。
俺はともかく、ふーもちアキくんのウインクバージョンなんて、フリマアプリで高額転売されてそうだ。ここに無かったのは、もうすでに狩られていたからだろう……。
(……ん……?)
秋風に見せびらかしながらそんなことを考えていた俺は、ふとなんの反応も返ってこない事に気づき首を傾げた。
「秋風、どうした?」
「…………え……?」
「あっ、俺のゲットの仕方がすごすぎて感激で声も出ないのか~! 分かるわかる! あっ、そうだ! この喜びのまま二人で記念ツーショ撮ろ!」
「──え゛」
(てか、今が大チャンスだな! プラベアピールの為のツーショ撮らなきゃなんじゃん。今思い出せて良かった……!)
しかもすんごく自然な誘い方ができた。最高だ。
「はい、俺のスマホ! これで撮って!」
「え゛……、」
「お前、焼肉奉行……じゃなくて写真奉行なんだろ? 写真大好きだもんなっ! 俺が撮ってブレブレになったらうるさそうだしさー秋風に任せてやるよ」
「えっ?」
「はい、背景はクレーンゲーム機で、お互いゲットしたふーもちアオくんを手に持って──」
呆然とする秋風に、俺はスマホを──無理やり──渡し、カメラに収まるよう隣にくっついた。
(秋風、さっきから『え』しか言ってない気がするな……)
でも、秋風が景品ゲットに感動してぼーっとしてくれているのはこっち的には助かる。冷静な時に誘って断られたら嫌だから。
(相手がペースを乱してくれてるこの隙に、流れでいくぞ!!)
ゲームでもそうだ。『格上を倒すには、相手が動揺したりミスったりしたところを狙うしかないんだよー』と夕陽さんが言っていた。
まさに今だ。
このまま哀れな子羊を勢いで流しまくり、どさくさに紛れまくり、なんやかんやああしてこうして……ツーショットを撮ってもらおう。うん。それが良い。
さすが俺。賢い。天才。超策士。床さんたちに褒められまくる未来が見える。
(なはははは……!!!)
「なー、早く! 早く撮って!! 早くしないとやばいぞ!」
まず、時間ないアピールをして、焦らせて、正常な思考を妨害しよう。
(頼むから秋風、冷静になるなよ……!)
「…………」
(……うーん……反応ないな。考えてるのか……?)
ダメなら、次の手は頼み込みだ。
海乃莉と海依斗が良くやってくるやつ。俺みたいなのがやっても意味ないかもしれないけど、なんでもやらないよりはマシだし。
「な? 撮ろー。俺とツーショ撮った方が良いと思うぞ。撮ったら良いことあるぞ。明日から幸運になるかも。宝くじ当たるかも。俺とツーショ撮ったら、壁に小指ぶつけることなくなるしさ、街中でつんのめって転ぶこともないしさ、鳥のふんだって当たらなくなる!! すごー!! 今後の人生においてありとあらゆる効能があるの。本当の本当。これはマジだぞ」
(……うん。……俺、口うますぎだわ……)
嘘つくのうますぎて我ながら尊敬だし自分に拍手したい。
(ほら、秋風もかなり騙されてる……!!)
『え、鳥のふん落ちてこなくなるの? それは良いな……。波青すごい』とでも思ったのか、瞳が揺れている。
幸運になるという誘惑に負け、グラグラと。
(ぐふふふ……チョロいやつ)
もうひと押しだ。
「ねー、良いことばっかだろ? だから撮ろうぜ~~。なーーーお願い~……」
「…………」
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