116 / 132
第3章 精霊王
魔道竜(第3章、11)
しおりを挟む
ーー翌朝。眠れぬ一夜を過ごしたティアヌは次なる目的地にむけて出航の準備におわれていた。
一夜明けたエンタプルグの町は悪夢から覚め、昨夜のカーニバルの仕切り直しとばかり御祭りモード。
いかがわしい格好をしたお姉さんたちの姿はみられない。
どうやら古来よりの由緒正しいお祭りを行うらしい。
「気を引き締めろっ、もたもたするな!」
二年ぶりの精霊バルバダイを祀るお祭り。なによりも人々の笑顔がまぶしかった。
そしてどこかで埃をかぶっていたであろうバルバダイの御輿が町中を巡る。
そんな中、マディソン号では大量の積み荷が運び込まれていた。
「おぃ、急げ」
そうして町中をめぐった御輿が波止場にやってきた。
「な、何だ!?」
手をとめ騒然となる。
御輿の担ぎでによってマディソン号が取り囲まれた。
「…………」
異様な光景だ。ほぼ島民の全体が周囲を取り囲んだのだ。
「この船に乗船している魔道士は?」
代表者が声をはりあげる。
「…………」
その呼び掛けに応じたとっつぁんは、ピカピカによく磨かれた頭をふり、ティアヌへと顎をしゃくりあげた。
甲板から身を乗りだし、ティアヌは顔をだす。
「この島にかけられていた呪いを解いたってのはアンタか?」
「そうね、なりゆきだけど、そうなるかしら。何、まさか文句でもあるわけ?」
「いいゃ、町の住人を代表して一言礼を伝えたかった。ありがとう」
「いいのよ。私にとっても利があったわけだし。袖ふれあうのも多生の縁ってね。旅の醍醐味でしょう?」
「違いない。どうかよかったら旅の終わりにでもまたエンタプルグによってくれ。大したもてなしもできないが、きちんとした礼をしたい」
「そうね。是非よらせてもらうわ。出航の準備はいい?」
「アイアイサー」
「じゃ」
軽く会釈するとティアヌは船にのりこむ。
手を高々とふりあげる。
「出航!」
合図とともにイカリがひきあげられ、足場もはずされた。
歓喜の声援に応じて手をふりかえす船員。
ティアヌ大きく振ってかえすと、浅瀬を慎重に進めるよう指示をだすことを忘れない。
渦を巻く海域には目視しきれないが鋭利な巨岩がいくつもつきだしている。
その巨岩に船底を傷つけられると船の修理だけで最低3ヶ月足止めをくらい再びエンタプルグへ逆戻りしかねない。
どういうわけか邪蛇や精霊たちの話しでは急がねばならないようだ。
一刻を争う事態ってどういうこと?
あの、邪蛇が血相をかえるような緊急事態??
「…………」
焦りゆえか行く手を阻まれる暗礁にすらチッと舌打ちがもれる。
航海士はたくみに船を操舵し、荒波をさけるようにして船首を面舵、一難を無事にしのぎ、エンタプルグを脱出。
常に羅針盤の示す先、海図の上をなぞらせる。
「……ぁ……」
振り返れば小さく見えるエンタプルグ。
手を振って見送ってくれた、人影も町並みもすべてがおぼろげになっていた。
一夜明けたエンタプルグの町は悪夢から覚め、昨夜のカーニバルの仕切り直しとばかり御祭りモード。
いかがわしい格好をしたお姉さんたちの姿はみられない。
どうやら古来よりの由緒正しいお祭りを行うらしい。
「気を引き締めろっ、もたもたするな!」
二年ぶりの精霊バルバダイを祀るお祭り。なによりも人々の笑顔がまぶしかった。
そしてどこかで埃をかぶっていたであろうバルバダイの御輿が町中を巡る。
そんな中、マディソン号では大量の積み荷が運び込まれていた。
「おぃ、急げ」
そうして町中をめぐった御輿が波止場にやってきた。
「な、何だ!?」
手をとめ騒然となる。
御輿の担ぎでによってマディソン号が取り囲まれた。
「…………」
異様な光景だ。ほぼ島民の全体が周囲を取り囲んだのだ。
「この船に乗船している魔道士は?」
代表者が声をはりあげる。
「…………」
その呼び掛けに応じたとっつぁんは、ピカピカによく磨かれた頭をふり、ティアヌへと顎をしゃくりあげた。
甲板から身を乗りだし、ティアヌは顔をだす。
「この島にかけられていた呪いを解いたってのはアンタか?」
「そうね、なりゆきだけど、そうなるかしら。何、まさか文句でもあるわけ?」
「いいゃ、町の住人を代表して一言礼を伝えたかった。ありがとう」
「いいのよ。私にとっても利があったわけだし。袖ふれあうのも多生の縁ってね。旅の醍醐味でしょう?」
「違いない。どうかよかったら旅の終わりにでもまたエンタプルグによってくれ。大したもてなしもできないが、きちんとした礼をしたい」
「そうね。是非よらせてもらうわ。出航の準備はいい?」
「アイアイサー」
「じゃ」
軽く会釈するとティアヌは船にのりこむ。
手を高々とふりあげる。
「出航!」
合図とともにイカリがひきあげられ、足場もはずされた。
歓喜の声援に応じて手をふりかえす船員。
ティアヌ大きく振ってかえすと、浅瀬を慎重に進めるよう指示をだすことを忘れない。
渦を巻く海域には目視しきれないが鋭利な巨岩がいくつもつきだしている。
その巨岩に船底を傷つけられると船の修理だけで最低3ヶ月足止めをくらい再びエンタプルグへ逆戻りしかねない。
どういうわけか邪蛇や精霊たちの話しでは急がねばならないようだ。
一刻を争う事態ってどういうこと?
あの、邪蛇が血相をかえるような緊急事態??
「…………」
焦りゆえか行く手を阻まれる暗礁にすらチッと舌打ちがもれる。
航海士はたくみに船を操舵し、荒波をさけるようにして船首を面舵、一難を無事にしのぎ、エンタプルグを脱出。
常に羅針盤の示す先、海図の上をなぞらせる。
「……ぁ……」
振り返れば小さく見えるエンタプルグ。
手を振って見送ってくれた、人影も町並みもすべてがおぼろげになっていた。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる