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第2章 精霊条約書
魔道竜(第2章、19)
しおりを挟む釣り橋の袂までくると、人心地がついたためかティアヌは荒い息をもらし、汗ばむ胸元に手をかけた。
「熱っ……」
着込んだ鎖帷子(ミスリル)型キャミソールの胸元を軽く指でつまみ、ヒラヒラとあおぐ。
「おぃ……頼むから、女なら少しは恥じらいをもて」
「は?」
カクンとセルティガは肩をおとす。
男として意識されていないことは薄々どこかしらに感じられていた。しかしこれはヒドい。
「だから何よ」
「……………」
ただいまセルティガの脳は回想中。
遠い青春の一ページ目をめくる。
魔道士課程、中二の夏。
夏の訪れとともに、制服姿の女子どもの服装も、どこかしら開放的になっていった。
第二ボタンまであけられた胸元。
へたすりゃヒラヒラの白いレースに包まれた禁断の園が見えてしまうんじゃないのか。
見えそうで見えない。それがなかなかに男心をくすぐる。
それは魅惑の夏がみせた幻想だ。
この季節ともなると、まちまちなその成長ぶりが目をひき、露出されるあらゆる部位に心をときめかせた。
白いワイシャツに透ける白い横一文字、あれは曲者だ。どぎまぎと目のやり場に困る。
白・黒・紺・ピンク、色とりどりにそまる教室。これ以上薄着になれない女子の会話は、暑さが増すごとにおざなりになっていった。
『今日いちだんと暑くない?』
『ホント暑すぎだよねぇ~』
と言うが早いか、連鎖反応のようにパタパタとあおぎだした。
お!?
耳聡い男どもは色めき立つ。
胸元をあおぐ女子の仕草はそれだけで艶めかしいものだ。
『ちょっ……おぃ……何だアレ……』
このクラス一番、エロガキとの異名をもつ少年は、ある一団を指差した。
聞くだけでがっかりした様がうかがえるその声は、期待外れだったことがしれる。
『アレはないよな……すでに女を捨てている』
むッツリなセルティガは、ふだん女子を極力見たりなどしない。
女子は群れるのが好きとみて、いくつかのグループにわかれて行動をともにする。
うっかり目と目があったりすると、私に気があるなどと因縁をつけられる。
よって、見ていないフリが習慣づいた。
『………。確かにアレはないな。興醒めだ』
そこまで言われると見たくなるのが人というもの。
何気ない素振りをよそおい、後方を振り返りざまチラ見する。
なッ……!?
さすがのセルティガも度肝をぬかれた。
ウチワがわりにノートでスカートの中をあおぐ三人の女子。
アレはない。確かにない。女子にあるまじき行為。
ガラガラと音をたてて崩れおちる女の子像。
男の前でそんなことすんな!夢も希望もなくなるじゃないか。
とは、さすがに言えなかった。
言えば逆襲されるだろう。
いらんことを思い出してしまった。
「とにかく!あおぐな! いいからあおぐな! 俺がいいと言うまであおぐな!」
「は???」
「わかったな!」
四の五の言わせない、いつにない強い口調のセルティガに、ティアヌはとりあえず頷いてかえした。
「わかったわょ……」
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