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4.ツワニヤ国
8.
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「疲れてないか?」
案内された場所はこの集落の長の家で皆んながご馳走を持ち寄って振る舞ってくれた。お腹いっぱいだったけど案内してくれた男の子ルントンの可愛さにやられて結構無理して食べた。
だってこれも美味しいから食べてってうるうるした目で見られたら断れないよ…
久しぶりの幼い子供に心が癒された。
夜になるとルントンは疲れたのか俺の膝を枕にして眠ってしまった。その頭を撫でてあげると顔が緩んで可愛らしい。
大人達はお酒を持ち寄ってどんちゃん騒ぎだ。その中心にいたジョル様がいつの間にか俺の横に来た。
「はい。楽しいです」
「なら良かった」
ニコッと笑ったジョル様のイケメン値が高い。
「今日は酔ってないんですね」
「いつも酔ってる訳じゃない。あの日はハメを外していただけだ。それに元はと言えばミツバのせいだ」
「え?俺のせい?」
言いがかりもいい所だ。俺が何をしたと言うのだ?
「長年苦しんでいたベルガモンテの呪いを解いてくれただろ?あんなに喜ばしい事はない。改めて礼を言う。ミツバ、ベルガモンテを救ってくれてありがとう」
「っ…俺は俺に出来ることをしただけです…」
余りにも真剣な表情で言われた為目を合わせられなかった。こんなに真っ直ぐお礼を言われると恥ずかしい。
「ふっ、お前はすぐ赤くなるな」
「っ揶揄わないで下さいっ」
「まあ拗ねるな」
俺の膨らんだ頬を指で潰され口の空気が外に出る。絶対不細工な顔になっているだろう。
「こんなんで礼になるとは思ってないがお前が世話になった連中には俺から手紙を出しておいた」
「えっ!?」
「ミツバは無事だと言う事を伝えとかなきゃなと思ってな」
政務もあって忙しいだろうに俺の事にそこまで気を配ってくれていたなんて…言葉は少し荒い時もあるが優しいジョル様に胸が温かくなる。
「ありがとうございます。助かります」
これで心配をかける事はないだろう。急いで帰らなきゃと思っていた気持ちが楽になる。
「ここは俺が生まれた村なんだ」
「え?」
出産場所がここって事?
「俺は元々平民だ」
「え?」
「この国の王制度は変わっていてな。竜神に認められた者しか王になる事は出来ない」
王の子供であっても竜神に認められなければ王になる事は出来ないらしい。認められなかった場合は救世処置として公爵の地位を与えられるとか。
「俺が4歳の時に竜神の御神託があったんだ。そこから暮らしは一変した。大好きだった村人達から離れて暮らさなきゃならなくなって最初は相当暴れた。見兼ねた前王が俺をオモール国に行かせたんだ。同い年の王子達を見て王としての器を磨いてこいってな」
「だからアヒン殿下達と幼馴染なんですね」
「ああ。俺はあそこで4年間暮らしたんだ。最初は同い年のくせに偉くお高く止まってるアヒンがムカついてな?喧嘩を吹っかけてはいつもこてんぱにやられたよ」
なんだかそれが想像できて笑ってしまう。
「いつもアヒンの後ろを引っ付いていたライアスを冒険だって言って森に無理やり連れて入った時もあったな。森で迷って困ってた所をアヒンとサーシャが護衛を連れて探しに来てくれたんだ。あん時はアヒンにめちゃくちゃキレられた。あいつがあんなに感情を出したのは初めて見た時でもあった」
「アヒン殿下が怒る所なんて想像できませんね」
「そうか?あいつ結構俺の前だと遠慮がねーぞ?」
それはアヒン殿下が諦めたのでは?と思ったけど言わないでおこう。
「8歳になった時ある事件が起こった」
「事件?」
物騒な言葉に息を呑む。
「アヒンの呪い。何で受けたか知ってるか?」
「呪いを受けた?」
「その様子だと知らないみたいだな」
そう言えば今迄聞いた事なかった。何で呪われているのか。
「その事件があったから俺はこっちに戻された。俺も呪われるかもしれないってな。そっからアヒンとは会ってない。生きているとは聞いていたがまさか戦の指揮をとるまで回復していたとは思わなかった」
「………」
回復なんかしてない。一時的に呪いを薄めてるだけで時間が経ったらまた呪いに蝕まれる。
「アヒンが心配か?」
「…心配です」
あちらには美優さんがいるから大丈夫だとは思うけど呪いに蝕まれている殿下は本当に辛そうで痛々しい。また苦しんでいるんじゃないかと思ったら胸が苦しい。
「でも呪いの事ミツバに話してくれなかったんだろ?」
「それは…誰だって話したくない事くらいあると思います」
俺だって恥ずかしい失敗とか言いたくないし。
「呪いの治療、ミツバがやってたんだろ?内容までは聞いてないが常に近くにいたって聞いたぞ。それなのに何でミツバに呪いの事を秘密にすんだよ?」
「それは…俺が秘密を話したいと思える相手じゃないからです…」
やだな。自分で言っていて泣きたくなって来た。
「またそんな顔する…」
頬に手を添えられ親指で目元を拭われた。どうやらまた泣いていたみたいだ。
「俺ならそんな顔させない」
「なっ」
「本気で俺の嫁にならないか?」
「っ!俺は男です」
「知ってる」
「俺には子供を産めません」
「知ってる。さっき言っただろ?この国は竜神が決めた者しか国王になれない。だから子供なんていなくてもいんだよ」
「ジョル様は女性が好きじゃないですか」
歓迎会の時楽しそうに女の人と飲んでいた。それなのに俺に求婚するなんて訳わからない。
「女の方が好きだ。でもミツバなら本気で嫁にしてもいいと思っている。竜神の加護もあって力の相性もいいしな」
「急にそんな…」
「人を好きになるのに時間なんて必要か?」
「それは…違いますけど…」
何だろう。何かだんだん距離が近くなってないか?鼻がふれあいそうな位置にあるジョル様の顔が見れない。
「俺は聖女としてはまだ半人前です…」
「何だ?俺が聖女のお前を手放したくないから言っている戯言だと思ってるのか?だとしたらもっと効率的な方法をとる」
「…ジョル様…ちかぃです…」
「当たり前だ。今からキスするんだからな」
「っ…」
唇が合わさり柔らかい感触と温かい吐息にジョル様とキスをしているのを実感した。啄む様に何度かキスをされた後静かに唇を離されおでこをくっつけられた。
「今日ここに連れて来たのは俺の故郷をミツバに見せたかったからだ。教育に良くないから今日はここ迄にするがよく考えて欲しい」
教育?何の事だろうとふと下を見るとキラキラした表情でこちらを見ていたルントンと目があった。俺はルントンをジョル様に預けるとダッシュで外に駆け出した。
案内された場所はこの集落の長の家で皆んながご馳走を持ち寄って振る舞ってくれた。お腹いっぱいだったけど案内してくれた男の子ルントンの可愛さにやられて結構無理して食べた。
だってこれも美味しいから食べてってうるうるした目で見られたら断れないよ…
久しぶりの幼い子供に心が癒された。
夜になるとルントンは疲れたのか俺の膝を枕にして眠ってしまった。その頭を撫でてあげると顔が緩んで可愛らしい。
大人達はお酒を持ち寄ってどんちゃん騒ぎだ。その中心にいたジョル様がいつの間にか俺の横に来た。
「はい。楽しいです」
「なら良かった」
ニコッと笑ったジョル様のイケメン値が高い。
「今日は酔ってないんですね」
「いつも酔ってる訳じゃない。あの日はハメを外していただけだ。それに元はと言えばミツバのせいだ」
「え?俺のせい?」
言いがかりもいい所だ。俺が何をしたと言うのだ?
「長年苦しんでいたベルガモンテの呪いを解いてくれただろ?あんなに喜ばしい事はない。改めて礼を言う。ミツバ、ベルガモンテを救ってくれてありがとう」
「っ…俺は俺に出来ることをしただけです…」
余りにも真剣な表情で言われた為目を合わせられなかった。こんなに真っ直ぐお礼を言われると恥ずかしい。
「ふっ、お前はすぐ赤くなるな」
「っ揶揄わないで下さいっ」
「まあ拗ねるな」
俺の膨らんだ頬を指で潰され口の空気が外に出る。絶対不細工な顔になっているだろう。
「こんなんで礼になるとは思ってないがお前が世話になった連中には俺から手紙を出しておいた」
「えっ!?」
「ミツバは無事だと言う事を伝えとかなきゃなと思ってな」
政務もあって忙しいだろうに俺の事にそこまで気を配ってくれていたなんて…言葉は少し荒い時もあるが優しいジョル様に胸が温かくなる。
「ありがとうございます。助かります」
これで心配をかける事はないだろう。急いで帰らなきゃと思っていた気持ちが楽になる。
「ここは俺が生まれた村なんだ」
「え?」
出産場所がここって事?
「俺は元々平民だ」
「え?」
「この国の王制度は変わっていてな。竜神に認められた者しか王になる事は出来ない」
王の子供であっても竜神に認められなければ王になる事は出来ないらしい。認められなかった場合は救世処置として公爵の地位を与えられるとか。
「俺が4歳の時に竜神の御神託があったんだ。そこから暮らしは一変した。大好きだった村人達から離れて暮らさなきゃならなくなって最初は相当暴れた。見兼ねた前王が俺をオモール国に行かせたんだ。同い年の王子達を見て王としての器を磨いてこいってな」
「だからアヒン殿下達と幼馴染なんですね」
「ああ。俺はあそこで4年間暮らしたんだ。最初は同い年のくせに偉くお高く止まってるアヒンがムカついてな?喧嘩を吹っかけてはいつもこてんぱにやられたよ」
なんだかそれが想像できて笑ってしまう。
「いつもアヒンの後ろを引っ付いていたライアスを冒険だって言って森に無理やり連れて入った時もあったな。森で迷って困ってた所をアヒンとサーシャが護衛を連れて探しに来てくれたんだ。あん時はアヒンにめちゃくちゃキレられた。あいつがあんなに感情を出したのは初めて見た時でもあった」
「アヒン殿下が怒る所なんて想像できませんね」
「そうか?あいつ結構俺の前だと遠慮がねーぞ?」
それはアヒン殿下が諦めたのでは?と思ったけど言わないでおこう。
「8歳になった時ある事件が起こった」
「事件?」
物騒な言葉に息を呑む。
「アヒンの呪い。何で受けたか知ってるか?」
「呪いを受けた?」
「その様子だと知らないみたいだな」
そう言えば今迄聞いた事なかった。何で呪われているのか。
「その事件があったから俺はこっちに戻された。俺も呪われるかもしれないってな。そっからアヒンとは会ってない。生きているとは聞いていたがまさか戦の指揮をとるまで回復していたとは思わなかった」
「………」
回復なんかしてない。一時的に呪いを薄めてるだけで時間が経ったらまた呪いに蝕まれる。
「アヒンが心配か?」
「…心配です」
あちらには美優さんがいるから大丈夫だとは思うけど呪いに蝕まれている殿下は本当に辛そうで痛々しい。また苦しんでいるんじゃないかと思ったら胸が苦しい。
「でも呪いの事ミツバに話してくれなかったんだろ?」
「それは…誰だって話したくない事くらいあると思います」
俺だって恥ずかしい失敗とか言いたくないし。
「呪いの治療、ミツバがやってたんだろ?内容までは聞いてないが常に近くにいたって聞いたぞ。それなのに何でミツバに呪いの事を秘密にすんだよ?」
「それは…俺が秘密を話したいと思える相手じゃないからです…」
やだな。自分で言っていて泣きたくなって来た。
「またそんな顔する…」
頬に手を添えられ親指で目元を拭われた。どうやらまた泣いていたみたいだ。
「俺ならそんな顔させない」
「なっ」
「本気で俺の嫁にならないか?」
「っ!俺は男です」
「知ってる」
「俺には子供を産めません」
「知ってる。さっき言っただろ?この国は竜神が決めた者しか国王になれない。だから子供なんていなくてもいんだよ」
「ジョル様は女性が好きじゃないですか」
歓迎会の時楽しそうに女の人と飲んでいた。それなのに俺に求婚するなんて訳わからない。
「女の方が好きだ。でもミツバなら本気で嫁にしてもいいと思っている。竜神の加護もあって力の相性もいいしな」
「急にそんな…」
「人を好きになるのに時間なんて必要か?」
「それは…違いますけど…」
何だろう。何かだんだん距離が近くなってないか?鼻がふれあいそうな位置にあるジョル様の顔が見れない。
「俺は聖女としてはまだ半人前です…」
「何だ?俺が聖女のお前を手放したくないから言っている戯言だと思ってるのか?だとしたらもっと効率的な方法をとる」
「…ジョル様…ちかぃです…」
「当たり前だ。今からキスするんだからな」
「っ…」
唇が合わさり柔らかい感触と温かい吐息にジョル様とキスをしているのを実感した。啄む様に何度かキスをされた後静かに唇を離されおでこをくっつけられた。
「今日ここに連れて来たのは俺の故郷をミツバに見せたかったからだ。教育に良くないから今日はここ迄にするがよく考えて欲しい」
教育?何の事だろうとふと下を見るとキラキラした表情でこちらを見ていたルントンと目があった。俺はルントンをジョル様に預けるとダッシュで外に駆け出した。
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