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第1章 禁断の魔道士
魔道竜(第1章、35)
しおりを挟む【゛恋しき人よ、永久に吾のものとせんとする。
愛しき人のために吾が身は鬼となり蛇となる。愛するあなたのために゛】
ティアヌが口ずさむと女性が手のひらを叩いた。
「そう、それよそれ! そんな感じの詩のような…ちょっとゾッとするそれよ。思い出せなくてモヤモヤとしていたけど、それよ間違いない」
あちゃ~………。
「やっぱりコレ?」
「おい、コレとはなんだ?」
「これは邪蛇がまだ人間だったころ大神官に捧げたある種の呪いが秘められた詩らしいの。
ズバリ魔道でいうところの立派な呪術、呪いよ」
「おぃ…お前、たかが紙切れだぞ? そんな紙切れに呪いの効果をもたせられるものなのか?」
「あのね~これは呪いの力を秘めたれっきとした呪術なのよ。よく言うじゃない? 言葉として口から発すると言霊が宿る…とか、丑の刻参りなんかもこの呪術に当てはまるわよね。
今回の事例からするとその小瓶をあけた時点で呪いは発動した」
ティアヌは冷めかけた紅茶を口に運ぶ。
ぶっつづけにしゃべりっぱなしで心なしか喉がピリピリとして体が水分を大量に必要としている。
いざ、水分補給!とばかりにグビッと口いっぱいに気分をリフレッシュしてくれるような紅茶の香りがひろがり、そんなティアヌの正面に座るセルティガは次の瞬間さもバカにした風に言い放った。
「馬鹿ばかしい!」
「……ヴッ!?」
今まさに口にふくんだお茶をティアヌは豪快にふきだした。
「きっ、汚ねぇー! いくら冷めかけたお茶だからって無礼にもほどがある!」
ティアヌのふきだしたお茶は見事セルティガの顔面に命中した。
「ったく……」
ゴシゴシと袖口でそれを拭き取りにかかる。
「よかったらこれをつかって下さい」
お、こりゃどうも、などと言いながらセルティガは女性から渡されたタオルで顔をぬぐう。
「大丈夫ですか?」
「どうぞご心配なく。ただ汚いだけでなんの害もありませんから」
失礼な。
確かに噴き出した私もなんだけど、セルティガの言動もあまりにもお粗末すぎる。
「おい、謝罪の言葉を忘れてないか?」
「謝罪の言葉?」
「お前……ごめんなさいの一言も言えないのか?それは呪文をろくに唱えられないことより、ずっと恥ずかしいことなんだぞ」
「冗談よ、冗談。ごめんなさい。まさかそうくるとはさすがの私にも予想外だったから」
それより、とすかさず話題をきりかえる。
セルティガとてちゃんとあやまりさえすればそれいじょう掘り下げるつもりはないようだ。
意外や意外、根にもつタイプではないようだ。
「それで?」
セルティガに急かされる。
「これって呪術の授業でかなり初期の段階で習ったはずなんだけど、まさかまたお得意の覚えていない……とか言わないわよね?」
「現役の学生と一緒にするな! 俺が卒業してからどれほどの時がたっていると思っている。あんまり俺を見くびるな!」
逆ギレか、はたまた開き直りか。
とどのつまり、ご大層な言い回しをしているがただ単に覚えていないだけのことだろう。
逆ギレして有耶無耶にやりすごす。……なんとも恐るべしセルティガの世渡り上手。おそらく長いものにはまかれろが彼の座右の銘とするところに違いない。
ま、ティアヌも先ほどの紅茶の一件があるので痛み分けとした。
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