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2.城下町での暮らし
10.
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「という事でして…」
俺は全て話した。アヒン殿下の呪いの事は説明せず唯具合が悪いという事にしたが、王族侮辱罪で城を追い出された事まで話した。もうこの教会にはいられないかもしれない。
「2人の聖女候補…」
2人も俺の話に凄く動揺している様だ。唯1匹白銀になった狼?が俺に擦り寄って来る。ふわふわもこもこで可愛い。何だか体が大きくなった様な気がする。
「皆さんに迷惑は掛けません。俺は直ぐあの教会を出て行きます」
「何でだ?」
「何で?」
2人の声がハモった。
「何でって俺は罪人ですよ…?」
「三葉が言った通りならお前は謂れのない罪を着せられただけだろ?」
「そうそ~。みっちゃんが追い出されたのは一緒に召喚された女の仕業なんでしょ?」
「良いんですか?俺はまだあの教会にいても」
「良いに決まってる」
「良いに決まってるよ~」
あの暖かい暮らしにまた戻れるんだと思うと嬉しくて笑みが溢れた。
「キャウ!」
「そういえば…この子の名前は決めたんですか?」
生き物と呼び続けるのは愛着が湧きすぎた。何か呼べる名前が欲しい。
「ホワイトだ」
「ホワイト!可愛い名前ですね」
「え、安直過ぎじゃ無い?」
「お前はホワイトだよ。良かったねー」
「キャン!」
ヨハンの言葉は誰も聞いておらず、生き物も嬉しそうに尻尾を振っているので良いのかもしれない。とヨハンは口を閉ざした。
「それにしてもホワイトってどこかで見たことない?」
「ああ、俺もそう思っていた」
「え、ホワイトは有名なんですか?」
「ん~やっぱ思い出せない。そんな事より帰ろ~」
ヨハンさんが背を向け歩き始めた。
「え、ホワイトはどうするんですか?」
「お前も来るだろ?」
「キャン」
殺そうとしていたヨハンさんが反対しないかと窺うといんじゃない?と言った。
「も~人を襲わないだろうし、君たちから離れたくなさそうだしね」
ホワイトを見ると俺の服を噛んでいた。一緒に行きたい様だ。
「良かったなホワイト!」
ホワイトに思わず抱きつく。すると俺の負傷した肩を舐め始めた。
「三葉帰って治療するぞ」
「はい!」
巨大なホワイトを連れて街に戻ると門番に止められた。
「うちのペットだ」
コーナンさんのそのゴリ押しに最初は食い下がって来た門番も遂に耐えられなくなったのか最後は俺達を通してくれた。
「ただいま~」
「戻ったぞー」
「ただいま戻りました」
「キャン」
それぞれ帰宅の挨拶をすると主教様が現れた。
「じーさん。今日からこいつ飼う」
「ふぉふぉふぉ。随分と珍しいモノを拾ってきたの~」
主教様は優しい眼差しでホワイトを見つめると体を洗ってきなさいと告げた。
ホワイトの体を洗うのはコーナンさんに任せ俺はヨハンさんと共に部屋に戻って来た。
「っ!痛い~」
上裸にさせられヨハンさんがテキパキと消毒をしてくれる。傷口に染みて痛い。
「コーナンを庇うからだよ」
「仕方ないじゃないですか…俺はお二人が傷つく姿を見たくなかったんです…」
あの時ヨハンさんの前に出ていなかったらホワイトはヨハンさんに噛み付いていただろう。結果的に丸く収まったが誰かの命が絶たれていたかもしれない。
「偽善者だね~。聖女候補?様ならこの位の傷自分で治せないの~?」
「治せたら苦労しませんよ…だから候補なんですから」
「確かに~。さ、終わったよ。服着て~」
いつの間にか治療は終わり包帯を巻かれていた。さっきよりも痛く無いから治癒魔法を使ってくれたのかもしれない。
「何してるんですか…?」
服を着終わると目の前に片膝をついたヨハンさんがいた。
「三葉様。此度はコーナンと僕の命を救って頂いた事深く感謝申し上げます」
「ちょ!やめて下さい!いきなりなんですか!?」
真面目な様子のヨハンさんにいきなり感謝され驚く。
「三葉様のお力を間近で拝見し貴方様が聖女様であると確信致しました。僕は貴方様に三葉様に忠誠を誓います」
「忠誠とか誓いとかいりません!俺はいつものヨハンさんが良いです!!」
ヨハンさんの誓いを全否定してしまった。でも、いきなり態度を変えられるなんて嫌だ。
「俺はまだまだ未熟です。そんな俺にヨハンさんの誓いは受け止められません。俺はいつものだらけたヨハンさんの方が好きです」
「ぷっ…はははははっ!」
「なんですか!?」
「折角真面目に喋ったのに台無しだよ…でも分かった…」
どこか嬉しそうな表情をしたヨハンさんは、早くご飯作りに行こ~と部屋から出て行ってしまった。
良かった。いつものヨハンさんに戻ったみたいだ。俺は嬉しくなりヨハンさんの後に続いて部屋から飛び出した。
俺は全て話した。アヒン殿下の呪いの事は説明せず唯具合が悪いという事にしたが、王族侮辱罪で城を追い出された事まで話した。もうこの教会にはいられないかもしれない。
「2人の聖女候補…」
2人も俺の話に凄く動揺している様だ。唯1匹白銀になった狼?が俺に擦り寄って来る。ふわふわもこもこで可愛い。何だか体が大きくなった様な気がする。
「皆さんに迷惑は掛けません。俺は直ぐあの教会を出て行きます」
「何でだ?」
「何で?」
2人の声がハモった。
「何でって俺は罪人ですよ…?」
「三葉が言った通りならお前は謂れのない罪を着せられただけだろ?」
「そうそ~。みっちゃんが追い出されたのは一緒に召喚された女の仕業なんでしょ?」
「良いんですか?俺はまだあの教会にいても」
「良いに決まってる」
「良いに決まってるよ~」
あの暖かい暮らしにまた戻れるんだと思うと嬉しくて笑みが溢れた。
「キャウ!」
「そういえば…この子の名前は決めたんですか?」
生き物と呼び続けるのは愛着が湧きすぎた。何か呼べる名前が欲しい。
「ホワイトだ」
「ホワイト!可愛い名前ですね」
「え、安直過ぎじゃ無い?」
「お前はホワイトだよ。良かったねー」
「キャン!」
ヨハンの言葉は誰も聞いておらず、生き物も嬉しそうに尻尾を振っているので良いのかもしれない。とヨハンは口を閉ざした。
「それにしてもホワイトってどこかで見たことない?」
「ああ、俺もそう思っていた」
「え、ホワイトは有名なんですか?」
「ん~やっぱ思い出せない。そんな事より帰ろ~」
ヨハンさんが背を向け歩き始めた。
「え、ホワイトはどうするんですか?」
「お前も来るだろ?」
「キャン」
殺そうとしていたヨハンさんが反対しないかと窺うといんじゃない?と言った。
「も~人を襲わないだろうし、君たちから離れたくなさそうだしね」
ホワイトを見ると俺の服を噛んでいた。一緒に行きたい様だ。
「良かったなホワイト!」
ホワイトに思わず抱きつく。すると俺の負傷した肩を舐め始めた。
「三葉帰って治療するぞ」
「はい!」
巨大なホワイトを連れて街に戻ると門番に止められた。
「うちのペットだ」
コーナンさんのそのゴリ押しに最初は食い下がって来た門番も遂に耐えられなくなったのか最後は俺達を通してくれた。
「ただいま~」
「戻ったぞー」
「ただいま戻りました」
「キャン」
それぞれ帰宅の挨拶をすると主教様が現れた。
「じーさん。今日からこいつ飼う」
「ふぉふぉふぉ。随分と珍しいモノを拾ってきたの~」
主教様は優しい眼差しでホワイトを見つめると体を洗ってきなさいと告げた。
ホワイトの体を洗うのはコーナンさんに任せ俺はヨハンさんと共に部屋に戻って来た。
「っ!痛い~」
上裸にさせられヨハンさんがテキパキと消毒をしてくれる。傷口に染みて痛い。
「コーナンを庇うからだよ」
「仕方ないじゃないですか…俺はお二人が傷つく姿を見たくなかったんです…」
あの時ヨハンさんの前に出ていなかったらホワイトはヨハンさんに噛み付いていただろう。結果的に丸く収まったが誰かの命が絶たれていたかもしれない。
「偽善者だね~。聖女候補?様ならこの位の傷自分で治せないの~?」
「治せたら苦労しませんよ…だから候補なんですから」
「確かに~。さ、終わったよ。服着て~」
いつの間にか治療は終わり包帯を巻かれていた。さっきよりも痛く無いから治癒魔法を使ってくれたのかもしれない。
「何してるんですか…?」
服を着終わると目の前に片膝をついたヨハンさんがいた。
「三葉様。此度はコーナンと僕の命を救って頂いた事深く感謝申し上げます」
「ちょ!やめて下さい!いきなりなんですか!?」
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「俺はまだまだ未熟です。そんな俺にヨハンさんの誓いは受け止められません。俺はいつものだらけたヨハンさんの方が好きです」
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「なんですか!?」
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