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第3章 精霊王
魔道竜(第3章、4)
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今まで軽かった身体に重みを感じた。
「ーーヌ、起きろ!」
ティアヌの瞼がピクリと動き「ぅ」とうめいた。
「ティアヌ! ティアヌ!!」
大きく揺さぶられ瞼をあけるーーーーと、セルティが!?
とっさにティアヌは腕を振り上げた。
「私に何をするの!」
興奮したセルティガの顔を押し止める。
が、なおもセルティガは顔を寄せる。
「ちょっと!!」
「ーーーーあれ?」
拍子抜けしたようなバカ面丸だしできょとんと呆ける。
「なんで目をあけて? 仮死状態っつぅか、とにかく息をしてなかったぞ?」
「これには理由があるのよ」
「理由だ? それなら俺もだ」
「どういうこと?」
セルティガは聖木に実っていたリンゴがティアヌの足もとへ転がっていたことから、ある童話を連想したらしい。
「よく言うだろ? 毒リンゴの呪いから救うには、王子様のキスだって。だから俺は………そのぅ……………」
ポッと頬を朱に染めて口ごもる。
セルティガのことだ。少なからずやましい気持ちもどこかしらにはあったのかもしれない。
とにもかくにも、人命救助のためじゃなく、やましさ全開だ!
「王子様? どこにいるのかしら、それらしきイケメンもいないようだけど?」
「いるだろ、ここに! ほらっ!!」
自身を指して胸をはる。
「…………」
この男は言うに事欠いて厚かましくも王子様と自分を同格視する。
厚顔の厚みを測れば世界一。うぬぼれにもほどがある。
この厚かましさはどこから湧いてくるのだろう。
「他の人に同じ科白を言わない方がいいわよ。よく自分のツラを見てからものを言え、とばか笑いされるでしょうから」
「何を言う。よく見ろ! この鎧姿に長い黒髪、そしてこの見目麗しい容貌。極めつけがこの王子と見紛う気品。どこから見ても完璧超絶美形だ」
ーー絶句。
「ある意味幸せな人ね。それだけ自分が好きな人も珍しいわ」
ナルシスト的自己崇拝し、自己陶酔気味のセルティガ。
うらやましい、かと問われると、ある意味うらやましい。
そこまで自分を愛せることに。
「お前…………自分のことが嫌いなのか?」
「まぁ、普通よ」
好きでも嫌いでもない、そんな感じだ。
ただセルティガのように自分をそこまで好きかと問われると自信はない。
誰しもそんな感じではないだろうか。
好きな面もあれば嫌いなところもある。それが当たり前だ。
人は神のように完全ではないのだから。
「それよりセイラは?」
セイラの状態が気になる。
早く医師みせたほうがよいのだが。
「ぁぁ、それな。運良く懐に『回復石』が入っていたのを思い出してな、それを使ってできる限り治癒させた」
「やだ、回復石なんてセルティガ持ってたの!?」
「まぁな。備えあれば憂いなし、だろ?」
回復石とは、木の精霊グリビアンの分身ともいわれ、化石かした黒緑の石で、精霊の力を封じ込めた石は携帯に便利な万能回復石として広く知られている。
持ち歩けば護符となり、砕いて粉末にしたものを飲めば、ある程度のダメージを無効化。つまりは、体力、精神的な回復をはかることができる優れものアイテムなのだ。
ちなみに樹木が地層に埋もれてできた琥珀は、回復の効果もさることながら滋養強壮などの効果も認められている。
透明または半透明な非結晶質で、赤、黄、褐色などが一般的。
しかしこの世界のどこかには、黄金に耀く幻の巨大琥珀が存在するといわれ、迷信めいた噂もよく耳にする。
なかでも女王蜂が埋め込まれた琥珀は希少価値以上に蘇生効果があるとされ、魔道士のはしくれなら絶対、手にいれたい魔道石の一つである。
それをセルティガが所持していた?
どこのお坊っちゃまだ。
「それでセイラは?」
「回復石の力で意識を取り戻したセイラはひと足先に下山して町医者へ行くとさ」
「なるほど。でも何で付き添ってあげなかったの」
「俺まで運ぶ体力がないって言うからさ。そんなわけで俺はここに残ってティアヌの様子を見に来たってわけさ」
火竜玉しか使えない魔剣士。それでも自分に今できうる限りを、と考えたに違いない。
「ふぅん」
気づけばセルティガが至極当たり前のように自分の名を口にしている。
慣れないせいか耳の辺りがくすぐったい。
「なるほどね。いざとんぼ返りしてみれば、ここに私が倒れて息をしていなかった、ということね。これで状況確認をできたわ。にしても何だかとても疲れたわ」
ごろん、と仰向けに転がる。
意識して見ると、聖木があったところには今は何もない。
あれだけ大きな木が。
もし、コレが今、手の内になければ夢をみただけだろう、で終わっていたかもしれない。
むしろ、夢だったら幸せだったろう。
「おぃ。邪蛇の気配は消えたが、精霊条約書は? 」
「これよ」
しかと握ったそれを見せびらかすように振る。
「何だ? その真っ黒いのは」
「これが精霊条約書よ。起きぬけだけど、生憎と寝てもいられないそうよ、急がないと。ってなわけでさっそく炎の精霊と条約を結ばないと」
「今か!?」
「ぇぇ。ーーよいしょっ、と!」
ティアヌはゆらりと立ち上がり、バルバダイの神像に向かって歩き出す。
「ーーヌ、起きろ!」
ティアヌの瞼がピクリと動き「ぅ」とうめいた。
「ティアヌ! ティアヌ!!」
大きく揺さぶられ瞼をあけるーーーーと、セルティが!?
とっさにティアヌは腕を振り上げた。
「私に何をするの!」
興奮したセルティガの顔を押し止める。
が、なおもセルティガは顔を寄せる。
「ちょっと!!」
「ーーーーあれ?」
拍子抜けしたようなバカ面丸だしできょとんと呆ける。
「なんで目をあけて? 仮死状態っつぅか、とにかく息をしてなかったぞ?」
「これには理由があるのよ」
「理由だ? それなら俺もだ」
「どういうこと?」
セルティガは聖木に実っていたリンゴがティアヌの足もとへ転がっていたことから、ある童話を連想したらしい。
「よく言うだろ? 毒リンゴの呪いから救うには、王子様のキスだって。だから俺は………そのぅ……………」
ポッと頬を朱に染めて口ごもる。
セルティガのことだ。少なからずやましい気持ちもどこかしらにはあったのかもしれない。
とにもかくにも、人命救助のためじゃなく、やましさ全開だ!
「王子様? どこにいるのかしら、それらしきイケメンもいないようだけど?」
「いるだろ、ここに! ほらっ!!」
自身を指して胸をはる。
「…………」
この男は言うに事欠いて厚かましくも王子様と自分を同格視する。
厚顔の厚みを測れば世界一。うぬぼれにもほどがある。
この厚かましさはどこから湧いてくるのだろう。
「他の人に同じ科白を言わない方がいいわよ。よく自分のツラを見てからものを言え、とばか笑いされるでしょうから」
「何を言う。よく見ろ! この鎧姿に長い黒髪、そしてこの見目麗しい容貌。極めつけがこの王子と見紛う気品。どこから見ても完璧超絶美形だ」
ーー絶句。
「ある意味幸せな人ね。それだけ自分が好きな人も珍しいわ」
ナルシスト的自己崇拝し、自己陶酔気味のセルティガ。
うらやましい、かと問われると、ある意味うらやましい。
そこまで自分を愛せることに。
「お前…………自分のことが嫌いなのか?」
「まぁ、普通よ」
好きでも嫌いでもない、そんな感じだ。
ただセルティガのように自分をそこまで好きかと問われると自信はない。
誰しもそんな感じではないだろうか。
好きな面もあれば嫌いなところもある。それが当たり前だ。
人は神のように完全ではないのだから。
「それよりセイラは?」
セイラの状態が気になる。
早く医師みせたほうがよいのだが。
「ぁぁ、それな。運良く懐に『回復石』が入っていたのを思い出してな、それを使ってできる限り治癒させた」
「やだ、回復石なんてセルティガ持ってたの!?」
「まぁな。備えあれば憂いなし、だろ?」
回復石とは、木の精霊グリビアンの分身ともいわれ、化石かした黒緑の石で、精霊の力を封じ込めた石は携帯に便利な万能回復石として広く知られている。
持ち歩けば護符となり、砕いて粉末にしたものを飲めば、ある程度のダメージを無効化。つまりは、体力、精神的な回復をはかることができる優れものアイテムなのだ。
ちなみに樹木が地層に埋もれてできた琥珀は、回復の効果もさることながら滋養強壮などの効果も認められている。
透明または半透明な非結晶質で、赤、黄、褐色などが一般的。
しかしこの世界のどこかには、黄金に耀く幻の巨大琥珀が存在するといわれ、迷信めいた噂もよく耳にする。
なかでも女王蜂が埋め込まれた琥珀は希少価値以上に蘇生効果があるとされ、魔道士のはしくれなら絶対、手にいれたい魔道石の一つである。
それをセルティガが所持していた?
どこのお坊っちゃまだ。
「それでセイラは?」
「回復石の力で意識を取り戻したセイラはひと足先に下山して町医者へ行くとさ」
「なるほど。でも何で付き添ってあげなかったの」
「俺まで運ぶ体力がないって言うからさ。そんなわけで俺はここに残ってティアヌの様子を見に来たってわけさ」
火竜玉しか使えない魔剣士。それでも自分に今できうる限りを、と考えたに違いない。
「ふぅん」
気づけばセルティガが至極当たり前のように自分の名を口にしている。
慣れないせいか耳の辺りがくすぐったい。
「なるほどね。いざとんぼ返りしてみれば、ここに私が倒れて息をしていなかった、ということね。これで状況確認をできたわ。にしても何だかとても疲れたわ」
ごろん、と仰向けに転がる。
意識して見ると、聖木があったところには今は何もない。
あれだけ大きな木が。
もし、コレが今、手の内になければ夢をみただけだろう、で終わっていたかもしれない。
むしろ、夢だったら幸せだったろう。
「おぃ。邪蛇の気配は消えたが、精霊条約書は? 」
「これよ」
しかと握ったそれを見せびらかすように振る。
「何だ? その真っ黒いのは」
「これが精霊条約書よ。起きぬけだけど、生憎と寝てもいられないそうよ、急がないと。ってなわけでさっそく炎の精霊と条約を結ばないと」
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