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3.隣国戦争
3.
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(ヨハンサイド)
「聖女候補、三葉殿に対面したい」
銀色に輝く鎧に身を包んだ屈強な男達が教会を訪ねて来た。礼拝の時間はとうに過ぎている為、一般客はいない。
「聖女候補って何のことですか~?」
「貴様、隠し立てすると捕らえるぞ」
騎士達を出迎えたヨハンが惚けると騎士が剣に手を掛けた。
「止めろ」
豪奢な馬車の中からよく通る声が聞こえた。中からローブのフードを目深に被った子供が出て来る。騎士達は道を開けると敬礼した。
「部下がすまなかった」
「君は?」
「先日お邪魔させて貰ったアンだ。夜分に申し訳ないが中に入れてくれないだろうか?」
フードの中の顔は確かにこの前サーシャ様と一緒に来ていたアン様だった。何故彼が来たのだろうか?
「ヨハンさーん。お客様はどなただった…」
タイミング悪く帰りが遅い僕を心配したみっちゃんが出て来てしまった。みっちゃんは、アン様を見ると固まってしまった。
「あ…ん様…取り敢えず中で話しませんか?」
みっちゃんの一言でアン様だけが中に入って来た。騎士達も付いてこようとしたがアン様の一言で外に待機させられている。
これから夕飯だから一緒にアン様も食べようと言うことになり厨房に来て貰いホワイト含め皆んなで手を合わせる。
今日はビーフシチューの様だ。凄い良い匂いが鼻を抜ける。
突然現れたアン様にじーちゃんとコーナンが一瞬驚いた様子を見せたけどすんなりと受け入れていた。
「美味しい」
アン様がビーフシチューを一口食べるとそう呟いた。
「良かったです。あ…ん様のお口にあって」
みっちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「それで~?アン様何しに来たの~?」
まだ幼い男の子が夜にウロウロして良いのだろうか?そしてこんな時間に来た理由を早く聞きたくて僕が問いかけるとアン様はスプーンを置いた。
「気づいている者もいるだろうが、私の本当の名はアヒン ジ オモールこの国の第一王子だ」
やっぱり。そうなんじゃないかと薄々感じていた。他の皆んなもそう読んでいた様で驚く者はいなかった。
「アヒン殿下のそのお姿は本当に病なのですかな?」
じーちゃんが立派な髭を撫でながら問う。アヒン殿下は本来なら18。こんなに幼いわけながない。不治の病に掛かっていると国民には伝えられ暫く姿を見て表していなかったがここまで成長速度が遅いのはおかしい。
「私は呪いに掛かっている」
「呪い…」
「この姿なのも呪いのせいだ。暫く床に伏せていたのだが、異世界から召喚した三葉達聖女候補のお陰で一人で歩く事も出来る様になった」
アヒン殿下が姿を表さなくなったのは前聖女様がいた頃。即ち10年くらい前になる。その間ずっと呪いに蝕まれていたのか。
「三葉には感謝している」
「ちょっと待って。感謝しているなら何でみっちゃんを迎えに来なかったの?」
「おいヨハン」
殿下に対する無礼な態度にコーナンが口を挟んで来た。
「構わない。君の言う通りだ」
殿下は三葉の事を見つめると頭を下げた。
「すまなかった。三葉」
「ちょ!アヒン殿下!頭を上げて下さい!」
三葉が立ち上がる。
「俺がライアス殿下を侮辱したのは事実です。アヒン殿下が謝る事なんて何一つありません」
「だが無一文の三葉を見て見ぬ振りしたのは事実だ」
「それは…何か事情があったんだと思ってます。だから謝らないで下さい。ヨハンさんも!アヒン殿下を責めないで下さい!ご飯抜きにしますよ!」
「ぷっ…はははっ!はいは~い、ごめんごめん。ご飯抜きは堪えるからもう責めませ~ん」
僕を抑止する術がご飯って。さすがみっちゃんよく僕の事を分かっているよ…
「それで?こんな時間に来たのはどうし
てなんだ?」
「うん。実は我が国は3日後北の国ノルマンドと戦争をする」
「「「戦争!?」」」
アヒン殿下がこくりと頷く。どうやら冗談ではない様だ。
「私は先行隊として明日出兵する事となった」
「えっ!アヒン殿下が!?」
ガタっ!と椅子を鳴らしてみっちゃんが立ち上がった。
「その体でどうやって行くのさ?」
「この身体では足手まといなのは分かっている。だから…三葉私と共に来てはくれぬか?」
「はぁ?」
今度は僕が大きい音を出して立ち上がった。
「あんた何言ってるのか分かってる!?」
「分かっている」
「いや、分かってない!あんた達王族は何で皆んなそんな自分勝手なんだ!!」
「落ち着けヨハン」
「何でお前は落ち着いてんだよ、コーナン!!」
コーナンの胸ぐらを掴むが鍛えているせいかびくともしない。
「まずは話を全部聞いてからだ」
「……」
俺が無言でどかっと座るとアヒン殿下は微笑んだ。
「聖女候補、三葉殿に対面したい」
銀色に輝く鎧に身を包んだ屈強な男達が教会を訪ねて来た。礼拝の時間はとうに過ぎている為、一般客はいない。
「聖女候補って何のことですか~?」
「貴様、隠し立てすると捕らえるぞ」
騎士達を出迎えたヨハンが惚けると騎士が剣に手を掛けた。
「止めろ」
豪奢な馬車の中からよく通る声が聞こえた。中からローブのフードを目深に被った子供が出て来る。騎士達は道を開けると敬礼した。
「部下がすまなかった」
「君は?」
「先日お邪魔させて貰ったアンだ。夜分に申し訳ないが中に入れてくれないだろうか?」
フードの中の顔は確かにこの前サーシャ様と一緒に来ていたアン様だった。何故彼が来たのだろうか?
「ヨハンさーん。お客様はどなただった…」
タイミング悪く帰りが遅い僕を心配したみっちゃんが出て来てしまった。みっちゃんは、アン様を見ると固まってしまった。
「あ…ん様…取り敢えず中で話しませんか?」
みっちゃんの一言でアン様だけが中に入って来た。騎士達も付いてこようとしたがアン様の一言で外に待機させられている。
これから夕飯だから一緒にアン様も食べようと言うことになり厨房に来て貰いホワイト含め皆んなで手を合わせる。
今日はビーフシチューの様だ。凄い良い匂いが鼻を抜ける。
突然現れたアン様にじーちゃんとコーナンが一瞬驚いた様子を見せたけどすんなりと受け入れていた。
「美味しい」
アン様がビーフシチューを一口食べるとそう呟いた。
「良かったです。あ…ん様のお口にあって」
みっちゃんは嬉しそうに微笑んだ。
「それで~?アン様何しに来たの~?」
まだ幼い男の子が夜にウロウロして良いのだろうか?そしてこんな時間に来た理由を早く聞きたくて僕が問いかけるとアン様はスプーンを置いた。
「気づいている者もいるだろうが、私の本当の名はアヒン ジ オモールこの国の第一王子だ」
やっぱり。そうなんじゃないかと薄々感じていた。他の皆んなもそう読んでいた様で驚く者はいなかった。
「アヒン殿下のそのお姿は本当に病なのですかな?」
じーちゃんが立派な髭を撫でながら問う。アヒン殿下は本来なら18。こんなに幼いわけながない。不治の病に掛かっていると国民には伝えられ暫く姿を見て表していなかったがここまで成長速度が遅いのはおかしい。
「私は呪いに掛かっている」
「呪い…」
「この姿なのも呪いのせいだ。暫く床に伏せていたのだが、異世界から召喚した三葉達聖女候補のお陰で一人で歩く事も出来る様になった」
アヒン殿下が姿を表さなくなったのは前聖女様がいた頃。即ち10年くらい前になる。その間ずっと呪いに蝕まれていたのか。
「三葉には感謝している」
「ちょっと待って。感謝しているなら何でみっちゃんを迎えに来なかったの?」
「おいヨハン」
殿下に対する無礼な態度にコーナンが口を挟んで来た。
「構わない。君の言う通りだ」
殿下は三葉の事を見つめると頭を下げた。
「すまなかった。三葉」
「ちょ!アヒン殿下!頭を上げて下さい!」
三葉が立ち上がる。
「俺がライアス殿下を侮辱したのは事実です。アヒン殿下が謝る事なんて何一つありません」
「だが無一文の三葉を見て見ぬ振りしたのは事実だ」
「それは…何か事情があったんだと思ってます。だから謝らないで下さい。ヨハンさんも!アヒン殿下を責めないで下さい!ご飯抜きにしますよ!」
「ぷっ…はははっ!はいは~い、ごめんごめん。ご飯抜きは堪えるからもう責めませ~ん」
僕を抑止する術がご飯って。さすがみっちゃんよく僕の事を分かっているよ…
「それで?こんな時間に来たのはどうし
てなんだ?」
「うん。実は我が国は3日後北の国ノルマンドと戦争をする」
「「「戦争!?」」」
アヒン殿下がこくりと頷く。どうやら冗談ではない様だ。
「私は先行隊として明日出兵する事となった」
「えっ!アヒン殿下が!?」
ガタっ!と椅子を鳴らしてみっちゃんが立ち上がった。
「その体でどうやって行くのさ?」
「この身体では足手まといなのは分かっている。だから…三葉私と共に来てはくれぬか?」
「はぁ?」
今度は僕が大きい音を出して立ち上がった。
「あんた何言ってるのか分かってる!?」
「分かっている」
「いや、分かってない!あんた達王族は何で皆んなそんな自分勝手なんだ!!」
「落ち着けヨハン」
「何でお前は落ち着いてんだよ、コーナン!!」
コーナンの胸ぐらを掴むが鍛えているせいかびくともしない。
「まずは話を全部聞いてからだ」
「……」
俺が無言でどかっと座るとアヒン殿下は微笑んだ。
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