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第2章 精霊条約書
魔道竜(第2章、8)
しおりを挟むセルティガの手にした剣がゴキブリの異変に気付き、剣圧をとめさせた。
「何ッ!?」
その場をとびのく。
その刹那!
ゴキブリの目にふたたび生気がやどった。
もしもゴキブリに表情というものがあるのなら、細く笑んだように見えた。
ニヤリと面妖な仕草。
「伏せろ!」
これまで単調な攻撃しか仕掛けてこなかった魔族、それがここにいたって最後の抵抗をこころみる気か。
ゴキブリのお尻の付け根に小さな光りがともる。
ゴキブリだと思っていた魔族は、まさか蛍だったのか?
否!
ゴキブリ探知機なみの性能をほこるティアヌの第六感。
そのティアヌの身震いが、それは違う、と否定している。
ならば、この攻撃はなんだ?
根がゴキブリのくせに、こんな隠し玉をもち、余裕綽綽と構えられていたのか。
「くるわ!」
ゴキブリの尻から生まれた光りは、巨大な球体の光りのオーブとなり、ついにそれは放たれた。
「絶対に顔をあげるな!」
「セルティガ?」
「俺がなんとかする」
なんとかって……。
ティアヌは地面にまどろみの態勢で、セルティガの気配へ意識をかたむける。
光りを剣で斬る?
一見、無謀いがいのなにものでもない。
こんな狭い洞窟で、なんちゅう無謀な攻撃を仕掛けてくるのか。
死なばもろとも、とゴキブリの道連れにされるのなんてごめんだ。
「心配すんな、何が起ころうとも、お前をかならず守りきってみせる」
仮にも女の子だからな、と小さなウインクまでつけた。
思いもよらぬ殺し文句に絶句。
二の句がつげない。
ティアヌはほんのりと頬に熱をおび、それを隠すようにして、あさっての方角をみつめる。
「ここは一つ、セルティガの顔をたてて、守られてやるわ。……死ぬんじゃないわよ」
縁起でもない、そう苦笑まじりに呟いたセルティガは、剣を構えなおした。
まさか、本気で謎の光りのオーブごとたたき切るつもりなのか?
ティアヌは密かに防御呪文を唱える。
するとそれは、セルティガごと目では見えない防壁がきずかれた。
「…………!? 粋なことをしてくれる」
小さくセルティガは、サンキュー、と誰となしに呟いた。
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