92 / 132
第2章 精霊条約書
魔道竜(第2章、41)
しおりを挟むと言った手前、それを貫かねばならない。
そこがデキル女の辛いところである。
「ま、なんとかなるでしょう。いざとなれば時空転送で脱出するしね。それより私のことは気にせずセイラのこと頼んだわよ」
「おぃ、ちょっと待て。ならば俺が行動を起こすまでもないんじゃないのか?お前が俺たちを時空転送で脱出させれば―――」
「今は無理。その前に邪蛇に感づかれでもしたらセルティガ、確実にアンタがまっさきに殺られるわ」
「何を根拠に??」
「女の勘よ。私が邪蛇ならまっさきにアンタを殺るわ」
「そんなに俺が憎いのか??」
「聞きたいわけ?素直な気持ちを答えてやらなくもないんだけど?」
「いや……やめとく」
「それが賢明ね」
時空転送(ポルカ)とは、闇の精霊ブラッドの加護を必要とする呪文。
闇と一口にいっても様々な闇が存在し、不穏な精霊界の情勢と条約書の関係もあり、現在邪蛇とブラッドは同じ闇を共有している形になる。
しかしブラッドと条約を結びなおせば綻びかけた不安定な関係そのものが改善され、ブラッドの支配下にある闇じたいが形状のことなる闇となる。
つまり同じ闇は闇でも日向にできた日陰、光りのさしこまぬ闇ほどに違う、ということだ。
俄か仕込みの作戦をうちたてたところで、数百メートルほどの距離をおいて立ち止まる。
すると腕組みをし、待ち構えていたあばら屋の女主人は溜め息まじりに頬へと手の平をすべらせた。
「最近の娘は…お待たせしました、ぐらい言えないものかしら?」
「待てと頼んだ覚えはないんだけど?」
あばら屋の女主人の後方には巨大なオブジェのごとく黄金色の葉をしげらせた老木が。
見たところ推定、樹齢八百年といったところか。おそらくあの場所におさまっていたのはバルバダイの神像のはずだ。
――――あれ? ちょっと待てよ………。
この街がおかしくなりはじめたのは確か二年前。これほどの短期間で木が樹齢八百年っておかしくないか?
もし仮にこの木がティアヌの仮説をくつがえすことができないとすれば聖木と断定してほぼ間違いない。
たかが二年だ。されどそのたかが二年でコレ???
しかるに魔界の特別な木だとしてもこれほど急激に成長できるものなのだろうか?
もう一つの疑問。それは、はじめての犠牲者となったあのあばら屋の女主人。その当初、二年前のあの場所には邪蛇の神像があったという。
これは当時の調書をもとに、POLICE(ポリス)が炎の聖域へ調査に入ったとか。確かに神像はあったらしい。ゆえにそこは裏付けされている。
その邪蛇の神像はどこに?
それにこの聖木。人間、二・三十人をニエにしたところで、これほどの急激な成長はできないだろうし、この木すべてにおいて目を瞠るものがある。
目をこらせば葉の一枚一枚には人面さながら、目鼻立ちのような突起物が確認できる。
明らかに木を成長させる養分は他にある。それも大量のエナジーを発するものだ。
と、ここへきて、思わずハッとして息をのんだ。
「セイラ!」
その呼び掛けにセイラは答えなかった。
「セ…イラ…??」
0
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた
黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。
そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。
「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」
前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。
二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。
辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる