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第2章 精霊条約書
魔道竜(第2章、31)
しおりを挟む「ま、そう気にするな。善人ぶった厚顔無恥なヤツもいれば、悪鬼にも勝るとも劣らない鬼のようなヤツもいる。
そんなことで線引きする必要もなかろう?
物事の善し悪しを決めるには、まだ俺たちは人生の半ばにもみたない。経験を積んでからすればいいさ。
それに魔法を使えればあの人は凄い、そう誰しもが口をそろえる。それなりに魔法が使えることは、魔道士にとって、普通の域じゃないのか?
お前が思う普通と何が違うのか、俺にはいまいちわからん」
「どこがって………」
「ほら、な?答えられんだろうが。
例えば死に方か? それとも大神官となる運命に翻弄されるその生い立ちか?」
「両方」
「お前ってバカだな」
「本気のおバカさんにだけは言われたくないわね」
「あのな~。俺は何も頭の構造のことを言っているわけじゃない」
「何よ、知った風な口を叩いて」
ティアヌの抗議の一声はなおも終らない。
「セルティガに一体私の何がわかるっていうのよ?」
「わかるさ。普通じゃないことをのぞんだ俺だから。
そこまで言うのなら、お前は魔法を自在にあつかえず、一つしか魔法を使えないがために、タダの剣士くずれ、そうのたまわれる惨めな俺の気持ちが、お前に理解できるのか?」
「そ、それは……」
痛みはわかるようで共通の痛みとはいいがたい。
「だろ? お互い様ってもんだ。普通であることをのぞむお前と、普通じゃないことをのぞむ俺。二人あわせればちょうどいい」
「妙なコジツケをしたわね」
「お前なら無事に虚海をこえ、時の神殿とやらにたどりつけるさ。お前を見ているとわかる。
魔法をただの道具、便利なだけのものとして感じていないお前なら、おそらく良い大神官となるだろう。
神の眠りを守り、時を自在にあやつる時の大神官は神にも等しいときく。
ならば大事な本質を見誤らなければ、お前の導く未来は明るい。信じろ」
「もしかして、励ましてくれているの?」
胸に手の平を押し当て、心の内を問うセルティガ。
「俺にもよくわからないが、甚だもって遺憾ながら、そうらしい。我事ながら驚くべき現象だな」
「口の悪いセルティガに励まされるようじゃ私も焼きが回ったってもんだわ、終わりかも」
「おっ! いつもの調子が戻ってきたな。調子がくるうからいつものお前でいてくれ」
「なによ。くるった方がもてそうよ? 言葉に真実味があるもの」
「それじゃ俺がいつもバカ丸出しみたいに聞こえるじゃないか。
この漢気あふれる俺様の本質をみぬけ!お前の目は節穴か?ったく…心外だ!!」
セルティガの思いがけない励ましにより、ティアヌの心の重荷が軽くなり気分も浮上した。
「休憩はおしまいよ。トットとこの壁をクリアーして、炎の神殿の深部めざして出発よ」
「おぅ!」
二人は壁に刻まれた小さな穴を探し、それをよじ登る。
二つの壁を攻略したところで浮遊術を唱え、次なる試練、行き着く先の見えぬほの暗い穴を下へ下へとくだった。
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