鬼上司が俺の運命の相手って嘘ですよね？

日常の変化

24.最終話

「ほら、これ食べろ」
「～～～」
俺は今最高に機嫌が悪い。昨日は散々身体を酷使され意識を失っていた。起きたのは昼の12時過ぎだ。

「こじいだい…」
声もガラガラで手にはまだネクタイで縛られた跡が付いている。
部長に起こされ背中にクッションを置いてもらいどうにかベットで座る事が出来た。目の前にはコップに入ったお水と京都で買ってきたという抹茶のケーキがワンホール置かれている。水を一気飲みするとすぐさま新しい水を注いでくれた。どこまでも出来る男だ。

こんなハイスペックな男が俺の運命の相手なんて本当だろうか？前世の俺はどれだけの徳を積んだんだ？

「どうした？」
じーっと部長の顔を見過ぎたようだ。イケメンに微笑まれた。目も死ぬ。

「いえ、まだ護さんと両思いになれたのが信じられなくて…」
「俺も喜びを噛み締めている」
あーんと抹茶ケーキを一口大に切り口に運ばれる。恥ずかしいが嬉しいのでそのまま食べさせて貰う。

「前にも言ったが俺は湊の事ずっと好きだった」
「どこで俺に惚れる要素が？」
はっきり言って顔はまあ可愛いと言われる事はあるが、仕事は完璧じゃないし性格も凄い良い訳じゃないし、結構思い込み激しい所もあるし部長に釣り合うところが一つも思いつかない。

「お前は時々手を抜く所もあるが、比較的真面目でやると決めたら最後までちゃんとやるタイプだ。誰にでも分け隔てなく接するし甘いものを食べている時の顔は凄く可愛い」
部長にそんな目で見られていたなんて恥ずかしい。下をむきそうになった顔を上げられ目を覗き込まれる。

「俺が最初に今の部署に来た日を覚えてるか？」
「最初に来た日…2年前ですか？」
「そうだ。部長になって初めて配属されたのが今の部署だ」
確かあの時は若くてイケメンのやり手の新人部長が来ると所内では噂になっていた。部長が噂以上のイケメンで衝撃を受けたのも懐かしい思い出だ。

「皆、若手で新人の部長という俺の事を遠巻きに観察していたのに、湊が最初に俺の元に来て挨拶してくれたんだ」
「あっ…」
覚えてる。あの時は、新しく上司になる人だし気まずくなるのはもっと嫌だし、誰も声掛けないなら俺から行こうと思って話しかけたんだった。

「あの時、お前に声を掛けられて、屈託なく笑顔を見せてくれてどれだけ俺の心が救われたか…」
「え、じゃぁ、あの時から護さんは…」
「そうだな。きっかけは、あの時からだ。そこから湊と関わるようになってどんどん目が離せなくなっていった。あの日、3次会に行ったのも湊がいるから行ったんだ。今迄俺がいると皆楽しめないと思って遠慮していたが、どうしても湊の近くに行きたくて側にいたくて行った。結果的に運命の相手だと分かってどれだけ舞い上がったか…俺が湊に惹かれたのは偶然じゃなかったんだって思ったよ」
「全然気づかなかった…」
2年間も思われていたなんて。

「寧ろ嫌われてると思ってました」
「可愛くて構い倒したかったんだ」
「そんな！可愛いならもう少し優しく怒って下さいよ！」
あれだけ怒鳴られたら俺の事好きだって気づくわけないよ！
まあ、怒られる様な事をした俺も悪いんだけどね！

「すまん。じゃっかん涙目になる湊が可愛かったんだ」
「横暴だ！」
薄々感じていたけどこの人Sだ。俺を泣かせて楽しんでいたなんて。

「嫌いになったか？」
「うっ……………嫌いじゃないです…」
ずるい。そんな子犬の様な顔で至近距離で見つめられたら許すしかないだろう。
俺の言葉に安心したのかちゅっとキスをされた。


「湊、愛してる。これからは俺の恋人としてゆくゆくは伴侶として俺を受け入れて欲しい」
「…はい。宜しくお願いします」

誰が想像できただろうか？あんなに苦手だと思っていた鬼上司と運命の相手で、生涯の誓いをたてる仲になるなんて。

運命の相手に出会うのは夢の話だと思っていたのに。俺には関係ない話だと思っていたのに、結果的には第二の性感帯のお陰でこんなに素敵な人に出会えることが出来た。

この関係を絶対大事にしよう。まだまだ俺たちの関係は始まったばかりだけどこれから2人で考えてゆっくり進めて行けばいい。

俺は大好きな抹茶ケーキを頬張り部長が大好きな笑顔を見せた。




end