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本編

よん

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 夜中、俺にしては珍しく目が覚める。

 うっすら目をあけると、窓辺に、人影が立っていた。

 もし悪人だとしたら、声をあげて取っ組み合いになると怖い。
 オートロックだから他人が入ってくるなんてそうそうないはずなのに、寝ぼけてそんなことを考える。
 結局寝たふりをしてやり過ごすこととする。

 薄目をあけて観察していると、その人影はどうも女の子らしかった。
 顔や服装までは詳細にわからないが、机の辺りをごそごそ探っている。

(ちょうどあのでかい烏がいる辺り……)

 何を探しているのだろう。

 かさ、と掛け布団が音をたてる。

 それに少女がばっ、と振り向いた。
 起きていることがばれたか?と心臓がどくんどくんと跳ねる。その心音が相手にきこえないか、冷や汗がふきだす。

 少女はじっとこちらを見たあと、また机の上に視線を戻した。

 ガチャ、ガタ、カサカサ、ゴト。

 そんなに音をたてたらおきちまうぞ、起きてるけど、と心のなかで言う。

 少女は机の上にないと思ったのか、部屋のなかをあさりだした。
 そして枕元へきて、目当てのものを見つけたらしい、動きを止める。

 そのあとは急な眠気に襲われて、おぼえていない。

 
 外で猫がにゃあ、と鳴いた。


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